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第7話【犠牲者—ヴィクティム—】

 「あ〜〜〜〜!マジでなんなの!?」


 何をやっても上手く行かない。私たちがあれよこれよと作戦を立てて実行した嫌がらせが全て空回り。


 逆にアイツを目立たせて、速くも皆の人気者にしてしまった…当初の目的とは真逆の結果に終わってしまった。


 「ビックリした…朝の音。」


 「美香、大丈夫?あんた大っきい音苦手だもんね。」


 アイツには分かってたんだ…私がやりそうなことが全て…。


 「アイツ…絶対許さない!絶対潰す!」


 「雛鳴ちゃん…。」


 このイライラは多分、他のことしたって収まらないだろう。アイツの顔を見る度に込み上げてくる負の感情に支配されて、一生解放されない気がする。アイツをギャフンと言われない限り!


 「じゃ、私こっちだから。じゃーね美香。」


 「うん!じゃあね!また明日!」


 美香と別れた下校道を1人歩く。もっと…もっともっと徹底的にやらなきゃダメだ!


 もっと綿密に…作戦を練らなければ…アイツはまた私達の考えを読んでいとも容易く対策してくるはずだ…絶対に貶めてやる!


 そう強く決意したところで、アイツを踏み潰すように強く、一歩一歩踏みしめて帰った。




───────────────────────────




《次の日の朝》


 「雛鳴が帰っていないそうだ。」


 朝の会で知らされたのは、イジメの主犯格だった安達雛鳴が家に帰っていないというニュースだった。


 「私…2人で帰ってて…途中で別れて…。」


 泣きながら池長美香が話す。安達雛鳴の取り巻きだった女の子だ。私は他人のために泣くとか…そういう経験がないからわかんないけど多分、凄く仲良しだったんだろうな。


 「しばらくは1人で登下校しないように。送ってもらえる人は出来るだけ親御さんに送ってもらえ。」


 そうそう。それが一番安全だ。車は文明の利器だ。神様が人類に与えてくださった知恵だぞ。鉄の塊が時速100kmで走るこの凄さ。


 まあ、今回の犯人が【人間じゃなくて私の任務のターゲット】なら…車で登校しようが意味ないと思うけど。


 まだ、普通にどっかで倒れてたりとか、誘拐の可能性もあるしね…いや、それはそれで一大事なんだけどさ。



───────────────────────────



《そして放課後》


 その日、嫌がらせは無かった。まあなんだ、イジメの主犯格だった安達と武田が両者不在だから。ツーマンで仕切っていたであろうクラスの士気はだだ下がり。


 ていうか多分もうイジメに関しては大丈夫なんじゃないかな。


 「今日なにもされなかった…初めて。」


 タエコがつぶやく。声の大きさやトーンで色々な感情が伝わってくる。安堵、驚愕、それから恐怖…まあそれは他も同じか。


 「正直さ…安達がいなくなって安心してる?」


 そんな私の質問に「え?」と反応した後、しばらく黙って考えて…10秒くらいかな?沈黙の後に答えてくれた。


 「少しだけ。」


 少しだけか。まあこれが安達が転校するとかだったらもっと安心できたんだろうけど、行方不明だからな…そりゃ素直に喜べんか。


 「安達がさ、いなくなってよかったとか…思ってる?」


 「…全然思ってないよ。イジメられなくていいんだって言う安心感と、雛鳴ちゃんがいなくなってよかったっていうのは、それは別の問題だから。雛鳴ちゃん…家族もいるし友達も多いし…みんな心配してると思うし。」


