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第47話【バット・コミュニケーション】

《7月7日 PM20:24 名古屋市街・ルリ子&紫葡サイド》


 「任されたは良いけどよ、どうやって病原体(ディストート)見つけんだよ?」


 「ボツリヌス菌の濃度と反抗菌(キラー)で追うよ〜。」


 「反抗菌(キラー)?」


 「そ。ポイが指定したウィルスとか細菌だけに敵意剥き出しで襲いかかるカウンターウィルスだね〜。」


 「すげぇなオマエそんなもん作れんのかよ!?」


 「いっぱい敵菌(ターゲット)がいる場所に行く性質があるから〜、短時間で発生源まで辿り着くよ〜。」


 「至れり尽くせりだな。」


 「ちなみに敵菌に感染してる人に打ち込めば病原菌だけぶっ殺して自然消滅するよ〜。」


 「医者になれオマエは。」


 「…だけど私は1人しか居ないから…今ボツリヌス菌で苦しんでる全員に打ち込むのは多分…追いつかないかな。」


 「(素に戻ったな…紫葡(こいつ)もそんだけ焦ってるっことか)」


 「医学と薬学に物凄く成通してる人なら、私の反抗菌(キラー)を分析して薬にできるのかもしれないけれど。」


 「…薬と病気に詳しければ良いんだな。」


 「…ルリ子ちゃん心当たりあるの?」


 「心当たりっつーか…あれだな。」


 「?」


 「アタシのアシスタントだな。」


 「…え?え!?『鶴ちゃん』来てるの!?」


 「いや、最初からついてきてもらってたんだよ。アンナ達には内緒な。」


 「オッケー!」


 突如として現れた白髪のディストートをアンナ達に任せ、ボツリヌス菌を媒介する別のディストートを追うルリ子と紫葡。状況は板挟みだ。もちろんディストートの討伐は大前提…しかし、それよりもっと大切なのは、巻き込まれた一般人の治療である。


 ボツリヌス菌はインフルエンザ等に比べると感染力の強い菌ではない。が、空気中でも12時間は生存し、日光下でも最大3時間は感染のリスクを孕む。まして現在は夜…そしてこの菌、自然界に存在する細菌の中でも致死率がぶっちぎり高いのである。


 一般人の健康被害…そして何より、被害の範囲の広さから懸念されるのは─────。


 「そろそろかもな…SMOoDO(アタシら)とディストートの…。」


 「…私は最初から明かすべきだと思ってたけどね。」


 「ビビってんだろ……隠蔽は国家の御得意常套手段だからな。バレたら国民からのバッシングは避けらんねーよ。」


 「ニャハハ…大事な会議の席で居眠りしてるだけの税金泥棒さん達がそこまで頭回ると思う?」


 「………思わねぇ。」


 「だよね〜。」


 「とりあえず鶴に電話するぜ。アタシらは発生源を叩く!」


───────────────────────────


《同時刻 名古屋市街上空・アンナ&影狼サイド》


 「影狼…あんたの体調どれくらい持つの?」


 「…拙者の秘薬は病を治すのではなく一時的に抑え込むもの故、保証は2時間・無理すれば3時間でござる!」


 「おっけ…アタシは身体ん中のD.B.Mが病原菌やっつけちゃうから問題ないとして………ねーねー!」


 カラスたちの背に乗って名古屋の上空を飛ぶアンナと影狼。2人の視線の先には、同じく大量のコウモリの背中に乗って平行に移動する白髪のディストートの姿。アンナに呼びかけられ、彼女は振り向く。


 〘なに?〙


 「アンタ、名前くらい名乗りなよ。」

 

 〘えー?ヤダヤダヤダー!雑魚には教えませーん!〙


 両手でツインテールを片方ずつ持ち、それを前後に動かしながら変顔を作るディストート。わかりやすく煽り散らかす様子を見つめながら、アンナが話を続ける。


 「名乗る度胸もないってことね…まいいや。どーせたいした名前でもなさそうだし…ねぇ影狼。」


 「これから死にゆく怪人の名など聞いても意味ないで候。」


 アンナと影狼は動じない。この歳にして大ベテランエージェントの2人である。今更、敵のディストートに何を言われようと特に気にならない。むしろ逆に怒りを誘う言葉を放つ。


