第二十二話・夢は記憶の整理という説が濃厚です
はい、第二十二話投稿いたしました。
前回に引き続き、今回も視点変更です。
風邪をひいているときは休養を取りましょう。
それと、皆さんから寄せられた感想への返信に疑問点を解決する内容を載せています。
見てくれたら解決するかも?
そんじゃま、第二十二話始まり始まり…
おう、俺はセルナ・マーグナーだ。
理由があってな、今は【オーガニー】を出て【人間】のイーナ【白竜】のリリウム【赤竜】のルビアと旅をしてんだ。
見た目はまるっきりガキだが、あんななりでもかなり頭がいいしよ。
それに【白竜】が頭に乗ってるし【赤竜】が従ってたり、何者なんだか…
まあ、あいつには感謝してる。
あいつに会わなきゃ、今頃はどうなってたんだろうな…
それに、母さんに恩返しをするためにな、薬草について学ばなきゃいけねぇんだ。
それなのに【アプライド】に付いた途端、あいつが倒れちまった。
まあ、イーナの看病はルビアに任せて、俺はこの国を見て回ってる。
【アプライド】にゃあ、沢山薬になるものがあるって言ってたからな。
それに、気になることもあったし…
そういうわけで、薬草とかを買いに市場に来たわけだ。
やっぱり【オーガニー】とあんまり変わんねえな。
薬草を見て回るが、なかなか質が良い薬草が無い。
「やっぱり、採りたてじゃねえとな…」
そりゃ、使う時には乾燥させる必要のある薬草もあるが、ここに売ってるのは論外だ。
必要な部分は無いわ、虫に食われているわで使い物にならねえ。
薬草に見切りを付けていると、ふと一つの果物が目に留まった。
「おっさん。これは?」
「ああ、アルモって果物だ。買うか?」
そういや、あいつがいつもうまそうに齧ってたな。
「そんじゃ、一つくれよ。食ってみてぇ。」
「ああ、12Sだ。確かに…しかし、珍しいこともあるもんだな。」
「あ?なにがだ?」
「アルモがよく売れるんだよ、この頃。あんたくらいの女が―――」
「おっじさーん!今日も来たよー!」
なんか後ろから、元気そうな声がしやがった。
「やっぱり、今日も来たか。」
後ろを見ると、ローブで頭まで隠した奴が走ってきてた。
「あいつが、さっき言ってた奴か?」
「ああ、この暑い中をあんな格好だ。印象によく残る。まあ、来たからには客だ。売るもんは売るさ。」
「ふーん…」
てか、あのローブって【魔具】じゃねえか?
なんかあの女の周りだけ、不自然な感じがするし。
「どうしたの?ジロジロ見て、なにか付いてるかしら?」
「ん、いや、なんでもねえよ。」
まあ、おいそれと姿を見せれねえ身分なんだろうな。
そうじゃねえと、わざわざ【魔具】を使ってまで意識を外したりはしねえだろ。
「じゃあな、おっさん。うまかったらまた買いに来る。」
「ああ、これからもご贔屓に…」
閑話休題
市場から少し歩いたところに広場があったから木陰に座って、さっき買ったアルモとやらを食べてみることにした。
「匂いは良いが…さて、味は…」
アルモを服の袖でよく拭いて、一口齧った。
「べっべっ!まずっ!なんだこりゃ!」
一口齧ったら甘味なにもなく、ただ強い苦味とそれ以上の酸味が口の中に広がった。
あいつ、味覚おかしいんじゃねえのか!
