第十話・ギルドへの登録ってアルバイトみたいなものですか?
はい、第十話投稿いたしました。
主人公がギルドに登録します。
ギルドって定番ですよね。
書いてて自分でも混乱してきた(笑)
けんども、第十話始まり始まり…
なんとか【アンヴィーラ】に入国できました。
イーナこと伊那楓です。
やはり竜、それも最強種と呼ばれている【白竜】です。
人目につくと騒ぎにもなりそうです。
なので、なんでも入るこの袋に入るように言ったんですよ。
しかし、頭の上が気に入っているらしく離れようとしてくれません。
離れるように言っても
「キュッキュッ!」
って言いながら、首を振って拒否します。
無理矢理剥がそうとしても頭に噛み付いて離れようとしません。
その度に私の頭が痛くなります。
仕方が無いので【アンヴィーラ】に着いたら果物を買ってあげるって言ったら、渋々ながらも頭から離れてくれました。
袋に入ることにも難色を示したものの、これも果物で手をうってくれました。
どうやらお肉より果物の方が好きなようです。
それでも、袋の中が嫌なのか、袋から頭だけ出しています。
…なんとか隠し通しましたよ?
ちなみに入国税は1000Sでした。
手持ちが全くなかったので、袋から指輪を全部出し、ここでも【鑑定魔法】で換金してもらいました。
なんと、そしたら全部で30000Sもしました。
どうやら指輪の一つが希少な【魔具】だったようで、それが高値だったようです。
袋の中身は首飾りと食料、それと竜です。
一つだけ異色ですね…
とりあえず宿を見つけましょうか。
閑話休題
なんとか宿を発見して、とりあえず三日ほど宿を取りました。
ギルドに登録さえすれば、他の国でも依頼が受けれるとベルさんも言っていましたし、長居する気もありません。
【アンヴィーラ】に来た目的はギルドに登録するためですよ?
しかし、この宿はただ寝るためだけの物だったので、朝食と夕食は出ません。
そして、袋の中の食料を確認しようとしたんですが…
「で、何故あなたはこんなことを?」
「キュ…キュキュゥ…」
「いえ、そんな事は聞いてないんですよ。」
『い、いやお腹が減っていたもので…』とでも言っているかのようですが、目を見ると目をそらします。
袋の中は、綺麗に食べられた果物の食べかすと、干し肉数枚が入っていました。
本当に果物がお好きなようで…
「まあ、果物を食べたことは許しましょう。また買えば済むことです、あまり置いておいても腐ってしまいましたし…」
「キュッ…キュキュッ!?」
『ほ、本当か!?』とでも言っているように、嬉しそうに声を出しています。
「しかしですね…」
「キュ?」
「何故果物だけなんですか!私も食べたかったのに!」
【グラブス】で買った果物が【アンヴィーラ】にもあるとは限りません。
あのアルモはお気に入りだったのに…
「キュ!?キューッ!?」
『な、なんだと!?あんなにまずかったのに!?』と言っているような目で、こちらを変な目で見てきます。
「まずかったのなら残しておいてくださいよ!まだ五個もあったのに!」
今日も今日とて平和です。
閑話休題
ギルドを発見しました。
宿から歩いて十分ほどの場所で、かなりの大きさです。
入ってみると中は体育館のように広くて薄暗く、人がたくさん椅子に座っています。
奥の方にカウンターがあるのでそこで登録をするんでしょう。
到着するまでにまわりから『なんであんなガキが?』とか『ガキがギルドに来るんじゃねぇよ…』と言われていたようですが、放っておきましょう。
さて、カウンターに到着しましたが向かいの席には、綺麗な女性が座っていました。
「はい、ギルド【セントル】へようこそ。私は当ギルドの受付をしております。リーナ・マテイカと申します。今日はどのような件で?」
「あの…ギルドの登録をしたいんですけど…」
「はい、ギルドの登録ですね?では、この用紙に書いてあることを読んでサインをお願いします。」
渡された紙には、A4用紙に細かい文字でビッシリと書いてありました。
「ずいぶんと多いですね…」
「はい、やはりきちんと読んでもらってから、納得してもらわないといけませんので。」
そこに書いてあることを要約すると、こんな感じです。
1.ギルドは依頼者とギルド員との仲介をする組織であり、そこにトラブルがあってもギルドは一切関与しない。
