第三十話・大丈夫と言う人ほど、大丈夫ではありません
はい、第三十話投稿いたしました。
これで、前期の投稿は、一区切りにしたいと思います。
なんてったってテストがありますから。
勉強をしないと、マジでヤヴァイのですよ。
夏休みは、実家にも戻りますし、執筆が出来たら不定期に更新、という事で…
詳細は、活動報告にでも。
さて、第三十話始まり始まり…
イーナこと伊那楓です。
昨日は忙しかったですね。
図書館から宿に戻ると、ルビアが素敵な仁王立ちをしていました。
どうも、置いていかれたからと御立腹だったようです。
セルナは、笑みを浮かべて仁王立ちをしているルビアを見た途端に、宿から飛び出してしまいました。
結局、私を真ん中にして、ルビアとリリウムが抱き着く形で寝ることになりました。
いえ、ルビアもリリウムも、泣きそうな顔をして、無言で私の目を覗きこんでくるんですよ?
なんだか、罪悪感が沸々と…
まあ、私が了承した途端に、二人とも私に抱き着いてきました。
しかし、私は見逃しませんでしたよ。
無邪気に抱き着いて喜んでいたリリウムとは違い、ルビアの口元は、新世界の神に成ろうとしている青年のように、歪んでいましたから。
…嵌めましたね、ルビア。
まあ、一緒に寝られなくて寂しいと言っていましたし、今日のお詫びも兼ねて、一緒に寝ることにしました。
セルナは、夕食前に戻ってきましたよ?
ルビアに見つかった途端に、どこかに連れていかれてしまいましたが…
気を失って、ルビアに担がれて戻ってきました。
夜になって寝ようとしたら、ルビアが私を持ち上げて、ベッドに連れてかれました。
ルビアはその間、ずっと笑顔でしたよ?
リリウムもベッドに潜り込んできて、私に抱き着いてきました。
まあ、こんな一日も悪くないと思いました。
閑話休題
おはようございます。
昨日の疲れも取れました。
それよりも、この二人は一晩中抱き着いていたんですかね?
「ん…お姉…ちゃ…」
「んん…イーナさ…」
そんな寝言を言いながら、もぞもぞと体を動かしています。
こら、変なところで手を動かさないでください。
「…おう、目ぇ覚めたか。」
そう言ったセルナの目の下には、隈が目立っています。
「どうしたんですか?隈なんて作って。」
「…いや、なんでもねえよ。寝れなかっただけだ。この街出んのは明日だろ?寝るから、何かあったら起こしてくれよ。」
そう言って、セルナはベッドに倒れて、寝息を立て始めました。
おかしなセルナですね?
「ん…お姉ちゃん…?どうした…の?」
「いえ、そろそろ起きますよ。今日は何をしましょうかね?」
「みんなと…お出かけしたい…」
「みんなとですか?それじゃあ、セルナとルビアが起きたら、街に出てみましょう。」
「うん…」
心なしか、リリウムの声が強かったですね。
そう言えば、みんなで出かけるのは、初めてでしたね。
閑話休題
ルビアも起きたので、リリウムとルビアと私で、朝食を食べに来ました。
食堂には、まばらに【人間】が食事をしていました。
「おはようございます。ミシェルちゃん。」
「あ、イーナさん。おはようございます。」
ベルさんの手伝いをしていたミシェルちゃんに、挨拶をします。
「イーナさん、昨日は外に出てましたけど、大丈夫でしたか?」
「大丈夫?とはどういう事ですか?」
「いえ、それが…」
「こらミシェル!何を無駄話をしてんだい!」
朝食を配っていたベルさんが、ミシェルちゃんを叱りました。
「こんの忙しいのに…ってイーナちゃんかい。」
「はい、すみません。お忙しいのに、邪魔をしてしまって。」
「いーや、イーナちゃんは悪くないよ。ほら、朝食だよ。山は越えたから、ミシェルも終わりでいいよ。」
私たち三人分の朝食とミシェルちゃんの分を置いて、ベルさんが戻っていきました。
「じゃあ、食べちゃいましょうか。ほら、リリウムとルビアも。」
「はい、イーナさん。」
「うん…」
「あ、じゃあ私も一緒に食べちゃっていいですか?」
「ええ、構いませんよ。」
いただきます、と手を合わせ朝食を食べ始めました。
食事前の挨拶は大事ですよ?