 〘うっさいばーか!死ぬのはオマエラだよ!わからせてやる!カミーラの怖さとか恐ろしさとかさぁ!〙


 「カミーラ?」


 「珍しいでござるな…名前にこだわるタイプのディストートは。」


 「ま…カミーラって名前とコウモリの大群を見るにコウモリ:ディストートってところかな。残念ながら根っこまで腐った悪人らしい。」


 「ルリ子殿と紫葡殿が向かった先にいる怪人は一向に姿を見せぬ…奴の言うことを言葉通りに受け取るなら…!」


 「表立って出てきたコイツは『戦闘要員』もしくは『ウィルス型の護衛』ってことか…なるほど、骨が折れそうだね。」


 ため息交じりに愚痴を吐き出すアンナ。するとジャケットの内ポケットからスマホを取り出す。


"SELECT NORMAL"

"DISTORT BRAKE MATERIAL"

"COLOR RED LET'S GO"


 〘なにそれ?〙


 「変身。」


"NORMAL MODE"


 〘(あ〜…これが報告にあった赤の青の戦士。〙


 「安成殿。」


 「ん?」


 「今しがたルリ子殿から連絡が。どうやら先ほどの病…あのイベント会場一帯に広がっているのみで、まだ名古屋市街全域には広がっていないとのことでござった。」


 「なるほど………じゃああれだね。割と近くにいるかもね、細菌ばらまいた張本人。」


 ぶっちゃけこの状況で討伐順位付けるならブッチギリでルリ姉達の方なので…私たちの仕事はコイツの足止めと、ベストは倒しちゃうことか。


 〘この辺で良いかな〜…っと、カミーラ下りるけど、オマエラはどーする?〙


 「…随分と人気(ひとけ)のない場所でござるな。」


 「願ったり叶ったりだよ。」


 〘決まったみたいだね。それじゃ喋るのも時間の無駄だし、さっさとカミーラに殺されろ〜!〙


 「…いくよ影狼。」


 「…了解!」


 私たちの返事を聞いて、ニヤリと笑ったディストートがコウモリの群れから飛び降りる。それを追って、私たちを背中に乗せたカラスの大群が降下する。そのまま名古屋市街とは思えないほど殺風景な場所に、私たちは着陸した。


 廃ビル…だろうか。取り壊し中なのか朽ち果てているだけか、骨組みや鉄骨がところどころ剥き出しになっている。私たちはそのビルの目の前に下り立ち、向かい合って立っている。正しく一触即発…そんな中、カミーラと名乗るディストートが両手を広げてクルクルと踊りだす。


 〘雑魚の〜♪墓場には〜♪相応しい〜♪〙


 「そうだね影狼。目の前で踊ってる雑魚にとってもお似合い。」


 「同感でござる…!」


 煽り耐性抜群の私と影狼がすかさず言い返す。すると踊るのをやめてコチラを睨みながらカミーラがキレながら言い放つ。


 〘その減らず口も何時まで続くかな?言っとくけど私、あんたからUSB奪えなかったバッタや変人アメンボレスラーと違って甘くないんだからね?〙


 甘くない…か。確かにどこか甘い奴らだったような気がする。だって私のこと推しだなんて言ったり、プロレスのルールにこだわったり、どこか人間味があって嫌いになれなかった連中だった。


 だけど1つ…明らかに眼の前のコイツとは決定的に違うところがあった。


 「……確かに甘い奴らだったけど…それでもアンタより一本筋通ってて嫌いになれなかった。アンタは違う…性根から腐りきった掃き溜めみたいなゴミ野郎だ!」


ヒュンッ


 言い終わらないうちに、先手必勝で突っ込む!狙いはもちろん、細くてガードの弱そうなお腹!思いっきりD.B.Mをまとった手刀を叩き込む!


 「とりゃあ!」


 〘正面突破とか馬鹿じゃないのぉ?〙


パシッ


 「うそ…!?」


 〘キャッチ!〙


ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……………!


 嘘でしょ………D.B.Mを纏った攻撃を素手で!無論、手刀を掴んだ腕は激しい音を立てながら煙を上げている!


 〘痛ーい!けどこのくらいじゃ死なない♡〙


 「く…!」


 寸分の狂いなく放たれた私の両手での手刀をしっかりと握りしめたまま、ニヤニヤと余裕の笑みを浮かべるカミーラ!コイツ、痛みとかないの!?


 〘弱々じゃ〜ん…やっぱり雑魚雑魚?〙


 「どうかな…今夜の握手会はサシじゃないよ!」


 その時、何処からともなくカミーラの背後に現れた影狼!その手にはD.B.Mを含む特殊合金で作られた小刀がしっかり握られている!


