第十一話・ダチョウは空を飛ばないのではなく、飛べないのです
はい、第十一話投稿いたしました。
戦闘シーンが少ないのは仕様です。
ええ、仕様ですとも。
決して苦手なわけじゃ…
ない…はず?
まあ、第十一話始まり始まり…
おはようございます。
イーナこと伊那楓です。
それと、私の旅に着いてきた【白竜】の子どものリリウムです。
そういえば竜の生態には謎が多いんですよね。
なぜですかって?
比較的捕まえやすい子竜を捕まえようとしても、親が守っているので排除されるからですよ。
リリウムは本当に例外です。
それに、長く生きた竜は人間に擬態することも可能だと言いますし。
まあ、私の生きている間には見れなさそうですが…
それはそうと、昨日はギルドに登録をしました。
今日もギルドで依頼を受けることにしましょう。
リリウムには引き続き、袋の中に入ってもらいます。
それにしても、私の頭の上がそんなにいいものなんですかね?
まあ、この国から出て、他の国に行く道中には袋から出して頭に乗せてあげますか。
閑話休題
さて、ギルドに到着しました。
昨日に引き続き、中はざわざわと騒がしいです。
受付には昨日に引き続き、リーナさんが座っていました。
「おはようございます。リーナさん。今日も騒がしいですね。」
「はい、おはようございます。いつもならこの時間はもっと静かなんですけどね。やっぱり昨日の件がありますから。今日も来てますよ。ほら、あの人ごみの真ん中に。」
どうやら昨日の男が騒ぎの中心のようですね。
「まあいいです。それじゃ、今日も依頼を受けたいと思いますので。」
「そうですか。それじゃあ依頼板から選んで持ってきてくださいね。」
そして依頼板を見に行きます。
「さて、何がいいですかね。」
依頼板の中でも、ジャラスの駆除、ネスラー草の採取、大岩の排除が目を引きます。
とりあえず全部持っていきますか。
「それじゃ、これお願いします。」
「はい、ジャラスの駆除、ネスラー草の採取、大岩の排除ですね。承りました。少々お待ちください。」
処理が終わるのを待っていると大きい声が聞こえてきました。
「ああ!?ふざけてんのか!俺ぁ、【No.17】だぞ!そんな端金で使われてたまるか!」
件の男が何か揉めているようです。
そばにいた女性に話を聞きます。
「あの男の人、どうかしたんですか?」
「え?ええ【No.17】になったから、他のチームから勧誘が来てるの。でも金が少ないって威張り散らして、でも【No.17】は相当強いから反抗もできなくって。」
なるほど、よくあることですね。
強いものを自分で倒し、自分の力を過信する。
まだ自分より強いものなど、たくさんいるのに…
しかし、自分の力を過信するならまだしも、それどころか…
「ありがとうございました。それでは依頼がありますので…」
「あ、ちょっと待って。」
女性に呼び止められます。
「どうかしましたか?」
「あなたもギルド員なんでしょ?私のチームに入らない?」
「いえ、私は一人でいる方が気楽ですし、もうすぐこの国から離れる予定ですので。それにギルドに登録したのは昨日ですよ?」
「そうなの?」
「ええ、これから依頼を受けて、明日にでも出るつもりです。」
「じゃあ、チームに入るわけにはいかないわね。私のチームはこの国を中心に活動してるから。」
「でしょう?ですから、いいんです。」
「イーナさん。処理終わりましたよ。」
リーナさんに呼ばれました。
あまり待たせても悪いですね。
「それでは…」
「ええ、今度会ったときはよろしくね。」
だからチームに入る気はないですって…
それはそうと、受付に行きます。
「イーナさん、それじゃあ依頼ですが、ネスラー草の採取は昨日受けたからわかると思いますが、ジャラス十匹の駆除なんですが…」
ちなみにジャラスというのは、ダチョウのような空を飛ばない【魔獣】です。
【魔獣】というのは【魔法】を扱う動物の総称です。
この【魔法】は人間の扱う【魔法】とは厳密に言えば違うものですが…
【魔法】を扱うということは、同時に【魔力障壁】も展開しています。
この【魔法障壁】の存在が、依頼者がギルドに【魔獣】の駆除を依頼する一番の原因です。
【魔法】を使えない【人間】にとって【魔力障壁】が一番の壁ですから。
そこまで強くないので、一匹程度なら魔法学校を卒業した程度の腕前で倒すことが出来ます。
しかし十数匹単位の群れで行動していますので、あまりに多いと倒しきれないことも多々あります。
このジャラスは風の【魔法】を使います。
【人間】でいう初級と中級の間くらいの威力ですかね?
