第六十一話・定義は曖昧ながらも明瞭です
はい、第六十一話投稿いたしました。
なんだかお気に入りが急に増えた…
全話を更新した辺りから急に…
しかし、私はあくまでもマイペースに執筆と更新を続けていきます。
よしと、第六十一話始まり始まり…
長い長い階段を上るのにも飽きたので【霊力浮遊】で浮かびつつ、天井を壊しながら進み、荘厳な雰囲気のある扉の前に到着しました。
【レーダー】でも、赤い点のみが部屋の中に確認できます。
中にいることは明白ですね。
扉を開けて中に入ると、広い部屋の真ん中の一段上がった場所に、シンプルながら洗練された玉座が鎮座していました。
そして、玉座に座っていたのは…
「ひでぇ奴だ。城に居た奴らを皆殺しにして。大量殺人犯だぜ?お前。」
傲慢で不遜な態度で足を組み、反吐の出そうな顔でニヤニヤしながら、あの男がこちらを見下していました。
「それがなんだと言うのです?この国を裏切ったのですから、死ねばいいんです。何人かは牢屋に入っていたようですが…」
支配に屈せず、立ち向かったのでしょう。
軽傷者も重傷者も牢屋に押し込められていました。
ああいった【人間】ばかりなら、王様も拘束はされなかったでしょうね。
「一つ聞きます。ルビアはどこです?」
「あの女か、さあな?お前には教え―――」
グレネードで玉座ごと吹き飛ばし、男は爆炎に飲み込まれました。
そして煙が晴れると、上半身が吹き飛び、うつ伏せに男が倒れていました。
しかし…
「なにをしている。立ち上がれ【吸血鬼】」
例え【人間】の風体をしていようが、この眼鏡はは欺けない。
その身体に内包する【魔力】は、到底【人間】一人分のものではありません。
圧倒的な量の【魔力】がマーブル模様の様に、混ざらずに反発し合っています。
血液と共に【魔力】を吸い取り、自分の【魔力】とする。
生きているから【魔力】がある、この世界の生き物とは違う。
【魔力】があるから生きている、生物とは言えないなにか…
吹き飛んだ上半身が靄のようなもので包まれ、中からグチュグチュと音が聞こえます。
靄が晴れると、上半身を取り戻した男が現れました。
「くかか、バレてんのか。バレたところで、なにも変わらんがな。」
そう言って、眼前に【魔法陣】を展開させると、何人もの【人間】が転移してきました。
誰もが女性で彼もが美形で、その中にはルビアの姿もあります。
「確かに、俺は【吸血鬼】だ。それに…」
男が女性の首元に牙を立てると、女性の【魔力】が男に移っていくのが視えます。
血を吸って【魔力】を補充しているのでしょう。
「ハハハハッ!いい気分だ!ハハハハハハッ!」
口を赤く染めながら高笑いをし、女性を投げ捨てました。
「ハハハッ!さあどうする!俺はふじゅ―――」
無駄口を叩く口をライフルで撃ち抜き、同時に両膝も撃ち抜きます。
男が膝をつくと同時に【魔法陣】が展開し、高速度で黒い槍が姿を見せました。
同時に二本射出された槍は高速で軌跡を残しつつ迫ってきます。
【霊力急進】を発動し真横に避けると槍が石の床に刺さり、それと同時に強烈な閃光を発しました。
目が眩みつつも【レーダー】を確認すると、赤い点が接近してきました。
ライフルをしまってショットガンを出し、それに向けて銃撃をします。
「おぼぉ!」
目が見えるようになると、腹に風穴を空けた男が倒れていました。
「確かに【吸血鬼】は不死身だ。【魔力】が続く限り、生き続ける。」
生き物は、いつか死ぬ。
これは絶対不変の法則であり、逃げることの出来ない義務だ。
生き物は、死ぬために生きていると言ってもいい。
それがどんな形であれ、死ぬとはなにかをのこすことだ。
森で死ねば土となって残り、国で死ねば記憶となって遺る。
しかし、お前はなんだ。
【吸血鬼】はなんだ。
死が無くなったお前はなんだ。
法則に逆らい、義務を放棄したお前はなんだ。
