表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私が行く・異世界冒険譚  作者: ちょめ介
蒔かれた種はどんな木に育つのか
14/81

第十四話・熊は坂を下るより上るほうが速い

はい、第十四話投稿いたしました。


今回もちょっと長いですね。


この長さを毎回書ければ…


一話書くのに数日かかりますからね。


そうポンポンとは書けませんよ?


本職の人はどういう気持ちで書いているんだろう、と思う今日この頃だったり。


それはともかく…


さっそく、第十四話始まり始まり…

【コーラル】での依頼も終了し早二日【フィジカ】へ向かっています。


イーナこと伊那楓です。


それと頭の上には【白竜】のリリウムです。


それと、もう一人…


「リリウムちゃん。私の所にも来てくださいよー」


「キュ、キュキュ」


リリウムが首を横に振っています。


リリウムに話しかけたのは、赤い髪が特徴的な綺麗な女の人。


「それで、リリウムになんて言われたんですか?」


「ふふ…それはですね―――」


「キュッ!キューッ!」


「痛たたたた!分かりましたから!頭を噛まないでください!」


リリウムは恥ずかしいのか、これを聞く度に頭を噛んできます。


「ふふ…内緒ですよ。これを言ってしまったら、リリウムちゃんに怒られてしまいます。」


「私はもう何回も噛まれてますけどね…」


この会話でわかってもらえたでしょうか?


そう【赤竜】です。


あの【コーラル】での一件で、なにやらリリウムと何かを話してから、私の旅に同行することになりました。


竜同士で会話ができるのはうらやましいですね。




閑話休題(数時間後)




さて、ようやく到着しましたよ。


「ここが【フィジカ】ですか。初めて見ました。」


「永く生きている【赤竜】でしょう?国の一つや二つは見たことあるんじゃないですか?」


「いえ、永いと言っても300年程度ですから、国に入ったことは無いんですよ。擬態できるようになったのもつい最近ですし。」


「300年ですか…私には想像もつきませんね。」


「これでも若い方ですよ?竜の寿命は600年あると言われていますから。」


「600年…ですか。」


「ええ、擬態ができるようになるのは個体差がありますが…大体300年ほど生きてからですし」


そういう話をしながら【フィジカ】への門をくぐります。


さて、とりあえずギルドに行きますか。


「それじゃギルドで依頼を受けようと思いますけど…」


「もちろん私もついていきますよ?」


「大丈夫ですか?【人間】がたくさんいますけど…」


「はい。もう自分との決着はつけましたから。」


そう言って【赤竜】は胸を張ります。


…羨ましくなんかないですよ。


「わかりました。ああ、それと…」


「はい?」


「【赤竜】と呼ぶわけにもいかないので、名前はどうしましょうか?」


ここに来るまでに【赤竜】としか呼んでいません。


それにこんなに綺麗な女性を【赤竜】と呼んだら変な目で見られてしまいます


「名前ですか?それなら…イーナさんが決めてください。」


「いいんですか?私が決めてしまって。」


「はい、イーナさんは私の恩人なので。そんな人に名前を付けてもらえれば、私も嬉しいです。」


とびきりの笑顔でそんなことを言います。


なんだかむず痒いですね。


「それじゃあ…ルビア、というのはどうでしょう?」


「ルビア、ですか?」


「私が好きな花をもじった名前ですよ。あなたの髪のように赤くて、綺麗な花です。」


それに、あの花の花言葉は…


「あなたにピッタリだと思いますよ。」


「…はい、ありがとうございます。イーナさん。」


頬を赤くして、微笑みながら照れくさそうに言います。


「喜んでもらえてよかったですよ。これからお願いします。ルビア。」


「はい、こちらこそ。イーナさん。」


「キューキュー」


リリウムも喜んでいるんですかね?


「それじゃ、ギルドに行きますか。」


「はい。」


「キュー」




閑話休題(ギルド到着)




【フィジカ】に到着してから数時間。


ようやくギルドに到着しました。


ギルドに着くまでに何があったかって?


市場に行って、リリウムが食べる果物を買ったり…


そういえばルビアに聞いたんですけど、竜って別に食べ物を食べなくても、生きていけるらしいんですよ。


空気中に漂ってる【魔力】を食べるとかで…


では、なぜリリウムは果物を食べるんでしょうか?


