第三十三話・お金は天下のまわりものです
はい、第三十三話投稿いたしました。
今回の後書きにも主要人物のイメージ画像が掲載されています。
あと、これからの更新については一週間で一度になってしまうかもです。
木曜日か月曜日のどちらか固定になるかもですね。
詳しくはまた後日に活動報告で…
さあ、第三十三話始まり始まり…
こんにちは。
イーナこと伊那楓です。
先日、アムザイさんから図書館を頂いてから早くも一週間が経ちました。
この一週間は、リリウムの欲しがった果物を買ったり、ルビアの服を買ったり、セルナに薬草についてを教えたり、忙しい毎日でした。
さて、その結果ですが…
「セルナ、ちょっといいですか?」
「ん、どーした?イーナ。」
私が出した課題をこなしていたセルナが、手を止めてこちらに来ました。
「セルナ…ちょっと話があります。」
「ど、どーした?そんな深刻そうな声を出して。」
なんだかセルナが怯えていますね。
「実はですね…」
「実は…?」
セルナが顔を近づけて、言葉を反復しました。
「…お金が、ありません。」
「…は?」
「お金がありません。ちっとも、少しも、ほとんど、まったくありません。」
「いや、金が無いのはわかったから。」
そうなんですよ。
ルビアの服を買ったら、ついでだからと言って、ルビアが選んだ全員分の服を買うことになってしまいました。
それも大量にです。
まあ、今まで来ていた服も汚れてきていたので、丁度いいとも思ったんですけど。
「で、金が無いからって、それをなんで俺に言うんだよ。」
「だって、セルナもギルドに登録をしているでしょう?この頃体も動かしていませんし、運動と実益を兼ねて依頼を受けようかと。」
「いや、そんなことをしなくても作った薬を売れば…」
「今まで馴染みの無かった物が受け入れられるようになるには、何かのきっかけが必要です。どんなに効果があろうと、初めて見る薬を買ってくれるはずがありません。」
「まあ、それもそうだが…」
「今セルナが調合している薬は、確か解熱鎮痛剤でしたね。確かに、市販されている薬と比べて効果は段違いです。しかし、セルナが知っている薬とは全然違うでしょう?」
「まあ、な…」
この世界でいう薬とは、薬草やキノコを乾燥させ、それを粉末にしてから水に溶かして飲んだり、すり潰して患部に塗布するのが一般的です。
比べてセルナが作っている薬は、薬草から成分を抽出し、それを粉末にした物です。
「こんな白い薬なんて、誰も呑みたがりませんよ。こればかりは仕方ありません。」
それにしても、本当に【魔法】というものは便利ですね。
面倒な設備や工程が必要ありませんから。
まあ、私は薬を売るつもりはありませんでしたから構いませんがね。
セルナはどうするんですかね?
「そういや、ルビアたちはどうしたんだ?」
「ルビアはリリウムと一緒にお昼寝です。書置きを残していくので、心配はいりませんよ。」
「そうか、んじゃ行くか。ギルドも久しぶりだしな。それで、お前はギルドに登録してんのか?」
「ええ、もちろん登録していますよ。まあ、依頼は数回ほどしか受けていませんがね。」
「そうなのか?んじゃ、ギルドの先輩として俺がよく教えてやるよ。これでもな、専属ギルド員にスカウトされたんだぜ。」
「へぇ、それはなかなかの腕前だったんですね。では、今回の依頼はセルナが決めてくださいね。」
「いいのか?」
「ええ、もちろんです。では、そろそろ行きましょうか。リリウムとルビアが起きてしまいます。」
「ああ、そうだな。」
ギルドも久しぶりですね。
たしか【アンヴィーラ】で依頼を受けて以来でしたかね。
閑話休題
さて、図書館から十分ほどでギルドに到着しました。
【アンヴィーラ】のギルドと比べると、少し小さめですね。
「ここがこの街のギルドらしいですね。」
「…なんか【オーガニー】のギルドと比べると小せえな。」
「それはそうですよ。この街はあの国ほど大きくありませんし、そもそもあんなに大きいギルドは数えるほどしかありませんよ。」
「まあいいか。んじゃ入ろうぜ。どんな依頼があるかも見たいしな。」
そう言って、セルナがギルドの中に入っていきました。
と、思ったら出てきました。
「どうかしましたか?セルナ?」
