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私が行く・異世界冒険譚  作者: ちょめ介
蒔かれた種はどんな木に育つのか
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第六十四話・怖いと物陰に隠れてしまいます

はい、第六十四話投稿いたしました。


そういえば、あと一か月程度で連載開始から一年になるんですね…


月日が流れるのは早いものです。


そんなこんなで、第六十四話始まり始まり…

「なあ、この首輪って外せねえか?」


【エルフ】を連れ立って宿に戻ってすぐに、イーナに聞いた。


外は薄暗く、月も昇り始めるであろう時間だ。


「首輪ですか?」


【エルフ】の首に嵌められている首輪のせいで、言葉も話すことができない。


名前も分からないから、どうにも声をかけづらい。


「ああ、なんとか外せねえか?ほらさ、こう、ズバーッと。」


いつもイーナが使ってる、あの【魔具】でなんとか。


「ふぅん…」


俺がそう言うと、イーナが気怠そうな目で【エルフ】を見つめた。


なにを考えているのかよく分からない、いつも通りの目だ。


「別に、構いませんよ。動かないでくださいね。」


そう言ったイーナの右手には、いつの間にか【魔具】が現れており、そこから短い薄青色の光が伸びている。


それを【エルフ】の首に当てると、ほんの少しだけ縦に動かした。


「これで首輪の効果は消滅しました。あとはナイフででも切ってください。」


「お、ありがとな、イーナ。」


なにも変わったところは見えなかったが、とにかく大丈夫らしい。


「もう大丈夫だぞ。喋れるか?」


「…」


【エルフ】に話しかけてみるが、イーナをジッと見つめたまま視線を外そうとしない。


「それでは、少し出かけてきます。夜までには戻りますから、自由にしていてください。」


「ん、分かった。それで、あの子どもが起きたらどうする?」


ベッドで頭に動物の耳がついた女の子が寝ており、ルビアがゆっくりと頭を撫でている。


イーナがあのオークションで買った子どもだ。


「そうですね…起きたら話してみるのもいいでしょうね。同じ【亜人】ですし、話も弾むでしょう。」


イーナがそう言って扉に手をかけるが…


「お姉ちゃん…行っちゃうの…?」


リリウムがイーナの服の裾を掴み、不安そうな目でイーナを見つめている。


「大丈夫、すぐに帰ってきますから。」


イーナがリリウムを抱きしめて、もう数分。


長い長い抱擁も終わり、イーナは宿を出て行った。


…結局、イーナになんにも言われなかったな。


「…」


【エルフ】に服の裾を引かれ、そちらを見ると怯えたような目でこちらを見上げていた。


「お兄ちゃん…その子…は…?」


リリウムが声をかけると、なぜか【エルフ】が俺の後ろに隠れ、その目をリリウムに向けた。


「おい、どうした?そんな怖がって。」


どうにも、脚にしがみ付いて離れようとしない。


「どうした…の…?」


「…」


リリウムが近づくが【エルフ】が俺を盾にするように、顔を合わせようとしない。


「悪いなリリウム。向こうで酷い目にあったらしくてさ。喋ってくんねえんだよ。」


リリウムと目を合わせようともせずに、俺の袖を引きながら扉の方を指さしている。


どうやら、外に出たいようだ。


「それじゃ、ちょっと外出てくるよ。」


「セルナ、あたしも行くわ。」


「ん、そうだな…」


【エルフ】に目を向けるが、相変わらず怯えたような目線はメリアに向いている。


「やっぱ二人で行くよ。すぐに戻るからさ。」


「…ええ、分かったわ。本当に、すぐに戻ってきてね。」


そして【エルフ】に手を引かれ、宿を出た。


空を見上げると、月が見えた。


少し欠けた月が、印象的だった。




閑話休題




「それで、どこに行くつもりなんだ?」


「…」


【エルフ】はただ黙って、俺の手を引いている。


いつの間にか、人通りのない寂れた場所に来ている。


まあいいか、どうせ暇だったしな。


「それでさ、なんでリリウムをあんな目で見てたんだ?あいつ、見ての通りの子どもだぞ?」


「…」


なにを聞いても【エルフ】は喋ろうとしない。


「はぁ…気が向いたら話してくれよ?名前も分かんねえままじゃ、色々と―――」


トン、と背中から衝撃が走った。


まるで誰かに叩かれたかのように、本当に軽く、軽く。


ジワジワと、服が濡れてくる。


目を落とすと、腹から何かが飛び出しており、真っ赤な何かが、そこから溢れてくる。


「なん、だ、これ…」


貫いたのは細い細い、赤くこびり付いた、虹色に輝く棘のような―――


「ぎッ―――」


気づいた瞬間、今までに感じたことのない、激痛が走った。


腹の中でなにかが暴れまわっているような、言葉では言い表せない、激痛が…


「お、ぶッ!―――あうぁ…」


次の瞬間、景色があらゆる方向に吹き飛んだ。


壁に激突し、体中から激痛が感じられる。


腕や脚からは白いモノが飛び出し、視界は赤く染まっている。


「…」


【エルフ】はなにも喋らない。


ただ真っ直ぐ、俺を見つめてくるだけだ。


「う…あ、がぁ…」


急に視界が薄暗くなった。


僅かに顔を上げると、視界の端に虹色の球体が見える。


【魔力】の塊であろうそれは、徐々に大きさを増して行く。


「あ、うぅ…」


それは巨大さのせいか、とてもゆっくりと降りてきた。


周囲の建物をも破壊しつつ、俺をめがけて一直線に…


体は、ピクリとも動かせない。


それどころか、体には激痛以外の感覚がない。


そして【魔力】の塊は、もはや頭上に迫っている。


「え…?あ、あ…」


なぜか、目の前にはメリアの顔が見えた。


続けるように、ルビアとリリウムとイーナの顔が。


そして、最後には…


「かあ、さ…」


母さんの、あの、優しい笑顔が―――


「まったく、だから言ったんですよ。セルナ。」


緑色の閃光と共に、感情の籠っていない声が聞こえた。


「人を簡単に信用するな、と。」


抑揚の感じられない、いつも聞いている、普段通りの声が。


「躾のなっていない子どもは、躾けてあげませんと。大きくなってから大変です。」


イーナの声からは、なにも感じられない。


怒りも焦りも悲しみも驚きもなにも、なにもかもが感じられなかった。


不意に、イーナの手から一枚の紙が滑り落ちた。


それは風に乗ったのか、俺の背中に落ちた途端、急激に意識が遠のいていく。


「ぐ、ぅ…ころ、す…な…」


それきり、プツリと、意識が途絶えた。

はい、どうだったでしょうか?


主人公は、宿を出てどこに行っていたのか。


【エルフ】の意図とは、そして【亜人】の命やいかに…


感想、意見、その他諸々、お待ちしております。

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