ルビアがリリウムに聞いてみたら…


『おいしかったから』


…だそうです。


実に単純明快な答えですね。


まあ、毒ではないと思うので別にいいんですけどね。


それと、ルビアなんですが…


『すみません。お茶でもどうです?』


とか


『一目惚れしました!結婚してください!』


という風に、数十分に一度は男の人に声をかけられるんですよ。


後者は求婚ですが…


まあ、確かに綺麗な女性なんですけどね。


そういう声を歯牙にもかけずに


『イヤです。』


と笑顔で返して、声をかけた男の人は灰になっていました。


…比喩ですよ?


リリウムも飽きたのか寝てしまいましたし。


もちろん私の頭の上で。


それはともかく、ギルドに入りましょう。


ギルドの中は【アンヴィーラ】のように広く、依頼板には依頼があるようです。


なかなかに人が多いですね。


何か視線が集中していますが…


さて、私たちはどう見えているのでしょう?


頭に【白竜】を乗せた子どもと、それに付き添う綺麗な女性。


…すごく奇妙な組み合わせですね。


まあ、十中八九ルビアに目を奪われているんでしょうが。


とりあえず依頼を見ましょうか。


「どの依頼がいいでしょうかね?」


「そうですね。…ところでイーナさんってどんな依頼をしてたんですか?」


「今までの依頼ですか…」


薬草の採取やらジャラスの駆除、大岩の破壊ですかね。


「まあ、依頼は少ししか受けてませんよ?ギルドに登録したのも一週間くらい前ですし。」 


そんな話をしていると、後ろから声をかけられました。


「ちょっといいかな?」


声がした方を振り向くと、なかなかに整った顔立ちに小奇麗な服装、そして、無駄に装飾の施された剣が目を引きます


貴族か何かですかね?


「君は運がいいよ。この僕のお眼鏡に適うなんて。」


なんでしょうか、このナルシストな人は。


「はい?なんでしょうか…」


ルビアも若干引いているようですね。


まあ、当然だと思いますがね。


「君は【フィジカ】の貴族である、ベゼル・リュサックに見初められたんだ。光栄に思いたまえ。」


ああ、権力に物を言わせた貴族の横暴ですか。


普通なら有無を言わせないんでしょうね。


この世界では、貴族が大きな権力を誇っていますから、断ったりしたら大変なことになります。


しかし、そんなことルビアには関係ありません


「ああ、そうなんですか。お断りします。」


ベゼルと言いましたか?


口を開けて、ポカンとしています。


「なんだと!僕はリュサック家の次男だぞ!君の家がどうなってもいいのか!」


まあ、そうなりますね。


しかし、私たちには潰されて困る家はありませんからね。


「さて、ルビア。依頼も決めましたから、行きましょうか。」


「はい、イーナさん。」


さて、依頼を受けに行きますか。


と、思ったら後ろから声が…


「中級魔法【ソイルランス】!」


私に中級魔法【ソイルランス】が当たりました。


しかし、土のない場所で【土属性魔法】を使っても【魔力】のみで【魔法】が構成されることになります。


【霊力障壁】に当たったら消滅しましたけどね。


「大丈夫ですか!?イーナさん!」


「ええ、大丈夫ですよ。ルビア。」


どうして私を狙ったんでしょうかね?


「ど、どうして!?」


それはこちらのセリフですが…


そんな声を無視して、カウンターに向かいます。


「本当に大丈夫ですか?イーナさん。」


「大丈夫ですって。ルビアの火の(ブレス)でも平気だったでしょう?あの程度じゃ傷一つつきませんよ。」


竜の(ブレス)は、どれも上級魔法に近い威力を持っています。


「そ、そういえばそうでしたね。」


「そうですよ。ほら、行きますよ?」


後ろで睨んでる貴族様もいることですし。




閑話休題(依頼受諾)




さあ、依頼を受けましたよ。


受けた依頼は、ゴラウの駆除。


最近【フィジカ】の近くに出没するらしい、大きい熊のような【魔獣】です。


高レベルの土の【魔法】を操り、物理的な攻撃には弱いですが【魔法】には比較的強く、更に【魔法障壁】も厚く【魔法】がまともに通りません。


【土属性魔法】や【風属性魔法】の特性【貫通】を利用して物理的なダメージを与えるか【魔法障壁】を【水属性魔法】や【火属性魔法】で【減衰】させてから剣や弓でダメージを与える。


この二つがポピュラーな倒し方ですね。


爪を持って来ればいいとのことなので、早めに終わらせましょう。


「ルビア、行きましょう。」


近くの森にでもいますかね?