「…ちょっと聞くが、ここって街のギルドだよな?」
「ええ、ここは【グラブス】ですよ。【アナリティカ】までは徒歩でおよそ3日【アンヴィーラ】までは徒歩でおよそ6日ほどの位置にありますね。」
「…うん、だよな。」
何をしているんでしょうか。
早く入ればいいですのに。
何か考え込んでいるセルナを置いて、私はギルドの扉を開けて中に入りました。
ギルドの中には…
「なるほど、セルナが逃げ出すわけですね。」
依頼板の前にはたくさんの人集まっていて、カウンターの前には更にたくさんの人が集まっていました。
この街にしては、やたらと人が多いですね。
「混んでますね。どうかしたんでしょうか?」
まあ、私には関係ないですが。
「ではセルナ、依頼を選んできてくださいね?」
「ええ!?俺があん中に行くのかよ!?」
「あの人混みだと、私では入れませんし、でもセルナなら大丈夫でしょう。」
「はぁ…わかったよ。選んでくるからな。」
「では、よろしくお願いしますね。」
そしてセルナは人混みに向かっていきました。
さて、何をしていましょうか。
「あれ?あなたは…」
そんな声が聞こえ、後ろを振り向くと…
「やっぱり、久しぶりね。【アンヴィーラ】で会って以来かしら。」
「あなたは…ああ、あの時にチームに誘った。」
そこにいたのは【アンヴィーラ】で私をチームに誘った女性でした。
「あなたも【緑竜】の討伐に参加するの?」
【緑竜】の討伐ですか?
「一週間前くらい前からこの街の周辺で【緑竜】が確認されてるのよ。それがこの街に近づいてきているから。それで緊急に依頼が出ているのよ。」
「緊急といっても、一週間も前から依頼があるんでしょう?もう誰かが討伐を…」
「いえ、あの依頼板の前にいるのはただの野次馬よ。まあ、私も【アナリティカ】のギルドで依頼を受けて、この街に来たんだけどね。」
「あなたが受けた、討伐する自信が?」
「ええ、それは勿論よ。これでも【No.12】で【ルシャトリエ】のリーダーなのよ?」
【ルシャトリエ】ですか?
どこかで聞いた気がしますが…
「あれ?もしかして聞いたことない?これでも有名だって自負してるんだけど…」
そうなんですかね?
「おい…依頼取ってきたぞ…」
そう言って紙を渡してきたセルナは、髪がボサボサ、服がボロボロでした。
依頼を確認すると…
「ああ、ご苦労様です。…さて、それでは行きましょうか。それにしても、セルナも強気ですね。」
「は?何言ってんだ。テキトーに取ってきたんだが…」
「内容を確認しないで取ったんですか。まあ、いいですけどね。」
セルナに紙を渡すと、セルナの顔が真っ青になりました。
「は…?【緑竜】の討伐…?」
「さあ、早く行きましょう。探すのにも時間がかかりますし、夕方までには―――」
「いやいやいや!待て待て待て!」
うるさいですね。
「どうしたんですか?」
「やっぱ無しだ!ダメだろこれは!」
「別にいいじゃはないですか。それに…」
セルナの耳に口を近づけて言いました。
「この【緑竜】は、海にいた【緑竜】かもしれません。一度会って、話してみるのもいいでしょう。」
「いや【緑竜】と話せるわけ…ああ、ルビアたちは竜だったっけな。」
「ええ、擬態ができるかもしれませんからね。まあ、できなかったらその時に考えますよ。」
「…まあいいか。」
そして、ギルドを出ようとすると。
「あなた、その【亜人】とチームを組んでるの?」
【ルシャトリエ】のリーダーの女性が声をかけてきました。
その顔には侮蔑と嘲笑が浮かんでいました。
「ああ?なんだてめぇは?」
「そんな【亜人】となんて組まないで、やっぱり私たちのチームに入らない?」
「いいえ【ルシャトリエ】なんていうチームには入りませんよ。そういうのは…苦手ですし。」
そう言った途端に、今までざわついていたギルド内が一斉に静まりました。
「お、おいイーナ。い、いま【ルシャトリエ】って言ったか?」
「ええ、知っているんですか?」
「はぁ…お前は何にも知らねえんだな。いいか【ルシャトリエ】ってチームはな―――」
「ああ、別に構いませんよ。特に興味はありませんから。」
なんだか、ギルドの静けさが耳に痛いですね。
「それはそうと、行きますよ。セルナが受けた【緑竜】の討伐もありますし。」
そう言った途端に、ギルド内に笑い声が響き渡りました。