 「…優しいねタエコ。」


 「あはは…優しいのかなー。」


 いや私だってそりゃね…サイコパスじゃないから流石に心配だけど。そもそも誰にも犠牲になって欲しくなかったのに…。


 いくら安達とは言え、犠牲者がでたことは完全に私のミス。安達にも、安達の家族にも申し訳ない。


 「多分もう…イジメはぶり返さないんじゃないかな。」


 「え?」


 「武田もしばらく休み。安達は行方不明。多分、あんたに対する嫌がらせ主導してたのはあの二人だったんじゃない?」


 「う…うん、そうだけど。」


 「今日なにもなかったでしょ…リーダーがいなくなった集団って脆いんよ。だからもう、タエコへのイジメ無くなると思う。」


 「そうかなぁ…なんだかアンナちゃん説得力あるから…何でも言うとおりになっちゃう気がする。」


 愛想笑いしながらタエコが言う。あら可愛い。多分顔がいいのもイジメの理由だったんじゃなかろうか。


 自己顕示欲の塊だった安達的にはそれが許せなかったんだろう。私には、顔が人間の上下を決めるなんて価値観は到底理解できんが。


 「…アンナちゃん。」


 「ん?」


 「…ごめん。嘘ついた私。」


 「嘘?」


 「うん…ホントはね。雛鳴ちゃんがいなくなって…喜んじゃった…少しだけど…もう嫌がらせされなくて済むんじゃないかって…私思っちゃって…ずっと辛かった…叩かれたり盗まれたり…ずっと怖くて…!」


 「泣かないの。ほら大丈夫だから。」


 そりゃそうだよ。それだけ辛いんだイジメってさ。むしろ、それを態度にも口にも出さなかったタエコは凄い。


 「………家まで送るよ。タエコん家まで。」


 「え?悪いよアンナちゃん帰るの遅くなっちゃう…。」


 「いいのいいの。そのほうが安全やけん。」


 「…アンナちゃんってたまに方言出るよね。」


 「…変?」


 「全然?ちょっと可愛いかも…w」


 「えー。照れる照れる。」


 「絶対思ってない!」


 こういう中身ない会話っていいよね。それからタエコの家につくまで、ずーっとこんな感じだった。







 「じゃあね、アンナちゃん。」


 「じゃね。また明日学校で。」






 取り敢えず家に送って…タエコの安全を確認。多分、今回のやり方を見るに、奴さんはターゲットが1人の時に襲うタイプのはずだ。取り敢えずライミちゃんに電話するか…


〜♪〜♪


 "もしもーし!アンナちゃーん?帰ってきてる〜?"


 「うん。友達の家の前。家に着くの18時手前くらいになるかも。」


 電車乗ってもいいけどお金かかるし歩いて帰る。迎えに来てもらうのも悪いし。


 "大丈夫?クラスメイトの人のこと…聞いたけど"


 「うん、大丈夫。それに私が1人で帰ってれば私が向こうの標的になるかもだし。そしたら願ったり叶ったりだよ。」


 "それはそうだけど…いやいや!アンナちゃんのこと信用してないわけじゃないからね!私もこう、報告とかアンナちゃんのサポートとかあるし!"


 「はいはい。わかってるから。」


 ホントは普通に心配してるんだろうな…だからこそ迷惑かけたくないんだけど。未だにビビるしね実際アレと出くわしたら。まだ新人なのに…私のアシスタントになったばかりに前線に立たされて可哀想。


 「なんかあったら連絡してね。こっちも連絡するから。」


 "うん!一応私の方でも、今回の事件がディストート絡みかどうか調べてみるから!"


 「はーい。情報収集よろしくね〜。」


 ピッ


 「…よし。」


 まあ100%ディストートの仕業だろうね…まさか私が組織のエージェントだと悟られたかな?


 いや…多分それならわざわざ安達を襲う必要がないから、さっさと何処かに行くはずだし…まだ転校数日だし…バレてはいないはず。


 あまりゆっくりもしてられないな…私の見立てだと多分、クラスの誰かに擬態してるはず。


 明日から本格的に全員に探りを入れてみるか…



 そう思った時だった。



〜♪〜♪


 「どうしたの?ライミちゃん。」


 "死体が見つかったって!組織が話し通してるみたいだから、アンナちゃん現場に向かって!"



 「…了解。」





















☆次回予告☆


 ついに現れた脅威!

 襲い来る奴らの前に立ちふさがる者…それは我らが晴家安成だ!


───次回!


第8話


【アンナ、変身!】!


 その力…倒すためか!?助けるためか!?

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