第三十五話・お茶を飲むと心が落ち着きます
はい、第三十五話投稿いたしました。
今回の後書きにも、四度目の主要人物のイメージ画像が掲載されています。
そこん所をよろしくです。
ちなみに、登場人物の服の色は、その人物のイメージカラー的なものです。
さあーてと、第三十五話始まり始まり…
おう、セルナ・マーグナーだ。
さっきまでイーナと【緑竜】が戦っていて、辺りは圧巻の光景だな。
そんな中、目の前では短剣が振り下ろされようとしている。
くそ…間に合うか。
【身体強化】で脚力を底上げし、イーナに近づく。
「死ね。」
その言葉と共に、短剣が振り下ろされた。
間に合え…!
「…なんのつもりですか?セルナ。」
いってえ…
なんとか、間に合ったか。
短剣が【緑竜】の喉元に当たるか当たらないかの所で防ぐことができた。
「悪いな。俺は薬師志望なんだ。俺の目の前で怪我してる奴がいるんだからな。どんな奴だろうと、放っておけないんだよ。」
まあ、所詮自己満足だし、無理なことも多い。
でも、手の届く距離。目に入る範囲にいる奴だけは助けてやりたいんだよ
「ふう…まあ、いいですよ。もう興味もありません。」
そう言って短剣を袋にしまった。
さて…
倒れている【緑竜】を見る。
腹から血が流れ、破れている服から見える肌は青ざめている。
骨が折れてるか、内臓に傷があるかもな。
イーナのあの【魔具】の仕業か…
「おい、袋貸せ。」
「はいはい。」
イーナから袋を渡され、袋から取り出したのは、ナロティの葉とフィルマを混ぜ合わせたものだ。
ナロティの鎮痛作用と、フィルマの回復促進作用で、こういった傷にはよく効くはずだ。
とりあえず、外傷はこれで。
それと…
「中級魔法【ヒーリング】」
【緑竜】の傷口に青い光が集まり、傷口が少しずつ治っていく。
【水属性魔法】の【ヒーリング】で外傷共々内傷も治していく。
でも、この回復系の【魔法】はかなり【魔力】を消耗するからな。
長時間維持することなんて、それこそ【No.2】でもないと不可能だ。
まあ【No.2】なら、致命傷すらもあっという間に完治できるだろうけどな。
「よし…なんとか治ってきたか…」
薬の作用もあったのか、それとも【緑竜】だからなのか、そこまで【魔力】を消耗せずに治すことができた。
腹の痣も消え、傷跡が残っているが、開いた穴は塞がっている。
「ふう…終わりか…」
さて、これで【緑竜】が起きるのを待つだけだ。
しかし、久しぶりに【魔法】を使ったな。
使わなきゃ使わないで、特に不便でもないな。
閑話休題
「ん…んん…」
お、やっと起きたか。
「あ、あれ…あたし…」
「おう、起きたな。」
「―――ッ!」
【緑竜】が体を跳ね上げ、俺とイーナから距離を取り、恨みが籠った目でこちらを見てくる。
「まあ落ち着け。これ飲んだら落ち着くぞ。」
そう言って【緑竜】に渡したのは、テミシアの葉を乾燥させてお湯で煮だしたものだ。
これは、以前イーナが作ったものを飲ませてもらい、気に入ったから少し分けてもらった。
なんかルビアと一緒にテミシアの葉を火であぶったり、炒ったりしてたな。
イーナが自分の住んでいたところでは、こういうのを飲む習慣があるとか言ってたが、そんなの聞いたことねえし。
…まあ、美味いからいいか。
イーナも気に入ったのか、毎日のようにこれを飲んでいるしな。
「毒なんて入ってねえよ。入れる意味もねえしな。」
お茶を怪しげな視線で見ていたので、一応言っておいた。
「いや、これ何よ。なんだかいい匂いがするけど…」
「ああ、お茶ってやつだ。飲んでみりゃわかる。」
怪しげな目こちらに向けながら、お茶を飲み…
「な、何よ!これは!」
「気に入らなかったか?んじゃこっちを…」
そう言って袋から別のお茶を出そうとすると…
「この芳醇な香り!すっきりとした味わい!そして後に残らず諄くない渋味!」
「は?」
「今まで水を飲んでたあたしがバカみたいじゃない!」
