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第66話【安成と師匠】

《8月1日 PM17:37 長崎県・新上五島町・山王山のどこかの館》



 〘手際が良くなったな。〙


 「最近は料理してる。」


 〘手伝いか?〙


 「タエコに"少しは手伝いしろ"って言われた。」


 〘それは…良いことだな。〙


 「料理くらいできてたほうがいいと思うからさ。」


 〘家事は教えてやれなかったからな。〙


 「そうだっけ?」


 〘女だから家事ができなければダメだと…そんなことも言えぬ時代だ。各々自分のしたい事をしてのびのびと成長して欲しかったからな。お前達3人が自分からやりたいと言わない限り、基本的には私も与えなかった。〙


 「あんま覚えてないな。」


 〘鶴だけは…言い方が良いのか分からんが"女の子らしい"ところがあったからな。少々の家事は教えていたが。〙


 「逆にルリ姉は全然だったよね。」


 〘今も大して変わらん。〙


 「それはそう。」


 こうして肩を並べて料理をするなんていつぶりだろうか。SMOoDOのエージェントとして活動を始めた頃から1度も帰っていなかったから…かなり前のことだ。あの頃はまだ小さい子どもだったから、かなり師匠にべったりだったことも覚えてる。まあ、今も小さい子どもだが。


 〘つい3日前まで〙


 「?」


 〘鶴が来ていた。〙


 「知ってる。」


 〘ルリ子と鶴も18だな。〙


 「高校3年生。」


 〘…今になって少し後悔する時がある。〙


 「何が?」


 〘私が"戦い方"を教えなければあの2人は…いや、お前も含めて3人とも普通の女の子として平和な人生を送れていたのではないかと。〙


 「ふーん。」


 〘あの2人も年頃だ…周りを見れば同年代の女の子たちは普通に学校に通って普通に勉学に励み、普通に恋愛をして普通に生きている。お前達3人にもそんな道を用意してやりたかったと…最近思うようになってな。〙


