第三十二話
紅蓮の炎との食事は本当に楽しかった。
酒を飲んだり、食事を食べたり、顔を真っ赤にしたアレクが酒にのまれたり、そう思っていたらすぐにテーブルに突っ伏していつの間にか寝ていたり、そんな久しぶりに楽しい仲間との食事だった。
本当に楽しい時間だったので、時間が過ぎ去るのも忘れ、オレたちは、オレ、エルマ、エレン、サックの三人は酒ばかり飲んで、この夜の時間を過ごした。
酒というのは最高だ。
うまいし、そして仲間との楽しい時間を過ごせるし。
まあ酒にのまれて、寝ているやつもいるが、まあこれはこれで別にいいだろう。
アレクの奴め、A級の冒険者のくせして、酒がこんなに弱いとはな。
もうちょっと酒に強い冒険者になってほしいところである。
仲間になったのなら、オレくらいに酒の強い冒険者にならないと、今後に苦労するぜ。
なんせオレは仲間の冒険者に酒をすすめ、つぶれさせるのが好きなのだから。
さて、アレクはもう酒につぶれているから仕方がないが、この仲間の冒険者である、エルマ、エレン、サックのやつはなかなかつぶれやしねえ。
なんだこいつら。
オレだって相当酒に強いはずなのに、どうしてこいつらはこんなにも酒に強いんだ。
A級の冒険者ってのは、冒険者ランクの高い冒険者ってのは、戦闘に強いだけではなく、酒にも強いってのか?
オレは戦闘だけではなく、酒の強さでも仲間に負けるつもりはなかったので、意地になって酒を飲む。
と、エルマが酒を大量に飲んだにも関わらず、全く顔色が変わらない様子でこっちに寄ってきた。
「どう? サトウ、楽しんでる?」
「ああ」
うまい飯とうまい酒をたらふく飲めて、オレは幸せだった。
こいつらいつもこんなパーティーみたいなことをやっているのだろうか?
よほど稼いでいるのだろうか。
と思えるほどに、大量の飯を、そして大量の酒を飲んでいる。
酒場への支払いが心配になるほどに、本当に大量の酒や食い物を消費しているのだ。
「今日はサトウが仲間になった記念の日でもあるんだから、いっぱい食べていっぱい飲まなきゃダメよ。冒険者ってのはいっぱい食べ物を食べなきゃ、いっぱいお酒を飲まなきゃ、強くなれないんだから。レベルが上がらないんだから。支払いは私たちに任せて。今日くらいはね」
というエルマ。
エルマも大量に酒を飲んだからか、なんだかちょっと顔が赤い。
そして今日は紅蓮の炎のおごりというのだから、そういうのなら、好きなだけ飯を食わせてもらおう。
好きなだけ好きな酒を飲ませてもらおう。
いつもなら日銭以上の食事をするわけには、日銭以上の酒を飲むわけにはいかなかったからな。
というわけで、
「蜂蜜酒あるだけ持ってきてくれ」
と、オレはそう酒場の店員に叫んだ。
とはいえ、あるだけ持ってこいといったところで、本当にあるだけの蜂蜜酒を持ってくるわけはないのだが……。
そんなふうに思っていたときもありました。
だが酒場にとってこのパーティーは、紅蓮の炎は常連の客だからだろうか、まじで酒場の店員はあるだけの蜂蜜酒を持ってきやがった。
そんなには飲めないよ……。
冗談で言っただけだよ……。
マジで持ってくるやつがあるか。
そしてこの大量の酒の代金を、この目の前にいる少女、エルマは払えるのだろうか。
なんて心配したのは杞憂に過ぎなかったのだろう。
A級の冒険者というのは、おおらかなのか、それとも馬鹿なのか、それとも日常的にかなりの日銭を稼いでいるのか、エルマはこんなことをみんなに言いやがった。
酒場にいるほかの冒険者に向けて、こんなことを言いやがった。
「みんな、今日は私のおごりよ。好きなだけ酒を飲んで。好きなだけ食べて」
というエルマ。
そのエルマの発言を聞き、
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」
という地鳴りのような歓声が上がる。
こいつら、まさかいつもこんなことをやっているんじゃなかろうな。
オレだって飯を食うのは好きだし、酒を飲むのは好きだから、それに日銭のほとんどをついやしてはいるのだが、エルマさんよ、さすがにそこまでやるのはあほなんじゃないですかね?