2.もし依頼中に負傷、又は死亡したとしても、ギルドは賠償、損害、その他一切の責任を負わない。
他にも細々と書いてありましたが、大事なのはこの二つですね。
「わかりました。この紙にサインをすればいいんですね。」
そこにイーナと書き込みました。
「はい、イーナさんですね。ではこのギルドカードをお受け取りください。」
そういって渡されたカードには私の顔写真と名前、依頼の受諾数が書いてありました。
「このカードを紛失されると、カードに記載されていた事項も無効になります。再発行はできませんのでご注意ください。」
「あの、ここに空白がありますけど、なんでしょうか?」
カードの左半分に顔写真、右上から名前、依頼の受諾数と書いてあり、右の下半分が空白です。
「はい、それを説明するにはギルドのシステムから説明しなくてはいけませんが、よろしいでしょうか?」
「よろしくお願いします。」
「それでは…世界には【アンヴィーラ】の他に、東に【オーガニー】西に【アナリティカ】南に【アプライド】北に【フィジカ】があり、それぞれの国にギルドがあります。東の【オーガニー】には【エアスト】西の【アナリティカ】には【エスト】南の【アプライド】には【ソートフ】北の【フィジカ】には【ノルス】があります。それぞれの国に属している町にもギルドがあります。よろしいでしょうか?」
「はい、続けてください。」
「そして、それぞれが【No.】で【No.1】から【No.40】まで39人が順位付けがされています。そして【No.】を持っているものには、このマントが支給されます。」
そう言ってマントを取り出しました。
「【No.】ですか?」
「はい、例えばですが…【アンヴィーラ】を中心に依頼を受けている【No.39】がいるとします。その人のカードには【アンヴィーラ・No.39】と書かれることになります。書くか書かないかは本人が決めることが出来ますが、書いておくことでその国で優遇が受けられますので、書いておくことをお勧めします。」
「わかりました。ところで【No.】を得るには?」
「それには【No.40】に勝利する必要があります。基本的に上の【No.】は下の【No.】との決闘の拒否権がありません。しかし、【No.40】といっても選りすぐりの中の一人ですので、簡単には勝てません。」
「じゃあ【No.】ってどうやって決まるんでしょう。」
「はい、この順位は年に数回【アンヴィーラ】で開催される試合で【No.6】から【No.40】まで決められます。その他にも、上の【No.】と決闘をして、勝利するとその【No.】を得ることができます。しかし【No.1】から【No.5】はそれぞれの国と契約を結んでおり、交代することはほとんどありません。【No.1】から【No.5】の【No.】を得るためには【No.6】になってから一対一の決闘を申し込み、それに勝利する必要があります。なお、現在の【No.2】から【No.5】ですが、それぞれの国の象徴になっている【属性魔法】に特化しており【アンヴィーラ・No.1】はすべての【属性魔法】を極めています。」
「なるほど、大体わかりました。」
「わかってもらえたようで何よりです。それと、これは警告ですが…」
「はい?なんでしょう?」
「もしも…ギルドに所属している間に殺人などの犯罪が目に余るようでしたら【No.1】から【No.5】までのいずれかが粛清に向かいますのでご注意ください。」
リーナさんが目を鋭くして告げました。
「そういうことを言う、ということは以前にそのようなことが?」
「はい、聞いた話になりますが、百年ほど前に一人だけ、当時の【No.1】から【No.5】が粛清に向かいましたが、【No.1】【No.2】【No.5】は死亡【No.3】と【No.4】は重症を負いました。なんとか粛清はしたようですがね。その犯罪者ですが【No.39】と【No.】は最低位だったんですが、その強さはかの【白竜】を上回る程だったらしいです。今では半ば伝説のようになっていますがね。」
「犯罪者、といってもどういった罪ですか?」
「これも聞いた話ですが、当時の【オーガニー】【アプライド】【フィジカ】に壊滅的な被害をもたらし【アンヴィーラ】は半壊。故郷と言われていた【アナリティカ】もほぼ壊滅です。世界の人口の五分の二が死亡したと伝えられています。驚くところがこれが一晩の間に行われたところです。」
