第六十八話・目薬をさすと凄く目にしみます
はい、第六十八話投稿いたしました。
いやぁ、どうにも書き始めるのに時間がかかってしまいますね。
書き始めれば一日程度で終了するんですが…
お気に入り登録をされている方にはご迷惑をおかけします。
そういえば、活動報告の方に新しい番外編を掲載しております。
それでは、第六十八話始まり始まり…
「【魔眼】を抑えたい、ですか?」
「ああ、こいつもどうにかしたいって言ってるしさ。」
イーナの熱が治まって早二日。
ようやくいつも通りの体調に戻ったみたいだ。
「しかし、自分の能力なんですから、自分でどうにかできるんじゃないんですか?態々私に頼らずとも…」
「いや、本当ならそうなんだけどさ。村で使い方とか教わってないみたいなんだよ。」
【エルフ】に話を聞いてみると、少し前に森を追い出されて、森を出たらすぐに捕まって、そんでこの国にまで連れてこられたとか。
それに、村にいる間は軟禁状態だったらしい。
「まあ、確かに【エルフ】の間では【魔眼】は禁忌らしいですからね。生まれてすぐに殺されても仕方ないほどです。」
へえ、そうなんだ…てか、なんでこいつはこんなこと知ってんだ?
「まあ、そういった事情なら仕方ないですね。」
イーナが汚れた袋に手を入れ、なにやらゴソゴソ探っている。
「よかったな。なんか出してくれるぞ。」
「…うん。」
この【エルフ】も、イーナが寝込んでる間になんとか喋ってくれるようになった。
まあ、まだ口数は少ないけどな。
「ああ、ありました。」
イーナが袋から手を取りだし、持っていたものを机の上に置いた。
…ん?
「その【魔眼】が発生すると、片方の目が違う色になります。それは知っていますね?」
「いや、まあ…それで、こんなんでどうすんだ?」
イーナが取り出したのは、一本のスプーンだった。
これで目を隠す…わけないだろうし。
「ならば、そちらを無くせば【魔眼】の能力も消失するハズです。理屈から言えばそうなりますね。
んー…まあ、そういやそうだな。
「確か【エルフ】の虹彩は青色が多いんでしたね。紫色の方をなくせば【魔眼】の能力も無くなるハズです。それならば…」
イーナが【エルフ】の方を見た。
その目にはいつも通り光が見えず、まるで物でも見ているような風だった。
「抉ればいいじゃないですか。」
抉る、って…
「大丈夫ですよ。スプーンは滅菌済みですし、化膿をさせるほど下手に抉るつもりもありません。それに、痛いのはきっと一瞬ですから。セルナ、抑えていてください。」
カチャリと、そのスプーンを手に取った。
「いやいやいや!待て!こいつも怯えてんだろ!だからそれ置けって!」
俺の後ろに隠れて涙目になっている【エルフ】を見ると、こう言わずにはいられなかった。
「なんですか?どうにかしてほしいと言ったのはセルナでしょう。手段については特に指定されていませんよ?」
「無し!却下!とにかくそれ以外で!」
俺が大声で言うと、渋々とスプーンを袋にしまった。
本当になに考えてんだよ!
「面倒ですね。では、用意をしておきますから、セルナは隣の部屋でもに行っていてください。」
「今すぐは無理か?」
「希少な【魔眼】の制御法なんて、そんなに早く完成するハズ無いじゃないですか。」
「ああ、分かったよ。」
そう言われ【エルフ】の手を引いて部屋を出ようとすると。
「ああ、その【エルフ】は置いて行ってください。色々と聞きたいこともありますし。」
「分かったけど…傷つけたりすんなよ?それで、お前はいいのか?」
【エルフ】に問いかけると、目を伏せて静かに頷いた。
閑話休題
さて、セルナは出ていきましたね。
なんとなく不服そうでしたが、気にしなくてもいいでしょう。
「では、その辺に座ってください。ああ、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。特に何をするというわけでもないですから。」
さて、それではボチボチと始めますか。
「…ねえ。」
この部屋の静寂を破るかのように【エルフ】が私に話しかけてきます。
「なんでしょうか?」
「…あなた、名前はなんて言うの?」
「イーナですよ。ただの人間の、イーナです。」
「…それだけ?それってファミリーネームは?」
「ありませんよ。特に必要性も感じませんし。」
「…ふーん。」
そう、私はイーナです。
必要な名前はそれだけです。
「…ねえ、本当に私の目を抉るつもりだったの?」
「もちろん、それが一番簡単ですから。」
【エルフ】は身を震わせて、こちらから目を逸らしました。
さて、準備はできましたが…
「少し、質問をしてもいいですか?」
「…なに。なにか聞きたいことでもあるの。」
「ええ、やはり【魔眼】という能力は興味深いですから。」
心理状態との因果性など、調べてみたいことに限りはありませんが。
「それでは、一つ目の質問ですが【魔眼】は、生まれつき持っていたのですか?」
「…生まれた時なんて知らない。気付いたら牢屋の中だったもの。」
気が付いたら牢の中…
【エルフ】の間では【魔眼】という能力は、そこまで忌避されるべきものなんですね。
しかし、なぜそこまで?
