第四十五話・お土産にはお茶菓子が最適です
はい、第四十五話投稿いたしました。
十二月に入り、本格的に寒くなってまいりました。
自分は暑さが大敵で、寒さが天敵なんですよ。
好きな季節は春ですよ。
いいですよね、春はポカポカして。
春眠暁を覚えず、ですね。
まあ、冬場の布団の中は大好きですけどね。
さて、第四十五話始まり始まり…
どうも、イーナこと伊那楓です。
本日から本戦が始まりました。
本戦には【No.6】から【No.40】の34人と、予戦を勝ち進んだ6人が出場します。
計40人が、優勝を目指して戦います。
トーナメント表を見ると【No.】はあまり関係ないみたいですね。
完全にランダムのようです。
予戦出場者も、全員ゴチャゴチャになっています。
それに、ルビアとも同じブロックです。
戦うとしたら準決勝ですがね。
それと、ルビアには【魔法】を使うための杖も買いました。
ルビアは杖が無くても【魔法】を使えますし、膂力も凄まじいですから必要はないと思いますが、念のためです。
杖が無くても【魔法】を使えるのはある意味【魔獣】だけですから。
【No.】に関しても、勝利したらその相手の【No.】と交換されるようです。
ルール上は交換するのかを選べますが、大概の選手はそのまま交換するようです。
それと、以前死んだはずの【No.12】ですが、この大会に出場しているようですね。
恐らく、死んでしまったら【No.】が繰り上がるのでしょうね。
そして、私の初戦の相手ですが…
『さあ!いよいよ始まります!第一回戦!紛れもない実力者!【No.9】選手!そして対するは、予戦を勝ち上がってきた!イーナ選手です!』
「【No.9】ですか…」
【No.9】と対峙している最中、スタジアムの中は歓声と熱狂的な声援に包まれています。
ほとんどは【No.9】を応援する声ですが、ほんの僅かに私への声援が聞こえます。
まあ、同情的な面が大きいのでしょうが。
「イーナさーん!頑張ってくださーい!」
ルビアも応援してくれていますね。
とりあえず、負けないように頑張りますか。
『それでは試合開始です!』
試合開始の合図と共に【No.9】が杖を構えました。
その途端【No.9】の周囲に、青色の【魔力】が集まっているのが確認できます。
これは【水属性魔法】ですかね?
なんにせよ【魔法】を使われると面倒ですね。
両手に、刀身の長さが特徴のレーザーブレードを出し【霊力急進】を発動。
【No.9】に急接近し、すれ違いざまにレーザーブレードで斬りつけます。
『【No.9】選手突然倒れてしまいました!そ、そしてイーナ選手!いつの間に移動を!?』
おや?
なんだか、会場が静まってしまいましたね。
まあ、私には関係ありませんけど。
『【No.9】選手!どうやら気を失っているようです!イーナ選手の勝利です!」
私の勝ちのようですね。
では、控室に戻りますか。
閑話休題
「――ナ!イーナ!」
控室からリリウム達のいる場所に戻る途中、私の名前を呼ばれました。
この声は…
後ろを振り向くと、可愛い顔立ちによく似合っている、金髪の少女が立っていました。
「ああ、キャリルさんですか。久しぶりですね。」
「イーナ!久しぶりじゃ!会いたかったぞ!」
そう言いながら、キャリルさんがハグしてきました。
「ええ、お久しぶりです。それよりどうしました?こんなところに独りで。」
王族や貴族は会場の上段の席に陣取っていたハズですが…
それに、護衛の騎士の姿も見えませんし。
「うむ、それなんじゃ。イーナに貰った【魔具】のおかげじゃ。」
「はい?―――ああ、そういうことですか。」
眼鏡を通して視るキャリルさんは、前に会った時よりも随分と【魔力】が増えています。
恐らく、私が渡した…この際【魔具】と呼びますか…【魔具】を使い続けたのでしょうね。
「へ?わかるのかの?」
「ええ、あれを使って【魔力】を増やしたのでしょう?大変だったんじゃないですか?」
「うむ。大変だったのじゃ。朝起きたら【魔具】を使って気絶して、目が覚めたらご飯を食べて、勉強が終わったらまた【魔具】を使って気絶して、夜寝る前に【魔具】を使いながらベッドで寝るのじゃ。」
「…バカじゃないですか?」
「う、うむ。妾もバカだったとは思っているのじゃ。しかしの、イーナが言ったのじゃぞ?」
「私がですか?」
なにか言いましたっけ?
