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私が行く・異世界冒険譚  作者: ちょめ介
蒔かれた種はどんな木に育つのか
33/81

第三十三話・お金は天下のまわりものです

はい、第三十三話投稿いたしました。


今回の後書きにも主要人物のイメージ画像が掲載されています。


あと、これからの更新については一週間で一度になってしまうかもです。


木曜日か月曜日のどちらか固定になるかもですね。


詳しくはまた後日に活動報告で…


さあ、第三十三話始まり始まり…

こんにちは。


イーナこと伊那楓です。


先日、アムザイさんから図書館を頂いてから早くも一週間が経ちました。


この一週間は、リリウムの欲しがった果物を買ったり、ルビアの服を買ったり、セルナに薬草についてを教えたり、忙しい毎日でした。


さて、その結果ですが…


「セルナ、ちょっといいですか?」


「ん、どーした?イーナ。」


私が出した課題をこなしていたセルナが、手を止めてこちらに来ました。


「セルナ…ちょっと話があります。」


「ど、どーした?そんな深刻そうな声を出して。」


なんだかセルナが怯えていますね。


「実はですね…」


「実は…?」


セルナが顔を近づけて、言葉を反復しました。


「…お金が、ありません。」


「…は?」


「お金がありません。ちっとも、少しも、ほとんど、まったくありません。」


「いや、金が無いのはわかったから。」


そうなんですよ。


ルビアの服を買ったら、ついでだからと言って、ルビアが選んだ全員分の服を買うことになってしまいました。


それも大量にです。


まあ、今まで来ていた服も汚れてきていたので、丁度いいとも思ったんですけど。


「で、金が無いからって、それをなんで俺に言うんだよ。」


「だって、セルナもギルドに登録をしているでしょう?この頃体も動かしていませんし、運動と実益を兼ねて依頼を受けようかと。」


「いや、そんなことをしなくても作った薬を売れば…」


「今まで馴染みの無かった物が受け入れられるようになるには、何かのきっかけが必要です。どんなに効果があろうと、初めて見る薬を買ってくれるはずがありません。」


「まあ、それもそうだが…」


「今セルナが調合している薬は、確か解熱鎮痛剤でしたね。確かに、市販されている薬と比べて効果は段違いです。しかし、セルナが知っている薬とは全然違うでしょう?」


「まあ、な…」


この世界でいう薬とは、薬草やキノコを乾燥させ、それを粉末にしてから水に溶かして飲んだり、すり潰して患部に塗布するのが一般的です。


比べてセルナが作っている薬は、薬草から成分を抽出し、それを粉末にした物です。


「こんな白い薬なんて、誰も呑みたがりませんよ。こればかりは仕方ありません。」


それにしても、本当に【魔法】というものは便利ですね。


面倒な設備や工程が必要ありませんから。


まあ、私は薬を売るつもりはありませんでしたから構いませんがね。


セルナはどうするんですかね?


