表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/82

第69話【オレンジ・インパクト①】

《8月5日 AM08:50 山王山の館・ガーデン》


 ミーン…ミーン…ジビビビビビビビビビビィー…





 「ごめんね…手伝ってもらって。」





 


 挿絵(By みてみん)





 ミーン…ジリジリジリジリ…




 「全然大丈夫です!」





 挿絵(By みてみん)




 照りつける太陽、鳴り響く(セミ)の声、タダでさえ本土より気温の高いこの島で、2番目に空に近い場所にある館……………の、ガーデン。

 この日の気温は35℃、だが体感気温はそれ以上だろう。

 そんな猛暑のなかで、鶴と耐心は畑仕事に(いそ)しんでいた。



 「それにしても…すごく綺麗なお庭ですね。お花も畑もすごく手入れされてる。」


 「ウフフ♡師匠(パパ)の趣味なの♡」


 「狼さん以外と器用ですよね。料理もガーデニングもとっても上手。」


 「戦ったりするより、こういう細かい作業のほうが好きな人なの。」


 「あ〜…なんか安成ちゃんと鶴お姉さん見てるとそんな感じするかも?」


 「そうなの、ウフフ♡」


 麦わら帽子を被って作業を続ける2人。來美と翔馬は家の中で掃除したり洗濯物を畳んだりしている。ジャッキー・シルバーは


 〘せっかくの客人なのだ。ゆっくりしていたまえ。〙


 と言ったが、流石に何もしないのは悪いので、家のことを手伝いたいを申し出たところ、快くOKしてくれたのだ。


 「ん~…まあ…でも鶴と安成が器用なのは多分」


 「多分?」


 「ルリ子がチャランポランだからなのかな〜…なんて思ったり。」


 「ルリ子さん?」


 「そう。今だってほら。」





 挿絵(By みてみん)






 「ゲームしてますね…。」


 「まあ…せっかく休養で帰ってきてるんだから、その辺はパパもわかってると思うケド。」


 「あ〜…だから怒らないんですね。」


 「結構お人好しなの。話が通じないタイプじゃないから。むしろ逆。」


 「優しいですもんね狼さん。」


 「ええ、とても。」


 「……………あれ?」


 「どうかした?」


 「ルリ子お姉さんの後ろ髪…白かったかな…?」


 「あ〜…アレ、超人化の副作用というか…。」


 「ふくさよー?」


 「うーん…なんだろう…肉体の限界を超えた変化に細胞が完全について来れてなくて、ちょっと異常をきたしてるの。ルリ子の場合は…寝起きのあと、しばらく髪の色素が抜けてたり。鶴は毎朝前髪がすごく伸びたり。」


 「あ〜。だから毎朝切ってたんですね。」


 「そうなの。それ以外は何ともないんだけど。」


 「超人化のってことは…安成ちゃんも?」


 「安成は体内循環が人より早いの。」


 「たいないじゅんかん?」


 「どう言ったら分かりやすいかな…あ、安成ってトイレによく行くでしょ?」


 「たしかに!安成ちゃん1日何回もトイレ行きますね!」


 「身体の中から要らない物を出そうとする力がすごく強いの。」


 「なるほど〜……………安成ちゃん大丈夫かな…。」


 「大丈夫。安成は絶対に帰ってくるよ。」


 「そうですよね…うん、そうですよ!」


 安成が修行のためにバッドランドへ渡り、早くも4日目。1週間経つまで帰ってこれないルールの上、安成が持って行ったのは修行専用のスマホなので、こちらから連絡を取ることはもちろん、あちらから連絡が来ることもない。ようやく修行期間が折り返しに入った親友に思いを馳せながら、鶴の畑仕事を手伝う耐心であった。


 「安成ちゃんどうしてるかな……………。」


───────────────────────────


《同時刻 バッドランドの森の中》



 「……………4日目だ…。」




 挿絵(By みてみん)



 全身ボロボロの安成。ここまで既に6体のディストートを倒すことに成功していた。いずれも凶暴な個体で、こちらを見るなり襲いかかってきた。ドラウガスのように友好的なディストートならまだしも、そんな甘っちょろい奴は1体もいなかった。

 なんとか倒して、こうして木の上で休んでいたというわけだ。両足にヒビが入るようにできた傷のほとんどは、ディストートの攻撃によってできたものでなく────



 (もう使えない…ラピッドモード…。)



 足に凄まじい負担をかけるラピッドモードによる物であった。毎回使ったあとに筋肉痛になるレベルの負担ではあったが、次々襲いかかるディストートを相手にほとんど連続で使わざるを得ない状況だった。

 全く…おそらく師匠は五島市(上五島・福江市両方を含む)全域に目を光らせ、侵入したディストートを氷漬けにしてこの島に置いていたのだろう。

 もっと言えば、"弱すぎるディストートは修行にならない"ので、弱すぎる個体はここには居ないはずだ。



 「ほんと…弟子思いな人だわ…ん?」


 遠くを見ていた安成。すると向こう側から何かがゆっくり近づいてくる。


 ブゥゥゥゥゥン…!


 (あれ…ドローン?……あ。)


 向かってくるドローンを見て師匠から言われていた"あること"を思い出した安成。


 (そう言えば師匠が)


 〘中間日の4日目に物資を送る。〙


 (って言ってたな。)




 ブゥゥゥゥゥン…プシュー…!



 「キャッチ。」


 蓋になってる…ここを開けるのかな。


 パカッ


 「んなにこれ…?」







 挿絵(By みてみん)







 「指抜きグローブ…?と…手紙?ツル姉からだ。」



 "博士とアリスと作ってみたよ。「死にたくないっ!」って思ったら使ってください。以下、使い方。

 ①手に装着します。

 ②身体に力を込めてD.B.Mをありったけ出します。

 ③そのD.B.Mを両手に一気に集中させます。"



 「"ここぞと言う時に使え!そうじゃない場合は使うな!"ってことね…。」


 それ以外のものは入っていなかった。まあ…魚は取れるしジビエはいくらでも取れるから大丈夫だけど。

 とりあえず少し休みたい…連日連戦だった安成。なんとここまで全く眠っていなかった。やっとこさ戦いが落ち着いた安成は、体力を回復させるために休息を取るのであった。



───────────────────────────



《その頃、バッドランドのどこかで─────》



 〘まるで手応えがねぇ…。〙


 俺は今、血に飢えている……………!






 挿絵(By みてみん)







 などという柄ではないが、戦いは好きだ。というか戦いに特化した身体なのだから、それしか自信を持てることがねぇ。

 俺は自分が"こうなっちまう前"に何をしていたのか記憶がねぇ。おそらくはそういうデザインで作られたのだろう、頭の中を。

 極稀に"覚えてるやつ"いるんだよな…そういう奴は大概、"人間だった"なんて馬鹿なこと言うがな。


 俺は…いや俺たちはどうやら、人間から"ディストート"と呼ばれているらしい。まあ、他に名前らしい名前もないので、仲間たちも自分たちをそう呼ぶことにしている。

 仲間たちと言ったが…仲間意識は薄い。俺だってそうだ。この島に来て、もう3人もぶっ倒した。ディストートをな…な?こんなもんだ。

 俺たちディストートは強い…まあ個体差はあるが、少なくとも人間よりは手応えがある。まあここでぶっ殺した3人は弱かったが…。


 ところがどっこい、この島には"もう1人"いるらしい…面白い戦いができそうなヤツがもう1人いるらしい…。そうだな"いるらしい"な。うん。

 ソイツを探すか…一体どんなヤツなのやら。










次回


 【オレンジ・インパクト②】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