第十九話・素人のキノコ採取は危険です
はい、第十九話投稿いたしました。
筋肉痛で足が痛い、マジで痛いです。
湿布が欲しい今日この頃です。
はてさて、第十九話始まり始まり…
どうも、イーナこと伊那楓です。
ようやく砂漠を抜けましたかね。
大変でしたよ。
結局、水が足りなくなり、セルナに【水属性魔法】を使ってもらって、なんとか凌ぎましたから。
それと、ルビアとセルナは、犬猿の…いえ、竜猫の仲ですね。
仲が悪いってことですよ?
話を聞いたところ、どうやら、ルビアはセルナが同行するのが不満の様ですね。
「まあ、いいじゃないですか。」
「そうだ、別にいいじゃねえか。」
「よくないですよ!それと、泥棒猫は黙りなさい。」
「てめえ!まだ泥棒猫と言うか!」
セルナがパンチを繰り出すと、ルビアが身をずらしてその腕を取り、その勢いを利用してセルナを投げ飛ばしました。
「うおっ!」
「泥棒猫を泥棒猫と言って、何が悪いんですか。」
投げ飛ばされたセルナは、空中で身を翻すと綺麗に足から着地しました。
さすが猫の【亜人】ですね。
【アプライド】までは、まだ数日ほどかかりますが、大丈夫ですかね?
閑話休題
「これがヴァーナです。主に葉が解熱剤に用いられますね。」
「…」
「これはウェルトです。食べると数分で全身に発疹ができ、十分ほどで死に至ります。」
「…」
「ヴァーナとウェルトは、葉の形が似ているので注意が必要です。次に―――」
「だーーー!」
セルナが奇声を発して、用意した植物を机ごとひっくり返してしまいました。
「危ないですね。どうしたんです?」
「あー!もう!わけがわからねぇ!大体、なんでみんな同じような形をしてんだよ!」
「私にそんなことを言っても、形が変わるわけじゃないですよ?」
セルナが頭を掻きながら唸っていますね。
「大体、あなたが知りたいというから教えているんです。私は無理に教えるつもりはありませんよ?」
「…わかってるよ。」
「ほら。わかったら元に戻してください。続けますよ。この植物は…」
何をしているかですって?
セルナが旅をする目的ですよ。
『薬の間違った知識を正し、薬の適正な使用法を広める。』
ちょっと違いますが、こんな感じでしたよね。
この世界では【魔法】による治療が一般的で、薬による治療は公に認められていません。
外傷は【魔法】でも治しやすいんですが、内傷…つまり体の内側の病気は【魔法】では治しにくいんです。
しかし、薬が一般的ではないので、気休め程度にしかならくても【魔法】による治療を受けざるを得ないんです。
と、言っても薬で治る病気なんてたかが知れていますが。
薬屋が効果的な薬草を見つけても、独占してしますからね。
それに、一般人が見分けがつかない薬草を、わざわざ使ったりはしません。
下手をしたら毒草を飲んでしまうかもしれませんし。
「さて、これで最後です。お疲れ様でした。」
「あー。疲れたー。」
セルナがグッタリと寝転がりました。
「教え始めてもう四日経ちますが、そろそろ覚えましたかね?」
「そりゃあな。致死量やら成分やら副作用やら、よくわからない所もあったが、大体の薬草と毒草の効果は覚えたぞ。」
「それはよかったです。でも、忘れてはいけませんよ。命を助けるも、命を奪うも、自分の匙加減ですからね。それ故に、責任が大きいんですよ。」
「ああ、わかってるよ…」
「さて、そろそろルビア達も戻ってきますかね?お昼の用意をしましょうか。」
袋から出したのは、フライパンと包丁です。
ルビアが貴族の館から、調理用具もついでに貰ってきたらしいです。
料理は問題なく作れますよ。
調味料は塩と胡椒が少しずつしかありませんので、味付けはシンプルなものになってしまいますが…
森に着いてからは、ルビアとリリウムには、狩りをしてもらっています。