「そういや、ルビアたちはどうしたんだ?」


「ルビアはリリウムと一緒にお昼寝です。書置きを残していくので、心配はいりませんよ。」


「そうか、んじゃ行くか。ギルドも久しぶりだしな。それで、お前はギルドに登録してんのか?」


「ええ、もちろん登録していますよ。まあ、依頼は数回ほどしか受けていませんがね。」


「そうなのか?んじゃ、ギルドの先輩として俺がよく教えてやるよ。これでもな、専属ギルド員にスカウトされたんだぜ。」


「へぇ、それはなかなかの腕前だったんですね。では、今回の依頼はセルナが決めてくださいね。」


「いいのか?」


「ええ、もちろんです。では、そろそろ行きましょうか。リリウムとルビアが起きてしまいます。」


「ああ、そうだな。」


ギルドも久しぶりですね。


たしか【アンヴィーラ】で依頼を受けて以来でしたかね。




閑話休題




さて、図書館から十分ほどでギルドに到着しました。


【アンヴィーラ】のギルドと比べると、少し小さめですね。


「ここがこの街のギルドらしいですね。」


「…なんか【オーガニー】のギルドと比べると小せえな。」


「それはそうですよ。この街はあの国ほど大きくありませんし、そもそもあんなに大きいギルドは数えるほどしかありませんよ。」


「まあいいか。んじゃ入ろうぜ。どんな依頼があるかも見たいしな。」


そう言って、セルナがギルドの中に入っていきました。


と、思ったら出てきました。


「どうかしましたか?セルナ?」


「…ちょっと聞くが、ここって街のギルドだよな?」


「ええ、ここは【グラブス】ですよ。【アナリティカ】までは徒歩でおよそ3日【アンヴィーラ】までは徒歩でおよそ6日ほどの位置にありますね。」


「…うん、だよな。」


何をしているんでしょうか。


早く入ればいいですのに。


何か考え込んでいるセルナを置いて、私はギルドの扉を開けて中に入りました。


ギルドの中には…


「なるほど、セルナが逃げ出すわけですね。」


依頼板の前にはたくさんの人集まっていて、カウンターの前には更にたくさんの人が集まっていました。


この街にしては、やたらと人が多いですね。


「混んでますね。どうかしたんでしょうか?」


まあ、私には関係ないですが。


「ではセルナ、依頼を選んできてくださいね?」


「ええ!?俺があん中に行くのかよ!?」


「あの人混みだと、私では入れませんし、でもセルナなら大丈夫でしょう。」


「はぁ…わかったよ。選んでくるからな。」


「では、よろしくお願いしますね。」


そしてセルナは人混みに向かっていきました。


さて、何をしていましょうか。


「あれ?あなたは…」


そんな声が聞こえ、後ろを振り向くと…


「やっぱり、久しぶりね。【アンヴィーラ】で会って以来かしら。」


「あなたは…ああ、あの時にチームに誘った。」


そこにいたのは【アンヴィーラ】で私をチームに誘った女性でした。


「あなたも【緑竜】の討伐に参加するの?」


【緑竜】の討伐ですか?


「一週間前くらい前からこの街の周辺で【緑竜】が確認されてるのよ。それがこの街に近づいてきているから。それで緊急に依頼が出ているのよ。」


「緊急といっても、一週間も前から依頼があるんでしょう?もう誰かが討伐を…」


「いえ、あの依頼板の前にいるのはただの野次馬よ。まあ、私も【アナリティカ】のギルドで依頼を受けて、この街に来たんだけどね。」


「あなたが受けた、討伐する自信が?」


「ええ、それは勿論よ。これでも【No.12】で【ルシャトリエ】のリーダーなのよ?」


【ルシャトリエ】ですか?


どこかで聞いた気がしますが…


「あれ?もしかして聞いたことない?これでも有名だって自負してるんだけど…」


そうなんですかね?


