第二十一話・風邪の主な症状は頭痛、発熱、食欲不振
はい、第二十一話投稿いたしました。
今回は視点が変わり、違う人物目線になります。
色々と思うこともあると思いますが、まあ、見てください。
ほいっと、第二十一話始まり始まり…
どうも【赤竜】のルビアと言います。
イーナさんはどうしたかって?
「こら…リリウム…離れてくだ…さい。」
「キュー…」
イーナさんはベッドで寝込んで、リリウムちゃんはベッドに潜り込んでいます。
【アプライド】に到着して、宿を見つけて、部屋に入ったら倒れてしまったんです。
おでこに手を当てると熱がありました。
『疲れが出たんですよ。少し休めば治りますから…』
そう言っていましたが、心配です。
それに、イーナさんが倒れてから、もう二日経ちますが、一向に熱が下がりません。
イーナさんからは、自由にしていいと言われていますが、私は付きっ切りで看病をしています。
竜は何も食べなくても平気ですから。
セルナですか?
…知りませんよ、あんな泥棒猫は。
イーナさんが倒れた次の日から、姿が見えませんでしたし。
それに、イーナさんが泥棒猫なんかを庇ったから、骨折なんかして…
「イーナさんは、優しすぎます…」
イーナさんに聞こえないように、小さく呟きます。
「ルビア…いいですか…」
言葉を区切りながら、息苦しそうに言います。
「はい、なんでしょう。」
「少し眠りたいので…ルビアも…自由にしていて…下さい。」
「私は自由にしていますよ。イーナさんの看病をさせてもらっています。」
「そうじゃなくて…ですね…セルナ…みたいに…」
「あんな泥棒猫なんて…」
「こら…」
「あう…」
イーナさんの手が私の頭に置かれます。
「じゃあ…そうですね…私の為に…何か買ってきて…くれませんか…」
頭を撫でながらそんなことを言われては、断れません。
「それと…リリウムを連れて…果物でも買って…あげてください…」
ゆっくりと体を起こしながら、リリウムちゃんを持ち上げました。
「キューキュキュー」
リリウムちゃんは、ジタバタと手足をばたつかせています。
「はい…」
「それじゃ…お願い…します…」
リリウムちゃんを私に渡して、イーナさんがベッドに倒れこみました。
「大丈夫…です…寝ていれば…治ります…から…」
「キュ!キュキュー!」
「ほら、リリウムちゃんも、起こしちゃいけませんよ。」
「キュー…」
袋を持ち、部屋の扉に手をかけます。
「それじゃ、行ってきます…」
「キュ…」
扉を閉めると、イーナさんの苦しそうな寝息が聞こえなくなりました。
「イーナさん、大丈夫でしょうか…」
「キュ…」
リリウムちゃんも、私の腕の中で項垂れています。
「それにしても…あの泥棒猫はどこに行ったんでしょう。」
「キュ、キュキュ」
「む、リリウムちゃんもイーナさんと同じことを言うんですか。」
「キュッキュキュ、キューキュ」
「それもそうですが、でも…」
「キュ、キュー」
「それでも、セルナは…」
「キュキュ、キュー」
「それじゃ、セルナを探しながら買い物をして、見つけたら問い詰めましょう。」
「キュー」
そういえば、リリウムちゃんと出かけるのは初めてですかね。
閑話休題
宿を出て少し歩くと、たくさんの【人間】が色々な物を売っていました。
「ここが市場ですか?」
「キュー」
リリウムちゃんはイーナさんと行ったことがあるらしいですが、私はこういった場所は初めてです。
「とりあえず、果物を買いましょう。リリウムちゃんは何が食べたいですか?」
「キュ…キュキュー」
そう言ってリリウムちゃんが選んだものは…
「これがいいんですか?」
「キュー」
真ん中が妙に膨らんだ、茶色く、ザラザラとしている実でした。
どこか上の空のおじさんに声をかけます。
「すいません。この実を…」
「あ、ああ、いらっしゃい。アルモかい?一つ12Sだよ。」
物の価値はイマイチ分からないんですが、どうしましょう。
「それじゃあ…8つください。」
「あいよ。それにしても珍しいね。アルモを買ってくなんて。」
「え?そんなに珍しいんですか?」
「ああ、うまそうに食べる奴もいれば、一口齧って吐き出しちまう奴もいる。大半は後者だが。」
そう言いながら、紙袋に詰め終ったようです。
「ほら、96Sだ。しかし、有る分だけ買ってもらえるたぁな。そういや、最近も買ってく物好きが―――」
「おじさーん!アルモ3つちょうだいなー!」
何かを言いかけましたが、ローブを着て、フードを目深にかぶった女性の声で遮られてしましました。
身長は、私より少しだけ低いですかね。
「やっぱり、今日も来たか。お前さんはそんなにアルモが好きなのかねぇ…」
「あったり前じゃないの。アルモが食べれないのなら、死んだ方がマシよ。」
女性はいたく真剣な声色で言いました。
「まあ、買ってくれるのはありがたいが…もう全部売れちまったぞ。」
「な、なん…ですって…」
女性は人目も憚らず、地面に両手両膝をついて体全体でショックを表しています。
「だ、誰よ!あんなくそマズイのを買った奴は!おかしいんじゃないの!」
「否定はしねぇがな。それは自分の首も絞めてるようなもんだからな。」
「あのマズさが癖になる。世界の七不思議よ。」
「んな七不思議なんて聞いたことねぇよ。」
「そりゃそうよ。口から出まかせだし。」
おじさんも慣れているんでしょう。
感情的にならず、のらりくらりと受け流しています。
「まあ、どうでもいいが。そのおかしい奴は、あんたの隣にいる美人さんだぞ。」