ギルドから出ようとすると…


「待ちたまえ!」 


さっきの貴族の声が聞こえました。


「ここまで馬鹿にされたのは初めてだ!君に決闘を申し込む!」


えー…


私たちは何もしていない気がしますけど…


「イーナとかいったな!お前だ!」


そして、なぜに私なんでしょう?


「場所は僕の家だ!いいな!すぐに来いよ!」


そう言って、ギルドを出て行きました。


「…行かなくてもいいですかね?」


「はい、無視しても構わないですよ。」


ルビアも中々に辛辣ですね。


じゃあ、森に行きますか。




閑話休題(数十分後)




大きな闘技場にいますよ。


え?森に行ったんじゃないかって?


…ギルドを出て、門に行ったんですよ。


そしたらなんて言われたと思います?


『悪いが、お前の出国は許可されていない。』


って言われたんですよ。


あのベゼルとかいう男が根回しをしたようで、国から出ることが出来なくなりました。


腐っても貴族なんですね。


まあ、無理矢理突破することもできるんですけどね。


そしたら面倒なことになりそうですし。


「で、私が勝利すればこの国から出られる。負けたらルビアはそちらに渡す、ですか?」


「そうだ。まあ、素直にあの女を渡せばこの国からだしてやる。」


理不尽極まりないですね。


私が勝っても一文の得にもなりません。


まあ、負けるつもりはさらさらないですが…


「では、始めるぞ。準備は…」


執事風の人が開始の合図をします。


「ああ、いいぞ。」


「あ、ちょっと待ってください。」


端の方で見ているルビアにリリウムを渡します。


「それじゃ、危ないのでリリウムをお願いします。」


「はい。私の為にもがんばってくださいね?」


「まあ、がんばりますけど…」


「キュッキュー」


はあ、気楽にやりますか…


この前商隊から買った眼鏡をかけます。


商隊の人は、遺跡から発掘した物とか言ってましたけど、本当かどうかは分からないですね。


高かったですよ?


1万Sもしましたから。


見た目は普通の黒縁眼鏡ですが、これをかけると、あら不思議。


【魔力】が視認できるようになります。


具体的には【魔法】の属性と【魔力】の量が、色とその濃さで判断できます。


さて、これでベザルを視てみます。


ベザルを包み込んでいるのは薄黒い【魔力】です。


なんて言うんでしょうかね。


光に近づいた時に影ができるじゃないですか?


そんな感じのうっすらとした黒い色が全体を覆っています。


まあ、視えるだけで何もできませんけどね。


「では…決闘を始める。どちらかが戦闘不能になるか、負けを認めた場合に勝敗が決まる。また、どちらかが死亡した場合は生き残った者の勝ちとする。よろしいか?」


「ああ。」


「はあ…わかりました。」


「では…開始!」


どうしましょうかね?


