第六十三話・家族はなによりも大切です
はい、第六十三話投稿いたしました。
ACVのパラメータ調整、再び。
レーザーブレードの負荷が軽くなりました。
そして漸く陽の目を見たレールキャノンとレーザーキャノン。
この調子で、機雷もせめて威力をもうちょっと上げていただけたらと…
ああ、それと番外編も更新しましたので、よろしければ目を通していただければ…
あーあ、第六十三話始まり始まり…
犬の耳を生やした【亜人】の少女を買いました。
たとえ幾らかかったとしても、後悔はしませんがね。
忠告をしてからセルナと別れ、少女を受け取りに地上まで上がってきました。
「あんたも物好きだな。こんな汚い【亜人】をあんな高値で買うなんて。ま、儲かって良かったが。」
首輪が嵌められて髪はボサボサで目には光がなく、どこか生きている心地のない、人形のような雰囲気を纏っています。
「どうも、お久しぶりです。お元気…ではないですね。」
「…」
目の前にいる少女はボロ布を着せられ、必要最小限の場所だけを隠していました。
それに、隠されているボロ布の影からは青黒く変色している肌も見えます。
「それでは、行きましょうか。こんな所にいても仕方がありません。」
少女と手を繋ぎ、汚い小屋を出ます。
後ろには数人の男と、何人もの首輪を嵌められた【人間】や【亜人】が、こちらを見つめていました。
閑話休題
「さあ、着きました。入りますよ。」
「…」
汚い小屋を出てからこの宿に着くまで、少女は一言も喋っていません。
見た目以上に、傷は深いようですね…
階段を上って部屋に入ると、リリウムがベッドに横になっていました。
ルビアはベッドに腰掛け、膝の上にはリリウムが座っています。
「あれ?イーナさん、その子は…」
「ええ、夜に言った通りです。」
「そうですか…私、リリウムちゃんと外に出てます。」
「ありがとうございます。でも、すぐに済みますからリリウムと一緒にいてください。」
新しく【家族】が増えるんですから、今までの【家族】も一緒に立ち会うべきです。
「お姉ちゃん…一緒に…寝よ…?」
「ええ、今日はみんなで寝ましょう。狭いですから、部屋も新しく借りましょうか。」
リリウムを撫でると、顔を綻ばせて私にもたれてきました。
「眠るのは夜ですよ。今は、この子を…」
私の後ろに立っていた【亜人】の少女を前に出します。
「リリウム、この子があなたを助けてくれたんですよ。」
リリウムが攫われたときに、この子の助言がなければ傷つけてしまうところでした。
「あの時は、本当にありがとうございました。ほら、リリウムも。」
「うん…ありがと…えっと…」
リリウムが首を傾げています。
「そういえば、名前を聞いていませんでしたね。名前を教えてくれますか?」
「…ぇは、ない、です。」
長い間声を出していなかったのか、声は潰れて上手く発音ができていませんでした。
「名前がないんですか。では、今はあなたと呼びます。リリウムのお礼は後にしましょう。」
少女はなにに怯えたのか、身を竦めました。
私は、それを優しく抱きしめます。
「―――ッ!ぁなし、て…!」
「もう、大丈夫です。ここには、あなたを傷つける【人間】はいません。」
ジタバタともがき暴れますが、あくまでも私は、優しく抱きしめるだけ。
「ぃやだ、やだ、やだ…!」
「一度逃げたあなたが、どうしてまた捕えられたのか。そんなことは聞きません。落ち着いて。」
優しく、驚かせないように、私と同じか少しだけ高い身長を、全身を使って抱きしめます。
「私は、あなたを奴隷だなんて思っていません。ですから、身を任せてください。」
「…ぉんとに…?」
「もちろんです。あなたは奴隷なんかじゃない。一人の【亜人】です。それに、奴隷商になにを言われたかは図れます。」
罵倒と暴力と共に自分を否定され、なにもかもをも否定されたのでしょう。
