第三十九話・銃声その後に剣
はい、第三十九話投稿いたしました。
言い訳になってしまいますが、今回の小説は時間がなく一日で書き上げました。
もう眠いのなんのって…
至らない点があれば、この場所を持ってお詫びをいたします。
それと、今回の小説では、人によっては不快な表現があるかもしれません。
その点を留意していただけると幸いです。
てりゃー、第三十九話始まり始まり…
どうも、イーナこと伊那楓です。
ギルドでの面倒くさそうな事はセルナに任せました。
袋も渡しましたし、持っていくことは簡単でしょう。
それにしても【緑竜】討伐は簡単でしたね。
あの程度で1200万Sなんて、信じられませんね。
【No.12】も死んでいましたし、カードはセルナに渡しましたが、セルナの事ですから【No.12】にはならないでしょうね。
まあ、なったらなったで幻滅しますが…
それに、あの【緑竜】は…
「ま、関係ないですか。任せましょう。」
今は図書館に戻って、この街を出発する準備の方が先決です。
「セルナ達が帰ってきてから話しますか。」
それに、そろそろルビア達も起きているでしょう。
少し、急ぎますか。
閑話休題
「ほら、起きてください。ルビア。」
「んむー…イーナさん…?」
ふぅ…ようやく起きてくれました。
この時間、ルビア達はいつもお昼寝しているんですよね。
まあ、そのことについてとやかく言うつもりはありませんが。
「ええ、イーナですよ。目は覚めましたか?」
「ふぁ…はい…あれ、リリウムちゃんは…」
そうです。
いつもなら、リリウムも一緒に寝ているはずなんですが…
図書館に帰ってきて、ベッドに眠っているのはルビアだけ、館内を探してもどこにもいなかったのでルビアを起こしたんですが…
「どこにもいないんですよ。なにか聞いていませんか?」
「いえ、私は寝ていたので何も…」
「そうですか…」
さっき探し回ったとき、リリウムに作ってあげたカバンもありませんでした。
それで館内にいないとなると…
「外ですかね?」
「外ですか?リリウムちゃんが一人で…」
ルビアが顔を青くしていますね。
「いえ、大丈夫ですよ。探してくるので、ルビアは待っていてください。」
「わ、私も一緒に行きます!」
「リリウムが戻ってきて、誰もいなかったら寂しがるでしょう?それに…」
セルナ達も、と続けようとして言葉を止めました。
「イーナさん?それに、どうしたんです?」
「いえ、セルナが戻ってきたら、きちんと話を聞いてあげてくださいね。」
「?」
もしもルビアがいないと、リリウムが戻ってきたときに寂しがってしまいます。
かと言ってルビアがいると、セルナ達が戻ってきたときに…
「それでは、行ってきます。リリウムが戻ってきても、あまり責めないでくださいね。」
「は、はい。リリウムちゃんをお願いします。」
「ええ、もちろんです。では…」
そう言って、図書館を後にします。
さて、リリウムが行きそうな場所といえば…
「果物ですかね。」
果物と言えば市場ですね。
とりあえず、市場に向けて歩みを進めました。
閑話休題
「やはり、ここは賑わっていますね。」
一人で来るのは、最初にこの街に来て以来ですか。
いつもリリウムとルビアとセルナと、誰かと一緒に来ていましたから。
「一人も、久しぶりですか…」
私の事より、今はリリウムですね。
辺りを見渡すと、様々な露店が並んでいます。
その中で果物を売っている店は…
「すみません。ちょっと探しているんですが。」
「はいはい。何がお探し…げぇっ!あ、あんたは!」
おや?
何か怯えてしまっていますね。
「き、今日は何がお探しで?き、今日は何も値切らせねえからな!」
ああ、あの時の。
「あれは値切ったわけではありませんよ?ただ品物の良し悪しを言っただけですよ。安くてもいいと言ったのは、そちらですよ?」
「うぐっ…ま、まあ百歩譲って、あの時は、偶々、質の悪い果物が混ざってたがな。あれ以来そんなことがないように、質のいい果物を仕入れてんだよ。ま、おかげで、お客さんの反応は上々だ。」
偶々を態々強調させて言いました。
本当に偶々なんですかね?
