第五十一話・青い炎はとても熱いです
はい、第五十一話投稿いたしました。
本日21:00から発売直前、恐らく最後であろうACVの生放送が始まります。
21:00までに食事、お風呂、歯磨きを済ませてから見ましょう。
というより、今週からテスト期間に入るってのに勉強もせずに…
ふぅ、第五十話始まり始まり…
おう、セルナ・マーグナーだ。
大会が始まってからもう九日も経ったのか…
なんか時間が経つのが速いな。
まあ、日々が充実してるってことだな。
今日の試合は、イーナとルビアだ。
あの二人が戦うとか、悪い予感しかしないんだが…
「で、イーナ。ルビアと試合だけど、勝てんのか?」
宿を出発して、俺とイーナとで歩いている。
リリウムはルビアの背中で寝ていたし、メリアはルビアに引き摺られて行っちまった。
ルビアとの試合はどうすんだ?
「賭けたお金が無駄になってしまいますからね。負けるわけにはいきませんよ。」
イーナはそう言ったが、それでも不安だ。
「でもさ、頼めば棄権してくれんじゃねえのか?ルビアも戦いたくねえだろうし。」
ルビアはイーナに…なんというか甘いからな。
「それは、多分無理ですね。」
「なんでだ?」
「リリウムにいいところを見せたいと言っていましたから。それに、ルビアはああ見えて頑固ですし。」
「ああー…」
確かに、ルビアが臍を曲げたらイーナと一緒に寝るまで機嫌が直らねぇし。
機嫌が直らないと、とばっちりは俺とメリアに来るし。
「できる限りは頑張りますよ。負けたら負けたでそのときです。」
「おいおい…」
もしイーナが負けたら、計画が無駄になっちまう。
頼むぜ、ホントに。
閑話休題
「上級魔法【ブレイズアロー】!」
歓声でザワつく会場の中、ルビアのその声だけは不思議とよく聞こえた。
その呪文を唱え終わった瞬間、イーナを取り囲むように巨大な火の矢が数十…いや、それでは収まりきらないほどの火の矢が現れた。
『る、ルビア選手!上級魔法を!?ホントになんなんだこの人は!?』
ルビアが上級魔法を…?
いやいやいや!
ルビアって少し前に【魔法】を教わったばっかだよな!?
それなのになんで上級魔法なんて使えんだよ!
「…メリア、まさかお前も使えたりしねえよな?」
隣の席でリリウムを膝に乗せて頭を撫でているメリアに聞いた。
「なに言ってるのよ。そんなの決まってるじゃない。」
そうだよな、そんな簡単に出来るわけが―――
「あんなに簡単な【魔法】くらい出来なくてどうするのよ?」
もうやだこいつら。
「あー…頭痛い…」
「お兄ちゃん…どう…したの…?」
「いや、なんでもない。大丈夫―――」
そういや、リリウムも【白竜】だったよな…?
「…ちょっと聞いてもいいか?」
「なに…お兄ちゃん…?」
「いやな、お前も【魔法】を使えんのかなってな。」
「私…お姉ちゃんから…なにも教わって…ないよ…?」
よかった。
オアシスはここにあったのか…
「そ、そか。それなら―――」
『イーナ選手!ルビア選手の【魔法】を避ける避ける避ける!あらゆる方向から縦横無尽に襲ってくる【魔法】を避けて避けて避けまくる!』
試合に動きがあったのか、実況のアナウンスが聞こえてきた。
試合に目をやると、ステージ内を一瞬で移動しながら、襲いかかってくる【魔法】を右手に持った剣みたいな【魔具】で叩き斬っていた。
それでも避けられない【魔法】は、左手に持っている盾の様な【魔具】で防いでいる。
ただでさえ、目に追えないほどの速さで飛んでくる【魔法】を叩き斬るとか。
上級魔法ってあんな簡単に防げるものなのかよ…
「上級魔法【ブレイズクロー】!」
【魔法】が粗方撃ち終わると、ルビアは焔の爪を―――
いや、爪というよりも巨大な焔の片腕を出現させた。
赤から紅へ、白を経て、青よりも蒼く。
一対の腕のほかに、巨大な蒼い腕が地面に手をついている。
見ているだけで目が焼けてしまいそうな色だった。
白い光線が焔の腕から飛び交い、光線が触れた地面が消滅している。
イーナにも襲い掛かっているが、イーナの障壁で防がれている。
『ルビア選手!またも上級魔法を!この人の【魔力】は底無しか!?』
てかこの距離でもジリジリ熱いんだが…
観客席とステージの間は、障壁みたいな【魔法】で護られてるから、ちょっとやそっとじゃ影響はないハズなんだけどな。
『周囲の地面が溶けています!二人は大丈夫なんでしょうか!?』
【魔法】の周りの地面が溶け流れ、溢れ出している。
ドロドロと流れだし、周囲に連鎖し、その繰り返しだ。
そんな中、二人はなにか言葉を交わしている。
くそ…歓声がうるさくて聞き取れねぇ…
『今まで防戦一方だったイーナ選手!無防備にルビア選手の方へ!なにをするつもりだ!?』
イーナが【魔具】を消して、ゆっくりとルビアに向けて歩いている。
そしてルビアは、巨大な焔の腕を振り上げた。
「おい…まさか…!」
今更ながら分かった。
ルビアは、イーナを本気で…
「大丈夫…だよ…」
リリウムが、落ち着いた声で言った。
「リリウム…ホントに大丈夫なのか?」
「うん…お姉ちゃん…だから…」
はは…なんか、俺だけが焦っててバカみてえだな。
「なに驚いてるのよセルナ。あれくらいで。ルビアも全然本気じゃないわよ?」
…は?