「一晩で、ですか?」
「どうやったのか、何故あのようなことをしたのかは今も分かっていません。ギルドではこれを忘れない為に【No.39】を欠番としています。」
「なるほど、それで39人と言ったんですか。」
「はい、説明は終わりましたが…イーナさんっておいくつですか?」
「どうしてそんなことを聞くんです?」
「いえ、見かけは魔法学校に入学したての子どもなんですが、それにしてはやけに落ち着いていますし…」
「まあ、20歳は超えていますよ。」
「…もしかして【エルフ】ですか?」
「いえ、人間ですよ。」
そういって耳を見せます。
「…本当ですね。何度も【エルフ】を見ていますが…【エルフ】と間違えてしまってすみません。」
「いえ、気にはしていませんので。」
「それにしても【エルフ】じゃなくてよかったですよ。もしかしたら殺されていたかもしれませんし…」
「どういう事ですか?」
「いえ、数年くらい前からなんですがね。ギルドに登録した後の【エルフ】が次の日に殺害される事件が起きているんですよ。犯人の痕跡が全くないからギルドにも手が出せなくて、放置されている状態ですが。」
「へぇ、私も狙われてしまいますかね?背も小さいですし。」
「まあ、ここ数年は【エルフ】が登録に来ることも少なくなりましたから、大丈夫だと思いますけどね。」
「それじゃあ、今日は依頼を受けて帰りますよ。」
「そうですか。依頼はあの依頼板に張ってありますので、選んだらこちらに持ってきてください。」
「分かりました。いろいろありがとうございました。」
お礼を言って依頼板に向かいます。
依頼板を見てみると、たくさんの紙が無造作に貼られています。
上に新しいのが貼られているんでしょうか?
ペラペラと捲っていくと丁度いい依頼を見つけました。
「これでいいですかね?」
それを受付に持っていきます。
「あ、イーナさん。依頼決めましたか?」
「はい、これお願いします。」
「承りました。少々お待ちください。」
「そういえば、この依頼ずいぶん下の方にありましたけど…」
「ああ、そのことですか。あまり人気のない依頼は受注する者も少なくてですね。こういった採取系の依頼は特に人気が無くって…基本的には三日受注者がいないと、専属ギルド員たちが受注することになるんですが…」
「専属ギルド員ってなんですか?」
「その国のギルドと専属契約を結んだ者たちのことですよ。契約した国のギルドでしか依頼を受注できませんが、国によって様々な好待遇を受けられます。それに、一定額の給料も出ますのでギルド員よりは安定していますかね?」
なるほど、ギルド員はアルバイト、専属ギルド員は正社員、ってところですか。
「まあ、ギルド員の方が色々な国を周ることができるので、冒険者には向いていますけど…はい処理が終わりました。これで依頼を受けられますよ。依頼品をこの場所に持ってきたら報酬をお支払いいたします。」
「わかりました。それじゃあ、行ってきます。」
「あ、待ってください!イーナさん!」
「え?なんです?」
「大事なことを言い忘れてました。ギルドでは完全実力主義を採っていまして。依頼には複数のギルド員が受注する場合があります。依頼を受けている時に、他のギルド員が成果を横取りしようとしても、それはご自身で対処してください。」
「それは、どういった意味でですか?」
「どう対処するかはご自身の判断です。素直に引き渡すか、抵抗するのかも、すべて自由にしてください。それと、相手が【No.】を持っていた場合にギルドカードを奪って、受付に提出すれば、その【No.】を自分の物にできます。」
「それってかなり無茶なんじゃ…」
「はい、このギルドが出来て以来、達成した人はまだ数人ほどしかいません。まあ、【No.】を持っているってことはそれだけ強いってことです。」
「まあ、心に留めておき―――」
ますよ。と続けようとしたら入口の扉が乱暴に開かれ、ギルドの中が一瞬だけ静まりました。
扉を開けたのはまだ若い男の人のようです。
その人がこちらに近づいてきます。
「おっと、ごめんな嬢ちゃん。まだ話し中かい?」
「いえ、私はもう用事が済みましたので。」
そう言って受付から離れ、ギルドから出ました。
ギルドの中が騒がしいようですが、まあいいでしょう。
