第九話・旅は道連れ世は情け、仲間が増えました
はい、第九話投稿いたしました。
今回は本格的な【魔法】が出てきます。
珍しい戦闘シーンもある!?
とは言っても、数箇所だけですが…
ばってん、第九話、始まり始まり…
【グラブス】を発ち【アンヴィーラ】へ向かって早三日。
イーナこと伊那楓です。
結局東がどの方向かわからずに、門に戻って聞きましたよ。
方位磁石が100Sでした。
まぁ、これからも必要なものなので迷わずに買いましたけど。
あと、ここに来るまでに【グラブス】へ行く商隊と出会いましてね。
なかなかに良い物を買いましたよ。
何を買ったかって?それは秘密です。
あとの方が楽しみも多くなるでしょう?
それに、もうそろそろ【アンヴィーラ】が見えてくるはずですしね。
あとどれくらいで【アンヴィーラ】に着くのかと考えていると、【レーダー】に反応がありました。
距離から見て、道から外れた茂みの奥20mくらいの場所ですかね?
緑の点が複数の緑の点に追いかけられています。
「おかしいですね…」
野生の動物なら草食動物が肉食動物に追いかけられているのが自然です。
私の【レーダー】には肉食動物が赤い点で表示されるのは確認してあります。
それなのに緑の点同士が?
私に害意が無いので関係ないと言えば関係ないんですが…
「行ってみましょうかね。すぐ近くですし。」
何となく気になったので行ってみることにしました。
草が生い茂っていてよく見えなかったので【霊力浮遊】で木々の上を浮かびながら目的地に着きました。
もちろん目はつぶっていましたよ?
【レーダー】を確認しながらおりる場所を決めました。
浮遊感もなくなり地面に足が着いたことに安心していると周りから声が聞こえます。
「なんだお嬢ちゃんは?」
「そこにいると危ないぞ。とっとと道に戻りな。」
見まわしてみると、そこには傷付いた小さな白い竜が倒れていました。
どうやら気を失っているようです。
この竜は…
「私は何か音がしたので来てみたんですが…おじさんたちは何をしているんですか?」
服装は【地球】の洋服と変わりませんが、片方が羽織っている小奇麗なマントが目を引きます。
「ああ、俺たちは貴族からの依頼でな。竜がこの森で目撃されたからって貴族がそれを欲しがってな。」
「この竜を見逃すわけには…」
「ああ、そりゃ無理だ。なにせ、生け捕りで200000Sの依頼だ」
「そうだ、それもあと一歩で達成できるしな。」
「金の為…ですか。」
「いや、金の為でもあるが、貴族からの依頼を成功させると今後も安泰なんでな。」
「【アンヴィーラ】の貴族は金羽振りもいいし、依頼を成功させると―――ぐっ、なんだそ―――」
最後まで言葉を言わせずに、プラズマライフルを撃ち【魔力障壁】を減衰させながら、レーザーライフルを撃ち、意識を断ちました。
「もういいです。うんざりしました。」
「なんだそりゃ?【魔具】か?」
仲間がやられたというのに、私のレーザーライフルとプラズマライフルについて聞いてきます。
「なんでもいいじゃないですか。これから戦う相手に説明する必要もありません。」
「まあ違いないな。それじゃ、お嬢ちゃんを叩きのめしてから、その竜を捕まえることにするか。」
そう言ってから男も杖を構えました。
「中級魔法【フレイムアロー】!」
そう言い、男は火でできた矢を私に向けて放ってきました。
私はそれに向けてプラズマライフルを撃ちこみます。
すると…
「は…?お嬢ちゃん何したんだ?」
【魔法】は【魔力】でできています。
そして【霊力】と【魔力】は互いに打ち消しあう性質を持っていると仮定しましたが…
「どうやら、当たっていたみたいですね。」
プラズマライフルで【フレイムアロー】を掻き消すことが出来ました。
【魔法】は【魔力障壁】でしか防げず、相対する属性の【魔法】でないと相殺することはできません。
それに、相殺をすると爆発したり破裂音が鳴ったりと何かしら反応があるはずですが、それもありませんでした。
この世界の常識を覆したので、この反応も当然でしょうね。
もし掻き消せなくても【霊力障壁】に守られているので、ダメージは通りませんでしたけどね。
「言ったでしょう?説明する必要はない、と。」
呆然としている男にプラズマライフルを撃ちこみます。
「んだこりゃ!?【魔力障壁】が!?」
レーザーライフルをしまい、レーザーブレードを取り出しました。
【魔力障壁】がなくなったことに驚いている男に一気に接近し、ブレードで切り付けます。
気絶しないように加減はしましたよ?