「うぇ…気持ちわる…」
だめだありゃ、もう二度と食わねえ。
「それにしても…」
この【アプライド】は海に面しているせいか、風に乗って潮のにおいがするな。
「【アプライド】にしかない薬草とかもあるからな。買うのも馬鹿らしいし、採りに行くか…」
市場にも碌な薬草が無かったしな。
これもイーナから教えられたことだ。
海は門の外だが、まあ大丈夫だろ。
そう思って立ち上がろうとした時だ。
イーナよりも小さいガキが目の前でいきなりこけた。
周りの奴らは、チラチラ見ながらも、何事もなかったかのように歩いている。
まったく【人間】ってのは、同じ種族同士なのに助け合ったりはしないんだな。
「おら、泣くなっての。」
「うぇぇ…でも…」
まだ小さい【人間】のガキが泣きながら蹲ってる。
「だから、なんで泣いてんだよ。泣いてるだけじゃ分かんねえぞ。」
そう言ってガキが膝を見せてきた。
ガキの膝は擦りむいて、血が滲んでいた。
「こんなもんな、ほっときゃ治るんだよ。我慢しとけ。」
そう言うと、ガキの目に涙が溜まっていくのがわかった。
はぁ…これだからガキは苦手なんだよ。
「…初級魔法【リカバリー】」
そう唱えると、薄青色の光が膝を包み、あっと言う間に傷が治癒していく。
この程度の傷なら、初級魔法で十分だ。
てか、初級魔法しか碌に使えねえし。
「【亜人】さん【魔法】が使えるの?」
「ん?まあな。別に、珍しくもないだろ。」
適当に返事をし、その場を立ち去ろうと…
「…いや、離せよ。」
ガキが俺の脚にしがみ付いてきやがった。
無理矢理振りほどこうとしたが、ガキの言葉が俺を硬直させた。
「お、お願いだよ!母ちゃんを、母ちゃんを助けてくれよ!」
閑話休題
「…こりゃ酷ぇな。」
壁はボロボロ、床のいたる所に穴が開き、今にも崩れそうな家に案内された。
ここ、表通りだよな。
俺が住んでた所の方がマシだな…
「で、お前の母親は。」
「うん。ここだよ。」
そう言って開けた扉の奥には…
「こいつは…」
体中に切傷、擦傷、火傷、裂傷、挫傷、爆傷、熱傷、あらゆる傷を負い、生きているのが不思議なくらい体中が傷に包まれている、人の形をした傷が横たわっていた。
「…お前、父親は?」
「…父ちゃんなんて、いない。」
「父親がいない、ねえ…」
てか、なんで包帯の一つも巻かずに放置してんだ。
「どこかに【水属性魔法】を使える奴がいるだろ。なんで頼まなかった。」
「もちろん頼んだよ。でも【魔法】を使ってる途中で…」
大方、金が無いってんで途中で切り上げたんだろ。
「で、今はどうしてんだ。」
この矢鱈滅多ある傷で呻き声一つ漏らさず寝ている、まるで痛みを感じないかのように…
「これだよ。」
そう言って取り出したのは、独特のにおいがする白い粉末。
「薬屋さんでこれが良いって言われたんだ。本当に母ちゃんが呑んだら、楽になったって…」
「これ、どこで買ったんだ。」
「すぐそこの、角のドラグって薬屋さんだよ。この国で一番有名なんだ。」
「ふーん…」
有名な薬屋、ねえ…
「わかった。とりあえずお前は部屋から出てろ。」
「ど、どうしてさ!」
「いいから、早く出ろ。元気な母親を早く見たいだろ。」
「…」
顔を下に向けながら、黙って部屋を出て行った。
「さて、まずは【水属性魔法】で軽く治癒させねえとな。」
【水属性魔法】で表皮から真皮、皮下組織までの細胞を活性化させる。
火傷やら切傷やらでズタズタになっている細胞を治癒させるためだ。
結局は【水属性魔法】なんて相手の【魔力】に干渉して細胞の新陳代謝を上げて、結果として傷が治るもんだ。
これは、イーナから教わった体の仕組みを基に、自分なりに【水属性魔法】を理解した結果だ。
初級の【水属性魔法】しか使えねえから、本当に気休め程度だが、やらないよりはマシだ。
中途半端でも【水属性魔法】で治癒してあって助かったな。
これがなきゃ、すぐにでも死んでただろうしな。
「これで粗方はいいだろ。次は薬草で…」
あとは薬草の出番だな。
それにしても、あの袋から出してきた薬草でどこまで治せるか…
【アプライド】に来るまでに採取したフィルマを磨り潰し【水属性魔法】で少し治した皮膚に塗布する。
フィルマを傷口に貼り付けると治癒を促進させるからな。
