第8話【アンナ、変身!!!!!】
KEEP OUTのテープが張り巡らされている。この感じあんまり好きじゃない。いや、まあそうでしょ。だって警察が暇な方がいいんだから。平和ってことだし。
人混み避けながら前へ進む。まあ…私が堂々の正面から入っていったら流石に目立つから、あそこの後ろのところからスッと入るか。
あまり人目につかない死角から、テープを避けて中に入る。
「あ!君ダメだよ!何してるの!」
警官に止められた。
え?ちょっとちょっと、もしかして締め出そうとしてる?話つけてあるって言ってたじゃん!ライミちゃん大丈夫?これ私説教されんか?
取り敢えずライセンスを見せる。
「いやあの…責任者の人に会いたいんですけど…。」
「何言ってるの!これテレビの撮影じゃないんだからね!君の保護者に…。」
え〜…全然話し行ってないじゃん…こういう時に困るんだよなぁ…秘密結社ってうちのスタンス。事情知らないこういう人から部外者扱いされるの面倒くさいんだよ…ホント。
話も聞いてくれない警察。埒が明かないしどうしよかと困っていた時…
「おお!おいおい、良いんだ良いんだ。その子を離してやってくれ。」
そう言いながらこっちにやってくる、コートのおっさん。
「えぇいや、あの、しかし…。」
言葉が詰まる警察。いやうん。アンタは正しいよ。普通さ…子どもが死体発見現場に入ってきたら追い出すって。日本の警察は優秀だ。何も怒られるようなことしてないからね。
「良いんだ。その方を入れてやれ。」
「はっ!」
いい返事。元気に答えたあと、すぐに私を離してくれた。いいやつだなコイツ。
「いや〜すまんな!なんせ貴方がたの事は警察内部でも上層部以外には知らされていないもので!」
「いいよいいよ。子どもが入ってきたら叱って追い出す。当然のことじゃん。彼は仕事しただけ。だから怒んないであげて。」
「そのとおりだな。お勤め御苦労!」
さっと敬礼しあう2人。なんか1人だけあぶれるの嫌だったから私も敬礼した。
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「さて、問題の遺体なんだが…これだ。」
案内された発見現場で、それを目にする。
なるほど…これはまた派手にやったものだ。頭は…食いちぎられてるね。まあこれはいつも通り。遺体の損傷のほどは、その場その場でまちまちだけど…頭が食べられてるのは共通してる。
「なるほどね、丁度24時間くらい前って感じかな。襲われたの。」
「おそらくな…だが問題は遺体の状態なんだ。」
「うん。ぺっちゃんこだね。」
そう、首から下…ぺっちゃんこというか、多分直接の死因は圧死だね。
「死体ぺっちゃんこ…だけど、所々見たら弾け飛んだみたいな損傷もある。」
「それなんだ…検察も損傷の具合から、そう結論づけたが…そんな凶器を使ったなら確実に目立つはずだ。近隣の住民に見つかって通報されるのがオチだろう。」
「確かに…。」
「君の見解を聞きたい…おそらく犯人は…君たちの管轄だろう。」
「うーん…この有様だとかなり重くて硬い物が激突したはずなんだよね…それも凄いスピードで。じゃなきゃここまで派手に人体の一部が飛び散ったような潰れ方はしないと思うんだ。しかも精確に首から下だけを狙ってやった…。」
「ふむ…。」
「もちろん、付け焼き刃の凶器でそこまで正確な事が出来るとは思えない。愛着のある武器…使ったものについては熟知してないとこんな芸当できないよ。」
「確かにそうだ!しかし〜…いくら子どもとは言え、人間1人をこんな状態にするなら、相応の大きさが必要だし…やはりそれでは隠し通すのはも無理があるのではないか?」
「じゃあ多分ダンゴムシ…いやアルマジロかな。もしくは生き物じゃなければタイヤとか。」
「だ、ダンゴムシ?アルマジロ?」
「使い方を熟知してるって条件なら…外側から持ってきた武器じゃないなら…あるよね?生まれたときから持ってて、使い方をよ~く分かってる武器。」
「なるほど…自らの身体で回転しながら突進したということか!」
「そ。多分ね。」
さて、遺体からおおよそ敵の情報も割れた…となれば対策を考えなきゃね…そこからは刑事さんといろいろ話して、今回の一件はしばらく情報を共有してくれることになった。
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《帰り道》
「うん。間違いなくディストートの仕業だね。」
"やっぱり…現場はどうだった?"