「で、何がお探しだい?あの時みたいに、アルモかい?」
「おや、覚えているんですね。」
「当たり前だろ。アルモなんてそうそう買っていく奴なんていないし。ああ、そういえば女の子がアルモを探してたな。」
女の子がアルモを…
「もしかして、白い髪で私くらいの背の女の子でしたか?」
「確かにそうだが…ああ、あんたがあの子の姉さんかい?」
「姉さん…まあ、似たようなものですね。」
「そうか。ここにアルモは無いから、ほら、見えるだろ?青い屋根の。あそこにならあるかもしれないから教えたんだよ。」
そうですか…
「それで、妹さんを探してるのか?」
「ええ、戻っていなくて。いそうな場所を探しているんですよ。」
次は青い屋根の建物ですか。
「それにしても、随分と妹さんに慕われてるんだな。」
慕われている、ですか…
「傍からは、そう見えるんですか…」
「ん?なにか言ったか?」
おっと、声に出ていましたか。
「いえ、なにも言っていませんよ。それでは。」
「おお。今度はなんか買ってけよ?」
「ええ、リリウムも連れて買い物に来ますよ。」
さて、次は青い屋根の建物ですか。
少し距離がありますが、リリウムも心配ですし急ぎま―――
「おっと、危ないですね。」
かなりの速さで走ってきた馬車が、スレスレを掠めていきました。
「まったく、危険運転はどこにでもあるんですね。」
人でも轢いたら大変なことです。
それにしても…
「ゴーレムの馬車ですか。かなりの高級品ですね。」
あんなものを購入できるのは、貴族か王族か、はたまた…
ま、関係ないでしょう。
さて、急ぎましょうか。
閑話休題
青い屋根の建物に到着しました。
扉を開けると、澄んだ鈴の音が鳴り響きました。
建物の中には、ラガリアやカニス、ニベアにアルモが置いてあり、他にも様々な果物や野菜が置いてあります。
「やはり、いませんね。」
まあ、分かってはいましたけど。
「はい、いらっしゃい。何を探してんだ?」
そう言って声をかけたのは、まだあどけなさが残る少年でした。
「えらいですね。まだ子どもなのに店番ですか。」
「うるせ。母ちゃんに言われたんだよ。」
「まあ、その辺りはどうでもいいです。ちょっと人を探していまして。」
「人探し?そんなの知らねえよ。」
「この店に来ているはずなんですよ。白い髪で、私くらいの背なんですが…」
「ん?知り合いか?さっき出てったけど…」
出て行った…
「そうですか。どうも、ありがとうございます。」
そう言って店を出ようとすると…
「あ!ちょっと待ってくれよ!」
「どうかしましたか?あの子になにか?」
「知ってるんなら、謝っといてくれねえか?なんか怒らせちまって…」
リリウムが怒った?
「なにを言ったんですか?あの子が怒るなんて珍しいですけど。」
「あー…アルモを食べる姉ちゃんがいるって言うから、変だって言ったら、怒っちまったんだよ。」
アルモを食べる、姉ちゃん…
「まあ、言うだけ言っておきますよ。それでは。」
それだけ言って、店を後にしました。
それにしても…
「リリウムが怒った、ですか…」
それも、私がバカにされたからと言って。
「喜んでも、いいんですかね?」
果たして、私にそんな価値はあるものか…
「…考えても、仕方ありませんね。」
今は、リリウムです。
閑話休題
青い屋根の建物から歩いて五分程度のところに、広場がありました。
そこには…
「これは、リリウムの…」
リリウムに渡した筈の、カバンが落ちていました。
それに、手が付けられていないアルモも落ちています。
そして、地面には幅の広い轍がついています。
「なるほど…」
このアルモはまだ食べられますね。
ついている土を落として、齧ります。
「ふむ、やはりいいにおいですね。」
そして頭の中で繋がるのは…
「あの、馬車ですか…」
リリウムを攫った、かもしれない。
けど、その推測だけでも十分です。
「す…」
【霊力浮遊】で浮かび上がります。
周りの建物が眼下に聳え、街を囲っている壁よりも高く浮かび上がります。
「殺す…」
【霊力突進】を起動し、あの馬車を追跡します。
誰に手を出したのか、思い知れ。
閑話休題
【霊力突進】を起動し、およそ一分程度であの馬車が見えてきました。
このままでは追い越してしまいますね。
【霊力突進】を中断し、慣性で馬車の前に回り込みます。
とりあえずゴーレムを破壊します。
グレネードを取り出し、発射。
一撃で破壊できましたね。
グレネードをしまい着地すると、馬車の中からは数人の【人間】が驚いたように飛び出してきました。
「クズ共が…」
レールガンを取り出し、出てきた【人間】を撃ち抜きます。
【魔力障壁】が有ろうと無かろうと、この武器の前では関係ない。
【人間】が一人【魔法】を使ってきました。