それとナロティの葉を少し磨り潰してフィルマと混ぜれば鎮痛作用も期待できる。
あとは、これを繰り返していけば…
「【亜人】そこまでだ!」
「ああ…?」
後ろから男の声が聞こえ、後ろを振り向くと…
「我々はギルド【ソートフ】の者だ。【亜人】が子どもを誘拐していると通報があった。ギルドに来てもらおう。」
「誘拐だぁ?」
杖を構えた男が3人、その後ろにニヤニヤと笑っているおっさんとおばさんが2人、そしてガキがいた。
ギルドって言ってたしな、専属ギルド員か。
「じゃあなガキ。薬草は置いとく。磨り潰して、こまめに塗り替えれば数週間で治る。それと、その薬は二度と飲ませるなよ。」
「う、うん。」
薬草の入った袋をガキに渡して、元々持っていた薬を注意し、ギルド員の方に歩く。
大方、あのおっさん達だろうな、通報したのは。
「忠告するが、ドラグって薬屋には行かねえほうがいいぞ。」
「はっ【亜人】風情が、薬屋の真似事をして、一人前に嫉妬のつもりか?」
それに続いて、聞くに堪えない暴言がとんできた。
ま、忠告はしたからな。
どうなろうと知ったこっちゃねえ。
「とりあえずギルドで話を聞く。それからお前の扱いを決定する。」
そう言って俺の腕に手錠をかける。
しっかし、手錠までされるたあな。
まるで犯罪者だ。
「ごめん。【亜人】さんが家に入るところを近所の人が見てたらしくて…」
「ああ、気にすんな。こんな扱いには慣れてっから。」
【亜人】の話を聞くだけ、まだマシな方だ。
所によっちゃ、問答無用で殺されたりもするらしいしな。
「それより【亜人】って呼ぶのはやめろ。俺はセルナ・マーグナーだ。」
「うん。セルナ兄ちゃん。俺はランダル・シーボーグってんだ。」
俺は女なんだがな…
ってかシーボーグってえと…
「さっさと来い!」
考えが纏まらない内に、腕を掴まれ引っ張られる。
「ありがとう!母ちゃんが治ったら!絶対にお礼に行くから!」
「おーう。期待しないで待ってるぜ。」
まあ、治ることを願うぜ。
閑話休題
「ん…あ、ああ、ふぁ~あ…寝ちまってたか…」
結局、ギルドに連れていかれた後は証拠が無いってことで、無罪放免になった。
その後は、図書館に行って薬草について調べて、そのまま寝ちまったみたいだな。
「やっぱり、解熱にはヴァーナが一番か…」
イーナは『少し休めば治りますから…』って言ってたが…
「ま、解熱剤でも作って、呑ませりゃ大丈夫だろ。」
しかし、ルビアが看病してるだろうからな、昨日ほっといたから、会えば憎まれ口でも叩かれそうだ。
「宿を出たのを見計らって行くとするか。」
そうすりゃルビアにも会わなくても済むだろ。
それまでにヴァーナを買っとくか。
所詮葉っぱだしな、そのままじゃ呑みにくい。
イーナは成分だけを抽出すれば、効果が高くなるとも言ってたが、まだ教えてもらってないからな。
なんか【魔法】を使えば簡単だとも言ってたが、よくわからん。
「ともかく、呑むのは俺じゃねえしな。この前の解毒剤の件もあるし、ちょうどいいな。」
閑話休題
ルビアはリリウムを連れて市場で見かけたし、今はいないはずだ。
これで部屋にはイーナだけだ。
階段を上り、扉の前に立った。
「おう、戻ったぜ。」
扉を開け、部屋に入った。
イーナはベッドに横になって寝てるみたいだな。
苦しそうな寝息が聞こえるし。
「寝てるのか…起きるのを待つか。」
その間に本で薬草を確認すっか。
これは、ここに来るまでに古本屋で見つけた、薬草について詳しく書いてある本だ。
なんか安かったから買ってみたんだが、これがなかなか便利だ。
イーナの言った事がそのまま載ってるんだよ。
まあ、イーナの説明の方が解りやすいが…
あいつもこれで勉強したのかね。
それにしても…
「ごめんな、イーナ…」
あの時、俺を庇わなきゃこんな怪我もしなかったんだろうな…
布団から出ているイーナの腕は、火傷で赤くなっている。
「…初級魔法【リカバリー】」
そう唱えると、あのガキの時と同様に、薄青色の光がイーナの腕を包む。
あのガキには効いたんだから【魔法】は発動しているはずだ。
しかし…
「効果無し、か…」
イーナの腕は相変わらず、赤いままだ。
なんで【魔法】が効かない?
