第62話【季節外れの紅葉!】
久しぶりの本編なので今回はアメコミ実写版ドラマ風オープニングのダンスがあります。イラストは全てデフォルメされています(AIによって)。
※本編とは一切関係ないです。私の趣味です。
イメージ楽曲【Oh Lord】
アーティスト【Foxy Shazam】
以下本編↓
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こちらに向かって飛んでくるディストート。キィィィィィン!という凄まじい風を切る音を響かせて完全攻撃態勢だ。
「なんか3ヶ月くらい時間が止まってた気がするんだけど………おかげでゆっくり準備できた…よっ!」
あっという間に残り100mくらいのところまで近づいてきたディストート。嘴をこちらに向けたまま、一切の防御をかなぐり捨てて、身体をまっすぐに伸ばして突っ込んでくる。
「まるで弓矢だね………攻め一辺倒の性格は……嫌いじゃ」
グルン!
バキッ!ミシミシミシミシ………!
タイミングを見計らってディストートの横顔に蹴りをぶちかます!さっきぶん投げられた御礼だ!福岡でのリオック:ディストートとの壮絶な殴り合いを経て、身につけた技術………相手の力の方向に合わせて身体を回転させ、勢いを受け流しつつ横から別の力を1点に込める!そしてそのまま……蹴りを振り抜く!
「ないよ!」
グルン!ブオン!
〘………ゲギャ…!〙
ばきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!
狙い通り、顔面の横に思いっきり蹴りを食らったディストートが吹っ飛んでいく!直線上にある木を粉砕しながら飛んでいくディストートを見つめる。
「嘴での突きに強いこだわり……さしずめキツツキ:ディストートってとこ?鳥類のディストートは珍しいんだよね……レアだ。」
軽く150mは吹っ飛んでいったであろう場所から、ゆっくりと立ち上がるキツツキ:ディストート。それなりの量のD.B.Mを込めて蹴りつけたはずなのだが……大したダメージが入ってないところを見ると、結構強い怪人なのだろう……危険度Bってとこか。
〘…………………………!〙
コイツの性格的にガンガン突っ込んでくる戦闘スタイルは崩さないはず。リオック:ディストートのような知性は感じない。なら、さっさと決着をつけてやる……そう決心した私は、腕時計に向かって口を開く。
「おいで……!」
キィィィィイン……………
私の声に反応して、空の彼方からアイツがやってくる。ルリ姉は本当にありがたいウェポンを作ってくれたものだ。
〘…………………………?〙
「来たよ………「勝ち」が…!」
流石に何かを感じ取ったのか、キツツキ:ディストートも空の彼方に視線を向ける。凄まじいスピードでこちらにやってくる飛行物体の雄叫びが、夜空に響く!
"ブルルルルルルルルルァーーーーーッ!安成嬢ォォォォォォォオーーーーーッ!"
「来たね……ツルリアンブラスター…!」
やって来たのはツルリアンブラスター。ツル姉が作った私の新しい武器……というか仲間というか…変なやつ。
「いつも近くにいるわけ?」
"イェェェェェェエイッッッ!!!!!ブラァ!"
「おっけ……じゃあさっさと決めちゃおうか。」
空中にホバリングしていたツルリアンブラスターを両手に取って構える!銃口は真っ直ぐにキツツキ:ディストートの方へ………今の私が使える最強必殺技!
ギュイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンンンンンンン………………………!!!!!
〘クァァァァァア…………………!〙
「ブチギレMAXって感じだね……怖い怖い。」
気合を入れなおす……身体の底から勇気と力が湧き上がる。それに合わせて滾るD.B.Mの放つ赤い光の輝きが、周りの木々や葉っぱを照らして鮮やかに彩っていく。
まるで季節外れの紅葉のようだ。
こんな状況じゃなかったら写真の1枚でも撮りたいくらいだ。きっと美しい写真が撮れるだろう。
"D.B.Mチャァァァァァァアーーーーーージッ完了ッッッ!!!!!"
〘…………………………!〙
「…………おいで。」
〘ギィヤァァァァァァァァァア!〙
ギュオンッ!
「じゃあね!」
"トリガァァァァァァァア!!!!!プッシュォォォォォォォォンッッッッッ!!!!!"
カチッ
【グゥゥゥルルルレェイトォ!マァァキシマァムッッッッッブゥルルルルラスッタァァァァァアーーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!!!!!!!】
ジュバゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!
放たれたグレート・マキシマム・ブラスター!図体のデカいキツツキ:ディストートの胸に思いっきり炸裂したビームの威力で、周囲の地面や葉っぱが舞い上がる!
〘ギギギギギ………………!〙
"ブルルルルルルルルルルルルルルルァァァァアッ!!!!!"
「凄いね…これ食らってそこまで踏ん張るなんて…!」
凄まじい勢いのD.B.Mビームを胸で受け止めたまま食い下がるキツツキ:ディストート!羽や皮膚が焦げ飛び、徐々に後ろに下がっていくその大きな身体が、ついに宙に浮いた!