ただ命を奪い、ただ死を拡散させているお前はなんだ。
死が無いお前たちは、生きてなんていない。
ただそこにいるだけ、なんの価値もない。
【吸血鬼】は、なにものこせない。
月の光を模した、蒼い刀身のレーザーブレードを出し、男に近づきます。
腹は靄に包まれていますが、未だ立ち上がろうとはしません。
「くかか、無駄だ!俺は不死身だ!【人間】の【魔力】を吸った俺は!【吸血鬼】になった俺は!」
ならば、その【魔力】を無くせばいい。
何人、何十人、何百人の【魔力】を吸おうが、不死身の【吸血鬼】になろうが。
「なにも残さずに、なにも遺さずに…」
「なにをブツブツ言ってやがる!お前がなにをしようが無駄なんだよ!」
その身体が【魔力】で構成されているのならば。
【魔力】が【魂】と同義ならば…
「消えろ。」
ただ、消えるだけ。
蒼い刀身を、男の腹に突き立てます。
「何をしてやがる!無駄だって言って―――あ?」
その表情は驚愕か、それとも無知故か。
「がああぁぁあああ!何しやがったああぁぁ!」
もがき、暴れ、蒼い刀身を掴もうとするが、無駄な足掻きだ。
更に、男が身体の下に【魔法陣】を展開しますが…
「は…な…」
「この部屋は隔離した。ここからは逃がさない。」
展開した【魔法陣】が輝きますが、ただそれだけ。
何も起こらず、男は間抜けな顔をしています。
以前使った【魔法陣】を、この部屋に入る前に貼り付けておきました。
「俺が…不死身の【吸血鬼】の俺が…俺が…死ぬ…?」
手が、足が、崩壊し、光の粒子となり、消えていく。
「死ぬ?何を言っている。お前はなにものこさない。ただ消えるだけだ。」
「あ…だ…」
崩壊は頭にもおよび、数分もかからずに消えました。
なにものこさずに消え去りました。
閑話休題
月が夜空に高く昇っており、満月まではあと数日でしょうね。
「ん…あれ…?イーナさん?」
「起きましたか?もう少し時間がかかりますから、寝ていた方がいいですよ。」
【アプライド】を後にして一時間ほど。
【霊力突進】を起動して【アンヴィーラ】への帰路についていると、横抱きにしているルビアが目を覚ましました。
「ところで…ここはどこです?ベッドで寝てて…ひゃん!」
ルビアは寝ていました。
あの爆音も轟音も意に関せず、ただ寝ていただけでした。
傷一つなく、綺麗な体のまま戻ってくれて、安心しました。
「あああ、あの、イーナさん。お、お尻に手が…」
「あまり暴れないでくださいね。落としてしまったら大変ですから。」
「は、はい…」
本当に、よかった…
「ルビア、ずっと一緒ですよ。」
「は、はい!もちろんです!」
私が死ぬまで、ずっと、ずっと…
「さあ、リリウムも待っています。急ぎましょう。」
【霊力急進】の出力は全開に、戻ったら忙しくなりそうです。
そういえば…
「新しい【家族】が増えると思います。」
「【家族】…ですか?」
「ええ、優しい子だと思います。きっと仲良くなれますよ。」
「はい…でも…」
「少しずつ話していけば、少しずつでも仲良くなれます。ルビアなら、きっと大丈夫です。」
「はい…」
新しい【家族】が増えるときは、誰でも不安になります。
でも、リリウムとも仲良くなってくれればいいですね。
はい、どうだったでしょうか?
随分と前に登場した【吸血鬼】とやらが、今になって登場してきました。
忘れてたって人は、最初から読み返すこと。
そして、前回明確になった様な気がした【魔力】の定義。
【人間】は【魂】>【魔力】の関係となり【魂】が上位になっています。
しかし【吸血鬼】は【魂】=【魔力】となっている上に【魔力】で身体を直すものだから【魂】=【魔力】=【身体】となっています。
だから、主人公の攻撃が致命的な弱点となっているんですね。
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