この程度の火傷なら治るはずなのに…
その時、イーナの言葉が頭を過った。
『私は【魔力】をほんの少しも持ってない、ただの人間ですよ。』
いや、しかし…
【魔力】ってのはどんな生き物にも、大小の差はあっても否応なしに宿るもんだ。
しかし【魔力】が無いのなら、理解ができる。
イーナを見ると、あどけない顔を苦しそうに歪ませている。
それにしても、黒い髪ってのはイーナが初めてだな。
まあ、考えても仕方ねえ。
「お前から言い出すのを待つぜ。」
イーナにゃ感謝してる。
俺から問い詰めたりはしねえよ。
言いたくないのなら、それでもいいさ。
そして本を開こうとすると…
「ご…め…さい」
「ん?」
イーナが何か呟いてるな。
寝言か何かか?
イーナの口に耳を近づけて聞き取る。
「やめ…いよ。お…さん。…けてよ。お…い。」
「起きろ!イーナ!」
呼吸も荒くして、体を震わせてる。
所々声が小さくて聞こえなかったが、なにかヤバい。
イーナの肩を掴み、揺さぶって叩き起こした
「セルナ…?どうして…?どうしてですか…?」
イーナが虚ろな目で涙を流しながら俺を見つめている。
何が、どうしてなんだよ!
「これ呑め、解熱剤だ。」
解熱剤を渡すと、イーナがごくごくと、ヴァーナの搾り汁を黙って呑みほした。
「…お前、ずいぶんとうなされてたな。悪い夢でも見たのか?」
「行かないと…」
俺の話を聞いていないのか、虚ろな目のまま、窓を開けて出て行こうとする。
「イーナ!お前!まだ夢の中にいるつもりか!?」
窓の桟に足をかけたイーナを、後ろから羽交い絞めにして引き留める。
ここ二階だぞ!?
「離してください…行かないと…」
この小さい体の、どこにこんな力があんだよ!
「いいから…寝てろ!」
全身の力を振り絞ってイーナをベッドに引き戻した。
「病人なんだからな!おとなしく寝てろよ!」
そう言うとおとなしくベッドに潜り込んだ。
ふう、これでなんとか…
そう思ってイーナから目を放すと…
「すみません…セルナ…」
イーナの謝る声が聞こえ、バリン、とガラスの割れる音が鳴った。
驚いてそちらを向くと…
「イーナ!」
イーナの姿は既に無く、割れたガラスと所々に飛び散った血が、やけに存在を主張していた。
はい、どうだったでしょうか?
今回は【亜人】の視点です。
前回の【赤竜】の視点の前日から始まっていますね。
【亜人】が何をしていたのか分かりましたね。
【人間】を助けた理由ですが、まあ、琴線に触れたんでしょうね。
そして、主人公はどこへ行ったのか…
次回へ続く!…かもね。
感想、意見、その他諸々、お待ちしております。