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第一話:ケンカ

「もう無理だよあたし」

カナは半泣きの顔で声をふるわせながらそういうと部屋からでていった。

僕は部屋に残されてため息を吐いた。

三十分前‐

「トオル大丈夫?」

カナが廊下からリビングにつながっているドアから顔をのぞかせた。

年末なのに風邪を引いた僕は熱に弱く、今回の風邪には四苦八苦していた。

「なんとか生きてる。仕事が休みのときでよかった。つかあんま近づくなよ?」

カナは苦笑いをしながら冷えた手を僕の額に乗せた。ひんやりとした感じが心地好い。

「トオルは熱に弱いもんねぇ。待ってて。あたしお粥つくるよ」

カナはキッチンにむかおうとして、僕は寝ようとしていた、ハズだった。

ふと、カナの目がサイドボードの上にある何かにとまった。僕は気付かずに目を瞑る。

カナが駆け寄ってきた。

「トオル、これ何?」

ぼんやりと目をあけた僕の目の前にあったのはきれいにリボンのかかった小箱。

一瞬青ざめる

「何でもない」

そう言ってカナから箱を奪い取った。

それでも好奇心の強い‐カナの長所でもあり短所でもある‐彼女は

「何それ?」

としつこく聞いてくる。

そのしつこさにイライラとしてきた僕と、答えない僕にイライラしてきたカナはだんだん口調が強まる。

「何で教えてくれないわけ?言えないようなものなわけ?」

「違うっつってるだろ」

「じゃあ何なのよ?」

‐パシン

一瞬、何がおこったのかわからずにいた。ぶった僕もぶたれたカナも立ち尽くしている。

「おまえには関係ないんだよ」

やっとのことでしぼりだした声は震えていて情けなかった。

カナの目から涙が一粒こぼれた。

「…なんでそうやって…いつも自分の頭だけで…ついていけない。もう無理だよあたし」

カナは泣きながら半ば叫びつつ、廊下を走って行った。熱があがってきたのか、うまく追い掛けることのできなかった僕はだいぶ格好の悪い男だ。

よたよたと這う様にして玄関にいくと、おろしたばかりの彼女のブーツがあった。

靴も履かないで出ていくなんて無謀すぎる。

それから一ヵ月近くカナはこなかった。

今まで、一週間も二週間もあわなくても平気でいられたのがうそのように、僕はイラつき、タバコの量がだいぶ増えた。それに、カナの好きだったドラマを録画したビデオもだいぶたまりつつあった。

カナは看護士でこのドラマがやる日は決まって夜勤。

そんなとき、僕がこのドラマを撮っておいて夜勤帰りのカナが見る、そんな生活をしていたのに。

「ただいま」

きしむドアをあけながらそう言ってすぐに後悔した。誰かが返事をくれる筈がない。

リビングに入ってすぐにラベンダーの香に気付いた。

カナ。急いで電気をつけると、テーブルの上に夕ご飯が作っておいてあった。

そして、花瓶にさしてあるラベンダー。

カナの好きな香。

もうだいぶ冷めたおかずをつまみながらビデオをセットした。

いつまでこんなこと繰り返すんだろう。いや、もう終わりかもしれない。

僕ら自体が。

カナはもう無理だと言ったし僕も熱の所為とはいえ追い掛けられなかった。

僕らはどんなカップルよりたくさん喧嘩をして、そのたびに別れそうになった。

でも僕がぶったことはなかったしカナが泣いたこともなかった。

あの、小箱が恨めしく思える。

明日は、僕らの十周年記念で、カナの誕生日でもある12月31日‐

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