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第60話【歓楽街のプリンセス】

《7月20日(土) AM10:00 アンナの家》


 「よし!2人とも準備OK?」


 挿絵(By みてみん)



 「ライミちゃんは本当にその服で行くの?」


 「え?なんで?変かな。」


 「実行委員みたい。」


 「実行委員!?」


 「文化祭の。」


───────────────────────────


《7月20日(土) AM11:00 歌舞伎町》


 「なんだか…あまり人いないですね。」


 「歌舞伎町は夜の街だからね〜。この時間は流石に人いないと思うよ。」


 「ふーん。じゃああそこの女子高生にお金渡してるオッサンはあれは何なの?」←知っている


 「黙れよ。」


 「(來美さん私服にダメ出しされたの根に持ってる………)。」


 早速歌舞伎町に足を踏み入れる。日本一の歓楽街とは言ってみるものの、流石にこんな午前中から飲み歩いている人は少ないらしい。


 「そもそもお店が空いてないですね…。」


 「ほんとに大丈夫なのかな……組織の任務に部外者連れてきて。」


 「普通の一般人はダメだよ。コイツは…まあ例外。」


 安成が親指で右隣を指す。


 指と視線の先に立っているのは─────。




   挿絵(By みてみん)




 「お誘いどーも。」


 「来てくれてありがと。」


 「翔馬(アンタ)は来たことある?歌舞伎町。」


 「多くはないな。年齢的に入れるところのほうが少ないぜこんなの。」


 「ま…今から行くとこは大丈夫だから。」



───────────────────────────


 【コンセプトカフェ・ふりぃわあるど】


 「着いたね、ここだ。」


 「コンカフェか。まあ確かに他の店と比べたら幾分マシだな。」


 「來美さん、コンカフェってなんですか?」


 「コンセプトカフェの略で………メイド喫茶みたいな?」


 「FREE-WORLD……自由な世界とは良く言ったもんだ。入るよ。」


 ビルの1階にドカッと構えているあたり、グループとしてかなり大きいのか、それとも組織が用意した隠れ蓑か。ま、どっちでも良いけど。


 私たちは早速玄関から…ではなく裏口の方に回ってインターホンを鳴らす。


 4人並んで待っていると、すぐにドアが開く。ゆっくりと動いたドアの隙間から顔を出したのは、ぽいずんミルクてゃ…こと桃霧紫葡その人であった。


 「ようこそ〜♡」


 「久しぶりポイちゃん。」


 「は〜いアンナちゃん〜♡そして後ろのお姉さんが(さむ)來美(らいみ)さん、隣の子が(しのぶ)耐心(たえこ)ちゃん……それと君は〜いつぞやのゲームの子だね〜?」


 「そうそう。田中翔馬ね。」


 「とにかく上がり給え〜。」


 「ほーい。ほら3人とも、中入るよ。」


 ポイちゃんの案内に従って、裏口から店に入る。今日は店休日らしい。私たち以外には誰もいないってわけで、任務の話をするなら寧ろ好都合だ。薄暗い店の中を進んでいくと、VIPルームと書いてある扉をポイちゃんが開ける。高級そうなテーブルをピンク生地とシルバー縁の可愛らしいソファが囲んである個室だ。私たちはそこに座った。


