表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私が行く・異世界冒険譚  作者: ちょめ介
蒔かれた種はどんな木に育つのか
65/81

第六十五話・類は友を呼び、友は類を招く

はい、第六十五話投稿いたしました。


遅れてしまい、申し訳ありません。


授業が開始され、ゴタゴタしてしまいました。


そして不調も続き、二週間ぶりの投稿になってしまいました。


そしてまた、第六十五話始まり始まり…

「んぁ…」


目が覚めると、天井が見えた。


隣にはメリアが寝ており、逆側には【エルフ】が…


「―――っ!」


そうだ…【エルフ】と外に出て、腹を貫かれて、なんか色々起こって…


腹を見てみるが、傷痕一つない。


骨が飛び出していたハズの腕や脚にも傷一つなく、あったハズの古傷も消えている。


未だ眩む目で部屋を見渡すが、イーナはいない。


「どういうことだよ…」


死んだと思ったけど、生きている。


そんな混乱している中、軋んだ耳障りな音を立てて、ゆっくりと扉が開いた。


「起きましたか。調子はどうですか?セルナ。」


メリアと【エルフ】を起こさないためか、この薄暗い部屋に声を抑えながらイーナが入ってきた。


「…俺、なんで生きてんだ?」


「不思議なことを聞きますね?死んでいないから生きている。当然のことですよ。」


「あのなぁ…」


「まあ、ここで話すのもなんです。外で歩きながら話しましょう。付き合ってください、セルナ。」




閑話休題




「いい夜ですね、セルナ。」


「いい夜、っつってもな…」


イーナはそう言うが、いつもと変わらない、なんの変哲もない夜だ。


「…そういや、眼鏡どうしたんだ?」


いつもイーナがかけていた黒縁の眼鏡が、今はどこにも見えない。


なんかいつもと違うし、眼鏡が無いだけで幾分か幼く見える。


「壊れてしまいました。【魔力】を一度に大量に視て、限界だったのでしょうね。もうかける意味もありません。」


壊れたって…


「やっぱり、あの後【エルフ】と…」


「別に気にしていませんよ。それほど手間でもありませんでした。それに、直す当てもありますから。」


眼鏡が無くなったせいか、いつも以上に眠そうな目でそう言った。


「大きな月に、たくさんの星々、澄んだ空。それと、広大な森、汚染のない海。本当に、ここに来てよかったです。」


空を見上げながら、イーナはそう言ったが…


「なあ、空なんてどこ見ても同じだろ?星も同じだ。森も海も、お前の住んでた場所と変わらねえだろ?」


「…」


イーナは喋らない。


なにか考えているのか、どこか遠い目をしている。


「それより、さ。俺、なんで生きてんだよ…」


「そうですね…脊髄損傷に各種臓器の破裂、出血多量によるショック症状、それに解放骨折と複雑骨折。」


イーナが何でもないような口調でそう言った。


以前の俺だったら、その言葉の意味も分からなかっただろう。


しかし、この数か月のイーナとの旅で、色々と学んだ今なら分かる。


「それと肺と心臓と胃の一部も傷付いていたでしょうね。恐らく、あの【魔力】の槍が体内で炸裂したんでしょう。一瞬でも意識があったのが奇跡ですね。」


一瞬でも意識があったのが奇跡って…


いつもルビアとかメリアに殴られてたせいか…?


