第十四話
冒険者ギルドでは冒険者登録をすることができるらしい。
冒険者に登録するとクエストというものを受けることができ、そのクエストにはランクというものがあるらしい。
ランクはS、A、B、C、D、E、F、Gとランクがあり、ランクが高いほうがより報酬が高く、ランクが低いほうが報酬が低い。
簡単なクエストは薬草採集のクエストに始まり、モンスターの討伐、モンスターの討伐はモンスターの難易度によってクエストのランクが違う、というようなものになっている。
これで目の前にいる冒険者ギルドの受付のお姉さんの説明は終わりだった。
なるほど。
なんだかゲームの内容にとても似ているな、とオレはそう思った。
しかも上のランクに上がるためには、昇格試験というものを受けなくてはならない、というのも、オレのやったことのあるゲームによく似ていた。
ちなみにE、F、Gのランクの冒険者を下級冒険者と呼び。
B、C、Dのランクの冒険者を中級の冒険者と呼ぶ。
勇者だとか英雄だとか呼ばれるような冒険者は、Sランク、Aランクの冒険者なんだそうだ。
ちなみに異世界召喚者の勇者たちは召喚されたばかりだというのに、Sランクの冒険者なのだそうだ。
つまりはオレもSランクということだ。
なんて思ったりもしたが、目の前に表示されている冒険者のランクは、オレの思っているランクと、オレの想像しているランクとは、違っていた。
おかしい。
どんなに悪くてもBランクくらいだろうと、異世界召喚者なんだから中級の冒険者だろうと思っていたのだが、目の前の数字は最下位だった。
最下位というのはつまり、ランクは一番後ろのGランク。
嘘だろ。
なんで異世界召喚者なのにGランクなんだよ。
おっさんなのがダメだってのか。
だったら最初から異世界に召喚するな。
間違えたからごめんね、と王様が舌を出している姿を想像し、オレはなんだかむかついてきた。
だが目の前にいる冒険者ギルドの受付嬢はそんなオレの心に気が付かない顔をして、笑顔を浮かべて、言った。
「サトウ様は冒険者ギルドに登録したばかりなので、Gランクからスタートとなります」
別にオレの能力が高いとか、低いとか言うのは関係なかったらしい。
冒険者ギルドで新しく、新規に登録すると、まずGランクからスタートする、という決まりらしかった。
つまりどんなに能力が高い冒険者だとしても、冒険者ギルドに登録をしていなければ、どんなに強くても、最下位のランクからスタートをするということらしい。
異世界召喚は皆に認められた存在なので、Sランク、という称号をもらっている、ということだった。
追放されなければ、オレもSランクだったのだろうか。
冒険者カードに書かれたGランクの文字を見て、オレはそんなことを思ってしまう。
冒険者ギルドカード
名前サトウ
ランクG
サトウ 40 男
LV:5
STR:70
VIT:70
INT:70
DEX:70
AGI:70
LUK:600
<スキル>
なし
<固有スキル>
まぶしい光
<加護>
太陽神の加護
「以上で冒険者ギルドの登録は終わりになります。何か質問はありますか?」
「いえ、特にありません」
というオレ。
冒険者ギルドのお姉さんに質問をすることは特にはなかったのだ。
なぜなら冒険者ギルドのクエスト一覧も、昇格試験も、オレは現実世界でやっていたゲームの内容とほとんど変わりがなかったのである。
冒険者ギルドを出て、少しいった場所に宿屋はあった。
今日はここで休もうか。
今日はいろいろあったから、城から追放されたばかりだからか、なんだかとても疲れていた。
風呂にでも入って、飯を食って、それから休もう。
酒でも飲みたい気分である。
そういえば異世界に酒はあるのだろうか。
宿屋の扉を開けると、
「いらっしゃいませー。おひとりですか?」
と、若い少女に声をかけられた。
年のころは十五から十八くらいだろうか。
とにかく若い少女である。
そして元気な少女だった。
「はい。一人です」
「そうですか。一泊銅貨一枚になりますが、よろしいですか?」
異世界の宿屋は一日銅貨一枚でとまることができるらしい。
ゴブリンを十体ほど倒すと、銀貨一枚ほど落としてくれるなら、元の世界よりはこの世界のほうが、この異世界のほうが、お金を得るのは簡単といえるかもしれない。
オレは銅貨一枚を少女に渡すと、階段をのぼって、宿屋の奥の部屋へと向かった。
扉を開けると、そこはゲームの世界にあるような部屋だった。
元の世界のホテルの一室よりかは少し大きめの部屋である。
ベッドがあり、テーブルや椅子がおいてある。
壁にある扉の奥にはお風呂があった。
風呂に入ってからのんびりと部屋で過ごしていると、こんこんと部屋の扉が叩かれた。
どうしたのだろうか。
ゲームなら、のんびりと宿屋で過ごしていたら一晩たっているはずなのに……。
「サトウ様、料理をお持ちしました」
といって、先ほど宿屋の受付をしていた少女の声が扉の外からする。
手に料理皿を器用に持った少女が入ってくる。
少女の名前はユイカというそうだ。
「今日の料理は一角ウサギの肉を使ったシチューです。どうぞお召し上がりください」
テーブルの上には一角ウサギの肉を使ったシチューが入ったお皿が置かれている。
目の前にはかわいらしい明るく元気な少女がいるので、こちらまでなんだか明るい気持ちになってくる。
さっきまで落ち込んでいたのが嘘のようだ。
だが今は疲労のせいか、酒が飲みたかった。
シチューに酒は全くあいそうにもなかったが。
シチューよりも一角ウサギのステーキとかのほうが、きっとお酒との相性はよかったが。
「あの……。すみません。お酒はありませんか? 酒であれば別になんでもいいんですけど?」
「お酒ですね? ええと……。追加で銅貨一枚かかりますが、それでもよろしいですか?」
と聞いてくるユイカ。
酒は銅貨一枚の値段がかかるのか。
まあ銅貨一枚くらいモンスターを倒してくれば、ゴブリンを倒してくれば、稼げる金額ではある。
今日は手に入れたお金を使って、奮発をして、豪華な食事にしてしまっても別にいいだろう。
酒を飲んでしまっても構わないだろう。
「はい。銅貨一枚ですね」
オレはユイカに銅貨一枚を払った。
なんだか異世界の生活も悪くないかもしれない。
異世界の生活はもっと難しいものだと、大変なものだと思っていたけど、今のところモンスターもあんまり強くないし、モンスターを倒せば、日銭くらいは稼げる。
異世界生活も案外悪くないかもしれないな、なんて思い始めている。
宿屋の女の子は可愛いし。
と、ユイカは笑顔でうなずいた。
「はい。お酒ですね。少々お待ちください。すぐに持ってきますので」
ユイカは慌てて部屋を出てくると、少しして、部屋へと戻ってきた。
手には酒が入っているであろう瓶が握られている。
「なんだか変わったお酒ですね」
とオレが言うと、ユイカはぱあっとした笑顔を浮かべて、言った。
「このお酒は蜂蜜酒というものです。とってもおいしいんですよ」
というユイカ。
確かにこの蜂蜜酒はとてもおいしかった。
とってもうまかった。
異世界にはこんなうまい酒があるのか。
一角ウサギのシチューもうまかったし、異世界も案外悪くないのかもしれない、そんなふうにオレは思い始めていた。