「ジャラス十匹の駆除なんですが…倒した証拠として、尾羽を一枚抜きとってきてください。」
「尾羽…ですか?」
「はい、そこがジャラスにとっての【魔具】なんですよ。それを加工して【魔具】を作ったりもしますよ。」
「でも、尾羽っていっても…」
「大丈夫です。一本だけ鮮やかな色の羽がありますから。それを抜き取ってくれば大丈夫です。」
それなら大丈夫ですかね。
「分かりました。」
「それと大岩の排除なんですが、これは近くの町からの依頼ですので、その町の町長さんに会ってから現場に向かう形になります。その町で報酬も受け取ってください。」
そうなんですか…
「わかりました。では、採取と駆除を終わらせてから、その町に行くことにしますよ。ところで、その町の名前は?」
「ええっとですね。この国から北に行った【コーラル】という町です。」
北ですか…【アンヴィーラ】でもう用事もないですし、終わったついでに【フィジカ】にでも行きますかね。
宿も引き払った方がよさそうですね。
「それじゃあ、早いところ終わらせてきちゃいますね。」
そう言ってギルドを出ます。
じゃあ、急ぎますかね。
閑話休題
さて、森に着きましたよ。
リリウムも袋から出ることが出来て、清々しそうな顔をしています。
もちろん頭の上に飛び乗ってきましたよ。
さてと、ネスラー草は森の色々な場所に生えているから大丈夫なんですが、問題はジャラスなんですよね。
この広い森の中でジャラスを探すのは一苦労です。
【レーダー】で探してもいいんですが、ジャラスは警戒心が強く、人間が近づくとすぐに逃げてしまいます。
やはり遠距離から狙うしかないですかね。
「まあ、とりあえず。【レーダー】」
広範囲を索敵するために【レーダー】を出します。
「多分これですかね?」
西におよそ200mほどの場所に、十数匹が群れているようです。
逃げられない内に、連続で【霊力急進】を発動し、近づきます。
「キュッ!キュー!」
リリウムが悲鳴を上げているようですが、まあ…慣れですよ。
構っている暇もありませんし。
「やはり逃げますか、でも…」
ジャラスが逃げるスピードよりも、私が近づくスピードの方が確実に速い。
…見えてきましたね。
右腕にレーザーライフルを出し、近くにいた一匹を撃ちます。
鳴き声を上げる暇もなく気絶したようです。
まあ、弱めのレーザーライフルなのでその内に起きるでしょう。
それよりも…
「まあ、大丈夫でしょう。」
どうやら、仲間をやられて激怒しているようです。
ジャラスたちが数匹で固まっています。
風の【魔法】ですか…
その直後、ジャラスの風の【魔法】が発動し、木が切り刻まれ、地面が抉れました。
しかし…
「やはり【霊力障壁】を貫通できる程度ではありませんか。」
【霊力障壁】を展開させている私には届かず、僅かに減衰させる程度でした。
それもすぐに修復されますが…
「さて、結果はわかったでしょう?すぐに済みますので、安心してください。」
ジャラスが矢鱈滅多に風の【魔法】を発動させますが、私に届くわけもなく、無駄なだけです。
このまま無駄撃ちさせていても、【魔力】切れで気絶するのを待ってもいいんですがね…
「さすがに時間がかかってしまうので…」
左腕にもレーザーライフルを出し、近くにいたジャラスを銃撃します。
ジャラスが一斉に逃げ出そうとしますが、逃がしませんよ?