すげぇ痛かったし、血もすっげぇ流れてたから、重症だったのは分かったけどさ。


「【魔法陣】を使っていなければ、確実に死んでいました。しかし、その件を追及するつもりはありません。全てセルナの責任です。」


「…ああ、悪かったな。」


「謝る必要はありませんよ。それと、セルナは私が【エルフ】を殺すと思いましたか?」


「…そりゃな、問答無用で殺すのかと思ったよ。」


メリアの時みたいに一切の情をかけずに、淡々と圧倒的な力で。


「私に子どもを殺す趣味はありませんよ。明確に敵対すればその限りではありませんがね。」


「ふぅん…」


イーナと話しながら歩いている内に、いつの間にか広場に来ていたらしい。


「さ、座りましょう。丁度ベンチもありますし、少しだけ疲れました。」


何人かが座れそうな長椅子にイーナが腰かけ、俺も同じように腰かけた。


「それで、セルナはあの【エルフ】を憎んでいますか?」


「ん…まあ、な…」


殺されそうになったんだ、憎んでいないわけがない。


理由も分からず、ただ突然に腹を貫かれたんだ。


「そうですか。それにしては、寝ていた【エルフ】に手を出した様子もありませんね。それ相応の報いを与えてもいいはずなのに。」


「まあ、そうだけどさ…」


隣で寝ていることには驚いたが、確かにそこまでは憎んでいない。


「でもさ、俺ってそうなんだよ。他人を憎めないってかどうにもさ、憎むってことが分かんねえんだよ。」


なんというか、寝て起きれば気にしなくなるってか…


そんなに気にしない性質なんだよな。


「やはり、セルナは優しいと言うより…まあ、いいです。」


感じないというかは気にしないって言った方が正しいか。


まあ、説明するのも面倒だし、別にいいか


「そもそも、憎しみとは少なからず特別な感情を抱いている証です。」


唐突に、イーナが語り始めた。


「イーナ、なに言ってんだ?」


俺の言葉など気にしないように、イーナは言葉を続ける。


「それは憧憬や恋情、期待や親愛など様々です。例外もありますが、それはいずれも純粋な感情です。」


そのイーナの言葉は誰かへの戒めの様だった。


「憎しみとは、それが反転した感情です。それが大きいほど憎しみがも大きくなりますし、それが純粋であるほど、濃く黒く染まります。」


「…それで、結局なにが言いてえんだよ?」


「興味がないのなら、その憎しみすらも湧きません。それだけですよ。」


つまり、だ…


「俺が【エルフ】をなんとも思ってねえってことか?」


俺が問いかけても、イーナは喋らない。


ただ星空を見上げているだけだ。


「本当に星が綺麗です。本当に…この世界に来てよかった。」


イーナは呟くようにそう言った。


しかし、少し引っかかった場所があった。


「なあ、前から思ってたんだけどさ。お前ってよくそんなこと言うじゃん。」


「…とは言われても。私にはなんのことだか分かりませんよ。具体的に言ってください。」


「ほら、よく『この世界』とか言ってるじゃん。なんかその言い草だとさ、なんとなく違う世界を知ってるような…」


まあ、そんなことがあるわけないけ―――


「…そうですね、いい機会です。セルナには話しましょうか。」


「…へ?」


イーナは、俺の思っていたのとは違う反応を返した。


いつものどこを見ているか分からない目ではなく、こちらを見据えながら感情の籠った声で。


「私の生まれた場所のこと…いえ、私の生まれた世界のことを…」




閑話休題




信じられない話だった。


イーナが言った、その【地球】という世界では【魔法】が存在せず、代わりに科学とやらが発達している。


その科学のおかげで、確かに生活は豊かになった。


しかし、科学のせいで海は汚染され、森は開発され、空は淀み、空気が侵されている。


野生生物は次々に絶滅して行き、永遠に消え去ってしまう。


信じたくなかった。


その世界では争いが続けられ、互いに争い、戦い、死んでいく。


国や名誉のためではなく、眠っている資源のために次々と…


そして国一つを滅ぼし、存在する生命を一瞬で消し去って、尚余りある兵器。


とても信じられなかった。


それがすべて科学の所業であり、しかしそれでもなお科学に頼ることを止められない。


それが【地球】の人間であり、イーナもそれと同じ人間なのだと。


「セルナに教えた薬も似たような分野に属しています。科学がなければ人間は生活できません。どうです、幻滅しましたか?私をバカな人間だと…」


どこか諦めが籠ったような言葉で、話は締められた。


「…」


イーナの世界の話は、確かに驚きの連続だった。


この世界とは全然違う、自然など殆ど存在しない、ある意味不自然な世界だ。


そこに生きたのだから、イーナもまたバカな人間なのだと、そう言っている。


「どうかしましたか?セルナ。やはり、呆れてなにも言えませんか?」


しかし、だ。


それはイーナには関係ない。


そこまで発達したのは、必要とされたからだ。


必要とされたから必然的に発達し、その結果自然も破壊された。


でも、それもある意味自然だし、成り行きだ。


イーナがその環境で生まれたのなら、それがイーナにとっての自然だ。


「確かにバカだと思う。ああ、大バカだよ。間違いない…で、それがどうかしたのか?」


「…はい?」


「なんだ、そんな間の抜けた声なんか出して。言っただろ?お前は大バカだ。」


イーナは大バカだ。


そんなことをわざわざ言って、わざわざ俺に幻滅されようとでもしたのか?


「そんな【地球】の話なんてさ、どうでもいいじゃん。大事なのは今だ。ここで生きてるイーナだ。イーナ以外の奴なんて知らないし、知ったこっちゃない。まあ…お前にも家族が居たんだろうし、忘れろってのも無理があるけどさ。」


「…確かに【地球】にも居ましたね、母と父が。育てて頂いた恩も返せず、こちらに来てしまいましたが…」


「それで、なんでこの世界に来たんだ?なんにも言ってなかったけど、なんか理由でもあったのか?」


イーナの住んでいた世界については聞いたが、なぜ来たのか、どうやって来たのかは何も言っていない。


「いえ、特に理由はありませんよ。ただ【地球】で殺されて、偶然こちらに来ただけですよ。」


殺された…?