 「あ、君はこっち〜♡」


 ポイちゃんが、私の隣に座っていた翔馬を持ち上げて自分の横に座らせる。


 「は?なんで?」


 「え〜?だって〜……ね♡」


 「いや怖い怖い。安成ちょっと助けてくれや。」


 「良かったじゃん綺麗なお姉さんに気に入られて。」


 「連れて帰っちゃダメ〜?」


 「ダメっすよ。俺にも家があるんで。」


 「え〜…(눈‸눈)」


 「そして2人はなんで黙ってんの?」


 店に来てから一切口を開かない來美ちゃんと耐心の様子をうかがう。緊張しているのか冷や汗をかいている。


 「なんでそんな緊張してんの?」


 「桃霧紫葡さん…ですよね、Ωランクエージェントの…。」


 「アハ〜♡お姉さん、ポイのこと知ってるの〜?」


 「前に資料で拝見させていただきまして……へへ。」


 「資料〜?なるほど〜……耐心ちゃんはなんで静かなの〜?」


 「あのあの…私、来てよかったのかなって……今更なんですけど…。」


 「当たり前でしょ、私の任務なんだからアシスタントとして責任持ってついてきな。」


 「そうだよ〜。アシスタントさんなんだから〜。」


 「は、はい…!」


 「さて、あんまり時間もないし早速本題なんだけど───────。」



───────────────────────────


 「なるほど〜……夜中に人が消えるか〜。」


 「そ。行方不明になった人は歌舞伎町もしくはその周辺に集中してるらしい。けど私たちは歌舞伎町にあんまり詳しくないし。関わらないから噂とかも流れてこないし。」


 「それでポイの所に来たってことね〜……了解。結論から言うと〜……何も知らな〜い!」


 「そ……なら仕方ないか。」


 「ほんの噂とかでも良いんです。変な音を聞いたとか。」


 來美ちゃんが音の情報を伝える。そう、今回の事件で奇跡的に逃げ延びた被害者の証言から、襲われる直前に音が聞こえたことを組織は突き止めたのだ。


 「音〜?」


 「はい……なんでも、木で物を叩いたような音が短い間隔で。」


 「木でね〜………あ。」


 來美ちゃんの話を聞いて何かを思いついた様子のポイちゃん。そして顎を触りながら「ん〜…」といった感じの(非常に可愛らしい)表情で口を開く。


 「トゥントゥントゥントゥントゥントゥントゥントゥントゥンサ◯ール………。」


 「嘘でしょ…!?」


 「まさか………実在すんのかそんなもんが……!」


 驚愕の表情を浮かべる私と翔馬。かたや全くピンときていない來美ちゃんと耐心。私たち3人の反応をしばらく見ていた耐心が問いかける。


 「あの……それってなんですか?トゥントゥントゥン?」


 「トゥントゥントゥントゥントゥントゥントゥントゥントゥンサフー◯。ネットミーム……あ〜、ネットで流行する表現とか動画とかの事を海外でそう言うんだけど……。」


 「ほらこれだよ。これがトゥントゥントゥントゥントゥントゥントゥントゥントゥン◯フール。」


 翔馬が來美ちゃんと耐心にスマホを渡す。画面いっぱいに映っていたのは、人参か木の棒に細い手足と大きな目玉が2つ付いたキャラクターだった。その手にはしっかりと、木の棒が握られている。