「ライミちゃん多分聞かないほうがいいよ。」
"ひぃぃ…"
「ま、大方相手さんの予想も立ったし、対策考えよっか。」
"流石アンナちゃん!じゃあおうち帰ってきてからミーティングしよっか。"
「うん。あ、それとさライミちゃん。」
"ん?なぁに?"
「本部に連絡できない?今回の任務で協力を要請したい人がいるんだけど。」
"協力要請ね。わかった確認してみる。ちなみにどなた?"
「えーっとね、影狼。」
"影狼さんって、あの忍者エージェントの?"
「うん。近くにいるんだ〜。多分ターゲット同じなんじゃないかな。」
"了解!確認しとくね!ご飯できてるから早く帰ってきて〜"
「ハハハ…じゃあ早く帰…………ッ!」
"ん?アンナちゃん?"
「…ごめん、一旦切るね。」
ピッ
〘肝っ玉の座ったガキだな…。俺を見て叫び声の一つもあげやしない。〙
アルマジロだ。そこまで大きくない…私より少し大きいくらいかな?
って…まあ普通のアルマジロは言葉なんて話さないか。
「まさかそっちから来てくれるなんて。探す手間省けたわ。」
〘何?〙
「私、アンタを探してこの街に来たんだよね。」
〘……あぁ。なるほど知ってるぞ?他の奴らも言ってたなぁ。俺たちディストートを片っ端から探し出してぶっ殺す人間どもがいるとか。〙
「へぇ…ディストートって呼び方、私たちだけしかしないもんだと思ってた。」
〘随分前に…お前みたいな奴をぶっ殺した仲間が、自分がそう呼ばれたのを聞いたらしくてな…それから浸透していったみたいだぞ。まあこの状況ではどうでもいいがな…。〙
「血塗れだね…その様子だと犠牲者が増えたってことか…。」
〘今からもう一人増える。〙
「アタシのことか…まいいや。」
〘ひゃは!マジで!?〙
もちろん、ただで食べられてやるわけにはかないけどね。
さて…前に使ったの1ヶ月前くらいだから結構久しぶり。
「その代わり抵抗はする。人間らしくね。」
そう言ってスマホを取り出す。まずは小手調べ…願わくばここで倒す。
〘スマホ?写真でも撮って警察に持ち込むのか?それとも助けでも呼ぶのか?〙
「いや」
ピッピッ
ピッ
"SELECT NORMAL"
"DISTORT BRAKE MATERIAL"
"COLOR RED LET'S GO"
スマホから音声が鳴る。いつ聴いても耳が幸せな発音だ。
それを合図に着ているフード付きジャケットの白いラインが赤く輝き出す。
〘!?〙
驚いてる驚いてる。えーっとこういう時なんて言うんだっけ。
ルリ姉が言ってた…確か。
「変身。」
"NORMAL MODE"
ちょっと言うタイミング遅かったかも。
いや全然言う必要ないんだけどね。なんかそのほうがカッコいいらしい。
ルリ姉のセンスだけどさ。あの人ニチアサ大好きだから。
〘何だそれ…目ン玉と上着のラインが赤くなったくらいで特に変わった様子はないが?〙
「そうだね…変身と言っても私の見た目はそこまで変わんないし…アンタの言う通り、目とジャケットのラインが赤くなるだけ。」
〘変身なんて言うからビビったぜ…へへ、なんてこた無え。大人しく腹ン中入りな?それとも逃げるか?それなら今のうちだぜ!〙
「アンタが私に勝てたらね…その代わり、私からはアンタを逃がす気はない。」
〘生意気なガキだな…可愛くねぇ!〙
「3つ数えたら仕掛ける。」
〘いいぜやってみろよ。〙
「りょーかい。3。」
〘へへへ…おやつだおやつ。〙
「2。」
〘おいでかわいこちゃん!〙
「1。」
☆次回予告☆
夜の闇を裂き、駆け抜ける紅い光!
アルマジロ:ディストートをやっつけろ!
───次回!
第9話
【紅の戦士】!
行け!アンナ!