さて、森に採取に行きますか。
閑話休題
ふう、ようやく終わりました。
依頼にあったネスラー草とサルド草がなかなか見つからず、夕方近くまでかかってしまいました。
ギルドに入るとざわざわと騒がしいですね。
「あ、リーナさん。依頼終わりましたよ。」
「イーナさん。ご苦労様です。では、依頼書にあったものをこちらに。」
「はい。ネスラー草とサルド草です…あ。」
それぞれを袋から出そうと思ったところ、【白竜】が袋から頭を出してしまいました。
すぐに頭を掴んで押し込めましたが…
リーナさんを見ると、目を見開いてこちらを見ていました。
「い、イーナさん。今のは…」
「いえ、まったく、ちっとも、全然、何も見えませんでしたが。どうかしましたか?」
内心冷や汗ダラダラで答えました。
「い、いえ【白竜】みたいなものが見えたものですから…」
「気のせいではないですか?こんな小さい袋に【白竜】なんて入るはずないでしょう?」
そう言って袋を見せます。
「そうですか…【エルフ】が作る、なんでも入るカバンがあると聞いたことがあるので…」
「へえ、そんな便利なものがあるんですか。ぜひとも欲しいものですね。」
なんとかごまかせたようですね…
リーナさんに依頼料の700Sを渡されました。
「それじゃあ、これで…ところでどうしてこんなに騒がしいんですか?」
「ああ、この騒ぎですか?イーナさんがいるときに男の人が来たじゃないですか?その人が【No.17】のギルド員を倒したって騒ぎになっているんですよ。」
「へえ【No.17】を…ですか。」
「その人が今日の朝に倒したっていうことでですね。騒ぎになっているんですよ。」
「その人がどうやって【No.17】を倒したんでしょうかね?」
「さあ…そこまでは。でも本当に凄いですよね。【No.17】はいつも数人のグループで行動しているんですが、その人たちごと倒したって事なんですから。」
「なるほど、【No.17】っていうのはそこまで強いんですか。」
「それはそうですよ。火の上級魔法を使って、実力で【No.17】までになったんですから。それを倒した男性はそれ以上の強さのハズですよ。」
「ふーん、そうですか。」
「【No.17】にもなると、上位クラスの強さですからね。ギルドも専属契約しようと動いていると思いますよ。」
「まあ、理解しましたよ。それでは、また明日にでも来ます。」
「はい、では。」
さて、宿に戻りますか。
決めたいこともありますし。
閑話休題
さて宿にも到着し、夕食も食べ終わりました。
【白竜】はもちろん果物しか食べなかったですよ。
「さてと、お腹もいっぱいになりましたね。」
「キュ…キュウゥ…」
お腹がいっぱいになって【白竜】が眠そうに目をこすっています。
「でも、寝るのはちょっと待ってください。」
そう言って【白竜】を膝の上に乗せます。
【白竜】もさすがに食事の時は頭から降りてますよ?
「決めたいことですが…だから寝ないでください。大事なことなんですから。」
眠たそうな【白竜】の頭を撫でながら話しかけます。
「決めたいのはですね…あなたの名前です。いつまでも名前を呼ばないわけにもいかないでしょう?」
「キュウ…キュッキュッ…」
「それであなたの名前ですがね…リリウムはどうでしょうか?」
「キュウ…?」
「この名前はですね。私の世界の…花の名前です。あなたのように…いえ、リリウムのように白くて、綺麗な花の名前です。それに…いえ、これはリリウムが大きくなったら言いましょうか。今のリリウムには似合いません。」
「キュ…」
私には竜の言葉は分かりませんが『いいよ…』とでも言っているようでした。
リリウムに毛布を掛けて、ベッドに横になります。
「これからよろしく、リリウム…」
「キュウ…」
目を閉じ、眠りにつきます。
意識がなくなる前に…
懐が、ほのかに暖かくなった気がしました。
はい、どうだったでしょうか?
【No.17】までいくと一般の魔法使いじゃ太刀打ちができません。
それ以上の【No.】でもないと相手にならない、ハズですが…
まあ、弱肉強食、実力主義、勝ったものが強く、負けたものが弱い、そんな世界ですからね。
ちなみにリリウムってのは百合の学名ですよ?
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