ゴクゴクグビグビと喉を鳴らせながら、まだ熱いはずのお茶を飲みほした。
「うん!美味しかったわ!もう一杯!」
「いや、別にいいけどな…」
空いたカップにお茶を注ぐと、それも喉を鳴らして飲みほした。
「ふう、美味しかったわ…もう一杯!」
「もうねえよ。」
まったく、俺とイーナの分もあったのに、全部飲みほしちまった。
「仕方ないわね…って!あんたその手どうしたのよ!」
「手って…ああ、そういや忘れてたな。こんなん薬草つけときゃ治る。」
そういえば、イーナの短剣を止めた時の傷を忘れてたな。
とりあえず薬草を…
「セルナ、これを塗っておいてください。すぐに治りますから。」
イーナが懐からガラス筒を取り出し、俺に投げてきた。
中には緑色の液体が入っている。
「なんだ、これ?」
「いろんな薬草を混ぜたものです。効果は保証しますよ。」
「…ま、一応つけとくよ。」
「ええ、そうしてください。傷を放っておくと、面倒な病気にもなりますから。」
まったく、さっきこの薬を渡してくれれば、楽だっただろうに…
「で、お前がここ最近その辺りの村を荒らしてる【緑竜】だろ?」
ギルドで受け取った紙を再度確認すると、一週間ほど前から村を襲っている【緑竜】を討伐してほしいというものだ。
やっぱりこいつが…
「は?あたし知らないわよ?」
…は?
「だ、だってあたし、その【人間】に落とされて、ずっと海ん中にいたのよ。で、やっと昨日目が覚めて、騒ぎになるとまずいから【人間】に擬態して探してて…」
この女の…【緑竜】の仕業じゃないのか?
「どういうことだ?イーナ。」
「もう一匹いますね。」
「いやいや、確かに【魔獣】はやたらといるがな、竜っつったら【魔獣】に頂点だぞ?それがそうポンポンと―――」
ベキベキベキ!ガガガガガ!ドドドドドド!ズズン!
木が薙ぎ倒されるような、地面を削るような音が響き、地響きが轟いた。
「うわ…まさか、この音って…」
「多分【緑竜】の仕業ですね。その他にも、何体かの生き物がいます。」
何体かの生き物って…【探知魔法】も使えんのかよ。
こいつは、底が知れねえな。
ちなみに、俺は【魔法】は独学で学んだんでな、基本的な【属性魔法】以外は使えない。
「それでは、行きましょうか。依頼も完遂できることですし。」
そう言って、イーナは先に行ってしまった。
「ふう…で、お前はどうするんだ?もうあいつと戦う気もねえだろ?」
「…ついてくわ。あの…お茶だっけ?気に入ったし、また飲みたいしね。」
「そか、んじゃ―――」
その時、嫌な予感が体を過った。
なんとなく、この【緑竜】がついてくることに対して背筋に悪寒が走った。
「どうしたのよ。さっさと行くわよ。」
「…あ、ああ。さっさと行くか。置いて行かれちまうしな。」
…気のせい、だよな?
とりあえず、今は向こうの【緑竜】だな。
さあ、第四回目の警告です。
後書きに掲載されているイメージ画像は、あなたの中のイメージを木端微塵にしてしまう可能性があります。
その辺りをご了承のうえで先にお進みください。
名前・セルナ・マーグナー
種族・猫の【亜人】
年齢・17歳程
性別・女
身長・高校3年生程
体重・身長相応の体重
キャラクターなんとか機を使用させていただきました。
雰囲気・一見すると、男のようにも見える
その他・基本的に男物の服を着用
来歴・【オーガニー】周辺でイーナと出会い、何でも入れることができる袋を盗み、逃走。
袋を高値で貴族に売りつけた後、家に押しかけたイーナに母親の病状を明かされ、母親の最期を看取る。
その後、薬を売った店を潰しに出向くが、既に潰された後だった。
【アプライド】の一件で【魔法】の無力さを痛感し、以後回復に特化した【水属性魔法】を鍛錬しながら、薬草を中心に学んでいる。
目的は母親のような者を出さないようにする為に、薬の知識を身に着けること。
そのため、イーナの下で目下勉強中。