 「ハハハ。」


 〘おかしいか?〙


 「それ多分全然違うね。」


 〘違う?〙


 「私も…ルリ姉もツル姉も…望んで選んだ道だよ。自信持ってやってんの。可愛い娘3人が自分で選んだ進路を師匠が後悔したらダメ。」


 〘そうか…。〙


 「そうだよ。」


 〘お前は良い子だ。〙


 ポンポン


 「ガキじゃないんだから/////」


 〘"ガキ"ではないが"子ども"だ。〙


 「うざ。」


 〘学校はどうだ。〙


 「そこそこ楽しい。」


 〘そうか…。〙


 「何?」


 〘鶴が言っていたぞ…"安成が学校に行くの楽しそうにしてた"と…。〙


 「そんなこと話してたの?」


 〘初めて見たと言っていた…学校のことを楽しそうに話すお前を。〙


 「別に普通じゃない?そのくらい。」


 〘お前が学校のことを"派遣先"と呼ばなくなったことを喜んでいた。〙


 「なにそれ。」


 〘フフフ…。〙


 「わけわからん。」


 〘友達はどうだ?〙


 「ん?いい奴らだよみんな。あの2人以外にももう1人いるんだけどね有田ってのが。林間学校も行ったしカレー作ったし。」


 〘そうか…。〙


 「そうだよ。」


 〘…大切にしろ。〙


 「おー…親っぽいこと言うね。」


 〘何を今更。〙


 「そっか。」


 〘來美は良い子だ。〙


 「やさしいよ。」


 〘お前のことをよく見ている。〙


 「ちょっと過保護。」


 〘どのくらい一緒にいるんだ?〙


 「今年からだから8カ月。」


 〘長いな。お前のアシスタントにしては。〙


 「そうだね。」


 〘気が合うのか?〙


 「一緒にいて楽。」


 〘そうか。〙


 「うん。」


 〘中々いないぞ。あそこまで気にかけてくれる子は。〙


 「そうだね。」


───────────────────────────


 〘時に安成よ。〙


 「ん?」


 〘さっきお前のことを"弱くなった"と言ったが。〙


 「そんな弱くなった?私。」


 〘厳密には少し違う。〙


 「その心は?」


 〘技術や自力は格段に成長している。〙


 「そりゃね。」


 〘瑠璃子から聞いたぞ…鶴の作った武器があったとは言え、格上相手に勝ったらしいな。〙


 「ルリ姉が見てないところでバカスカ殴り合いもしたけどね。」


 〘ほお?〙


 「むしろそっちかな…個人的には1番成長した実感が掴めたの。」


 〘良い敵と出会ったな。〙


 「敵として出会いたくなかった程には。」


 〘そうやって立派な戦士になっていくのだ。〙


 「そんなもんか。」


 〘そんなものだ。〙


 「んー。」


 〘私が指摘したのは心の問題だな。〙


 「精神論?」


 〘そんなに怖かったか?〙


 「!?」


 〘…………………。〙



 なんてことだ…全部筒抜けだったらしい。


 そうなのだ…あの日、初めて遭遇した危険度Ωのディストート。ザ・ビヨンドと名乗ったあの怪人と出会ってから、私は任務へのモチベーションが下がっていた。これから先…あんなのと戦わなければいけないと考えると息を呑んでしまう。あの日の夜のことを思い出すと今でも手足が震えてしまう。作り上げてきた実力と自信が音を立てて崩れたような気がした。それがストレスになったのか知らないが…師匠の言った通り、少し痩せたうえに便秘気味で肌も荒れて寝不足。


 〘ザ・ビヨンドか…。〙


 「……怖かった。」


 〘お前にはまだ早すぎる相手だ。〙


 「知ってんの?」


 〘当然だ…ヤツとは昔色々あったからな。〙


 「知り合いなの?」


 〘殺し損ねた。何度もチャンスはあったのだがな…心を鬼にしきれなかった私の不甲斐ないミスだ。それは向こうも同じだろうがな。〙


 「師匠とどっちが強いの?」


 〘時と場合によるかもしれんな。〙


 「……………。」


 納得のいく話だ。恐怖の正体はそれか。昔、いたずらをしたルリ姉に対して師匠が本気で説教をしたことがあった。その時に感じた圧と同じ物だった。なるほど…あの怖さの正体はこれか。


 〘今のSMOoDOには手に余りすぎる相手だ…対抗できるのはキャプテンとイーグル…瑠璃子、鶴…それ以外は"勝負にはなるだろうが負ける可能性のほうが高い"だろう。〙


 「ポイちゃんは?」


 〘あの毒娘か。〙


 「強いけど。」


 〘どうだろうな。〙


 「じゃあ私の可愛い弟分。」


 〘アレはお前たちと同列に扱っていいものではない。〙


 「可哀想な(ごう)ちゃん。」


 〘アレが出動する時は…この国がディストートの存在を国民に隠せなくなる。〙


 「アハハ。だろうね。」


 〘組織も扱いに困っているだろうな。〙


 「てかそもそもなんでディストートって日本にしか現れないの?」


 〘そこまでは知らん。〙


 「ふーん。」


 〘………できたぞ。〙


 「もってこっかね。」


───────────────────────────


 「お待たせ~。」


 「あ、アンナちゃんお手伝いできなくてごめn…うわ!」


 〘待たせたな。作りすぎたかもしれぬ…食べきれなかったら残して構わん。〙


 「安成ちゃんこれ…。」


 〘うちの師匠は何でもできんの。〙


 「高級ホテルの飯かと思ったぜ…。」


 〘好き嫌いはないか?〙


 「私は大丈夫です!タエコちゃんとショウマ君は?」


 「俺トマト。」


 「私セロリ。」


 「無いっていうんだよこういう時は。」


 〘愉快だな。〙


 「っていうかあの…アンナちゃんにジャッキーさん、この家って山の中なのになんで電気が使えるんですか?」


 〘地下に同胞が1人住んでいる。〙


 「うなぎちゃんね。」


 〘デンキウナギ:ディストートとでも呼ぶがいい。人間を襲うことに否定的な優しい性格でな。安全を保証してくれるなら自分の発電能力を生活に役立ててくれと自ら申し出てきたので(かくま)っている。〙