「イーナが『あなたが騎士より強くなればいいんですよ。』と言ったのじゃ。妾は覚えておるぞ?おかげで、無理に護衛の騎士をつける必要もなくなったのじゃ。」
フフン、とキャリルさんがドヤ顔をしています。
「しかし【魔力】ばかり増えても、それに見合う【魔法】を使えなければ、宝の持ち腐れですよ?」
「う、む、そうなのじゃ。得意な属性が【水属性魔法】の回復の分野なのじゃ。攻撃的な【魔法】は、どうも苦手での…」
そういえば、以前キャリルさんが【魔法】を使った時も、攻撃的な【魔法】は随分と威力が低かった気がしますが…
「別に、いいんじゃないですか?【魔法】が使えるだけありがたいことです。それに【魔法】が苦手でも【魔具】があるじゃないですか。」
私が渡した【魔具】もありますし、それ以外にも流通している【魔具】もありますし、不自由はないハズです。
「それが、そうもいかないのじゃ。実は、今回の大会に姉上も参加しておっての…」
「ああ、以前言っていた…」
「実は、妾が【魔具】を使って気絶したところを見られてしまったのじゃ。それで没収され…」
「いいお姉さんじゃないですか。キャリルさんの心配をしてくれているんですよ。」
「挙句の果てに『私が優勝したら、キャリルちゃんと結婚するんだ!』と宣言してしまったのじゃ。父上と母上達の前で…」
顔を手で覆って、表情は見えませんね。
それにしても、狂ってますね。
まあ、私が言えた義理じゃありませんがね。
「何度も何度も交渉をして、夜は一緒のベッドで寝る、に変わったのじゃが、結局【魔具】は返してもらえなかったのじゃ。」
「交渉した、というのは【魔具】も含めてですよね?なにか言われましたか?」
なぜ【魔具】を没収したまま返さないのか、ちょっと不明瞭ですね。
「それが『キャリルちゃんは戦わなくてもいいの!私が護るの!』の一点張りで、話してくれないのじゃ…」
「ふむ…ところで、そのお姉さんの試合はいつですか?」
「姉上の試合は明日じゃ。【No.7】との試合じゃが、どうせ勝つのじゃ。」
キャリルさんがどこか諦めたように言いました。
「ということは、決勝まで進むんですね?」
「うむ。姉上は無駄に【魔法】に熟練しているからの。特に【土属性魔法】と【火属性魔法】の【合成魔法】はもう…」
体をぶるりと震わせました。
「それに、高レベルの【身体強化】も使って、もはや【No.】上位と相違ないと言われておったのじゃ。」
「まあ、その辺りはどうでもいいです。決勝に進むことが分かれば、相手になるだけです。」
火と土だったら、恐らく…
「で、話は戻りますが、どうして私に会いに来たんですか?なにか用事でもあるんですかね。」
「そ、そうじゃ。実は相談なんじゃが…」
そう言いながら、キャリルさんが懐から封書を取り出しました。
「明日、お城で【アンヴィーラ】主催のお茶会があるのじゃ。妾は最初の挨拶で顔を出すだけで、その後に時間が空くのじゃ。そこで相談がしたいのじゃ。」
「明日ですか?今ではダメなんですか?」
「い、いや、もう時間がないのじゃ。ここにも、姉上たちの目を盗んで来たのじゃ。」
渡された封書を見ると、封蝋が使われています。
なんというか、紋章が押されていますね。
「いいんですか?身分の保証できない、ただのギルド員に招待状なんて渡してしまって。」
「なにを言うか。イーナは【No.9】を瞬殺したじゃろう?それは、もうただのギルド員と言えんぞ。」
「まあ、いいですがね。何人まで入れるんですか?」
リリウムとルビアにセルナ、そして【緑竜】ですか…
「イーナと一緒なら何人でも大丈夫じゃ。それじゃ、明日を楽しみにしておるぞ。」
そう言い、笑顔のまま去って行きました。
まあ、正装なんて持っていないので、テキトーでいいですね。
閑話休題
結局、キャリルさんとは数分ほど話し込んでしまいましたね。
いえ【No.9】の復讐なんてありませんでしたよ。
ええ、絶対にありませんでしたとも。
【上級魔法】で不意打ちを受けたとか、そういうことはありませんでしたよ。
そういえば、倉庫で元【No.9】の死体が見つかったとか騒ぎになっていましたね。
世の中には、怖いこともあるものですね。
そんな恐ろしいこともありましたが、リリウムのいる場所に着きました。
「どうも、お待たせしました。」
ルビアはいませんね。
確か試合があったので控室に行ったのでしょうね。
「どうでしたか。私の試合を見て、感想はありますか?」
「お姉ちゃん…カッコいい…」
リリウムがそう言いながら抱き着いてきました。
私はそれを抱きしめ返します。
「まあ、言いたいことは山ほどあるけどな…」
セルナが呆れたように言ってきます。
「とりあえず、私の出番は二日後ですね。確か【No.8】か【No.11】でしたね。」
「ああ、それなんだが…その試合な、無くなっちまったぞ。」
