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心の告白と誓い

 旧時代の魔導研究所跡での潜伏は、ついに終わりを告げた。「終焉の手」の真意と、レヴィのもう一つの秘密――旧王国の王女としての血筋が判明したことで、事態は新たな局面を迎えていた。彼らが狙う「真なる封印」の解放を阻止するため、レヴィとガイは、再び王都へ戻る決意を固めた。それは、自分たちにかけられた疑惑を晴らし、同時に世界の命運をかけた最終決戦に挑むことを意味していた。

 王都への帰還を翌日に控えた夜、研究所跡には、静寂が満ちていた。外からは、冷たい風が吹き荒れる音が聞こえるが、二人が身を寄せる部屋の中は、焚き火の温かい光に包まれている。レヴィは、古文書の地図を広げ、真なる封印が眠る場所を指でなぞっていた。その横顔は、決戦を前にした緊張と、これから起こるであろう全てを受け入れる覚悟に満ちていた。

 ガイは、そんなレヴィの横顔を、静かに見つめていた。彼の胸中には、言葉にできないほどの感情が渦巻いていた。共に死線を越え、互いの弱さを知り、そして未来を誓い合った。明日からの戦いは、これまでのどの戦いよりも過酷なものになるだろう。だからこそ、今、この言葉を伝えなければならないと、ガイは強く感じていた。

「レヴィ」

 ガイが、静かに名を呼んだ。レヴィは、顔を上げ、彼の真剣な眼差しに気づく。その瞳は、炎の揺らめきを映して、微かに揺れていた。

「……何よ、急に改まって。まさか、今さら足手まといだからって、私を置いていくとか言い出すんじゃないでしょうね?」

 レヴィは、いつものように強がってみせたが、その声には、どこか不安の色が滲んでいた。ガイは、ゆっくりとレヴィの前に膝をついた。それは、騎士が忠誠を誓う時の、あるいは、生涯を共にする相手に請い願う時の、真摯な姿勢だった。

「違う」

 ガイの声は、焚き火の音さえもかき消すほど、はっきりと響いた。彼の瞳は、レヴィの瞳を真っ直ぐに捉え、その奥に宿る揺るぎない感情を映し出す。

「レヴィ、君と……一緒に未来を生きたい」

 その言葉は、研究所の静寂を破り、レヴィの心臓に直接突き刺さった。それは、飾り気のない、しかしガイの全てを込めた、真実の告白だった。彼の瞳には、偽りなく、レヴィへの深い愛情が溢れていた。

 レヴィは、目を見開いた。彼女の顔は、みるみるうちに真っ赤に染まり、耳まで熱を持っているのがわかる。普段の彼女であれば、こんな甘い言葉など、冗談で跳ね返すか、高笑いで誤魔化すか、どちらかだっただろう。しかし、今回は、まるで言葉を失ったかのように、呆然とガイを見つめるばかりだった。

 そして、次の瞬間、レヴィは顔を両手で覆い、けたたましい高笑いを響かせた。

「フォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォ!!!!!!」

 その笑い声は、研究所の壁に反響し、ガイは呆れたような、しかしどこか嬉しそうな表情でそれを受け止めた。レヴィの高笑いは、照れ隠しの極致だった。

「な、なによ! なによその顔! 今さら、そんな真剣な顔で告白されたら困るでしょ! あんたねぇ、そういうのはもっとこう、ロマンチックな雰囲気とか、そういうのを選びなさいよ! バッカじゃないの!?」

 レヴィは、顔を真っ赤にしたまま、まくし立てるようにガイに言い放った。その声は、興奮と照れが入り混じり、普段の彼女からは想像もできないほど動揺していた。しかし、その言葉のどこにも、拒絶の意思はなかった。むしろ、困惑しながらも、その告白を受け止めようとする、彼女自身の本音が垣間見えていた。

 ガイは、そんなレヴィの反応に、静かに笑みを深めた。そして、レヴィが顔を両手で覆ったまま、小声で、しかしはっきりと、続く言葉を口にした。

「……でも、嬉しい……」

 その言葉は、炎が燃え尽きる直前の、微かな囁き声のようだった。レヴィの、心の底からの本音。それは、ガイだけに向けられた、秘めたる感情の告白だった。ガイは、レヴィの手を取り、その温もりを確かに感じた。決戦前夜の静寂の中、二人の間に、新たな誓いが結ばれた瞬間だった。それは、戦いの先に続く未来を、共に生きていくという、確かな約束だった。


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