リリウムとルビアも、いただきますと手を合わせ、食べ始めました。
ミシェルちゃんは、何やら不思議な顔をしていますね。
「あの、イーナさん。」
「はい、なんでしょうか?」
「その…手を合わせるのはなんでしょうか?」
「ああ、これですか。」
そういえば、この世界には手を合わせる習慣がないんでしたね。
「これは…まあ、お祈りみたいなものですよ。食べられることに感謝を…といったお祈りですね。」
「へぇ…そうなんですか。」
そう言って、ミシェルちゃんも手を合わせてから食べ始めました。
「そういえば、ミシェルちゃん。」
「むぐ…なんでしょう?」
「先ほど言いかけていたことですが、なんでしょうか?」
「そういえば…でも、食事中に話してもいいんですか?」
「構いませんよ。どんなに残酷で残虐で吐き気を催しそうな話でも、食事を残すことなんてありませんから。」
「それがですね…今日と昨日の早朝に、二日続けて道に怪我人が見つかったんですよ。」
「二日続けて怪我人、ですか?」
「はい、聞いた話なんですが、今日の人は、体中が剣で切られていて、見つかって間もなく死んでしまったらしいです。ですが、昨日の人は、目と喉を潰されて、両方の指が全部落とされて、脚の骨も折られて、短刀が何本も体に刺さっていて、でも、生きていたんですよ。何も見えず、喋れず、文字も書けなくて、結局犯人が誰かは分からなかったらしいですけど…」
「へえ、それは酷いですね。」
「…イーナさん、よく食べられますね?私、食欲無くなってきました…」
「それで、続きはあるんですか?」
「…その男性なんですが、今日になって突然消えてしまったらしいんですよ。脚の骨が折れていて、傷も深くて、一人じゃ動けるはずもないのに。」
「不思議なこともあるんですね。」
「街は噂で持ちきりですよ。ギルドも、目撃者を捜しているようなんですし、難航しているようですね。お客さんも言っていましたよ。『こんなことができるのは【亜人】くらいなもんだ』って。」
「…ふーん、そうなんですか。」
さて、リリウムとルビアも食べ終わったようですし、部屋に戻りますか。
「あれ、もう食べちゃったんですか?」
「はい、部屋に戻ります。セルナはまだ寝てるでしょうし、起きるのを待っていますよ。行きますよ、二人とも。」
まだ食事をしているミシェルちゃんを尻目に、部屋に戻ります。
セルナには、聞かないといけないこともできましたし。
閑話休題
さて、セルナも起きたので、外出をする…つもりだったのですが。
「さて、どういう事か説明をしてもらえますか?」
「…」
「…それで、ルビアは?」
「すみませんでした…」
「はあ…」
セルナは黙っていて、ルビアは謝るばかり。
…埒があきませんね。
「…まあ、いいです。この街にいるのも明日までですし、今日は外に出て見て回りましょう。ほら、行きましょう。」
リリウムの手を取り、部屋を出ようとした時。
「イーナは!」
セルナが突然大声をあげました。
「イーナは!…俺が【人間】を殺したことを、追求しないのか!?」
まったく、何をいまさら…
「私が、何故セルナを追求するんですか?ギルドにでも報告するとでも思っていたんですか?」
「…」
「沈黙は金、と言いますが、ここでその選択は、鉄屑以下ですよ?」
「イーナさん…」
ルビアが、震える声で私を呼びます。
「セルナを、あまり責めないでください。私もですから…」
「そうだったんですか?」
「はい、私がイーナさんを見張って、セルナが撃退するって。私から提案したんです。イーナさん…昨日の夜に外に出ましたよね?私、遠くから見てたんですよ…」
あの時【レーダー】に反応はありませんでしたから、索敵範囲外からですか。
「その時のイーナさん…なんだか、とても、辛そうで…」
辛い、ですか。
「ルビアは【人間】を傷付けている私を見て、どう思いましたか?」
「…」
沈黙、ですか。
その時、リリウムの手に力が入りました。
「ほら、行きますよ?いつまでもこうしていたら、日が暮れてしまいます。」
「お姉ちゃん…」
リリウムが、心配そうに見つめてきます。
「大丈夫ですよ。リリウム。大丈夫、大丈夫です…」
私とリリウムが部屋を出ると、ルビアとセルナもついてきます。
「さて、何を買いましょうか?お金はたくさんあるんです。」
「お姉ちゃん…私…果物が欲しい…」
「もちろん、いいですよ。セルナは何がいいですか?」
「…そんじゃ、薬草の本。」
「本は、アムザイさんの所でいいですね。ルビアは?」
「私は…」
「歩きながら考えましょう。まだ着くまで時間はあります。」
大丈夫、大丈夫です。
だって、私は、もう…
はい、どうだったでしょうか?
主人公が第二十七話で起こした事の顛末が、少しだけ出てきました。
実際、殺さずに口を封じるには、文字を書けなくする為に指を切り落として、声を出せないように喉を潰せば十分だと思います。
…うん、恐ろしいね。
それでいて死んでいないと言う。
さて、あの男はどこに消えたのやら…
感想、意見、その他諸々、お待ちしております。