「ぐ…【魔力】が…」
そろそろ限界の様ですね。
「さて、あなたは戦闘不能、もう一人は気絶。私の勝ちでいいですかね?」
「ああ…?ふざけんじゃねぇ…こんなガキにやられてたまるかよ…」
そう言って、なけなしの【魔力】を振り絞って【呪文】を唱えようとします。
「上級魔法!【ブレイズ―――」
「遅いですよ?」
上級魔法を使おうとする男に再び接近し、ブレードで切り付けます。
「く…そ―――」
「気絶しましたか。」
気絶させないように加減したのが仇になりましたか。
上級魔法が使えるという事は、高位の魔法使いだったようですが…
【魔力】が足りないのに【魔法】を使おうとすると暴走の危険性が大きいですからね。
それに上級魔法が暴走でもしてしまったら、この辺一帯が吹き飛んでいたかもしれません。
意識を失っている彼らを一瞥します。
ここは自然豊かな森の中、無防備で意識を失っている彼らを動物達が放っておくはずがありません。
しかし、弱肉強食の世界では隙を見せたものから死んでいくのは当然のことです。
「まあ、生きて帰れることを願いますよ。」
気を失っている白い竜を腕に抱き、その場を後にしました。
閑話休題
あれから数時間たちましたが、まだ竜は目を覚ましません。
【アンヴィーラ】は見えているんですが、今日は野宿ですね。
「それにしても、竜の子どもですか…」
この世界の【魔獣】の頂点に君臨しているのが竜です。
数が少ないながらも赤、青、緑、黒、白と色の違いがありますが、その中で最も高貴であり、最も力を持っているのが【白竜】です。
その鱗は【魔法】が通用せず、吐く息は【魔力障壁】をやすやすと貫通し、空を飛んだ時に起きる風は台風に匹敵する。
その存在自体が天災と同等に恐れられています。
しかしそれも成体になってからの話、子どもの間はそういった特徴もないので親に守られている、ハズなんですが…
この竜が襲われていた時に、成体の竜は確認できませんでした。
【レーダー】を出して広範囲を確認したので間違いないです。
巣から飛び出してきてしまったんでしょう。
母竜に見捨てられたか、あるいは…
見捨てられたのはありえませんね。
竜は天災の象徴と同時に、母性の象徴としても崇められています。
それほどまでに子どもを大事にする竜が子どもを捨てるなんて…
「あなたも…」
まだ小さいこの竜が一人で生きていけるほど自然は甘くありませんし、先ほどのような【人間】にも狙われるでしょう。
それに抗えるハズもなく捕まり、その末路は…
「でも、決めるのはあなたです。私は強制しません。」
燃える焚火の明るさが私たちを照らしています。
竜の頭を優しく撫でる。
まだ柔らかい鱗が冷たくて気持ちいいです。
「でも、できれば…」
言葉を続けようとした時に、竜の体が動きました。
もう目を覚ましますかね。
竜は頭の良い【魔獣】なので、話せば通じると思いますが…
竜は目を覚まし、辺りをキョロキョロと見渡しています。
「起きましたか?ああ、大丈夫です。危害を加えるつもりはありませんよ。」
【魔獣】は悉く【魔力】に敏感です。
その中でも竜は特に【魔力】に敏感な【魔獣】です。
【魔力】と似た【霊力】にも敏感なハズです。
なので、警戒させない為に【霊力障壁】は展開していません。
私の声を聞いて驚いたのか、体を震わせています。
「お腹が空いたでしょう?干し肉もありますので食べてもいいですよ。」
そう言って干し肉を差し出しますが、警戒しているのか食べようとしません。