一気に潰してもいいんですが…


「中級魔法【ソイルゴーレム】!」


おや、ゴーレムを出しましたか。


数は二つですか。


ちなみに、ゴーレムは土でできた無骨な人型で、大きさは見上げるほどあります。


【魔法】のレベルが上がるにつれて、より大きく、より多く出せるようになります。


まあ、大きさと多さは反比例の関係ですが…


しかも、ゴーレムは【魔力】が続く限り修復され続けますから、厄介なこと極まりないですね。


まあ、そのために【土属性魔法】に有利な土の多いこの場所を選んだんでしょうね。


「どうだ。僕のゴーレム―――」


グレネードを出し、片方のゴーレムを撃ちました。


爆音が耳を響かせ、爆風がゴーレムを包みます。


煙が消えると、ゴーレムの上半身から上が消し飛んでいました。


「な!なんだそれは!?」


しかし、周りから土が浮き上がり、壊れた部分を修復していきます。


やはり無駄ですか…


まあいいでしょう。


やはり術者を直接狙いますかね。


グレネードをしまい、ブレードを出そうと思ったら、もう片方のゴーレムが私を殴ってきました。


【霊力急進】で回避しましたから無事でしたけど…


「くそっ!どうやって避けたんだ!」


まあ【霊力急進】をいきなり見ても理解できませんか。


「危ないですね。当たったらどうするんですか?」


「何を言っている!殺した方が早く済むだろう!」


なるほど、まあ確かにそうですね。


ルールにあったように、相手が致命傷を負うか、降参するか、死ねば勝ちですからね。


手加減するよりも、最初から全力で叩き潰した方が簡単でしょう。


こちらが体勢を直している間に、ゴーレムを前衛に、自分が後衛になり、無駄に装飾をされた剣を構えています。


なるほど、攻撃はゴーレムに任せ、自分は隙をついて【魔法】を当て、近づいてきたら剣を使う。


戦術的には良いと思いますよ。


相手に一方的に攻撃加え、反撃を許さない。


しかしですね…


「ゴーレムくらい簡単に…」


ゴーレムの攻撃を【霊力急進】で、四方八方に避けながら出すのは射突型ブレードです。


動きが緩慢なので懐にさえ入ることが出来れば…


「破壊できるんですよ。」


ゴーレムの足に射突型ブレードを直撃させます。


数メートルほど吹き飛び、粉々に砕け散りました。


これを完全に修復するには時間がかかるでしょうね。


動きを止めた横から、私を潰すには十分な力を持ったゴーレムの拳が襲ってきました。


それを正面から射突型ブレードで対抗します。


岩が砕けるような音が響き、片腕から崩壊が始まり、それが全身に伝播しゴーレムが崩壊しました。


さて、あとは…


「く、くそ!ゴーレムも使えない…仕方ない、僕が直接やってやる!」


剣を構え、こちらに向かってきました。


相手の手の内がわからないのに単身突っ込む…愚の骨頂ですね。


【霊力急進】で避け、すれ違いざまに一閃…


ブレードに手ごたえ?


もしかして…


「その剣【魔法】でも纏っているんですか?」


「ああそうだ!【土属性魔法】を纏っているからな!当たりさえすれば…!」


なるほど【魔法】を纏っているから、ブレードも透過しなかった、と。


それに【土属性魔法】を纏っているから、硬度が増し、さらに特性である【貫通】も作用している。


「参考になりました。そんな【魔法】もあるんですね。」


おかげで、これからは注意することが出来ます。


無茶苦茶に剣を振り回してきますが、そんなものに当たってやる義理もありません。


【霊力急進】で距離をとり、レーザーライフルを出し、遠距離から一方的に攻撃をします。


修復されたゴーレムが時々攻撃を仕掛けてきますが、それを避けつつ射突型ブレードでゴーレムを破壊します。


それを何回か繰り返したら、ベザルはもう息絶え絶えですね。


「降参…しませんか?」


「だ、誰が…」


こういうのが一番面倒なんですよ。


往生際が悪く、プライドが高い。


プライドが高い故に降参ができずに、ただ粘るだけ。


「それじゃあ仕方ないですね…」


レーザーライフルと射突型ブレードをしまい、ハンドガンを出します。


「死んでもらいますか。」


「なにを―――」


【霊力急進】で距離を詰め、太腿を撃ち抜きます。


「ああああ!わ、わかった。こ、こう―――うべぁ!」


なんてことはありません。


倒れてきたところを【霊力急転】で喉に回し蹴りを入れただけですよ?


何か聞こえた気がしないでもないですが…


まあ、気のせいですよ。


「こ、この決闘―――」


審判をしていた執事さんが慌てたように止めようとしましたが…


「何を言っているんです?降参なんて言ってませんでしたよ?」


「し、しかし―――」


「それに、この決闘を始める際に言いましたよね。この男は戦闘不能でもなく、降参をしてもいなく、死んでもいない。それをこの男も了承していました。あなたに止める権利はありませんよ?」


まあ、喉を潰しましたから声を出せはしないと思いますけど…


「っぐ…」


「わかったらどいてください。決闘に部外者が口を出さないでください。」


さて、仕切り直しです。


ちょっと目を離していると剣を杖代わりにして立ち上がろうとしています。


「まあ、その根性は認めますが…」


ベザルに近づき、ハンドガンをこめかみに当てます。


その眼には涙が溜まっていますが関係ありません。


「確か…死んだら終わりなんですよね?」


引き金を引こうとした、その瞬間―――


【レーダー】に反応?