『ハッハッハ!あんなガキと【亜人】が【緑竜】を!」
『自殺行為だな…【緑竜】を討伐するなんて…』
それ以外にも、私だけに限らずセルナに対する暴言も聞こえてきました。
「【亜人】が…【人間】といっしょにいるだけで汚らしいのよ!」
「んだとてめぇ!」
セルナがリーダーの女性に掴み掛りました。
「【亜人】は!粗暴で!乱暴で!暴力的だから嫌いなのよ!」
それを女性が【魔法】で弾き飛ばしました。
「あっちい!何しやがる!」
「なに?私はただ自分の身を守っただけよ。非難されるのは、あなたのほうよ。」
周りを見渡すと、迷惑そうな、汚いものを見るかのような視線がセルナに集まっています。
「はぁ、まったく…ほら、行きますよセルナ。」
私はセルナの手を引き、ギルドを後にします。
ギルドの出口の扉に手をかけると、リーダーの女性から声をかけられました。
「あなたも【人間】なんでしょ!?なんでそんな【亜人】と!」
何を言うかと思えば…
「いえ、私は人間です。生憎とそういうものに興味がないので…」
「あなた…いつか恨みを買うわよ。」
「ふふ…そういうものにも興味がないので…」
恨みを買われたら相手をするだけですし。
閑話休題
「どうしたんですか?さっきから黙りっぱなしですよ?」
ギルドを出てからずっとセルナが黙っています。
「…いや、やっぱ【亜人】ってのは嫌われてんだなぁって…」
「ああ、さっきのことですか。」
「やっぱり、お前は他の【人間】とは違うな。【オーガニー】でも俺と母さんを助けてくれたしな。」
「いえ…ただ【人間】が信じられないだけですよ。」
「お前も【人間】だろ?それなのに…」
「私は【亜人】にはセルナにしか出会っていません。それでも、これまでに見た【人間】よりも、純粋で、真面目で、どこまでも優しいです。」
「過大評価をしすぎだな、そりゃ…」
「いえ、私個人のセルナに対しての評価です。その辺の【人間】よりも、よほど信頼ができます。」
「ハハ…そりゃうれしいね。」
「さて、森に行きましょう。あの…なんでしたっけ?」
「いや、忘れんなよ。【ルシャトリエ】だよ。」
「ああ、そうでした。彼女のチームも【緑竜】討伐に行くらしいですよ。」
「はぁ?あのチームもかよ!?」
「そうらしいですよ。まあ【緑竜】がそう簡単に討伐されるとは思えませんが…」
「ああ…それなんだがな…【ルシャトリエ】ってチームはな【No.12】の…あの女を筆頭にな、バランスよく【魔法】を使う奴が揃ってんだよ。そんで有名になった理由なんだがな。」
セルナがなんだかためらうように言いました。
「えっとな…竜を倒してんだよ。」
「竜…ですか?」
「ああ、たしか【白竜】だったか?【ベルクマン】とか【ヘス】とか色々と組んで討伐してたな。」
【白竜】…?
「どんくらい前だったっけ?んー…確かイーナに会うちょっと前だったっけな。【アンヴィーラ】の近くで【白竜】が現れて―――」
「セルナ。」
「ん?どうし…た。」
「その話は、絶対にリリウムとルビアの前では話さないでくださいね。」
「わ、わかった。」
「さあ、それでは行きましょう。少し無駄話が過ぎました。」
「あ、ああ。あいつらに先を越されるのも癪だしな。」
そうして門に向けて歩き出しました。
しかし【白竜】を討伐した、ですか…
まさか、とは思いますが…
さて、ここで再度の注意です。
後書きに掲載されているイメージ画像は、あなたの中のイメージを粉砕してしまう可能性があります。
その辺りをご了承のうえで先にお進みください。
名前・リリウム
種族・【白竜】
年齢・人間換算で10歳程度
性別・女
身長・小学3年生程
体重・小学3年生程
キャラクターなんとか機を使用させていただきました。
雰囲気・笑顔が似合う可愛い女の子
その他・言葉が上手く喋れない
来歴・【グラブス】周辺でイーナと出会い、助けられイーナの頭の上を定位置とした。
【コーラル】の一件から【赤竜】であるルビアを母親と慕うようになった。
【オーガニー】で出会ったセルナを兄と呼んでいる。
【アプライド】の一件でイーナを治した時に擬態をしてから解除ができなくなり、以後は人間の姿で生活をしている。
目的は特になく、イーナたちと一緒にいられればいいと思っている。