なるほど、この威力は上級魔法【ストームアロー】ですか。
上級魔法が扱えるからには、かなりの腕前なんでしょうね。
「そんな程度で盾突くつもりですか。」
【霊力急進】で一気に接近し、射突型ブレードで腹を貫きます。
「急所は外しました。凄絶に苦しんで苦しみ抜いて、死ね。」
誰がリーダーとか首謀者とか、関係ない。
ただ目の前にいたから、殺す。
最後に残ったのは、醜く肥え太った【人間】
自分の欲の為に人を買い、金のために人を売った【人間】
「汚らしい…」
射突型ブレードをしまい、ハンドガンを出します。
馬車の進む方角には、たしか【アンヴィーラ】がありましたね。
「数日中に【アンヴィーラ】で催し事もありますし、それに合わせて奴隷を運んでいたんでしょう?」
【緑竜】討伐の出発前に、ギルドで面白いチラシを見つけました。
数日後に【アンヴィーラ】で【No.】を決める大会があるらしいです。
それに加えて、上位入賞者には特典があるとのこと。
元々行くつもりでしたし、ちょうどいいですね。
ハンドガンを額に当てると【人間】は失禁しながら頷いています。
どうやら、これがなにか予測は出来ているらしいですね。
「では、さようなら。」
辺りに乾いた音が響き渡りました。
引き金は、とても軽かったです。
閑話休題
ゴーレムが壊れ、止まっている馬車を覗き込みました。
中は狭く【人間】や【亜人】の子どもが集まっていました。
さて、リリウムは…
見渡してみると、不自然に誰もいないスペースがあります。
近づいてみると…
「…眠っているんですか?」
リリウムが眠っていました。
まあ、これで目的も終わりですね。
リリウムを背負い、馬車を出ようとすると…
「あ、あの…」
一人の【亜人】の女の子が声をかけてきました。
頭には動物の耳がついていますね。
犬…ですかね?
子ども達の中でも、ちょっと年上といった風ですね。
「そ、その…私たちを助けに来てくれたんじゃないんですか?」
助けに来た?
「いえ、私はこの子を探していただけですよ?ああ、あの男たちならもういませんから、逃げたければ逃げてもいいんじゃないんですか。」
「そうなんですか…!で、でも…この首輪が…」
首輪…?
【亜人】の女の子の首を見ると、黒い皮で出来た首輪が嵌められていました。
リリウムの首にも、同じようなものが嵌められています。
「これがある限り、この馬車から出られないんですよ…無理に出ようとすると、体が痺れて…」
眼鏡を通して視ると【魔法陣】が確認できます。
なるほど、着用者の【魔力】を使用して起動するタイプですか…
恐らく、設定された場所から出ようとすると【魔法陣】が起動して体が痺れるんでしょうね。
それに、一度嵌めると外すことができないようですね。
まあ、これが【魔法】で構成されている限り無駄ですけど。
レーザーブレードを取り出し、リリウムの首輪だけを切断します。
眼鏡を通して視ると【魔法陣】が光る粒子になって消滅しました。
これでいいですね。
さすがに素手で首輪は千切れませんので、図書館に戻ったら切りましょう。
再びリリウムを背負い、馬車を出ようとすると…
「ま、待ってください!」
【亜人】の女の子が声を荒げながら声をかけてきました。
「わ、私の首輪も外してもらえませんか!?」
「ええ、構いませんよ?あなたのおかげで、この子に痛い思いをさせずに済みました。」
レーザーブレードで【亜人】の女の子の首輪を切断します。
【魔法陣】が光る粒子となって消滅しました。
「これであなたは自由ですよ。それでは…」
「あ、あなたのお名前は!?」
「…イーナですよ。ただの、イーナです。」
閑話休題
「ん…お姉ちゃん…?」
リリウムを背負い、街へ向け歩いていると、リリウムの声がしました。
「目が覚めましたか?リリウム。」
「あれ…ここ…どこ…?」
ここは…まだ森の中ですね。
「もうすぐ街に着きますからね。眠かったら、眠っててもいいんですよ?」
「ううん…眠く…ない…」
リリウムがそう言うと首に回っている手に力が込められました。
「こら、苦しいですよ。」
でも、とても嬉しくて…
「ごめんなさい…」
「ふふ、いいですよ。落ちないように、しっかり掴まっていてくださいね。」
「うん…」
こんなにも暖かで、こんなにも優しくて、こんなにも幸せで…
自然と、歩みが遅くなりました。
はい、どうだったでしょうか?
今回の主人公はブチキレていましたね。
本当にキレていると、怖いものなんて無いんでしょうかね?
それと【白竜】を迎えに行く裏でこんなことが…
ちなみに、時間的には【亜人】がギルドでもめている間から、緊急の依頼を受ける前辺りですね。
感想、意見、その他諸々、お待ちしております。