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光と闇の邂逅

 旧時代の魔導研究所跡での激戦を乗り越え、レヴィとガイは王都へと戻っていた。しかし、彼らが戻った王都は、以前にも増して混乱の渦中にあった。大聖堂の爆破事件の犯人としてレヴィの逮捕令状が発布され、彼女を追う騎士団と、真実を知らず扇動された民衆の目は、レヴィに向けられていた。だが、レヴィとガイには、もはや迷いはなかった。真実を明らかにし、「終焉の手」の野望を阻止するため、二人は王都の中心、王国評議会の議場へと向かっていた。

 議場には、すでに評議会議員たちと、武装した騎士たちが集結していた。彼らは、レヴィの出現に色めき立ち、警戒の面持ちで剣を構える。その中心には、エルドレッド局長と、そして「終焉の手」の残党を率いる、レオナルドによく似た男――「終焉の手」のリーダーが立っていた。彼の顔には、冷酷な笑みが浮かんでいる。

「よく来たな、旧王国の王女、クレメリアよ」

 リーダーが、レヴィの真の名を呼んだ瞬間、議場にどよめきが走った。レヴィの出自を知る者は、この場にはほとんどいない。その言葉に、評議会議員たちの顔にも、驚愕と疑惑の色が浮かんだ。ガイは、レヴィを庇うように一歩前に出る。

「貴様……やはり、何者だ!?」

 ガイが問い詰めると、リーダーは静かに嗤った。

「私は、レオナルト。旧王国の魔導騎士だ」

 その告白に、レヴィの脳裏に、かつて見た幻影が鮮明に蘇った。炎に包まれる宮殿、幼い自分を抱きかかえる女官、そしてその隣にいた、レオナルドによく似た男の姿。「終焉の手」のリーダーは、まさしく、あの幻影の中にいた男だったのだ。彼の顔には、過去の悲しみと、復讐の炎が宿っている。

「我々は、かつて世界を導いた旧王国の栄光を取り戻すために動いている。この腐敗した王国を滅ぼし、真なる王の血を引くお前を、新たな世界の盟主として擁立する」

 レオナルトの言葉に、レヴィは怒りに震えた。

「勝手なことを言わないで! 私の力を、そんなくだらない目的のために利用させないわ!」

 レヴィの全身から、激しい魔力が吹き出した。それは、魔王を消滅させた時よりもさらに強く、澄み渡った光の奔流だった。彼女の魔力は、この最終局面で、ついに完全な覚醒を迎えようとしていた。彼女の脳裏に、断片的な記憶の全てが流れ込んでくる。旧王国の繁栄、魔王の襲来、宮殿が炎に包まれた日、そして、幼い自分が、何らかの魔法によって封印され、永い眠りについたこと。

「私の……本当の名は……」

 レヴィの口から、紡ぎ出される言葉に、議場全体が静まり返る。その声は、かつてのような高笑いでもなく、強がりでもない。真実を受け入れ、自らの全てを解放した、一人の王女としての凛とした響きを持っていた。

「クレメリア=レヴィアナ=アークラスト!」

 その名を叫んだ瞬間、レヴィの全身が、眩い光に包まれた。彼女の魔力は、議場の天井を突き破り、王都の空へと昇っていく。その光は、闇を切り裂くように輝き、王都全体を照らした。レヴィの瞳には、過去の記憶の全てが宿り、その表情は、幼いクレメリア王女の面影を残しながらも、この世界の未来を背負う者としての、圧倒的な威厳に満ちていた。

「この力は……破壊のためじゃない……! 世界を守るための光だ!」

 レヴィは、そう叫び、レオナルトへと向かって手を掲げた。彼女の掌から放たれる光の波動は、レオナルトの闇の魔力を打ち砕き、彼が隠し持っていた「真なる封印」の鍵を、その手から弾き飛ばした。

 レオナルトは、レヴィの覚醒した力に驚愕し、後ずさる。彼の表情には、これまで見せたことのない、明確な焦りの色が浮かんでいた。

「馬鹿な……こんなはずでは……!」

「フォフォフォ! あんたのくだらない野望は、ここで終わりよ!」

 レヴィの高笑いが、議場に響き渡った。それは、もはや単なる高笑いではない。真の力を覚醒させ、過去の全てを受け入れ、未来へと進むことを決意した「クレメリア=レヴィアナ=アークラスト」としての、堂々たる宣戦布告だった。

 ガイは、レヴィの覚醒した姿を、ただ見上げていた。彼女が誰であろうと関係ない。その言葉は、彼の心の中で、揺るぎない確信へと変わっていた。彼の隣に立つのは、世界を救う「希望の光」を宿した、彼の愛しい「爆裂魔導姫」なのだと。光と闇の邂逅は、レヴィの覚醒によって、新たな局面を迎えていた。



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