 「(完璧!この速さなら反応できない!両手は私の手刀を掴んだまま!これで首取って終わr)」


 〘危なッ!〙


ブンッ!


ザシュッ!




 横薙ぎに風を切るように放たれた影狼の一太刀!カミーラ相手に一撃必殺を狙った鋭い斬撃はしっかりと届いた!赤い血液が刃に付いて赤色に光った!


 〘やっちゃったねぇ…♡〙ニヤリ


 「しまった………!」


 そう、影狼の斬撃は確かに捕らえたのだ。



 「う………ったぁ!」





 私の背中を!






 〘危ないなぁ!〙


 「あ…安成殿!」


 「……く…こいつ!」


 〘はーい貴方も油断しすぎ!〙


ブォンッ!


 次の瞬間!両手に思いっきり力を入れたカミーラが、私の体ごと影狼に向かってぶん投げた!時速100kmくらいの速度で至近距離から私の身体が直撃し、勢いそのまま、私も影狼も向かいの壁まで吹っ飛んで、そのまま壁をぶっ壊す!



    ゴガガガガガ!

           ガララ………!



 「ブフッ…!」


 「ゴハッ…安成殿…!」


 「大丈夫…背中ちょっと切れただけ……!」


 〘クスクスクス!やーっぱり弱々の雑魚じゃん!〙


 私は本当に大丈夫…なのだが、影狼の方はいくら鍛えているとはいえ大ダメージだ。すぐに立ち上がれず隙だらけの私たちに対して、追撃もせずに笑っているだけなのは相当な自信の現れだろう。その舐め腐った態度がどこまでもムカつく奴だが…実力は確からしい。





 ──────まあ…けど俺よりも強いやつなんてザラにいるよ。教えられる情報だけ言っとくと、残りの復路組は俺よりも全然強いしな。






 先の戦いで、リオック:ディストートが言っていたことを思い出す。どうやら彼の言っていたことは間違いじゃなかったらしい。なんてこった…こんな短期間に過去最強の敵がまた更新されたぞ。


 「…決めた………影狼!」


 「安成殿………!?」


 「私………絶対にアイツの顔面に、これまでで1番の一撃ブチ込んでぶっ倒す!」


 そうだ…あんなどーしよーもない奴をわからせるには、顔面に一発ブチ込んでやるのが1番だ!燃え上がる闘志を掴むように拳を握り、力強く立ち上がる私を見て、影狼もクールな笑みを浮かべながら立ち上がる。


 「…そうでござるな…思えばここ最近、どのディストートもどこか憎めな者ばかりで倒すことを躊躇(ためら)ってしまうような者も居た…が!こやつに至ってはそのような情は無用!」


 「へへへ……やっぱアンタが居てくれて心強いよ影狼。」


 仲間からの誤爆を食らった私と、早くも大ダメージの影狼が、闘志を燃やして立ち上がってくるのを見たカミーラがさらに高笑いしながらコチラにゆっくりと歩いてくる。


 〘キャハ!キャハハハハハハ!無理無理そんな大怪我で、ホントにカミーラに勝てると思ってるの?どーせカミーラに殺されるか、ボッチのウイルスで殺されるかの2択しかないのに!〙


 「ボッチボッチと………いかにも表舞台に出ていくのが怖いです〜って感じの名前のやつが細菌ばらまいてるクソッタレなわけね。」


 「心配ご無用…そちらに関しては、ルリ子殿と紫葡殿が向かった時点で拙者達の勝ち戦故!」


 〘うっせー!ボッチなめんなよ!マジでキュートでクレイジーなんだからな!あんなウルフカットヤンキー女と臭い地雷女なんかに負けるわけねーだろ!〙


 「そのヤンキーと地雷系…多分そのボッチより100000000倍強いよ。」


 〘うるせぇ!行くぞ雑魚ぁ!〙


 煽り耐性のないカミーラがコチラに向かって飛びかかってくる。そうだ、ルリ姉とポイちゃんは絶対にどうにかしてくれる!だから私たちも絶対にどうにかする!そう強く決心し、カミーラを迎え撃つために私と影狼は構えた!
























☆次回予告☆


 2対1の状況で、安成と影狼を圧倒するカミーラ!

 危険度Aの怪物相手に、2人は勝機を見いだせるか!


 …………そして動き出す、謎の人物の正体とは!?


 ───次回!


 第48話


 【思い出す故郷、瑠璃色の太陽と鶴写す満月。】


 輝く満月、写し出すは夜舞う美鶴────!

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