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異世界に召喚したくせに、無能という理由で追放ですか? そういうのなら仕方ありません。出ていきます。  作者: lili


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第九話

 王宮内にある自室での休憩中のことである。

 オレはベッドの上に横になりながら、スマートフォンの画面を見ていた。

 調べていた内容は、異世界から元の世界に帰る方法である。

 実はオレら以外にも異世界に召喚された人間がいないか、そしてもしもいたのなら、何か元の世界に戻るための情報を知らないか、そんなことを思い、ネットで情報を集めていたのだ。

 と、何やらこんこんとドアがノックされ、オレはドアのほうに目を向けた。

 あの不良の男がまたスマートフォンの充電をしてくれ、ソーシャルゲームができねえんだ、なんてまた言いに来たのだろうか。

 まあ仕方ない。

 不良男のスマートフォンの充電でもやるかと思いながら、よっこいしょと声に出して、ドアの前まで行く。

 と、声がした。

 不良男の、リュウノスケの怖い声がするのかと思ったら、違った。

 その声はかわいらしいまるでアイドルのような声だった。

「あの……ちょっといいですか?」

「あ……はい」

 一体何の用だろうか?

 こんなおっさんに何か用などあるのだろうか?

 それとも異世界召喚されたのに、ただ一人だけ無能なおっさんを見て、罵倒しにでも来たのだろうか?

 とはいえ、たとえ罵倒されることになったとしても、このドアを開けないといけないだろう。

 ガチャ、とドアが開く音がして、そのドアの先には可憐な少女がいた。

 千年に一度くらいにしか出現しないであろう可憐さを持つ美少女。

 クラスのアイドル的な存在を放つ、女子高生ミコトである。

 こんなアイドルみたいに可愛い少女が、一体こんなおっさんになんの用だろうか?

 罵倒か?

 なんで学生の中に一人だけおっさんがいるんだよ!?

 とでも罵倒されるのだろうか。

 だがこんな美少女になら罵倒されても構わない。

 なんてどうでもいいことを思っていたら、ミコトは言った。

「あの……おっさんさん」

「はい」

 いや、おっさんさんって、何だよ。

 リュウノスケみたいに人のことをはげとか呼ぶよりはましだけどさ。

 おっさんさんってなんなんですかね。

 と、ミコトは言った。

「あの……おっさんさんにどうしても頼みたいことがあるんです」

「はあ……」

 一体何を頼まれるのだろうか。

 おっさんが一緒にいるのが苦痛だから、一人だけさっさとここから去れ、とかそんな感じだろうか。

 だがそれはあんまりである。

 異世界から元の世界にかえる方法も見つかっていないのに、おっさんだからという理由で追放されるなんて。

 なんて被害妄想じみたことを考えていたら、

「これ……おっさんさんにお願いしてもいいですか?」

 というミコト。

 絶世の美少女が何やら頭を下げてきたわけだが……。

 一体これはどういう展開だろうか。

 訳がわからないよ、と思いながら、目の前に突き出されたものを見たら、それはスマートフォンだった。

 ピンク色の色をしたスマートフォンが、なんだか小さなかわいらしい手をしたミコトの手の中にちょこんとある。

 ん?

 これはまさか……オレにこのアイドル的な少女のスマートフォンの、充電をしろということなのか?

 なんだかそんなことを考えて、いや、それは違うんじゃないか?

 という考えに至る。

 だがミコトは言った。

「お願いします! おっさんさん!」

 というミコト。

「あ、さん付けなくていいです」

 というオレ。

「あとスマホの充電もしておくんで、スマホの充電が終ったら、とりにきてもらってもいいですか?」

 というオレ。

 なぜだろうか。

 相手のほうがはるかに年下なのだが、敬語になってしまうオレ。

 なんか相手が不良だったり、妙に優等生ぽかったり、クラスのアイドル的美少女だったりすると、どう接していいかわからなくなるのである。

 だが相手は特に気にしていないようで。

 ミコトは何か少しの間、考えた顔をしてから、ぱあっとした笑顔で言った。

「ありがとうございます! おっさん」

 というミコト。

 クラスのアイドル的存在ミコトは一言そういうと、元気いっぱいに頭を下げて、そしてどこかへと行ってしまったようだ。

 さすがはアイドルである。

 なんだかいい匂いがしたな、これがアイドルか。

 オレにも若いときがあったな、と思いながら、不良娘とアイドル娘では全然性格が違うんだなと思いながら、オレは開いていたドアを閉めた。

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