閑話休題
いや、殺してはいませんよ。
ただ気絶させただけです。
まあ、十分もしない内に起きると思いますよ。
「それじゃ、必要なのは尾羽だけなので、失礼しますよ。」
一匹ずつ、色鮮やかな尾羽を抜いていきます。
なるほど、手触りがよく、綺麗な尾羽ですね。
必要な尾羽は十枚なので、数枚余りますね。
どうせなら貰っておきましょうか。
「キュー!キュー!」
「リリウムも触りたいんですか?ほら…」
リリウムにジャラスの尾羽を渡します。
リリウムが前足を器用に使って、羽を弄っています。
ちょっ、くすぐったいですって。
首は、首筋は弱いんですよ。
羽が首筋にさわさわと当たり、悶絶していると…
「おお、丁度いい具合だな。」
ギルドで騒ぎの中心にいた男が、茂みの奥から出てきました。
まあ【レーダー】で確認はできていましたが、今まで無視していたんですがね。
「それで、何の用ですか?」
「ああ、おれは【No.17】だ。それで、俺もこの依頼を受けたんだ。これだけ言えばわかるだろ?」
依頼の横取りですか…
まあ、別にいいんですが…
「それでは、私が持っている尾羽を横取りする、ということですか?」
「まあ、そういうことだ。ジャラスの十匹やニ十匹、楽勝だったがな。それにしても…」
【No.17】が倒れているジャラスを一瞥します。
「なんでこいつらまだ生きてんだ?まあ、邪魔だしな。止め刺しといてやるよ。」
そう言い、持っていたナイフで、ジャラスの胴体を刺しました。
ジャラスは断末魔を上げて、息絶えたようです。
「で、とっとと証拠を渡してくれるか?それと、その【白竜】の子どもも貰っておこうか。高く売れそうだしな。俺は【No.17】なんだ。戦いたくはないだろう?」
そう言って男は杖を取り出しました。
「さっきから…」
「ああ?」
「【No.17】【No.17】と何度も言っていますが、それを言う前に、実力行使でもなんでもすればいいじゃないですか。」
「は?」
「それをしないということは―――」
【霊力障壁】に火でできた矢が衝突しました。
これは【火属性魔法】の中級魔法【フレイムアロー】ですかね。
中級魔法程度では、もちろんのこと私は無傷ですが。
「うるせぇんだよ!【No.17】が本気を出せば、これくら―――」
「【No.17】なんですから、上級魔法くらい使えるでしょう?」
「な…てめぇは!」
「さて、どうしましょうかね?」
「キュー!キュッキュ!」
おや、リリウムもそう思いますか。
「やはり、実力で【No.17】にならないと大したことありませんね。」
「…そりゃ、どういうことだ?」
「何を言っているんですか?元【No.17】の人のギルドカードを奪ったんでしょう?」
「は、何を言ってやがる。それは俺の実力で―――」
「気を失っている人のカードを奪って、それを実力、と言いますか。」
「な!?」
「さあ、何故知っているんでしょうかね?あなたしか知らないハズの出来事を知っている。何故でしょうかね?」
「ま、まさか…」
「まあ、そんなことはどうでもいいんです。」
「は?」
「【No.17】だった人も、その辺は覚悟出来ていたでしょうし、特に追求するつもりもありません。」
「な、なら―――」
「しかし、私はあなたを許すことはできません。」
ジャラスに使ったレーザーライフルよりも更に弱い、パルスライフルを出します。
実弾ではなくEN…つまり【霊力】をマシンガンのように連射する兵器です。
そしてもう一つ、ハンドガンを出します。
これも威力が比較的弱く、実弾ですがね。
まあ、死にはしませんよ。
死には…
「な、なんだそりゃ!?【魔具】か!?」
「どうでもいいことです。あなたには、死ぬよりも苦しく、地獄よりも辛く、痛みで気絶をしても、更に強い痛みで目を覚ます。そんな目にあってもらいます。」
「キュー!キュキュッキュー!」
おや、リリウムも嬉しそうですね。
リリウムと出会ってまだ少ししか経っていませんが、リリウムも中々過激ですね。
まあ、そうでないと、私と一緒に旅なんてできないと思いますが。
「さあ、あなたには痛みを、苦しみを、悲痛を、苦悩を、与えましょう。そして、身体的に、精神的にも―――」
「しょ、初級魔法【ファイアアロー】!」
初級魔法【ファイアアロー】が飛んできますが、【霊力障壁】の前には無意味です。
「―――死んでもらいます。」
「キュー!」
さて、始めましょう。
一方的なものになってしまいそうですが…
はい、どうだったでしょうか?
主人公の怒る理由はただ一つです。
まあ、大体分かると…
分かりますよね?
ダチョウは地上を走ることに特化した鳥で、空を飛ぶことはできません。
しかし、その脚力たるや人間を殺してしまうとか…
街で見かけても決して近づかず、警察や保健所に連絡しましょう。
感想、意見、その他諸々、お待ちしております。