プロローグ…なのか、コレは? byレノ
午前11時35分――理事長室
「ハァ…全く貴方って人は、何でこんな大遅刻をするのですか?そもそも―――」
はい、ストップ。
え~っと、まずはオレの自己紹介から。
初めまして。レノ・マリアだ。職業は教師、教科は体育兼魔法実習。
そして今、オレを説教しているのが〔私立 栄華高等学校〕理事長グロリア・ノウマン。擬人族である。
と、ここで世界について簡単に話そう。
この世界の名前は〔アルテナ〕人と魔族の共存する理想郷…と言いたいところだが、これが実のところそうでもないんだわコレが。
まーこんな所でも強盗に殺人、その他諸々の犯罪を犯すヤツらに秘密結社なんてもんを結成したりするヤツらもいるからな。だからこそ魔法教えてんだが。というワケで、そこまで平和じゃないのが分かったんじゃないか?諸君。では次に―――
「聞いているのですか?レノマリア!」
「うわぁっと!?耳元で叫ばないでくれよグロリア」
「とりあえず今日の体育は午後から、魔法実習は私が出られたからよかったものの、なぜこんなに遅れたのですか?」
「あーっと、それはだな…
話は遡ること2時間ほど前の事になる。
オレの目が覚めると時刻は午前9時半を過ぎようとしていた。
あ、まだ朝じゃねえかと思って二度寝しようとしてふと疑問が浮かんだ。
「今日、何曜日だっけ?」
そう思ってカレンダーの×印をたどっていくと、9月8日月曜日だった。
「……遅刻だぁぁぁぁ!!」
急いで支度をしてドアを開けた瞬間、顔面にドロップキックがまるで絵に描いたように綺麗に当たり吹っ飛ばされた。
「ごばぁ!?」
「遅っそい!朝飯はまだなの!?」
そう言ってオレに間髪入れずにコブラツイストをかけるのは、オレの住むアパート〔京楽〕202号室の住人 真田 都だ。作る料理は物体X、胃の作りは正にブラックホール、生活のすべてに色気無しのガサツな女だ。ちなみにコイツは人間だ。…せっかくのスタイルが台無しだな。
「今それどころじゃねぇんだよ!飯食いたきゃコンビニでも行け!」
そうしてオレは都をこれまた綺麗に背負い投げで引き剝がし、外に出ようとしたその時、ま~た邪魔されるんだよこれが。
オレに恨みでもあんのかねまったく。
話を戻すと、オレは外に出たのはいいが丁度ドアの近くにあった物体につまずき、盛大に転んだ。
「な、何だぁ!?」
つまずいた物体を見てみると102号室住人のガンツ・バルトールだった。
デカイ体の小心者、強面だがお人好し、酒にはめっぽう弱い鬼人族の男だ。
そしてコイツがこんな所で倒れてる理由はただ一つ、
「また会社の奴らに酒飲まされたな」
「は~い皆さ~ん、ちゃんと並んでくださ~い…ムニャムニャ」
「メチャクチャ幸せそうな顔して寝てんな、ガンツのヤツ。どんな夢見てんだ?う~ん分からん」
「だーかーらぁ、飯食わせろって言ってんでしょ!!」
その怒鳴り声と共に背中に衝撃が走った。
もちろん原因は都の飛び蹴りに決まっている。
そしてオレは例外なく毎度のように吹っ飛ばされ―――
―――結局オレは諦めて都の飯を作り、ガンツをオレ1人で部屋に戻したら時間は10時45分になっていた訳で――」
「でも結局は寝坊したという事ですね?」
「ウグ…ま、まあそうなるな」
「まったく、貴方があの魔帝だなんて今でもそうは思えませんね。それに――」
あ、言い忘れてた。おれは元魔帝なんだが…、今に至る経緯はまずは説教が終わってから話そうと思う。
‐30分後‐
「―――という訳で今日はしっかり反省してくださいね。レノマリア」
「グロリア?笑顔で何出してんだ?スゲぇ恐ろしく見えるんだが…」
オレはひきつった笑顔で質問した。
「釘バットに剣山マット、そしてマット用の重石です」
「もう充分だろ!三角木馬に鞭使ってんだろうが!さらに拷問する気かよ!!」
「正確には三角木馬プラス手枷足枷と鞭です。そ・れ・に・まだまだ反省し足りないようですし…ウフフ」
「ふっっざけんなぁぁぁーー!!」
…追加項目、グロリアはドSだ…。