馬鹿なんじゃないですかね?
それともなんですか?
新しい仲間が増えたときは、こんなふうに酒場でみんなでパーティーをするものなんですかね?
だがエルマは楽しそうに酒を飲み、飯を食っているので、お金の心配をオレがする必要はないのだろう。
Aランクの冒険者ってすげえな。
オレもこんなふうな冒険者になりたいぜ、太っ腹な冒険者にな、とオレはエルマを見て、そう思った。
まあオレ以上に酒を飲み、飯を食いまくっているエルマのような冒険者になりたいかというと、それはまた別な問題ではあるが。
と、そんなことを考えていたのをエレンによまれたのだろうか。
エレンがオレの肩に手を回して、言った。
「サトウ、ほら、もっと酒を飲めよ」
といって、酒を飲むのをすすめてくるエレン。
どうやらA級の冒険者に日銭の心配をする必要はなかったようだ。
そしてエレンよ、お前も少し顔が赤くなっているぞ。
「おう。そうだな。せっかくの日だ。いっぱい食って、いっぱい飲むぜ」
せっかくのパーティーなのだから、せっかくの食事会なのだから、それを楽しまなきゃ損だな。
そんなことを考えながら、ごくごくごく、ごくごくごく、ぷぱーっと酒を飲む。
と、エレンは言った。
「オレとサックとアレクはまだB級の冒険者なんだ」
エレンはそのあとエルマのことを見ながら、言った。
「だけどうちのパーティーのリーダーエルマは、一人だけAランクの冒険者だ。まあFランクの新人の冒険者だったサトウは金の心配をするのもまあ仕方のねえことかもしれねえが……ランクの高い冒険者になれば、サトウもきっとわかるだろうが……金の心配をすることはなくなるよ。それよりも、Aランクの冒険者になると、金をどう使うのか、そっちのほうに頭を使わなくちゃいけなくなる。それが高ランクの、Bランク以上の冒険者なんだぜ」
というエレン。
だがさすがのエレンも少し顔が赤くなってきたようで、こんなに大量の酒を飲めば、まあだれでも酒に酔うのは当たり前のことかもしれない。
「なんだなんだ。まさかサトウ、リーダーに気があるとかそういう話か?」
と、もう一人のB級の冒険者、サックがオレの隣にきて、言った。
どうやらこちらはオレと同様に酒に強いらしい。
なんだか戦闘だけではなく、酒でも負けてはいられないな、とそう思った。
オレ、エレン、サック、そしてエルマの四人は、それから夜遅くまで楽しく飯を食い、酒を飲んだ。
ただ一人アレクがテーブルに突っ伏し、眠っているような気がするが、わざわざ起こしてやる必要もないだろう。
そして次の日のことである。
まったく記憶がないが、宿屋で目を覚ましたオレは、ユイカの声で目を覚ました。
どうやら朝らしい。
モンスター討伐をする朝がやってきたらしい。
だがいつもならベッドから起きだし、顔を洗い、そしてユイカの用意した飯を食うのだが、今日のオレはちょっとだけ違っていた。
あ、頭が痛い。
昨日までのあの楽しい時間は嘘のように、まるでそれは消え去ってしまった楽しい時間だったように、だが今では地獄のような苦しみのように、オレの頭に響くものがある。
やべえ。
さすがに飲みすぎたか。
あ、頭いてえ。
どうしよう。
今日もモンスター討伐をするつもりだったのに、頭がずきずきと痛むんだけど。
くっ。
B級の冒険者、そしてA級の冒険者なら、こんな二日酔いなんてないんだろうな、とオレはそう思いながら、洗面所で顔を洗うことにした。