これは…


【霊力急進】で一気に離脱します。


その瞬間、ベザルに当たらないように、私のいた場所だけを、上下左右あらゆる方向から数十本の土の槍が襲います。


【土属性魔法】ですか。


あの【魔力】の込めよう…おそらくは上級魔法ですかね。


さすがにあの数では【霊力障壁】も容易く貫通してしまうでしょうね。


そして、ベザルの前には男が一人立っています。


「はあ…決闘の邪魔をするんですか?」


「いきなり乱入と不意打ちをしてすまない。それは詫びよう。しかし、こんな馬鹿でも弟なのでな。死なせるわけにはいかんのだよ。」


弟、ということはベザルの兄ですか。


「紹介が遅れた。リュサック家次期当主【No.4】のクレイグ・リュサックだ。これ以上は私が相手になろう。」


【フィジカ】の最高戦力ですか。


眼鏡を通して視る【魔力】は、ゼザルより少し濃くなった黒です。


上級魔法をあれだけ使えば【魔力】も無くなりますか。


これが【No.4】ですか。


「まあいいです。で、審判さん。この場合の勝敗は?」


「あ、ああ。ベザル様はもう気絶している。よって戦闘不能と見なす。この決闘、冒険者の勝利とする!」


そういえば名前を言っていませんでした。


まあ、別に構わないでしょう。


名乗る必要もありませんし。


「それでは、私はこれで…」


それだけ言って、ルビアの元に行きました。


「さて、終わりま…どうしたんです?」


ルビアが口をポカンと開けています。


「イーナさんって…」


「キュキュー」


「そうなんですか。リリウムちゃんはもう慣れたんですね…」


む、何か失礼なことを言われた気がしますね。


「ほら、終わりましたから、早く依頼を終わらせましょう。」


「はーい。」


「キュー」




閑話休題(数十分後)




さて、どうしてこうなったんでしょう?


決闘が終わって、あの館を出て、門を出ることはできたんですよ。


これは安心しましたね。


あの…クレイグって言ってましたっけ?


あの人が話をつけてくれたようですね。


問題はその後、ローブで顔まで隠した人が後をついてくるんですよ。


まあ、たまたま行き先が同じなのかなー、と思ってゆっくりと進むことにしたんですがね…


てくてくと歩けばてくてくと歩幅を合わせ、たったったと走ればたったったと同じ距離を走り、ぴたっと止まればぴたっと止まる。


「ルビア、どうしましょうか?」


「どうしましょう。消しますか?」


「キュー」


ちなみに眼鏡はかけたままなので、ルビアの【魔力】はハッキリと視ることができます。


赤い、紅い、朱い。


今まで見たどんな赤よりも、どんな紅よりも、どんな朱よりも、あかい(・・・)