たかが【魔力】を操作するだけの能力のハズ…
「なるほど、では二つ目の質問です。あなたは【魔力】を可視化することが可能ですか?」
「かしか?」
「ああ、視ることが出来るかどうかですよ。それで、どうなんです?」
【エルフ】は長寿といいますが、語彙の量は少ないんですね。
まあ、監禁されていれば交流もありませんでしょうね。
「…うん、視えるわ。説明しづらいけど、粉みたいな物がたくさん浮いてるの。」
「なるほど。それは【魔法】についても同じですか?属性毎に色が付いて視えるとか。」
「…!なんで、あなたが知ってるの。まさか、あなたも…」
「残念ながら、私はただの人間です。そんな高尚な能力なんて持っていませんよ。」
【魔力】の色も見比べられる、と…
しかし、これはなかなか興味深いですね。
「これで質問は終わりです。薬の調製が終わるまで待っていてください。」
質問をしている間も作業をしていたので、あと少しで終わるところまで来ています。
「…ねえ。私も質問してもいい?」
「構いませんよ。私も質問をしましたから。けど、一つだけですよ?」
「…どうして?あなたは二つ質問をしたのに。」
「最初に私の名前を聞いたでしょう?」
その返事を聞いた途端【エルフ】の少女は予め用意していたかのように、私に質問をしました。
「…あなたは、なに?」
なるほど、私が誰か、身分を聞いているのではなく、私自身の存在自体を聞いている。
「そう聞くということは、あなたの【魔眼】では私はとても奇妙に視えた…いえ、今もそう視えてるんでしょうね。」
「…早く答えて。」
「ふふ…いいですね。あなたの味方など一人もいないこの部屋で、味方ともいえない人間に物怖じ一つせずに問うなんて。とは言え…残念ですが。先ほども言った通り、私は人間ですよ。」
「…ウソ。あなたみたいな【人間】視たことない。」
「そう言われても、そう言うしかないんですよね。さて、できました。」
瓶に詰め終わったのは【魔眼】を抑えるために調製した液体です。
水自体に【魔力】を封じる【魔法陣】を浸透させた、飲んだ者の【魔力】を封じる液体です。
まあ、効果時間は4時間程度なので、あまり意味はありませんがね。
「ところで、あなたは【魔眼】を抑えたいと聞きましたが、本当にいいんですか?」
「…うん。こんなモノあっても、嬉しくなんてないから。」
「しかし、その能力に助けられたことも少なくはないでしょう?」
「…うん。」
「まあ、いいでしょう。この水を目に点せば【魔眼】が使用不可能に陥ります。」
「…本当に?」
15mL程度入った瓶を【エルフ】に手渡します。
「そうは言っても4時間程度です。継続的に点さないと持続しません。」
「…分かった。」
【エルフ】が上を向いて、紫色の【魔眼】に少しだけ目薬を垂らしました。
その途端…
「…っ!」
紫色の右目を押さえ、苦しげな呻き声を発します。
まあ、当然ですね。
無理矢理抑え込んで表に出さないようにするだけですから。
「さて、どうです?【魔力】は視えなくなりましたか?」
「…とても痛い。けど、うん、視えない。」
こちらを見る【エルフ】の右目は紫色ではなく、左目と同じ青色でした。
「それは良かった。もういいですよ。セルナにはあなたから言っておいてください。」
「…ありがとう。」
そう言うと【エルフ】は部屋から出ていきました。
「それにしても【魔眼】というのは…」
袋から眼鏡を取り出し、机に置きました。
今は壊れて機能を果たしていない、ただの眼鏡となった、元【魔力】を視る眼鏡です。
天然に発生した【魔力】を視通す生物と、人工的に創り出した【魔力】を視通す【魔具】
あの時【エルフ】の老人に会ったとき、自分が創ったと言ったこの眼鏡の形を模したこの【魔具】
「…聞きたい事が増えましたね。」
まあ、とりあえず、王様の一件が終わり次第ですかね。
はい、どうだったでしょうか?
ちなみに、登場した【魔力】を封じる液体ですが、飲めば完全に【魔力】を封じますが、布を浸せば簡易的な結界として働きます。
生産コスト的には、ガラス筒一つと一畳程度の広さがあれば量産が可能です。
戦争が始まったとき、敵地の井戸にでも投げ込めば…めっちゃ怖い。
色々とお待ちしております。