第二十七話・電気が無くても、意外と生活はできます
はい、第二十七話投稿いたしました。
相も変わらず、話によって長さがまちまちですね。
その時のモチベーションで、結構変わってくるのですが…
まあ、一番は〆切までの期間ですね。
課題が…課題が…
だども、第二十七話始まり始まり…
イーナこと伊那楓です。
数日前に【緑竜】を潰してきました。
いえ、殺してはいませんよ?
それにしても、なぜ【緑竜】が海にいたんでしょうか。
推測ですが、セルナ達が魚を捕っているところで【緑竜】も狩りをしていたんでしょう。
狩場に侵入されたから、排除しようとしたんでしょうね。
【緑竜】は風を纏っていましたから、水中でも呼吸ができたんだと思います。
閑話休題
さて、ようやく【グラブス】に到着しましたよ。
門には、以前お世話になった門番さんがいますね。
もう夕方なのに、ご苦労様です。
「どうも、お久しぶりです。」
「おう、久しぶり…って随分前に来たお嬢ちゃんか、よく生きてたな?」
「ええ、色々ありましたが、なんとか生きていますよ。」
火に包まれたり、土の槍に貫かれそうになったり、爆発に巻き込まれたり、骨折したりと色々ありました。
「それに、えらい別嬪さんまで連れて…一体どうしたんだ?」
「色々あったんですよ。色々と…」
他愛ない話をして、門をくぐりました。
「さて、とりあえず宿に行きますよ。ついて来てください。」
「おい、ランダルの父親の所に行くんじゃねえのか?」
「あの人が逃げるわけではありませんし、ゆっくりしても罰は当たりませんよ」
そして歩を進めるのは【グラブス】に来た時に宿泊した、宿屋のガバラスです。
外観は新しくも古くもなく、かといって綺麗でも汚くもない。
これといった特徴もなく、完全に町並みに溶け込んでいる宿屋です。
「イーナさん、ここに泊まるんですか?」
「ええ。食事もなかなかでしたし、部屋も広かったので。ここでいいでしょうか?」
「はい、イーナさんがいいのなら、どこでもいいですよ。」
「まあ、別に構いやしねえがな。」
ルビアとセルナの承諾も得られましたし、ここにしましょう。
ちなみに、ランダル君はセルナの、リリウムは私の背中で眠っています。
おそらく、疲れてしまったんでしょうね。
とりあえず、宿に入りましょう。
「いらっしゃいませ。今日は…ってイーナさんじゃないですか。」
出迎えてくれたのは、ミシェルちゃんでした。
「ええ、お久しぶりです。覚えててくれたんですね。」
「それはもちろん。宿屋の娘としては、お客さんの顔は忘れられませんから。」
「ありがとうございます。ところで、ベルさんは?」
「お母さん?お母さんは…」
「おや、イーナちゃんじゃないかい。」
私たちが入ってきた入口から、恰幅のいい、この宿のおかみさんが入ってきました。
「それに、美人さんに女の子にカッコいい兄ちゃんに男の子まで連れて、この一ヶ月で何があったんだい?」
「色々とあったんですよ。国を回って、あとは【アナリティカ】だけなんですよ。」
「それはまた…よくそんなに早く行けるもんだね。それはそれとして、今日は泊まりかい?」
「はい、とりあえずは二、三日程お願いします。」
「はいよ。部屋はどうするかい?さすがに一つの部屋に五人は狭いだろう?」
そうですね…
「私とランダル君は相部屋で、ルビアとセルナとリリウムが相部屋でいいでしょう。いいですか?セルナ、ルビア。」
「いやいや、どうしてお前がランダルと一緒の部屋なんだよ!?」
「そうですよ!イーナさんは私とリリウムちゃんと相部屋にするべきです!その少年はセルナに任せればいいんですよ!」
大変な勢いで反発されてしまいました。
「何を言っているんですか。ランダル君はまだ子どもですよ。そういえば、セルナはいくつなんですか?」
「…16だ。」
「なんです。ランダル君と五つしか変わらないじゃないですか。間違いが起こる事なんてありませんから、大丈夫ですよ。」
「…反論しても、無駄なんだよな?」
「ええ。それはもちろん。」
「はあ、わかったよ…」
そう言って、セルナがランダル君を私に預けます。
「それじゃ、リリウムは、む…。」
リリウムをセルナに
リリウムが、私の首に手を回して、放してくれませんね。
