第三十二話・地図の見方は上が北で左が西です
はい、第三十二話投稿いたしました。
前回から間が開いてしまい申し訳ありません。
それと、今回の後書きには、主要人物のイメージ画像やらが掲載されています。
あなたのイメージ像を崩壊させる可能性がありますので、ご注意ください。
まあ、一人だけですがね。
前書きを読んでいない方は…
ささっと、第三十二話始まり始まり…
イーナこと伊那楓です。
そういえば、リリウムとルビアはどこに行ったんでしょうか。
姿が見えませんが…
「それでは、ありがとうございました。」
アムザイさんが私とセルナに頭を下げます。
「そういえば、二人はどこに行くんですか?あのお爺さんのところでしょうけど、どの辺りですか?」
【エルフ】のお爺さんは、手紙に書いてあると言っていましたが…
「ああ、それなんですが…」
そう言って見せられた手紙には…
「…地図、ですか?」
「はい【アプライド】周辺の地図ですね。それで…」
そう言って指をさした場所には、赤い丸が付けられていました。
「ここですね。印も付いていますし、間違いないです。」
「ここって、森の中ですよね?村かなにかですか?」
「実は、私も行ったことはないんですよ。あの人にも妻と一緒に随分前に一度会ったきりでして。」
「そうなんですか?」
再び地図に視線を落とし、
「あれ?ここって…イーナ、ちょっといいか。」
ランダル君と話していたセルナが横から地図を覗きこみ、私の耳に口を近づけて小声で言いました。
「あの場所って、あのゴーレムがいた場所じゃねえか?ほら、あの場所も【アプライド】の近くだったし…」
そう言われてみればそうですが…
「それだけで決めつけるのは早いですよ。まあ、また今度行くとしましょう。幸い、突破方法もわかっていますし。」
【魔力】にのみ反応するゴーレムには【霊力障壁】を大きめに展開して、反応されなくすればいいことはわかりましたから。
「アムザイさん、その場所に近づいたら気を付けたほうがいいですよ。【風属性魔法】で一気に突破したほうが賢明です。」
「え?それは一体?」
「危なかったですよ?爆発するゴーレムや、高速で移動するゴーレムがいましたよ。破壊しても再生しますから、一気に突破をしてくださいね。」
「…イーナさんは、そのゴーレムと?」
「もちろん、爆発で半径数メートルは木端微塵です。それに、もう一体のゴーレムには、殴られてしまいました。」
「大丈夫だったんですか!?」
「ええ、ちょっとした怪我だったので、すぐに治りましたよ。」
「そ、そうなんですか…しかし、爆発するゴーレムと高速移動するゴーレム…ふふ、興味が惹かれますね。」
アムザイさんが、なんだかマッドな笑みを浮かべています。
「こうしてはいられません。ランダル行きますよ。」
そう言ってアムザイさんがランダル君の腕をとりました。
「それでは、ありがとうございました。それで、この図書館の本なんですが…」
アムザイさんは図書館の中を一瞥したあとに。
「差し上げます。このまま本を腐らせておくのも、勿体ないですから。」
「本当ですか?では、適当に貰っていきますね。」
「それと、この図書館も差し上げます。【魔法陣】で防犯も施していますから、安全面はバッチリです。この鍵で解除しない限り【魔法陣】が起動します。」
そう言って懐から赤い鍵を取り出しました。
「防犯ですか?」
「はい、この図書館を開いてから、寝ている間に何度か泥棒が入ってしまいまして。さすがに頭にきたのでつくったんですよ。」
【魔法陣】ってそう簡単につくれるものなんですかね?
「実は、あの本を見つけた時の【魔法陣】を参考につくったので、強すぎるのが玉に瑕ですがね。」
「一瞬見ただけの【魔法陣】を再現したんですか?」
「ええ、大まかな形は覚えていたので、一週間程度で完成しました。しかし所々欠けていてちょっと改良を加えたので、私の時とは少し威力が落ちていますが…」
…威力が落ちているのに、強すぎるんですか?