「今だ!」
"イエッサァァァァァァァァアーーーーーッ!"
ジュバゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!
〘ギェェェェェェェェア!〙
このチャンスは逃さない!構えたツルリアンブラスターにありったけのD.B.Mを込める!それに呼応するようにさらに太く強くなったグレート・マキシマム・ブラスターの威力に耐えきれなくなったキツツキ:ディストートが、ついに後方に凄まじい勢いで吹っ飛んでいく!
「カウントダウン5秒前…4…3…2…1…」
ピカッ
「ボン。」
ドッッッッッッッゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッン!!!!!
凄まじい閃光を放って大爆発を起こすキツツキ:ディストート!危険度Bのディストート……ほんの数週間前までの私なら全身全霊で死闘を繰り広げていたレベルの相手だっただろう……いや、正直今でも身体能力はどっこいどっこいくらいだろうけど……あのUSB任務を経て、メンタルも強くなったし、何よりこんな凄い部下も手に入れた。
"ドッカンッ!"
「ご苦労さん。」
"ブラァ!"
「アンタやっぱり凄いね。」
"危険度Bのディストートォォ……報酬ガッポリッ!"
「やっぱりそのくらいだったの……」
"アタシャアこれ…スキャンしたディストートの強さ測定機能突きィィィィイ!"
「ほへ〜。さすがツル姉…便利な機能に余念がないねぇ。」
"ジーニアァァァァァァァス!"
「ホント。天才で」
ゾワ………
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─────同時刻、都内道路。
「來美さん!早く安成ちゃんのところに!」
「うん!えーっと、アンナちゃんのスマホの位置情報は拾えてるよ!」
「凄いですね、このSMOoDOから支給されてるスマホ……色んな機能ついてて…。」
「うん!ついでに周りのディストートの反応も探知できるよ!さっきまでアンナちゃんの近くに出てた大きな反応が消えたから、アンナちゃん…さっきのディストートやっつけたみたい!」
「良かった〜!早く安成ちゃん連れて帰って晩御飯食べましょ!」
「そうだね!そしたらアンナちゃんに連絡を取って──────」
「………………來美さん?どうしたんですか?黙って。」
ガチャ!ピピピピピ!
「え!?來美さん!?」
先程まで安成の位置情報を見ていた來美の表情が、見たこともない焦りと恐怖の表情で手元の機械をいじっている。一体何が起こっているのかわからない耐心の心配を振り切るように、來美が自分のデバイスに向かって大声で叫んだ。
「SMOoDO本部!SMOoDO本部!こちら、エージェント晴家安成のアシスタント!応答してください!応答してください!大至急連絡です!大至急!」
「え?え?來美さん?」
「Ωランクエージェントの出動を要請します!お願い!お願い!急いで!」
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【SMOoDO本部通信指令室】
ウァー!ウァー!ウァー!ウァー!
「ん?緊急事態サイレン?珍しいな…誰からだ?」
「はい……Bランクエージェント・晴家安成のアシスタント、寒來美からです。SMOoDOスマホの画面映像も送ってきてます。」
「よし、開いてみよう。」
「はい!」
カチッ
「こ…………これは!?」
「通信司令室!急いで上層部と内閣府に連絡!そしてΩランクエージェントに出動要請!」
「了解!Ωランクエージェントに緊急出動コールを同時送信します!」
「任せた!私は上層部に……………ついにこの時が来たか……!」
─────その時は突然訪れた。世界各地に散らばるΩランクエージェント達の持つ、SMOoDOスマホに向かって、本部より送信された緊急出動コール。これまで1度も鳴ったことのなかったその音が知らせた事実は……………。
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【再び、安成サイド】
「……………………………!」
動けない………!
空気が凍ったような……いや、ここまで来たら時間が止まっているような……!
この前のパニッシュメント:ディストート……あの時も、その凄まじい存在感に全身の血が逆流するような感覚を覚えた。
だけど…これは…そんなレベルも超えてる…!
まるで背中を無数の槍で刺されているような感覚……振り向いたらそこで命が終わってしまうような恐ろしさ……恐怖……怖さ………全部同じ感情……だけど……!
「(ルリ姉…ツル姉…師匠…ライミちゃん…タエコ…ショウマ…ドラウガス…みんな……!)」
クルッ
拳を握りしめて、勇気を胸に振り返る。視線を感じる夜空の先へ、顔を向けるとそこには──────
〘晴家安成の……オリジナルだな?〙
「………ハァ………ハァ………ハァ………ンク……!」
滴る汗が目に入って痛い…唾を飲み込む喉が重たい…!