おじさんにそう言われると、女性がこちらを向きます。
「うわぁ…すっごく綺麗…ハッ!じゃないわ!あんたね、ふざけ半分でアルモを買ったのは。止めときなさい、絶対後悔するわよ。」
「いえ、食べるのは私じゃなくて…」
腕に隠れていたリリウムちゃんを見せつけます。
「この子ですよ?」
「キュッキュ、キュー」
「あれ?リリウムちゃんが食べるんじゃないんですか?」
「キュキュー」
「なるほど、リリウムちゃんは優しいです。」
どうやら、イーナさんの為に買ってあげようとしたようです。
リリウムちゃんの小さな頭を優しく撫でてあげます。
目を閉じて気持ちよさそうにしています。
む、周りがやけに静かですね。
どうしたんでしょう。
「な、なんで【白竜】が!?ちょ!子どもよね!?親が来るわよ!」
女性がそう叫ぶと、周りが一気に喧騒に包まれます。
『この国はもうダメだ!【白竜】に襲われる前に逃げるぞ!』
やら
『くそ!ギルドに連絡は…してない!?な…真っ先に逃げただぁ!?』
などなど、阿鼻叫喚が繰り広げられ、罵詈雑言が飛び交っています。
「さて、大変なことになってしまいました。どうしましょう。」
「キュー…」
「リリウムちゃんは悪くありません。悪いのは【人間】達です。」
もちろん、イーナさんは除きます。
「あんたは!何を考えてるのよ!この国は…この国は、もう終わりよ!」
さっきの女性が胸倉を掴んできます。
「大丈夫です。この子の親が来ることはありません。」
「そんなこと…」
「それにしても、見事に人がいなくなってしまいました。」
あんなに人が居たのに【人間】の気配が全くありません。
アルモを売っていたおじさんも、いつの間にか姿を消しています。
いるのは目の前の女性だけです。
「当り前よ!【白竜】が襲って来るのに!逃げないわけないじゃない!」
「では、どうしてあなたは逃げなかったんです?気付いたのなら、真っ先に逃げ出せばいいのに、わざわざ叫んで周りの人を先に逃がして。」
「私は…!」
「私にはどうにも理解が出来ません。自己犠牲のつもりですか?もしそうだとしたら、とても滑稽です。」
胸倉を掴んでいる女性の腕を引き剥がします。
「あなたがそんなことをした理由はなんです?【白竜】を撃退しようとしたんですか?正義感からそんなことをしたのならあなたはただの馬鹿です。どうしてこんなことを?」
女性は、何か戸惑っているようですが、何かを決心して自らのフードに手をかけます。
「私は…この国を愛している!【白竜】を撃退するつもりでも、正義感で動いたつもりじゃない!私は―――」
そう叫びながら、フードを剥ぎ取りました。
「私は!この国の王として!国を!国民を守る為に動いたのよ!」
フードを外して見せた女性の顔は、目鼻立ちがハッキリとしていて、体はスマートですが、出るところは出ています。
基準がよく分かりませんが、まぎれもない美人なのでしょう。
「だからこそ!国を危険に晒しているあなたを許せない!今の私は【フィジカ】の王、フィリス・オストヴァルトじゃない!【No.5】フィリス・オストヴァルトとして―――」
女性、オストヴァルトは杖を構えました。
「あなたを、この国から追放する!力尽くにでも!」
そう言って私に【魔法】を撃ってきました。
槍のような【火属性魔法】です。
しかし、擬態しているとはいえ私は【赤竜】です。
このまま直撃してもなんら支障はないんですが、リリウムちゃんを腕に抱いていますから。
「ちょうどいいです。せっかく人気もありませんし、イーナさんもいないんです。ちょっと暴れてもいいですよね?」
左腕でリリウムちゃんを抱きながら、右腕で【火属性魔法】を掴みます。
オストヴァルトは絶句していますね。
どうしてでしょう?
「リリウムちゃん、見ててくださいよ?これが竜としての戦いです。」
「キュー」
【火属性魔法】を握り潰し、擬態を解除すると、光が私を包みます。
まだ小さいリリウムちゃんですが、竜としての戦いも見てほしいです。
「グゥオオオオオオ!」
やっぱり、この姿の方がのびのび出来ます。
擬態をしているとなんだか狭苦しいですから。
まあ、イーナさんの前で擬態を解くつもりはありませんけど…
「キューキュー!」
リリウムちゃんも、この姿を見るのは久しぶりでしたね。
背中に乗っていますが、振り落とされないでくださいよ?
おや?オストヴァルトが体をガタガタ震わせています。
「あ、あなたが【赤竜】だとしても!私は…負けられないのよおおぉぉおおぉ!」
無謀な【人間】は嫌いですけど、無謀で馬鹿な【人間】は嫌いではないです。
「上級魔法【ブレイズアロー】!」
そう叫ぶと、十数本の火の矢がオストヴァルトの周りに集まり、私に向けて飛来します。
上級魔法と言うからには、強い【魔法】なんでしょうね。
では、私も…
口内に【魔力】を溜め、火の【魔法】に変換。
変換した【魔法】を高密度に凝縮、圧縮を繰り返し威力を高めます。
イーナさんもこれくらいは平気でしたから、耐えてくださいよ?
【魔力】を凝縮と圧縮を繰り返し、密度を高めた、竜固有の【魔法】息を一気に解放。
上級魔法が私に当たる寸前、私が放った火の息が火の矢を呑み込み、オストヴァルトをも呑み込みました。
はい、どうだったでしょうか?
主人公は疲れからか、風邪をひいてダウンです。
代わりとして、今回は【赤竜】の視点です。
そして、王様が登場してしまいました。
それにしても、王様が最高戦力って…
次回はどうしましょうかね?
感想、意見、その他諸々、お待ちしております。