「いやー、我ながら凄まじいものをつくってしまいました。普通の人が直撃したら一瞬で消し炭ですよ。まあ、この建物の裏口や窓に仕掛けたので、夜中に侵入しようとしなければ起動することは―――」
バン!ダダダダダ!ドン!グガァーン!
何かが撃たれたような、爆発したような、崩れたような音が轟き、図書館全体が激しく揺れました。
「…そういえば【魔法陣】を切り忘れていたような気が…」
「…まあ、見に行きましょうか。」
さて、誰がかかったのやら…
閑話休題
「イーナさーん!痛かったです!すっごく痛かったです!」
かかったのはルビアでした。
そして裏口の周りは爆心地の如く大穴が空いていました。
裏口も崩れてしまっています。
「…こりゃ酷いな。つかアムザイさん、こんなのを個人でつくったんすか?」
セルナも呆れたように、呆然と言いました。
「…出力設定を間違っていましたかね?少し火傷をする程度に抑えていたんですけど…」
「何かおかしな事とかはなかったんですか?」
「いえ、調整機は書庫にありましたし、今日は特に何も…あ。」
「何か心当たりが?」
「実は…本棚の近くに調整機があったんですが、セルナさんに蹴られた時にそれに突っ込んだ気が…」
ああ、セルナがドロップキックをした時ですか。
「それにしても…」
ルビアの服は所々焦げて穴が空き、髪も所々焦げています。
果たして、これだけの傷で済むルビアが凄いのか【赤竜】であるルビアに傷を負わせた【魔法陣】が凄いのかわかりませんね。
「イーナさーん!」
ルビアが私に抱き着いてきました。
「ほら、これを塗ってください。火傷ならすぐに治りますから。」
ルビアに渡したのは、ロエの樹液から採った火傷によく効く軟膏です。
樹液から採った軟膏は火傷全般や軽い傷などに、実を食べれば風邪にも効くと、ちょっとした万能薬といっても過言ではないです。
「うう…ヒリヒリします…」
ルビアがそう言いながら腕に軟膏を塗っています。
「ところで、何があったんですか?」
「はい…リリウムちゃんと外に出てきたら、おかしな【魔力】を感じたので、近づいたとたんに…」
例の【魔法陣】ですかね。
「リリウムちゃんを庇ったら、まともに受けてしまって…あの壁ごと壊しちゃったんですけど…」
やっぱり、壊したのはルビアでしたか…
「まあ、そのことは気にしなくてもいいんですがね。」
どうやら軽傷のようなので大丈夫ですね。
「あ、あのイーナさん…」
「はい?どうしましたか?」
アムザイさんが私に話しかけてきました。
「あの、どうしてその女性は無事なんでしょうか?あの【魔法陣】の出力だと人一人を消し炭にするはずなんですが…」
「ああ、その辺りは気にしないでください。あなたの言っているのは、あくまでも【人間】を一人でしょう?」
「…彼女は【人間】じゃないとでも?」
「さて、どうなんでしょうね?」
わざわざ教える義理もありませんし、教えるつもりもありませんよ。
「…まあ、いいです。それでは私たちはそろそろ【アプライド】に向かいますよ。向こうにも興味が惹かれました。」
そう言って、手に出してきました。
「私たちは、明日にでもこの街を発って【アナリティカ】に向かうつもりでしたが…まあ、当分は図書館に住ませてもらいますよ。」
私はその手を握り、握手をしました。
「お姉ちゃん…お母さん大丈夫…なの?」
「ええ、薬も渡したので、すぐに治るかと―――」
「イーナさーん!」
私がリリウムに返した途端に、ルビアがとびついてきました。
体格の差もあって、ルビアに押し倒される形になってしまいましたね。
「イーナさぁん…」
なんだか、ルビアの息が荒いんですけど…
「イーナさぁん…痛かったんですよぉ…」
そう言ったルビアの目には、涙が浮かんでいました。
「はいはい…」
抱きついてきたルビアの背中を、ポンポンと慰めるように叩きます。
今まで傷を負わされたことがなかったのでしょうね。
それだけに、さっきの出来事がショックなのでしょう。
「まったく、ルビアはリリウムの母親なんでしょう?リリウムが泣いていないのにルビアが泣いては示しがつきませんよ?」
「でも…」
「ほら、わかったらどいてください。服が汚れてしまいます。」
「はい…」
「ああ、それとルビアの服も買いに行きましょう。そんなボロボロの服では嫌でしょう?」
そう言うと、ルビアが立ち上がりました。
「すみません…イーナさん…」
「いえ、謝らなくてもいいんですよ。気にしてませんから。」
「はい…」
さて、この街に洋服屋はあるんでしょうかね?