「おい…依頼取ってきたぞ…」


そう言って紙を渡してきたセルナは、髪がボサボサ、服がボロボロでした。


依頼を確認すると…


「ああ、ご苦労様です。…さて、それでは行きましょうか。それにしても、セルナも強気ですね。」


「は?何言ってんだ。テキトーに取ってきたんだが…」


「内容を確認しないで取ったんですか。まあ、いいですけどね。」


セルナに紙を渡すと、セルナの顔が真っ青になりました。


「は…?【緑竜】の討伐…?」


「さあ、早く行きましょう。探すのにも時間がかかりますし、夕方までには―――」


「いやいやいや!待て待て待て!」


うるさいですね。


「どうしたんですか?」


「やっぱ無しだ!ダメだろこれは!」


「別にいいじゃはないですか。それに…」


セルナの耳に口を近づけて言いました。


「この【緑竜】は、海にいた【緑竜】かもしれません。一度会って、話してみるのもいいでしょう。」


「いや【緑竜】と話せるわけ…ああ、ルビアたちは竜だったっけな。」


「ええ、擬態ができるかもしれませんからね。まあ、できなかったらその時に考えますよ。」


「…まあいいか。」


そして、ギルドを出ようとすると。


「あなた、その【亜人】とチームを組んでるの?」


【ルシャトリエ】のリーダーの女性が声をかけてきました。


その顔には侮蔑と嘲笑が浮かんでいました。


「ああ?なんだてめぇは?」


「そんな【亜人】となんて組まないで、やっぱり私たちのチームに入らない?」


「いいえ【ルシャトリエ】なんていうチームには入りませんよ。そういうのは…苦手ですし。」


そう言った途端に、今までざわついていたギルド内が一斉に静まりました。


「お、おいイーナ。い、いま【ルシャトリエ】って言ったか?」


「ええ、知っているんですか?」


「はぁ…お前は何にも知らねえんだな。いいか【ルシャトリエ】ってチームはな―――」


「ああ、別に構いませんよ。特に興味はありませんから。」


なんだか、ギルドの静けさが耳に痛いですね。


「それはそうと、行きますよ。セルナが受けた【緑竜】の討伐もありますし。」


そう言った途端に、ギルド内に笑い声が響き渡りました。


『ハッハッハ!あんなガキと【亜人】が【緑竜】を!」


『自殺行為だな…【緑竜】を討伐するなんて…』


それ以外にも、私だけに限らずセルナに対する暴言も聞こえてきました。


「【亜人】が…【人間】といっしょにいるだけで汚らしいのよ!」


「んだとてめぇ!」


セルナがリーダーの女性に掴み掛りました。


「【亜人】は!粗暴で!乱暴で!暴力的だから嫌いなのよ!」


それを女性が【魔法】で弾き飛ばしました。


「あっちい!何しやがる!」


「なに?私はただ自分の身を守っただけよ。非難されるのは、あなたのほうよ。」


周りを見渡すと、迷惑そうな、汚いものを見るかのような視線がセルナに集まっています。


「はぁ、まったく…ほら、行きますよセルナ。」


私はセルナの手を引き、ギルドを後にします。


ギルドの出口の扉に手をかけると、リーダーの女性から声をかけられました。


「あなたも【人間】なんでしょ!?なんでそんな【亜人】と!」


何を言うかと思えば…


「いえ、私は人間です。生憎とそういうものに興味がないので…」


「あなた…いつか恨みを買うわよ。」


「ふふ…そういうものにも興味がないので…」


恨みを買われたら相手をするだけですし。




閑話休題




「どうしたんですか?さっきから黙りっぱなしですよ?」


ギルドを出てからずっとセルナが黙っています。


「…いや、やっぱ【亜人】ってのは嫌われてんだなぁって…」


「ああ、さっきのことですか。」


「やっぱり、お前は他の【人間】とは違うな。【オーガニー】でも俺と母さんを助けてくれたしな。」


「いえ…ただ【人間】が信じられないだけですよ。」


「お前も【人間】だろ?それなのに…」


「私は【亜人】にはセルナにしか出会っていません。それでも、これまでに見た【人間】よりも、純粋で、真面目で、どこまでも優しいです。」


「過大評価をしすぎだな、そりゃ…」


「いえ、私個人のセルナに対しての評価です。その辺の【人間】よりも、よほど信頼ができます。」


「ハハ…そりゃうれしいね。」


「さて、森に行きましょう。あの…なんでしたっけ?」


「いや、忘れんなよ。【ルシャトリエ】だよ。」


「ああ、そうでした。彼女のチームも【緑竜】討伐に行くらしいですよ。」


「はぁ?あのチームもかよ!?」


「そうらしいですよ。まあ【緑竜】がそう簡単に討伐されるとは思えませんが…」


「ああ…それなんだがな…【ルシャトリエ】ってチームはな【No.12】の…あの女を筆頭にな、バランスよく【魔法】を使う奴が揃ってんだよ。そんで有名になった理由なんだがな。」


セルナがなんだかためらうように言いました。


「えっとな…竜を倒してんだよ。」


「竜…ですか?」


「ああ、たしか【白竜】だったか?【ベルクマン】とか【ヘス】とか色々と組んで討伐してたな。」


【白竜】…?


「どんくらい前だったっけ?んー…確かイーナに会うちょっと前だったっけな。【アンヴィーラ】の近くで【白竜】が現れて―――」


「セルナ。」


「ん?どうし…た。」


「その話は、絶対にリリウムとルビアの前では話さないでくださいね。」


「わ、わかった。」


「さあ、それでは行きましょう。少し無駄話が過ぎました。」


「あ、ああ。あいつらに先を越されるのも癪だしな。」


そうして門に向けて歩き出しました。


しかし【白竜】を討伐した、ですか…


まさか、とは思いますが…

さて、ここで再度の注意です。


後書きに掲載されているイメージ画像は、あなたの中のイメージを粉砕してしまう可能性があります。


その辺りをご了承のうえで先にお進みください。


名前・リリウム


種族・【白竜】


年齢・人間換算で10歳程度


性別・女


身長・小学3年生程


体重・小学3年生程


挿絵(By みてみん)

キャラクターなんとか機を使用させていただきました。


雰囲気・笑顔が似合う可愛い女の子


その他・言葉が上手く喋れない


来歴・【グラブス】周辺でイーナと出会い、助けられイーナの頭の上を定位置とした。

【コーラル】の一件から【赤竜】であるルビアを母親と慕うようになった。

【オーガニー】で出会ったセルナを兄と呼んでいる。

【アプライド】の一件でイーナを治した時に擬態をしてから解除ができなくなり、以後は人間の姿で生活をしている。

目的は特になく、イーナたちと一緒にいられればいいと思っている。

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