「無くなった?どういうことです?」
無くなったということは、どちらも棄権をしたか、相打ちで試合が引き分けだったか。
「いやな、どっちも【魔法】を撃ち合ったけど、結局決着がつかなくて両方が気絶したんだよ。それで、棄権扱いだ。」
【魔法】の使い過ぎで【魔力】が尽きて、気絶ですか。
まあ【No.8】と【No.11】は、どちらも【No.】が近いですし、上手く【魔法】を使ったのでしょうね。
「ということは…九日目までは空いてしまいましたね。」
一週間も間が空いてしまいましたが、することもあったので、ちょうどいいですね。
「本当に、見事に空いてるよな。どうすんだ?」
「んー…ちょっと用事を済ませますよ。それに、明日はちょうどお呼ばれしましたから。セルナも来ますか?」
「おう、行く行く。メリアは…」
セルナが【緑竜】に目を向けました。
「別に、来ても構いませんよ?騒ぎさえしなければどうでもいいですから。」
「そか。メリア、どうする?」
「…あたしはいいわ。【人間】とは一緒にいたくないわ。セルナはどうなの?」
やはり【緑竜】は私が嫌いなんでしょうね。
まあ、私も大嫌いですが。
「いや、どうと言われてもな…」
「【緑竜】は来ないんですね。なら、セルナも来ない方がいいですね。宿で待っていてください。」
「ん…わかった。ルビアたちはどうすんだ?」
「どうしましょうかね?リリウムはどうしますか?」
いまだ私に抱き着いているリリウムに聞きます。
「お姉ちゃんと…行く…」
「わかりました。ルビアは試合が終わったら、直接聞きますよ。」
まあ、ルビアなら二つ返事で行くって言いそうですけどね
「で、誰に呼ばれたんだ?知り合いでもいたのか?」
「一応、知り合いですね。キャリルって名前なんですよ。会うのは久しぶりですけどね。」
「へぇ、キャリルか…キャリル…?」
セルナがなにか思いついたような顔をしました。
「ちなみに【フィジカ】の【人間】ですよ。」
「…まさか、グリニャールって言うんじゃねえよな?」
「ええ、そうですよ。よく分かりましたね?」
まあ、キャリルさんは王族なので有名なんでしょうが。
「ハハハ…ナントナクカンデナ。」
セルナが片言で喋っていますね。
ショックが大きかったんでしょうか。
「セルナ?なんで片言になってるのよ。」
「今日は疲れた…もう宿に戻るわ…」
「そうですか。では、私たちはルビアが戻ってきたら宿に戻りますよ。」
「わかった…行くぞ、メリア…」
「うん、わかったけど…大丈夫?顔色悪いわよ?」
「いや、大丈夫だ…」
そんなことを【緑竜】と話しながら、会場から出ていきました。
「お兄ちゃん…どうしたの…かな…?」
「大丈夫ですよ。それより、ルビアを応援しましょう。」
「うん…」
閑話休題
「イーナさーん!見てくれましたか?」
「ええ、見てましたよ。すごかったですね。」
特に、ルビアのパンチが相手の【魔力障壁】を粉砕した場面など、圧巻の一言でしたね。
相手は【No.6】だったんですけどね。
いえ【No.6】だったからこそ【魔力障壁】を割られるだけで済んだんですかね。
まあ、そんなことは置いておいて。
「ルビアは【No.6】になったんですね。」
「はい。でも、この【No.6】ってなんです?」
「称号みたいなものですよ。強ければ強いだけ【No.】が小さくなります。」
「ふむふむ、イーナさんも持ってるんですか?」
「ええ【No.9】です。まあ、別になんでもよかったんですけどね。」
【アンヴィーラ】に来た目的のために【No.】が必要なんですよね。
大会なんてついでのついでです。
【No.】さえ手に入れば、なんでもよかったんですよ。
【No.40】だろうが【No.6】だろうが、どれでも。
別に、有名になる必要はないんですけど、ちょっとした用事に必要なんですよ。
「さてルビア。今日の試合は終わりましたし、宿に戻りましょう。セルナも戻ってしまいましたし。」
「あれ?セルナ戻っちゃったんですか?」
「ええ、疲れたから、と言っていましたよ。」
きっと、精神的に疲れたんでしょうね。
「そうでした。明日、お茶会に誘われたんですが、ルビアも来ますか?」
「もちろん、行きますよ。」
「そうですか。それじゃ、帰りになにかお土産でも買っていきますか。」
なにがいいですかね?
そう言えば、袋の中にお茶が入っていましたね。
あれでも持っていきますか。
はい、どうだったでしょうか?
主人公がお茶会に誘われました。
お茶会には各国の王族や貴族が招待されているようです。
つまり…?
そして、どうやら王女様は【魔法】が苦手のようです。
主人公はどんな【魔法】を教えるのか。
王女様に対する不敬罪ですか?
気にしていないので、いいんでしょうね。
感想、意見、その他諸々、お待ちしております。