「仕方ありません。リリウムもこちらの部屋ということで。ランダル君は、セルナが連れて来てください。」
「な!?」
ルビアが大げさに驚いて、身をのけぞらせました。
「そんな、イーナさんに加えて、リリウムちゃんまで…それに、こんな猫と一緒だなんて…」
「あんだと!てめぇ!」
「ほらほら、ケンカしない。で、イーナちゃんと男の子と女の子、美人さんと兄ちゃんでいいのかい?」
「はい、それでお願いします。」
「とりあえず、三日分で一人1000Sだね。夕食は今から作るから、荷物でも置いてくるんだね。」
そういって、ベルさんは奥に言ってしまいました。
「それじゃイーナさん。これがお部屋の鍵です。案内するので、ついて来てください。」
ミシェルちゃんはどこか緊張しながら、先頭を歩いていきます。
「ほら、行きますよ。他のお客さんの迷惑になってしまいます。」
座って雑談をしていたお客さんたちが、迷惑そうにルビアとセルナを睨んできています。
「チッ…わかったよ。」
「…イーナさんに迷惑をかけるわけにもいきません。今日の所は我慢します。」
すみませんね、我が儘を言ってしまって。
でも、ルビアとセルナだと、対処ができませんから。
本当は、リリウムもルビア達と一緒の方がよかったんですがね。
閑話休題
さて、夕食も食べ終わり後は寝るだけです。
「イーナさん…寂しくなったら、私のベッドに来てくださいね…」
「いや、今までも普通に寝てたじゃないですか。」
寂しいのはルビアの方じゃないんですか?
セルナも、ランダル君と何やら話していますね。
「お姉ちゃん…早く寝よ…?」
リリウムが私の服の袖をクイクイ引っ張ってきます。
「ほら、子どもたちは来てください。もう寝ますよ。」
ルビアが名残惜しそうしていて、セルナが手を挙げています。
「それでは、おやすみなさい。また明日…」
そう言って、私、リリウム、ランダル君は部屋に入り、それぞれベッドに入ります。
「お姉ちゃん…一緒に…寝よ…?」
私がベッドに横になったと思ったら、リリウムも一緒に横になりました。
「リリウムは、竜だったときもこっそり潜り込んできていたでしょう?何をいまさら…」
「あの時は…お姉ちゃんと…話せなかったから…」
そう言って、リリウムが私に抱き着いてきます。
「でも…今は…お姉ちゃんと…話せるから…それに…」
「それに…?なんですか?」
「お姉ちゃんのこと…だいす…き…だか…ら…」
電気もないこの世界では、ランプがあるとは言え、かなり薄暗いです。
眠くなるのも仕方ありませんね。
「ええ、私も、リリウムの事は好きですよ。そろそろ寝ましょう。明日も早いんです。」
ランプの灯を消し、視界が真っ暗になります。
窓からは、月の光と街灯の灯りが入ってきます。
「ランダル君は、一人で大丈夫ですか?寂しかったら、セルナの所にでも…」
「お、俺は、女と一緒になんか寝ない!」
そう言って、布団を被ってしまいました。
まったく、強がりなんですね。
それに、いつの間にかリリウムの寝息が聞こえます。
抱きついてくるせいか、リリウムの体温が心地よいですね。
そういえば、リリウムとこうやって眠るのも、久しぶりだと思います。
閑話休題
さて、リリウムも寝ましたね。
…やはり、見つかってしまいましたか。
【レーダー】で確認する限りでは、この町に入った時から、数人がつけて来ていましたからね。
狙いは…
「やはり、ランダル君ですかね。」
リリウムを起こさないように、呟きます。
私に抱き着いているリリウムの腕をそっと外し、音を立てないように部屋から出ます。
やはり、元【No.3】とは言え、利用価値はある、という事ですかね。
子どもを誘拐し、脅迫をする。
単純ながらも、実に効果的な方法です。
「さて、どこが、なんの目的で、ですかね。」
しかし、この方法には重大な欠点と、リスクがあります。
「果たして、どうなりますか…」
【アプライド】で攫われなかったのは、幸運と言うしかありませんね。
通りに出ると、街灯の灯りがボンヤリと、辺りを照らしています。
宿を一歩出た途端、十人ほどの、暗闇に溶け込んでいる様な服を着た男たちが、物陰から出てきました。
まるで、黒い塊ですね。
「一体、何の用でしょうか?まあ、察しは付いていますが…」
私がそう言うと、リーダーでしょうか?