私がセルナを教えているので、どちらも暇つぶしを兼ねているようですね。
調理用具の用意をしていると…
「それにしても、不思議だよな。」
「なんですか、唐突に。」
「いや、あんなに強い【赤竜】のルビアがおまえに従ってるなんて…」
「私に従っているわけじゃありませんよ。ルビアが、自分の意志で同行しているんです。去るのなら止めませんし、止めるつもりもありません。」
「それじゃ、今すぐに俺が去ると言ってもいいのか?」
セルナが私の目を見ながら言います。
「ええ、構いませんよ?私は強制しません。私は相手の意思を尊重しますよ?」
「ふーん…」
おっと【レーダー】に反応がありますね。
「さて、ルビア達も戻ってきます。かまどを用意しましょうか。」
「…ああ」
さて、なにを狩ってきたんでしょう。
草むらからガサガサと音がして、人影が現れました。
「イーナさーん。戻りましたー。」
ルビアですね。
笑みを浮かべながらこちらに向かってきます。
「どうでしたか?ルビア。」
「はい。川があったので、魚を捕まえてきました。それと、こんなキノコがいっぱい。」
そう言って見せられたのは、赤茶色のキノコと、青紫色のキノコです。
「セルナ、来てください。」
「ん?どうした?イーナ。」
セルナを呼び、キノコを見せます。
「この二つのキノコですが、片方は毒キノコです。さて、どちらだと思いますか?」
「ん?そりゃ、この青紫色のだろ?」
そう言って青紫色のキノコを指さします。
「そうですか。何故そう思ったんです?」
「いや、体に悪そうな気持ち悪い色だし…」
ルビアも頷いていますね。
私は、そのキノコをパクリと齧ります。
「イーナさん!?」
「お、おい。大丈夫なのか?」
モグモグと咀嚼し、ゴクリと飲み込みます。
「ええ、大丈夫です。食べてみますか?」
そう言ってセルナに渡すと、恐る恐るセルナが口に入れ、咀嚼しています。
「なんだうめぇじゃ―――」
そこでセルナの言葉が止まります。
「薬草と毒草は、大体終わりましたから、次はキノコについて教えようと思っていますが…」
セルナが突然崩れ落ちてしまいました。
「お、お前…どうして…」
「このように【亜人】のみに効く毒キノコもあるので、気をつけてください。」
この青紫色のキノコはジュノニと言って【亜人】のみに筋弛緩作用をもたらす毒キノコです。
即効性がありますが、代謝されるのも早いので問題なしです。
ちなみに、赤茶色のキノコはエドデと言いまして、食用として人気のあるキノコです。
乾燥させると旨味が増すらしいですが、今日は魚と一緒に炒めましょうか。
「さて、食事の支度をしますか。ルビア、火をお願いします。」
「はい、イーナさん。」
そう言って、ルビアは火の息を吐きます。
かまどに、あっという間に火が付きました。
火熾しも簡単ですね。
「それじゃ、できるまで待っていてください。」
「はーい。楽しみにしてますよ?」
そう言ってルビアはセルナのところに向かいました。
フライパンに油をひき、かまどの火で温めておきます。
油は、生っていた種を絞り、抽出しました。
その間に、鯖に似た魚を捌き、骨と内臓を除き、食べやすい大きさに切ります。
キノコも石突きを切り、食べやすい大きさに切ります。
魚とキノコだけっていうのもどうかと思いますが、まあ仕方がないです。
一口大に切った魚とキノコを、フライパンに放り込みます。
ジュージューといい音といい匂いがしますね。
「キューキュー」
おや、匂いを嗅ぎつけたのか、リリウムが飛んで近づいてきました。
ここ数日で果物が無くなってしまったので、リリウムも普通に食事をしていますよ。
不満げに、仕方ないように食べています。
「味見でもしますか?」
「キュー!」
そう言った途端に小皿に取った分をあっという間に食べてしまいました。
「キュッ!キュキュー!」
おかわりでも欲しいんですかね?