「あなたが望むのなら、私が母にも、姉にも、妹にも、娘にもなりましょう。」
「…ぇどういう、こと、です、か…?」
【家族】ならば、深い絆で繋がります。
私は、なにがあろうと絶対に見捨てません。
「あなたが望むのなら、全てを与えましょう。」
【家族】なんですから、当然です。
私が得た物は【家族】の物でもあります。
「あなたが望むのなら、なんでも殺しましょう。」
【家族】の望みは、全てよりも優先されます。
たとえ、それが私の命ですらも…
「ですから…」
これは、私の我が儘です。
あなたにとっては理不尽で、選びようもない私の願いです。
「私の【家族】になりませんか?」
しかし、これは心の底からの願いです。
【家族】になってほしい。
それだけは純然で純粋な、私の願いです。
「…ぉえがいしま、す。わた、しを【家族】に、して、くださ、い。」
「はい、もちろんです。今から私たちとあなたは【家族】です。それと、お腹の痣も…」
ポケットから【魔法陣】の描かれた紙を取り出し、少女のお腹に貼り付けます。
「今は、お休みなさい。ゆっくり寝て、今までの疲れを取ってください。」
「あ…ぅ…」
とても軽い体が、私に体重を預けました。
静かな寝息を聞こえてきます。
この【魔法陣】は【アプライド】で使った物と同じものです。
ただし、激痛の代わりに気を失うように少し手を加えてあります。
「イーナさん…」
ルビアが心配そうな声を出して、こちらを見ています。
「ルビア、新しい【家族】です。きっと、リリウムともルビアとも仲良くなれますから…」
心配なのは分かっています。
見たことのない【亜人】がいきなり【家族】になると言っても、受け入れられるハズがありません。
でも…
「この子が起きたら、一緒に服を買いに行きましょう。ルビアも、お願いしますね。」
「はい…」
気を失った少女を抱えて、ベッドに横たえます。
「お姉ちゃん…この子…」
「リリウムの妹…になりますかね?名前がないと不便なので、決めてあげませんと。」
「ん…」
リリウムが気を失っている少女の頭を撫でています。
「リリウム?どうかしましたか?」
「うん…なんだか…ポカポカする…」
少女を撫でるリリウムの顔は、とても優しく、慈愛に満ちていました。
どうやら、リリウムは大丈夫ですね。
これで安心です。
「ねぇ…あたしは無視なの…?」
「ああ、いたんですか、全然気づきませんでした。」
一言も喋っていなかったので、存在感がありませんでした。
「…まあいいわ。それで、セルナのことなんだけど…」
「セルナがどうかしましたか?」
「昨日なんだけど、セルナが新しい奴が増えるって言ってたんだけど、あんたはなにか聞いてるの?【エルフ】って言ってたんだけど。」
なるほど、この頃どこか余所余所しかったのはそのせいですか。
そういえば、あのオークションで【エルフ】が出品される噂もありましたし…
「いえ、なにも。でも干渉はしませんよ。セルナにも考えがあるんでしょう。」
「そう…ならいいわ。悪かったわね、邪魔して。」
それだけ言って【緑竜】はルビアとなにやら話し始めました。
どちらとも竜ですし、話も合うのでしょうね。
それにしても【エルフ】ですか。
まさか、この前聞いてきた【魔眼】も、その【エルフ】が…
はい、どうだったでしょうか?
【亜人】の少女が【家族】になりました。
逃げた少女がなぜあの場所にいたのか、気が向いたら書くかもしれません。
そして、主人公のスペックは無駄に高いです。
【魔方陣】を改編し、及ぼす副作用をも変えています。
通常、このような改編をすると主作用にも影響を与えてしまい、歪められた効果になってしまいます。
恐らく【慣れた】から、こういった事もできるのでしょう。
感想、意見、その他諸々、お待ちしております。