「殺されたと言っても特に恨んではいませんよ。納得もしましたし、それに【地球】に居た痕跡も消してもらいましたから。誰も覚えていないはずです。」


でも、そんなのって…


「悲しすぎるだろ。お前はそれで悲しくねえのか?」


「いえ、特には。妹も生まれる予定でしたし、私も家を出ていたようなものでした。もしも覚えていても、悲しまれませんよ。」


「でも、そんなの…」


「…後悔と言うか心残りはありますね。たった一人、もう一度だけ会いたい人がいました。」


「…」


そう言ったイーナの顔はどうしようもなく切なそうで、どうしようもなく寂しそうだった。


「やっぱり、セルナは本当に絶妙な位置にいますね。【家族】のようで、友人のようで、依存せず。しかし、だからこそ私と対等に話し合える。」


そりゃそうだよな。


リリウムとルビアはイーナにベッタリだし、メリアはなんとなく余所余所しいし。


俺は…礼儀なんてよく知らねえしな。


「まあ、元々好きだったからでしょうね。訳の分からない思考をする人間よりも、動物の方がよほど。」


それきり、イーナは黙りこくってしまった。


夜風が木を靡かせ、月には薄らと雲がかかっている。


薄暗く、すぐ隣に座っているイーナの顔すらも見えない。


ただ、深夜の静寂が耳に染み入ってくる。


「でも、本当に…」


ポツリと、イーナが喋った。


小さいながらも、今までに聞いたことのない心の籠った声で、ハッキリと。


「この世界に来て、リリウムに会えて、ルビアに会えて、セルナに会えて、本当に…」


月の光が徐々にイーナの顔を照らし、顔が見えた。


そこには…


「嬉しかったですよ。セルナ。」


いつもの無表情でもなく、いつもの感情の無い声でもなく、しっかりと。


本当の笑みを浮かべて、言葉に心が籠っていて。


「お、お前、今…」


再び月が陰り、イーナの顔が見えなくなった。


「さて、そろそろ宿に戻りましょうか。私も、そろそろ限界ですし。」


「そんなに眠かったのか?負ぶってやるから寝ていいぞ。」


イーナの体格なら簡単だ。


こんな、子どもみたいに小さくても、俺よりも年上ってんだから驚きだ。


「…そうですね。では頼みましょうか。お願いします。」


「お?てっきり嫌がると思ったけど…まあいいや。ほら、しっかり掴まってろよ。」


俺がしゃがむとイーナがゆっくりと背中に乗ってきた。


イーナは軽く、重さはあまり感じられなかった。


「それでは…あとはよろしく…お願いします…」


それきりイーナは喋らなくなった。


イーナの頭が寄り掛かり、長い髪の毛が首筋を撫でてむず痒い。


「寝ちまった…まあいいか。」


暗い夜道をゆっくりと、イーナを起こさないように。


イーナが言った、綺麗な星空を見ながらゆっくりと。


涼しい夜道を歩きながら、イーナの生まれた世界…【地球】の話を思い出す。


生活向上の為に森や海を汚したりして、人間同士が殺し合って…


「イーナの生まれた世界か…俺は勘弁だな。」


確かに、科学とやらには興味は惹かれるが、俺にはムリだ。


やっぱり、この世界の方が俺の性に合ってるしな。


「それに、イーナが会いたがってた奴か…」


無愛想で無興味で無表情なイーナが、あんな寂しそうな顔をして会いたいっていう奴だ。


一体、どんな変人なんだか。




閑話休題




「おいイーナ。着いたぞ。」


宿に到着し、ルビア達の眠っている部屋の前までついた。


このまま入ってルビアにでも見つかったらえらい目に合うから、イーナを起こして一人で入ってもらう。


「イーナ、起きてくれよ。このままじゃルビアに殴られちまう。」


首を捻りイーナの顔を見ると、どうにも様子がおかしい。


「…っ…ぁ…」


「…イーナ?」


小刻みに浅く呼吸をし、顔が真っ赤に染まっている。


額に手を当てると…


「おま…!熱あんじゃねーかよ!」


さっきまであんなに元気だったのに、なぜこんな急に。


急いで扉を開け部屋に入り、灯りを点ける。


ベッドにはルビアとリリウムと名も知らぬ少女が、一つのベッドで身を寄り添って寝ていた。


空いていたベッドにイーナを横たえ、袋から薬を出そうとすると―――


「いいんですよ…セルナ…」


イーナの弱々しい声が聞こえた。


ゆっくりと手を動かし、俺の手を掴んだ。


「どうしてだよ…!お前、この前だって…!」


【アプライド】でもこうやって倒れて、薬も効かなくて…


「薬は効きません…無駄ですよ…」


体を動かすのも億劫なのか、イーナの手は俺の手から離れ、力なく顔を覆い隠した。


「罰みたいなもの…ですから…」


「罰ってなんだよ!?とにかく、熱冷ましを―――!」


「いつものこと…です…【地球】でも…必ず…死にはしません…寝込むだけ…」


イーナの目は虚ろで、その視線の先にはリリウム達が居た。


再び手をこちらに伸ばし、縋るように言った。


「リリウム達を…お願い…しま…」


伸ばした手から力が抜け、ベッドからダラリと落ち、気絶するようにイーナは眠り込んでしまった。


「なんだよ、罰って…!」


苦しそうに眠っているイーナを見ても、どうにも出来ない自分に腹が立った。

さて、どうだったでしょうか?


主人公が明かしたのは、あくまでも【地球】から【ケミスト】に渡ったということと【地球】という世界の歴史の一部です。


神様の介入やら、持っている武器に関してはなにも喋ってはいません。


そして、主人公が会いたかった人物とは…?


感想、意見、その他諸々、お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