まあ、あとでアムザイさんに聞いてみますか。
閑話休題
「兄ちゃーん!俺、でかくなったら、兄ちゃんの弟子にしてもらうからー!」
「おーう!期待しないで待ってるぞー!」
そう言って、ランダル君はアムザイさんに手を引かれて、街を去っていきました。
「さて、弟子の弟子ということは、私にとっては孫弟子ですかね?」
「おいイーナ。俺の弟子だからな。お前にゃ手を出させねえからな。」
「ええ、当然ですよ。でも、下手なことを教えられても困りますから、これからは一層厳しくやっていきましょうね。」
私が笑みを浮かべると、なんだかセルナが怯えた表情をしました。
「い、いや…それはちょっとなぁ…」
「まあ、当分の住居はありますし、落ち着いて勉強に励むことができますね。森もすぐそばにありますし、ちょうどいいでしょう。」
「また…実験台になるのか…」
そう言ってセルナはガックリと項垂れました。
む、失礼ですね。
「実験台とは、薬などの効能や施術などの効果が判明していない時に、人体実験をする時に使う言葉です。私は、セルナを実験台にした覚えはありませんよ。」
まったく、失礼な物言いです。
「あ、ああそうなのか…ん?じゃあ、今まで俺がされてきたことってなんなんだ?」
「やっぱり、知識だけではわからないことも多いですからね。実際に見てみないと。」
「…やっぱり実験台じゃねーか!」
「いえいえ、私はあくまで致死量以下に投与して、毒への免疫をつけることも目的にしていましたからね。決して実験台ではありません。」
「…もって言ったよな。もって。それ以外には何があんだよ。」
「まあまあ、セルナが私に会ってから、毎日のように食事に毒を混ぜていましたからね。少しずつ多く混ぜていたので、大体の毒は網羅したと思いますよ。」
「…それは初耳だな。おい、どんな毒を混ぜてたんだよ。」
「知りたいですか?」
ニッコリとした微笑みをセルナに向けると、急に黙ってしまいました。
「…いや、いいや。そういや、あの時から寝込んだりする日があったっけな…」
「さて、リリウムたちも図書館で待っていますから行きましょうか。ついでに今日の夕食の材料も買いましょうかね。」
「おういいぞ。何にすんだ?」
「さあ、何がいいですかね。道すがら考えましょうか。」
私は何でもいいんですが、リリウムたちにはしっかりしたものを食べさせないといけませんからね。
もう夕暮れも近いので、市場がにぎわってきています。
「それでは、行きましょうか。」
さて、当面の間はこの街にいることになりそうですね。
まあ、それもいいでしょう。
それよりも、あの二人の無事でも祈りましょうかね。
けど、祈る対象なんてこの世界には存在しませんが…
さて、ここで再度の注意です。
後書きに掲載されているイメージ画像は、あなたの中のイメージを粉砕してしまう可能性があります。
あと、ネタバレもあったりするかもね。
ご了承いただけたら、先にお進みください。
名前・イーナ(伊那楓)
種族・人間
年齢・20以上
性別・女
身長・小学4年生程
体重・小学4年生程
キャラクターなんとか機を使用させていただきました。
雰囲気・顔に表情が出ることが少なく、無表情であることが多い
その他・軽度の方向音痴 重度の高所恐怖症 完全な味覚障害
来歴・【地球】で神様の部下に殺され、紆余曲折を経て異世界である【ケミスト】に神様からAC4の能力や世界の知識を貰い転生した。
西の【アナリティカ】国内の街である【グラブス】の森の中で目が覚めた。
当面の目的は【ケミスト】を見て周ること。