そんな、表現しか出来ないほどにあかい(・・・)【魔力】です。


その【魔力】がルビアの中で胎動しています。


(ブレス)ですか…


「こらこら、ダメですよ?いきなりそんなことをしちゃ。」


「あれ?私がなにをするかわかったんですか?」


(ブレス)でしょう?この眼鏡のおかげですよ。」


「そうなんですか?(ブレス)がダメなら…」


そう言ってルビアは腕まくりをします。


「だから、そういうことじゃなくて、あ…」


【レーダー】に反応…


あの人の後ろからですね。


しょうがないですね…


「後ろの人ー危ないですよー」


「ぬ?ぎゃー!」


後ろを向いたときに熊のような【魔獣】が走ってくればそれは驚きますよね。


それにあの【魔獣】は…


「ゴラウですね。」


「ちょうどいいじゃないですかイーナさん。依頼も終わらせましょうよ。」


ゴラウは土の【魔法】を使い、後ろの人に攻撃を仕掛けています。


後ろの人も【土属性魔法】を使いながら、なんとか応戦しています。


しかし、初級魔法では地力で負けているのか、徐々に劣勢になっていきます。


「初級魔法【ウォータアロー】じゃ!」


【水属性魔法】の初級魔法を放ちますが、相手は土の【魔法】を操る【魔獣】です。


属性では有利でも、初級魔法では効き目は小さいのでしょう。


土の壁を出してそれを防がれ、更に土を操り反撃をされます。


「うぎゃー!」


それが直撃し、変な声を上げて吹き飛びました。


【魔力障壁】があったので、そこまで大怪我はしてないと思いますけどね。


「それじゃ、ゴラウは任せましたよ?あの人を介抱してくるので…」


「はーい。それじゃ行きますよ!」


「ああ、殺さないでくださいよ?必要なのは爪だけなので…」


「…わかりました。手加減はしますよ。」


そう言ってゴラウに突っ込んでいきました。


凄いですね。


土の【魔法】を片手で受け止めてますよ。


まあ、任せましょうか。


「さて、大丈夫ですか?」


「う…む。頭がくらくらするのじゃ…」


「それはそうですよ。まともに当たったんですし…」


飛ばされた衝撃でローブが破れ、顔が露になっています。


人形のような整った顔立ちの、金髪が映えた美しい少女でした。


「で、どうして私たちをつけてきたんですか?」


「そ、それはじゃな…」


「まあ、それは置いておきましょう。あなたの名前は?」


「妾の名は…キャリルじゃ!」


「へぇ、珍しいですね。ファミリーネームが無いなんて。それに、キャリルって【フィジカ】の第二王女と同じ名前ですね。」


「そ、そうじゃろう。その王女のように綺麗に育ってくれるようにと、母上がつけてくれた名前じゃ。」


「そうですか。それじゃ…」


適当に話を切り上げ、先を急ぎます。


「ま、待ってほしいのじゃ!」


そう言って私の服を掴んできます。


「た、助けてほしいのじゃ。今襲われて…」


「ああ、大丈夫ですよ。もう終わると思います。」


ふと見てみるとルビアがゴラウを圧倒していますね。


土の【魔法】を放たれてもそれを破壊し、土の壁を作ってもそれを破壊する。


ゴラウって強い【魔獣】のはずですけど、さすがに【魔獣】の頂点である竜にはかないませんか。


「あ、あの女性は―――」


その時、地面が揺れました。


「イーナさーん。終わりましたよー」


ゴラウが倒れていますね。


外傷も見当たらず、息もしているようなので、死んではいないようです。


「ご苦労さまでした。じゃあ、爪を…」


折るのは可哀そうなので、袋の中に何か…


その時、何かの呻き声が聞こえました。


「イーナさん。これでいいですか?」


ルビアが手に持っていたのは、鳥のくちばし程の大きさもある爪です。


「ちょっ、ルビア!無理矢理折ったんですか!?」


「はい。切る道具も持ってませんし。」


ゴラウの前足から血が流れています。


「はあ…驚いてるところすみませんが、回復魔法とか使えませんかね?」


「え?あ…使えることは使えるが…」


「じゃあ、ゴラウにお願いします。あのままじゃ痛そうなので…」


「う、うむ。わかったぞ。」


キャリルさんがゴラウに近づき【魔法】を使います。


「中級魔法【ヒーリング】」


そう唱えたかと思うと、血が止まり新しい爪が生えてきました。


他の爪とは大きさが違いますが、その内伸びてくるでしょう。


「ふう、終わったのじゃ。」


「イーナさん。一本でいいんですか?」


そういえば何本あればいいのか聞いていませんでしたね。


「まあ構わないでしょう。ダメだったらそれでも構いません。」


別にお金にも困っていない事ですし。


私たちは来た道を戻ります。


「ちょ、ちょっと待ってほしいのじゃ!」


「ああ、ありがとうございました。私たちは【フィジカ】に戻ります。キャリルさんもご自分の用事を済ませては?」


「あ、あの、それなんじゃが…」


キャリルさんが何かを決意したように、どことなく恥ずかしそうに…


「わ、妾のものになってほしいのじゃ!」


とんでもないことを言いました。

はい、どうだったでしょうか?


あの少女は何者だったのか?


次回、明らかになる!?


…まあ、今でもわかる人はわかると思いますが。


それと、クマに遭遇した時に死んだふりをするのは論外です。


目を外さないようにしてゆっくりと後退りをしましょう。


あとは坂道を下れば逃げれるって猫田さんが言ってた気がする。


感想、意見、その他諸々、お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