あれで本気じゃないって…?
「だって、本気ならあの【魔法】で一斉に攻撃するハズだし、なんだかんだ言ってたけど、ルビアもあの【人間】に甘いのよね。」
いや、まあ、イーナに甘いのはわかるけどさ…
「てか、いい加減イーナのこと【人間】って言うの止めねえか?」
「…嫌よ。あたしのことを名前で呼ばないヤツを、名前なんかで呼びたくないわ。」
そういや、イーナもメリアのこと名前で呼ばねえよな…
いつも【緑竜】って呼んでるし…てか、二人が話してる所自体あんまり見たことがねえな。
「俺からもイーナに言っとくからさ。頼むぜ?本当に。」
まあ、時間が解決してくれるだろうし、大丈夫だろ。
『ルビア選手!どうやら気を失っているようです!たった数分間の試合でしたが素晴らしい試合でした!イーナ選手の勝利です!』
お、終わったか。
途中途中見逃してたけど、どっちも傷一つなかった。
イーナはルビアを背負い、こっちに飛んできた。
『イーナ選手がルビア選手を背負って観客席へ!二人は知り合いだったのか!?」
こっちに来たはいいが、ステージと観客席を隔てる障壁でこっちに進めないでいる。
いや、退場口から出ろよ。
そんなことを思っていると、イーナが杭の様な【魔具】を取り出した。
え、いや、ちょっと―――
障壁を殴りつけ、一瞬拮抗したかと思いきや、呆気なくあっさりと障壁が崩壊した。
「戻ったら、汗を流したいですね。熱くて暑くて汗がダラダラですよ。」
周りのどよめきなんて聞こえないかのように、呑気そうな声で言った。
「…あのな、イーナ。普通にこっちに回り込めなかったのか?」
「回り込むと面倒じゃないですか。それに、ルビアも気を失ってしまいました。セルナも近くにいましたからね。私では背負って歩けませんから。」
「…ま、いいや。イーナだし。もう宿に戻るのか?」
「ええ、戻りますよ…と言いたいですが、ちょっとした用事が出来ました。先に戻っていてください。」
「ああ、分かった。なるべく早く戻れよ?ルビアが起きたときにお前がいないと騒ぎそうだ。」
俺が出口へ歩こうとすると、観客も一斉に道をあけた。
ルビアがそんなに怖いのかね…?
「ちょっと待ちなさいよ!あたし達を忘れてるわよ!」
リリウムを背負ったメリアも俺の後についてきた。
「にへへー…イーナさーん…」
背負われているルビアは、どこか幸せそうな顔をしていた。
はい、どうだったでしょうか?
作中で【赤竜】が繰り出した巨大な焔の腕ですが、右腕が惡魔の様になった青年のような感じです。
でも右腕自体はそのままですよ?
てか、地面を溶かしながら白色レーザーを全方位に発射して迫ってくる腕って…
ちなみにレンガの耐火温度は1350℃程らしいです。
また、炎が白くなる温度は4000Kから、青くなる温度は12000Kからとのこと。
そして地核が5000K~8000Kらしいです。
…こりゃあ大変ですね。
感想、意見、その他諸々、お待ちしております。