男が一人、黒い塊から出てきました。
「…ただのガキだと思っていたのが間違いだったな。単刀直入に言おう、元【No.3】の息子を渡せ。そうすれば危害は加えない。」
「さて、ランダル君を渡す?ランダル君にそこまでの価値が?」
「…もう一度言おう。元【No.3】の息子を渡せ。」
男の声に、僅かな苛立ちが見えますね。
「ランダル君を渡せば、危害は加えない?嘘ですね。あなた達の姿を目撃した私を消すのがセオリーなのでは?」
「…交渉決裂だな。」
男が口笛を吹くと、それに反応したかのように、リーダーの後ろに待機していた男たちが、一斉に短刀を取り出しました。
眼鏡を通して視ると、短刀が緑色の【魔力】に包まれています。
どうやら【風属性魔法】を纏っているようですね。
「…殺れ。」
リーダーの男が静かに呟くと、男たちが一斉に飛びかかってきます。
一糸乱れぬ動きで、私を囲むかのように短刀を突き出してきました。
しかし…
「なんだと…!?」
男たちの短刀が、私の【霊力障壁】の阻まれ、肝心の私の体に届いていません。
それでも尚、男たちは短刀で切り付けてきます。
ちょうどいいですね。
【霊力爆発】
私を中心とした、半径数メートルを【霊力】による爆破で包みます。
この爆発半径も、徐々に広まってきているんですよね。
爆発の光が止むと、男たちが揃って倒れていました。
「さて、あなた達には少し眠っていてもらいますよ。あ、安心してください。後できちんと始末しますから。」
ま、聞こえていませんか。
リーダーと思しき男は…
「逃げましたか…」
いつの間にか、影も形もなくなっています。
しかし【レーダー】には、あの男の居場所が、リアルタイムで表示されています。
男たちが持っていた短刀を数本拾い、男の後を追います。
追う側から、追われる側に回った物は、えてして脆いものですよ。
「こういうのは、ハッキリさせませんと…」
どこが、なんの目的で、来たのか聞き出しませんと。
推測はあくまで推測です。
事実を聞くまでは、安心できません。
それに、ああいうのが何度も来たら、鬱陶しくて堪りません。
それにしても【霊力爆発】の光でリリウム達が起きなければいいんですが…
はい、どうだったでしょうか?
サブタイトル候補として、以下の物もありました。
・11歳は、親に甘えたい年頃です
・外見から年齢は判断ができません
・誘拐と略取、総称して拐取といいます
…まあ、何となーく付けたサブタイトルですので、気にしない方がいいです。
それにしても、主人公には、トラブルに巻き込まれる才能でもあるんでしょうか?
もちろん、エッチな方じゃなくて、面倒事の方ですよ?
まあ元【No.3】といえども、味方にする事ができたら、かなり大きいですからね。
どこの国や組織でも…
おっと、これ以上はネタバレですね。
え?もうすでにネタバレだって?
気にしない、気にしなーい。
感想、意見、その他諸々、お待ちしております。