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第一話:目が覚めたら無人の機内。異世界ツアーに強制招待!?

機内に流れたアナウンスで、僕は目を覚ました。


寝ていたシートから少し体を起こし、ぼやけた視界を直すために手で目を擦る。 どうやらいつの間にか寝ていたようだ。


帰りの飛行機に乗り緊張が解けた事と、旅行の疲れが出たせいだろうか。


とりあえず現在の時刻を確認しようと思い、ポケットに入れていたスマートフォンに手をのばす――が。


「あれ、スマホがない……」


両側のポケットをまさぐるが、手には何の感触もない。 寝ている間に落としたのだろうか。一応足元も確認してみるが、何も見当たらない。


そんな時だった。 異変に気付いたのは。


よく見れば、隣に座っていたはずのクラスメイトの姿がなかった。


トイレにいったのだろうか。 一瞬そんな考えが頭を過ったが、すぐに消えた。


僕は今日、運よく外の景色を楽しめる窓側の席に座っていた。 その僕から見える横の席、端までの一列には……誰も座っていなかったのだ。


おかしい。 この辺りは修学旅行の生徒達で、ぎっしり埋まっていたはずだ。


シートベルトを外し、席を立ちあたりを見回す。


そこに広がっていたのは、誰も座っていない空っぽの座席達だけだった。


耳に届くのは、エンジンの低いうなりのみ。 人の話し声などは一切ない。


「まさか、僕置いて行かれた?」


そう考えたが、それはおかしい。 空港に到着後であればまだそういう状況も起こりえるかもしれないが、この飛行機はいまだ空を飛び続けている。移動中なのだ。


そんな状況下で僕だけを残して乗客が全員消えるなんて、そんな事がありえるのだろうか。


状況が理解できず、不安に苛まれつつある――そんな時だった。


ポーン、という音とともに機内アナウンスが流れはじめた。


『えーこの飛行機はまもなく、目的地である異世界フェリオト、フェリオトへ到着します。少年は心の準備ができましたら大きな声で、お知らせください』


「え?」


なんだろう、今の……。明らかに普通のアナウンスじゃない。 異世界? 何をいっているんだ。 それにこの声、どこかで聞いたような……。


『と、冗談はここまでにしておいてだ。やあやあ少年、目が覚めたようだね。長旅で疲れていたようだったので暫く起こさずに寝かせて置いたが、疲れはとれたかな?』


飛行機内で流れるアナウンスは、明らかに自分の事を指して発言している。 そして先ほどからのこの聞き覚えのある声。


そうだ、思い出した。この声は――。


「この声、まさか空港ロビーで会ったあの変な女の人?」


『変とはなんだ変とは。少し変わっている自覚はあるが、人前ではそこまで変な事はしていないぞ』


アナウンスから、自分の発言に対する返答が流れてくる。 おかしな事に、僕の声がアナウンスの主には聞こえているらしい。


『まあ冗談はここら辺にしておいてだ。わかっているぞ少年。どうして飛行機に自分ひとりしかいないのか、何故アナウンスから私の声が聞こえてくるのか。そういった疑問が君の中には生まれているのだろう?』


『だが、安心したまえ。そんな君のために何が起きているのかを、特別映像を流しながら説明してあげよう。どこでもいいから近くのモニターを見てくれたまえ』


アナウンスが流れると同時に、天井に備え付けられた大きなモニターの電源が付き、映像が流れ始める。


『3!2!1!……、パッパカパーン! ようこそ第1回異世界ツアーへ!』


『今回は特に夢も希望も持っていなさそうな高校生の……えーと君、名前は何かな?』


謎の怪しげな仮面と派手な服装をした女性が、モニター越しにこちらを指さして質問してきた。


「名前は天村あめむら……光継みつぎ


『OK! アメムラミツギ君ね! さて改めて……今回は特に夢も希望も持っていなさそうな高校生のアメムラミツギ君のために企画された、特別なツアーとなります!』


『修学旅行でこれと言った思い出を残せなかった彼を、笑いあり・感動あり・スリルあり、時にラブロマンスも……あるかもしれない異世界へご招待!』


『今回ご招待する異世界はフェリオト。私が管理している、剣や魔法、エルフやドラゴンと言った君達の世界で言う所謂いわゆるファンタジー的な要素を含む世界だ』


『ミツギ君にはこの世界の勇者となってもらい、世界を蝕む謎の魔物達を討伐して見事世界を救っていただきます! ……と、基本的な説明は以上ですが何か質問などはありますか?』


「いや、まってまってまってまって。質問というか、いやもう全部わけわからないから!?」


無いわけがない。謎だらけである。


『ではこれから質問タイムに入ります。ミツギ君、何が知りたいのかな?』


「何がって、そのえっとまずは……そうだ、みんなは何処に? 空港から飛行機に乗った時は間違いなく一緒にいたはずなのに」


『安心してくれた前、他のみんなは無事だよ。隙を見計らって、君だけこちら側に呼び出させてもらったんだ。あまり混乱させないように、態々(わざわざ)似たような作りの乗り物の空間も用意したんだ、やさしいだろ?』


「いや、人を攫っておいて優しいとか……。それに異世界ってどういう事ですか?」


『どういう事も、君がいる世界とは別の世界の事だよ。今は君を別世界に送り届けている最中というわけさ。まあこの空間はあくまで君にイメージさせやすくするために用意した場所で、本当に飛行機で向かっているわけではない事に注意だよ?』


「いやまず、なんで異世界に行くことに……。というか、あなたは一体何者なんですか?」


『私? 私はそうだな……世界を救う英雄を探すために神より遣わされた使者、とでもとりあえずは言っておこうかな』


「なんですかその適当な嘘は!!」


『嘘ではない! まあ詳しい事は今回の件で上手く事を運んでくれれば後々話してあげよう。今のところはまだ君は《《お試し段階》》だからな』


「意味がわかんないですって! これ夢じゃないのか。本当にわけがわからない、元の場所に返してくださいよ!」


『うーん、残念ながら一旦移動すると、到着するまでは戻れないのだ。というわけでちゃちゃっと今回の目的を果たして帰ってきてくれた前よ』


「目的って、それは一体……」


『おっと、そうこうおしゃべりしているうちに目的地へ付きそうだ。私は今まだバカンス中で君のいた世界にいるから、距離的に会話も限界そうだ。《《一人サポートもつけるし》》、まあとりあえず一旦はお試しだから気軽にやりたまえ。それでは良い旅を~』


気の抜けた挨拶と共に、モニターの映像がぷつんと切れる。 今の会話では、自分に起っている事がほとんど理解できない。


異世界? 神の使い? 目的? 何もかもを理解する前に、放り出されてしまっている。


「一体何が起きてるっていうんだよ……」


情けない一言が口からこぼれる。 その時だった。


突然あたりが大きく揺れ、僕は思わず席に倒れこむ。


『まもなく異世界フェリオトに到着します。到着と同時にこのイメージ空間は解体され、候補者を強制的にフェリオト側へ排出致しますので、着地にご注意ください』


「なんか物騒な事いってるんですけどおぉぉぉぉ!!」


こうして、僕の意識はそこでブラックアウトしたのだった。

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