第五十四話・興味が無いモノには冷たいです
はい、第五十四話投稿いたしました。
こんなのんびりとしたペースで、いつ完結するんでしょうかね?
自分の中では、まだ半分程度かそれ以下と言う…
やっぱり、視点は主人公一本に絞ったほうがいいんですかね?
さぁさぁ、第五十四話始まり始まり…
おう、セルナ・マーグナーだ。
今日は大会の決勝戦だ。
イーナの対戦相手は、確かベル・グーリって奴だったっけ。
イーナと同じく、予戦から勝ち上がってきた女だ。
こいつに勝てば優勝なんだが…
「なあイーナ。前から思ってたんだけどさ…」
「なんですか?リリウムは渡しませんよ?」
試合まであと数時間だってのに、こいつはリリウムを膝に乗せてのんびりしてやがる。
まあ、これはこれで絵になるってか…
「いや、リリウムはそこから退かねえだろうし遠慮しとく。それでさ、お前と会った時から思ってたんだけどさ…」
リリウムが一番懐いてるのがイーナだし、背丈もよく似てるしな。
一見すると姉妹見てえだ。
それにルビアの事はお母さんって呼んで慕ってるし。
メリアの事はおばさんって呼んでるけど、あいつも不満はないみてえだしな。
時々俺の薬作りの手伝いをしてくれるし、お兄ちゃんって呼んでくれるのは正直嬉しいし…
まあ、俺は女だけど。
それよりも、だ。
「お前さ【魔法】は使わねぇのか?」
イーナが【魔法】を使った所を一度も見たことがない。
ルビアに杖を買ったんだから、自分のも買えばよかったのに。
「…以前にも言ったでしょう?私は一切合切の【魔法】は使えないと。」
「でもさ【魔力】が少なくっても、少し勉強をすれば火種を起こしたり水を出すくらいはできるんだぞ?それでもか?」
母さんも攻撃に使うような【魔法】は使えなかったけど、料理を作る時とかは【魔法】を使ってたからな。
そういや、母さんってなんであの国に独りでいたんだろな?
家族に捨てられたって言ってたけど、聞いてもいつもはぐらかされてたからな。
「そうなんですか?でも、たとえそうだとしても、私には【魔法】を使うことはできません。一つ聞きますが、セルナは何故【魔法】が使えるのか考えたことがありますか?」
【魔法】が何故使えるのか…?
「いや、勉強して少し練習すりゃ使えたし…ただ使えたんだなぁって…」
本を読んで呪文を覚えて、杖を持って呪文を唱えりゃ【魔法】が使えたし…
母さんに魔法学校とかも勧められたけど、そんな無駄金使って【人間】の多い学校で習うよりも、独学で勉強したほうが気楽だったしな。
なによりも、母さんの手伝いができたし。
「それと同じです。私に【魔法】が使えないのに理由なんてありません。ただ使えない、それだけです。」
「でもなぁ…【魔具】だって使えんのにさ…」
【魔具】が使えるってことは、多少なりとも【魔力】もあるってことだ。
イーナの持ってる【魔具】ってかなり性能いいから、消費もそれなりなハズだ。
竜の【霊力障壁】を貫いて傷を与えたり、剣みたいな【魔具】で直接【魔力】を削ったり。
イーナはそれを何回も何回も使っても疲れ一つ見せたことがない。
だから、少なくとも【魔力】だけは半端じゃないほど多いハズ、なんだが…
「私の【魔具】は誰にでも使えますよ?まあ、厳密に言えばこの世界の【魔具】とは違いますが…」
誰にでも使えるねぇ…
そんなこと言っても、イーナ以外に使ってる奴なんて…ん?
「この世界?」
この世界ってどういうことだ?
「…少し喋りすぎましたね。セルナは今日の試合を見に来ますか?」
「ん?ああ、見に行くけどさ。ルビアはどうすんだ?一人で寝かせてても心配はないだろうけど…」
ルビアは一昨日の試合からベッドで寝込んでる。
慣れない【魔法】を使ったのとイーナとの試合で、なんか精神的に疲れたとか言ってたし。
まあ、元気だったから数日もすればいつも通りになってるだろ。
「そうですね…寂しい想いをさせてしまいますから、今日も一緒のベッドで寝ましょうか。もちろん、リリウムも一緒ですよ?」
「うん…お姉ちゃん…」
リリウムはイーナに頭を撫でられると、気持ちよさそうに目を細めた。
それに、いつも無表情のイーナが少しだけ微笑んでいる。
「ふふ…では、行きましょうか。リリウムはどうします?ルビアと一緒に寝ていますか?」
「ううん…リリウムも…行く…」
リリウムも行くみたいだし、メリアにも声かけねえとな。
「そうですか。私はいっしょにいられませんので、これを…」
そう言って、イーナはリリウムの首にネックレスをかけた。
「なんだそりゃ?なんか珍しい形だな。」
パッと見ると花のようなだが、今まで見たことのない形のネックレスだ。
「ええ、私がいなくてもリリウムを護ってくれますから。」
護るねぇ…
よくよく見るとホントに小さくなんか彫られてるし。
どうせ【魔法陣】かなにかだな。
「うん…お姉ちゃん…おんぶ…」
「はいはい、落ちないようにしっかりしがみついてくださいね。」
イーナが姉で、リリウムが妹で、本当に姉妹みてぇだ。
閑話休題
ベル・グーリが地面に手をつくと、イーナの周りの地面が沼のように波立った。
イーナは足を取られないように、少しだけ地面から浮いている。
更に地面から生えたツタみたいな土が、イーナを追っかけ始めた。
それをイーナは急加速や急転回で避けたり、剣みたいな【魔具】で斬って土に戻している。
うーん…
空を飛ぶのは上級魔法の【フロート】って【風属性魔法】だけだったよな。
それに、あんなに急加速や急転回しまくってんのに【魔力】が減った様子を見せない。
…やっぱり【魔法】が使えねえってのは嘘なのか?