「もうできますから。ルビア達を呼んできてください。」
「キュー」
パタパタと翼をはためかせ、ルビアの方に飛んでいきました。
「さて、出来上がりましたね。」
料理をそれぞれのお皿に盛りつけます。
ああ、これもルビアが貴族の館から貰ってきた物です。
無駄に金色の細工が施されています。
…こういう高い一点物よりも、安い物の方が使いやすいんですよね。
「イーナさーん。お腹空きましたー。」
ルビアがセルナを背負ってきました。
「セルナはまだ?」
「はい。食べた量が多かったんじゃないんですか?」
「う…うるせぇ…イーナぁ…」
このままではご飯が食べられなくなってしまいます。
仕方ないですね。
袋から、とある薬を出します。
「ジュニノの解毒剤です。飲めばすぐに効くと思いますよ。」
「てめぇ…持ってんなら…最初から…」
「いやいや、身を持って体験した方が、恐ろしさもわかるでしょう?」
それに、毒を摂取していると免疫ができるとも言いますし。
「ん…んっ!げほっげほ!まずっ!メチャクチャまじぃ!なんだこりゃ!」
「薬が美味しいわけないじゃないですか。飲まないのなら、お昼は食べられませんよ?」
「ちきしょー!あ、少し楽に…」
どうやら成功していた様ですね
いえ【亜人】だけに効く毒に対する解毒剤なので、私じゃ確かめようがなかったんですよ。
セルナがルビアの背中から降りて、笑みを浮かべてこちらに来ました。
「ありがとな。解毒剤をくれて、おかげで助かった。」
「いえいえ、動けるのならいいんです。では、お昼に―――」
「―――と言うとでも思ったか!初級魔法【ウィンドアロー】!」
杖を取り出してそう言うと、セルナの前に不可視の矢が現れました。
眼鏡をかけているので、ハッキリと視えていますよ?
「くらえやぁ!イーナぁ―――」
【ウィンドアロー】を発射した途端、セルナの膝が折れ【ウィンドアロー】はあさっての方向へ…
「あ」
「あ」
「キュ」
私を狙ったはずの【ウインドアロー】は私の横、つまりは料理が置いてあった机に直撃しました。
作った料理がメチャクチャになってしまいましたね。
「おい!どうなってんだよ!解毒剤が効いてねぇじゃねぇか!」
セルナが倒れ伏しつつも、喚いています。
まだ未完成だったようですね。
でも、今はそんな事よりも大事な、やらなくてはいけないことができました。
「この猫が!イーナさんの料理を―――」
ルビアがこちらを向いた途端、息を呑んでしまいました
「おや、ルビアどうしたんです?」
「い、イーナさん…」
「キュ…キュー…」
「ああ、リリウムを連れてちょっと離れていてください。」
「は、はい!わかりました!行きますよ!リリウムちゃん!」
「キュッキュー!」
ルビアはリリウムを連れて全力で離れて行きました。
あんなに怯えて、どうしたんでしょう?
「んだよイーナ。元々お前が―――」
セルナも、私の顔を見た途端に、顔を青ざめさせて、言葉を詰まらせてしまいした。
「い、イーナ。お、お前…」
いえ、私は怒ってなどいませんよ?
ただ、食べ物を粗末にしたセルナに、ちょっとしたお仕置きをするだけですよ?
セルナは這いずって逃げようとしていますが、筋肉が弛緩しているせいか、上手くいかないようです。
「大丈夫ですよ。すぐに終わりますから。」
閑話休題
「イーナさん…」
「キュー…」
「ルビアぁ…あいつひでぇんだよぉ…俺が謝ってるのにさぁ…あんなに…あんな…うあああぁぁぁ…」
セルナが泣きました。
ルビアに縋り付きながら、涙で顔をぐちゃぐちゃにして、泣いています。
いえ、セルナが必死に謝ってくるので早めに切り上げたんですがね。
何をしたかですって?
ただお説教をしただけですよ。
薬草少々とキノコ少々を混ぜましたけど。
しかし…
「ルビアぁ…ごめんなぁ…あんなに楽しみにしてたイーナの飯を…あんなにしちまってぇ…」
どうしましょうか。
今まで強気だったのに、一転して弱気になってしまいました。
「今度は私が何か狩ってきますから、セルナをお願いします。」
「は、はい…わかりましたけど…」
ルビアもセルナの扱いに困っているようですね。
「まあ、その内元に戻るでしょう。頭でも撫でてあげていてください。」
それとも、猫の【亜人】ですから喉元を撫でたほうがいいんでしょうか?
「それでは、行ってきます。」
セルナは魚が好きなようですから、魚でも捕ってきますかね。
【アプライド】までは、あと数日です。
はい、どうだったでしょうか?
主人公はもちろん、料理が作れますよ。
調味料が無いので、単純な味付けしかできませんがね。
【亜人】が弱気になった。
普段強気な女性が、いきなり弱気になると…
…萌えるッ!
それと、自分で採ったキノコを食べるのは本当に危険です。
毒キノコの場合もあります。
ワライタケを食べても、笑うだけで済むはずがないので、食べることは止めましょう。
感想、意見、その他諸々、お待ちしております。