「私は寝ますが、あなたは自由にしてもいいですよ。干し肉を食べても食べなくても、森に戻るのも戻らないのも自由にしてください。でも、これだけは言っておきます。次にあなたが【魔獣】や【人間】に襲われても助ける気はありません。それだけです。では、おやすみなさい。」
まあ【霊力障壁】を展開しなくても大丈夫でしょう。
朝起きたら竜はどうしているのか。
まあ、行動を強制する気はありません。
自分で決めないと意味がありませんので…
閑話休題
朝、懐のほのかな暖かさで目が覚めました。
懐を見てみると竜が丸まって寝ていました。
自然と頬が緩んでしまいます。
「やっぱりあなたも…」
昨日はあんなに怖がっていたのに、気を許してくれたようで嬉しい限りですね。
「ほら、起きてください。」
頭を優しく叩くと、眠そうな目をして目を覚ましました。
「キュ?」
涙で目を潤ませながら、首を傾げこんな声を出しました。
こ…これは!?
心の底から湧き上がってくる衝動のまま、竜を抱きしめてしまいました。
「キュッ!?キューッ!」
竜は嫌がって暴れながらジタバタもがいて…
「あ、ああ!すみません!」
これが天災とまで呼ばれている竜の恐ろしさですか。
なるほど、これは太刀打ちが出来ませんね。
竜はこちらを警戒するように離れてしまいました。
「本当にすみませんでした。で、でもあなたもいけないんですよ!?そんな目でこっちを見るから…」
「キューッ!?キュッキュッキューッ!」
と、まるで『なんだと!?そっちが急に抱きしめてきたんじゃないか!』と言っているように吠えながら、頭の上に飛び乗って噛み付いてきました…って!
「い、痛い痛い!すっごく痛いです!」
子どもと言っても、竜の中でも最強と呼ばれている白竜です。
その噛む力はなかなかの物。
まだ牙が生え揃っていないから良かったものの、所々に生えている短い牙が確実に頭に食い込んできます。
「は、放してくださーい!」
私の声は晴れた青空によく響きました。
閑話休題
「ふう…ようやく放してくれましたか。ってそんな目で睨まないで下さいよ。」
白竜は半分閉じられているような目でこちらを睨んできます。
「さて、そろそろ行きますか。」
【アンヴィーラ】に入国しようと荷物をまとめていると…
「キュ?キュッキュッキュ!」
どうやら私の頭の上が気に入ったのか、小さな翼を激しく動かして頭の上に乗ってきました。
あ、髪長いからって掴まないでくださいよ。
「おや?一緒に来るんですか?」
「キューッ!」
竜は『あんた面白そうだからついてくぜ!』とでも言いたげによく響く声で返事をしました。
「まあ、着いてくるのは勝手ですが…」
【アンヴィーラ】を臨み、旅の仲間も増えましたね。
「まあ、いいです。旅は道連れ世は情け、とも言いますし。情けをかけるかはわかりませんが…」
旅の仲間も増え、これからどうなっていくんでしょうね?
私たちは【アンヴィーラ】に向けて歩みを進めました。
「そういえば…竜って入国してもいいんですかね?」
「キュ?」
【アンヴィーラ】への道のりは短いです。
はい、どうだったでしょうか?
白竜は仲間になりたそうにこちらを見ている。
仲間にする
抱きしめる←
ということで白竜が仲間になりました(笑)
ちなみに白竜は主人公の頭の上がお気に入りポジションです。
無理やり剥がそうとすると頭に噛り付いて離れません。
そして主人公の髪は長いです。
肩甲骨の辺りまで伸ばしている黒髪です。
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