〘その歳でウッドペッカーを倒すとは…ヤツはあの御方がそこそこのエネルギーを込めて作ったはずだが…なるほど。〙
「…………………………あ…あんた…誰?」
〘私は【ザ・ビヨンド】………貴様らSMOoDOの名称に則れば……【オーバーウェルム:ディストート】とでも名乗っておこう。〙
オーバーウェルム……Over Whelm……圧倒的……。
「…………………し…知ってんの…私のこと…!」
〘知っている……私だけではない……私の同僚もな。〙
「同僚?」
〘我々は〘七怪〙と呼ばれている………が、今はどうでもいい。気配を消して先ほどの戦いを見ていた……先ほどだけではない……これまでもな……。〙
「…………………へぇ……それは光栄だね……。」
〘誰かに戦いを教わったろう。構えを見るに────────────────。──────────────?〙
「!?なんでアンタが」
ドサッ!
空中で腕組みをしていたザ・ビヨンドと名乗るディストートが地面に降り立つ。
〘図星だな?聞いてみるといい……ヤツは一味違うからな。〙
「………………へへへ……どうかな……師匠はアンタのこと覚えてないかもよ。」
〘いや…ヤツは覚えているさ…フフフ。〙
「…………………………………………。」
なんで……なんでこいつ……師匠のことを知っている!?いや……確かに知っていてもおかしくない……けど……親しかったのか!?いや、何も聞いてない……言わなかったのか!?
〘ん?フフフ………足が震えているぞ晴家安成。〙
「…………………え………あ…。」
〘フフフ……そら。〙
ツン
ドサッ
ザ・ビヨンドにオデコを人差し指で突かれ、その場にへたり込んでしまった……。
「……………ハァ……ハァ………!」
〘感情と行動がアンバランスになっているな……。泣くほど私が恐ろしいか?〙
「え?あ………………。」
〘安心しろ……ここでお前を殺すつもりなどない。私が〙
"残エネルギー自動放射ぁぁぁぁぁぁぁあ!ブルルルルルルルルルルルルルルラァ!"
ジュボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーッッッ!!!!!
〘ん?〙
その時、後ろから凄まじい勢いで放たれたビームがザ・ビヨンドの胸に命中する!
「ブラスター………!」
〘ウッドペッカーを葬った一撃か………なるほど、良い威力だ……!〙
"ぬぁにぃぃぃぃぃぃぃぃい!?"
〘これは…大抵の同胞は耐えきれんな………カミーラ程の実力者を葬ったのも頷ける……作ったのは……壱文字鶴か。〙
「………………………ハァ……ハァ……ハァ……!」
〘なるほど……本郷ルリ子と合わせて3人の弟子がいると聞いていたが……ヤツが師なら納得だ…。〙
「……………………………グス…ハァ…ハァ……ング…!」
〘……………良し…今日はここまでにしよう晴家安成……また会える日を楽しみにしているぞ!〙
バサッ!
ドギューーーーーーーーーーーーーンッ!
凄まじい勢いで飛んでいったザ・ビヨンド。あっという間に夜空の闇に消えたその姿を私はずっと見つめていた。
怖かった……死んだかと思った……私……生きてるよね?
「アンナちゃん!大丈夫!?」
「安成ちゃーん!」
「…………ライミちゃん…タエコ…!?」
向こうから山道を突っ走ってやって来た車から降りてきた2人がこちらに駆け寄ってくる。どうやら気づかないうちに鋪装された道路のそばまで来ていたらしい。
「アンナちゃん……大丈夫?ごめんね遅くなって…!」
「安成ちゃん……ボロボロ…。」
「………………私………生きてるよね………?生きてる?」
ギュッ
「生きてるよ………アンナちゃん無事でよかった…!」
私を強く抱きしめたライミちゃんが涙を流しながら頭を撫でてくれた。なんてこった……タエコにも無様な所を見せてしまった。
「…………ごめんね…情けなくて…私………。」
「情けなくなんかないよ……大丈夫……大丈夫だから………。」
私を優しく撫でながら背中を擦ってくれるライミちゃん。そばに立っていたタエコも優しく口を開く。
「安成ちゃん……帰ろ。」
「うん……そうだね……ほら田中君も1人だし…ね?」
「そうだ…ショウマ…うん…ショウマ待ってるね。」
だいぶ落ち着いてきた……呼吸も元に戻ってきた…さっきまでガクガクだった足に力を入れてゆっくりと立ち上がる。
「ごめん……よし、帰ろ。」
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【同時刻/SMOoDO本部】
「………本当に出たのか?」
「はい、轟木長官……晴家安成の専属アシスタント・寒來美の通信内容と、晴家安成のSMOoDOスマホのディストート探知機能が計測したエネルギー測定値が一致しました。間違いありません。」
「そして消えたと……もう少しで国家緊急事態宣言だったな…。」
「総理大臣も真っ青ですね。」
「安成ちゃんは無事なのか?」
「はい……無事との連絡が入りました。」
「そうか………………良かった。」
「Ωランクエージェント達には音在ドレミを通じて連絡を。」
「…………………よし…Ωランクだけではない、今すぐSMOoDO所属の全エージェント及び全アシスタントに今回のことを伝えるんだ。」
「はい……すでに手配しております。」
「そうか………。」
窓から夜空を見つめる轟木。眉間にシワを寄せ、静かに呟く。
「……………………危険度Ωか……!」
───次回
第63話
【大人の責任】