 「面白い性格してるから好き。」


 「アンナちゃんが言うならそうなんだろうけど…。」


 〘後で見に行くといい。奴も喜ぶだろう。〙


 「温かいうちに食べなよ。」


 「そうだな〜。いただきまーす。」


───────────────────────────


《8月1日 PM21:22》


 〘いつまで居るんだ?〙


 「1週間くらい?」


 〘そうか。〙


 ガチャ


 「安成よー。お前の部屋にあったゲームやっていい?」


 「いいよ。」


 「サンキュー。」


 バタンッ


 〘良い子だな。〙


 「最近までめちゃくちゃ仲悪かったけどね。」


 〘そうなのか?〙


 「何ならタエコをイジメてたグループの中心にいたよ。」


 〘そうか…それは凄いことだ。〙


 「めちゃくちゃ評価するじゃん。」


 〘悪い習慣を断ち切って正しい道を選んだあの少年も、それを許して受け入れたあの少女も両方だ。並大抵の精神でできることではない。良い友を持ったな安成。〙


 「ほんとにそう。」


 〘全く…色々と心配していたが杞憂に終わったな。〙


 「ちゃんと成長してんだよ私。」


 〘そうだな。〙


 「じゃ、私自分の部屋に行こっかな。」


 〘冷房をつけて寝るんだぞ。〙


 「はいはーい。」


 バタンッ


 〘さて…出てきたらどうだ?〙


 「バレてました?」


 〘隠れてるつもりだったのか?〙


 「いや〜w」


 〘まあ良い…横に座り給え。〙


 「お言葉に甘えて。」


 〘改めて…ジャッキー・シルバーだ。〙


 「寒來美です。」


 〘安成が世話になっている。〙


 「アハハ〜…世話されてるの私のほうかもしれないですけど。」


 〘手のかかる子だろう?〙


 「そうですね~…。」


 〘ハッハッハ。〙


 「だけど可愛いから大丈夫です!」


 〘迷いのないサムズアップだな。〙


 「光栄ですね。」


 〘………いくつだ?〙


 「21です。」


 〘結婚はしないのか?〙


 「もっと話すことありません!?」


 〘そうか?〙


 「そうですよ!」


 〘SMOoDOの未婚率は高いらしくてな。見たところ君は美人で気も利く…作るなら今のうちだぞ。〙


 「いやー……ありがたい評価ですよ。」


 〘この仕事は常に危険と隣り合わせだ。プライベートも少ない中で…君はよく頑張っている。〙


 「あはぁ…そ、そーですかね…。」


 〘気になる男もいないのか?〙


 「気になる……。」


 〘………居るのか。〙


 「ふぇ!?」


 〘沈黙が長かったな…気になり始めたのは最近だな?しかも君は余りその男のことを知らない。〙


 「なんでわかんの!?」


 〘ハッハッハ。わかりやすい。〙


 「……じ…実は〜…」


 カクカクシカジカ


 〘ほぉ……そうか…ハッハッハ!〙


 「へ?」


 〘これは面白い…そうか…うむ。〙


 「知ってるんですか!?ななな何なんですか!?」


 〘その男を知っている…近いうちに君と近しい関係になるだろう。そしたら遠慮せず責め続けろ。〙


 「は…はぁ…。」


 〘(案外お似合いかもしれんな…。)〙


 「(よくわからんけど嬉しそうだなこの人。)」






















☆次回予告☆


 帰省2日目!

 ジャッキー・シルバーから提案されたのは…!


─────次回!


 第67話


 【バッドランド】


 試練を乗り越えろ!

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