 「………これがトゥントゥントゥンなんとかなの?私と耐心ちゃんぜんっぜん何が何だか分かんないんだけど。」


 「トゥントゥントゥントゥントゥントゥントゥントゥントゥンサフ◯ルね……ポイちゃんに悪ノリしたけど、まあこんなもんが実在するわけないか。」


 流石にね…逆にこんなのが持ち歩いてたら、ディストートと出くわした時よりびっくりするかもしれない。当のポイちゃん本人も、ニヤニヤ笑っている。


 「結局何も分からず終いか……。」


 「ごめんね〜…せっかく来てくれたのに〜…。」


 「いや、良いよ。むしろ休みの日にごめんね。このチケットどうしよ。」


 「それ営業中に使うやつだから〜また今度持ってきて〜。」


 「わかった。久しぶりに会えてよかったよ。さ、帰ろっかね。」


 「うん。それじゃあ紫葡さん、私たちはこの辺で。」


 「來美お姉さんバイバ〜イ♡耐心ちゃんも♡」


 「はい!あの……また今度。」


 「しょーたんはここで紫葡姉ちゃんと一緒だよ〜?」


 「いや帰りますよ。」


 「ぶ〜………(눈‸눈)」


 なんで翔馬(コイツ)が良いのか知らないが、どうやらポイちゃんは相当気に入ったらしい。帰りたがる翔馬の顔を見て、不貞腐れている。


 ていうか手伝ってくれたらめちゃくちゃ楽なんだけど…ダメ元で聞いてみるか。


 「手伝ってくれないの?」


 「うん。めんどくさいし。」


 だよね。


 「それが組織最高戦力のセリフかね。」


 「ニャハハ〜♡」


───────────────────────────


 「結局ヒントは無しか……こりゃ地道に探すしかないね。」


 肩をすくめて言葉を漏らす。ため息混じりな私を他所に、來美ちゃんが口を開く。


 「こんな事もあろうかと……小型ドローンとか色々持ってきてるよ!」


 「全部で20機か……とりあえず組織側が把握してる被害現場には2つずつ絶対飛ばすとして、残りの6機どうしよ。」


 「あ…自動操縦モードで徘徊させるのは、どう?かな…。」


 「そうだねぇ……じゃあタエコの作戦で。」


 「やった…!」


 「それと翔馬。」


 「おう。」


 「ちゃんと着替えとか持ってきた?」


 「おー。一応3日分あるぞ。あとゲームとスマホと」


 「すとーっぷ!」


 荷物確認をしていた私と翔馬の会話を遮るように、來美ちゃんが待ったをかける。


 「え!?何!?田中君泊まるの!?」


 「うん。」


 「知らなかったんだけど!?」


 「今言った。」


 「耐心ちゃんは知ってたの!?」


 「いや知らなかったです……。」


 「そうなの…安成ちゃんちょっと……。」


 なにやら呼ばれたので耳を貸す。


 「男の子泊めるの?」


 「ダメなの?」


 「ダメだよ!準備とか色々してないのに!」


 「私の家なんだけど。」


 「………それを言われると。」


 「はいオッケーね。翔馬〜。」


 「おー?」


 「あんたアタシの部屋に寝るでOK?」


 「OK.」


 「えぇぇぇえ!?OKなの!?」


 「ダメなの?」


 「ダメダメダメダメ!せめて皆でリビングに布団敷いて寝て!」


 「そんなのめんどいから部屋で雑魚寝で良いよ…。」


 「あー!あー!だけどっほらテレビ見ながらとか!ゲームしたりとか!ね!しながらそのまま寝れるし!ウォーターサーバーもあるし!冷蔵庫もあるし!便利だからリビング!」


 「あー……確かに。じゃあ3人でリビングに寝よう。タエコもそれでいい?」


 「い……良いけど…田中君は?」


 「了解。」























☆次回予告☆


 ディストートの調査に乗り出すも、何の手がかりも掴めない4人!

 果たして、夜の歌舞伎町を荒らす怪人の正体を暴けるか!


 ────次回!


 第61話

 【上から読んでも……!】


 下から読んでも……!?

【設定を語ろうのコーナー】



桃霧紫葡(ぽいずんミルクてゃ)


《プロフィール》


◯出身地…愛知県・名古屋


◯誕生日…2007年10月9日(毒の日)


◯年齢…16歳(初登場時)


◯身長…162cm


◯体重…50kg


◯3サイズ…B90W55H88(着痩せするタイプ)


◯好物…エナジードリンク、眠剤


◯好きな音楽…肯定感のある曲


◯好きな本…ディスレクシアにつき、本を上手に読めない


《備考》


腰まで届く長い黒髪を前髪ぱっつん&ツインテールにした可愛らしい雰囲気の美女。

昔、猛毒を持つディストート達によるテロの際、様々な毒を同時に浴びた結果、あらゆる毒への耐性及び摂取した毒を体内で生成・操作する力を得てしまった少女。上記の名前を名乗っているが、【桃霧紫葡(ももぎりしほ)】という立派な本名がある。

滅多に他人に心を開かないが、一度心を許した人間には徹底的に依存するタイプ。独占欲も強く、自分が一番に思われていないと不機嫌になるという困った性格の持ち主。

面食いという色好みな趣味も合わさって、好みの男には徹底的にアプローチし続け、自分に振り向かない場合はヒステリックを引き起こす。


身体能力は他のΩランクエージェントに比べて低いものの、触れれば終わりの猛毒生成人間という、他の誰にも真似できない特徴を持っている。それ故に、下手な搦め手でも飛んでこない限り一方的に相手を倒せてしまうため、組織の中でも1,2を争う危険人物と言う可哀想なレッテルを貼られてしまっている。

本人は人の温もりを求めて積極的に近づいてくるが、自身の毒で大切な人に害を及ぼしてしまうというジレンマを抱えている。

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