いや、でも杖とか持ってねえし…
杖がないのに【魔法】が使えるってことは…
「竜ねぇ…」
「なによセルナ。あたしの顔見つめて。」
ルビアは杖を使ってたけど、ホントは使わなくても【魔法】は使えるっぽいし。
実はイーナも竜とか…?
「せ、セルナ?なんで黙ってるのよ。」
それにリリウムに懐かれてるし、ルビアに慕われてるし。
竜だったら…
「なあメリア…」
「や、やっと喋ってくれた。それでなによ。」
「イーナってさ…」
「…あの【人間】がなによ。」
「いや、イーナさ。杖も使わずに空飛んでんじゃん?やっぱり竜とかなのか?ほら、メリアってさ、杖使わなくても【魔法】使えんじゃん。」
「はぁ?何言ってんの?セルナの方があの【人間】とは付き合い長いでしょ?」
「いや、そりゃそうだが…」
「それに、あたしだって擬態したまんまじゃ空なんて飛べないわよ。【魔法】は使えるけど…」
杖が無くても【魔法】が使える時点ですげぇとは思うが…
「大体ね、あの【人間】が竜だって言ってもあたしはもう驚かないわよ?ルビアにリリウムちゃんとあんなに仲いいんだから。」
毎日一緒のベッドで寝てるしな。
「ま、それもそうか。」
俺も、イーナが実は竜だったって言っても驚かねえ自信があるな。
まあ、あいつは【人間】だって言ってるけど…
『イーナ選手!ベル選手の【魔法】で土の中に閉じ込められてしまいました!イーナ選手!果たしてどうするのか!』
試合に目を移すと、ベル・グーリが土でできたドームに手をついていた。
なにしてんだ?
「で、いいの?あの【人間】あのままだと死ぬわよ?」
死ぬ?
あのイーナが?
「いやいやいや、あんな土に閉じ込めたくらいで―――」
死ぬわけがない、と言おうとすると…
「あの土の中ね。かなり高温になってるわよ?」
そう言われて見ても、特に目立った変化は感じられない。
ベル・グーリが土のドームに手をついているだけだ。
「なんも変わってねえぞ?なんかの間違いじゃ…」
「あたしは【緑竜】よ?風の異変くらいすぐに分かるわよ。昨日のルビアの【魔法】には劣るけど【人間】一人くらいすぐに死ぬんじゃないかしら?」
昨日のルビアの【魔法】って…
あのでっけえ腕とかか!?
ルビアの【魔法】と比べても分かんねえよ!
「そうだ!審判とかどうなってんだ!殺したら負けなんだろ!?」
審判くらいいるんだろ!?
あの実況してるやつとか!
「あの中がどうなってるかなんて、外から見ても分かんないわよ。あの【人間】もそれくらい分かってやってるんでしょ。どうせ。」
あのベル・グーリってイーナに恨みでもあんのかよ!
「おいメリア!風操れんだろ!なんとかできねえか!?」
風は目に見えねえから、メリアが風を操って土のドームに穴でも開ければ…
「ムリよ。この結界みたいなの破れないし。それに、あの【人間】が死のうがあたしには関係ないもの。」
クソ!
イーナは簡単にぶっ壊したのに!
「大丈夫…だよ…」
俺が慌てふためく中、リリウムの声が聞こえた。
「あのなぁ!イーナが死にそうなんだぞ!なんでそんなに落ち着いてられんだよ!」
「ううん…とっても心配…だよ…?」
「なら…!」
リリウムは、首にかかっているペンダントを握りしめた。
「でも…お姉ちゃん…約束…してくれた…から…」
その時、空気を切り裂く音が、目を眩ませる光が会場を覆った。
はい、どうだったでしょうか?
ちなみに【白竜】の首にさげられているペンダントですが、フルール・ド・リスで検索すれば、どういった形なのかが分かると思います。
それにしても、信じられるのは良いことなのか、悪いことなのか、果たして…
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