第32話【虹を引く魚】
今回もキャラ毎に『』←を変えております。
『』→アンナ
「」→ルリ子
{}→ポイ
〈〉→雪蘭
です
よろしくお願いします。
《7月2日(火) AM11:47 海上》
ぶぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああーーーーーッ
「良い風だなぁ!おい!アッハッハ!」
海上を突っ切るクルーザー。
天気は快晴。
7月の風を切って、波をかき分け、キラキラと光る水飛沫をあげながら太平洋側を渡る。
こんな状況でなければ、最高のシチュエーションだろう。
運転は勿論、今回の任務に当たるチームを率いる本郷ルリ子その人だ。
『ルリ姉ってクルーザーも運転できるんだ。』
「おー!車以外ならなんでも運転できるぞ!」
{すっごーいー!}
「このまま大阪まで突っ切るぜ!」
霞留博士の開発した組織専用のクルーザー
【エグゾセ2号】
一見すると普通のクルーザーだが、数々の装備やカスタムが施されている。
無論、ディストートに襲われた際に戦闘を行えるだけの武器も搭載されている。
障害物レーダーも、実際に米軍が使っている物と同等かそれ以上の性能を誇る。
この世に存在するどのクルーザーよりも高性能、安心安全な船旅を提供する代物だ。
『プライベートで乗りたかったなぁ…。』
{わかる〜…。}
「勿体ねぇなあ!せっかく良い風なのによ!アハハ!」
『ああ雪蘭ね…仕方ないよ船酔いしてんだから。』
{すっごい吐いてたねえ〜。}
『いいよ、言わなくていいよイチイチ…。』
《船内・休憩室》
〈…………………オェ…。〉
《再び船上》
『このまま何事もなく大阪まで行けたら良いんだけどね。』
{アンナちゃんそれフラグって言うんだよ〜。}
「アンナ!何かカケてくれよ!スマホとクルーザーのスピーカー繋げれるか?」
『できるできる。へ〜…このクルーザー色んなところにスピーカーついてて全体に音楽流せるのか。』
{いいねぇ〜!みんなで音楽聴きながら船旅〜!}
『う〜ん…じゃあこれかなぁ。』
〜♪〜♪
「お!イエスか!」
『ルリ姉好きでしょ。Siberian Khatru。』
{ポイ知らな〜い。昔の人?}
『そうだねぇ…デビューは1969年だから。』
「サビんなったら聴いたことあると思うぞ。」
〜♪〜♪
{あ〜!知ってるぅ〜!}
「だろ!」
『イントロがね…イントロがいいよね。歌詞もさることながら。ちなみにタイトルのKhatruっていうのはイエスの造語らしいよ。特に意味はない。』
{早口ですね〜。}
「アンナゎ好きだからな洋楽が…………あ?」
{ん〜?どうしたの〜?}
「いや…なんか波が強くねぇか?ここだいぶ陸から離れてんのによ。」
『確かに…天気も晴れてるし、風もないのに波だけ強い。』
確かに不自然だ…シケるような天候じゃない。
さっきから空は晴天、雲ひとつない最高の天気だし、風も吹いてない。
ルリ姉の言う通り、陸から結構離れてるのに…波が強くなってる。
あまりにも不自然な変化…もちろん、こういう時はまず───
『…刺客かな?』
「かもな。お前ら油断すんなよ。」
{あいあいさ〜…!}
先ほどまでの船旅テンションは何処へやら、一気に臨戦態勢を取る。
ルリ姉は船の先頭、ポイちゃんは右サイド、そして私が左サイドの位置に付いて海上を見渡す。
しかし─────
{…何もいないねぇ〜。}
「波も普通になったな…ほんとにただ一瞬高波になっただけか?」
『そうかも…張り詰めすぎてるのかな私たち。』
やっぱりただの自然現象だったのかな。
ポイちゃんの言う通り、周りには何もいない。
波も普通に戻ってるし、何かから攻撃を受けている様子もない。
気のせいか…誰もがそう思っていた海上、それに最初に気づいたのは───
〈…みんな……下………船の下…………に、何かいる…。〉
休憩室から出てきた雪蘭だった────!
「下!?船の下に潜ってるってことか!?」
〈うん……寝てるとき……船の下から…水を切る…音。〉
それを聞いて急いで操縦席のソナーを確認する。
すると…!
『ルリ姉!ホントに船の下n
ざっぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!!
「うおおおおおおおおお!何だ!?」
『船が…宙に!ヤバい!』
{海に落ちちゃうよ〜!}
〈おぼろろろろろろろろろ…〉
急に下から何かに突き上げられてクルーザーごと空中に放り出されてしまった!
一体何が…いや何者がこんな!?
とりあえず変身しなきゃ…いやでも、私泳げないからヤバい!
その時、空中で逆さまになった海に…しっかりと敵の姿を捉えた。
私だけじゃない、ルリ姉もポイちゃんも、雪蘭…はそれどころじゃない。
『アレが刺客か!クソ…よりによって…!』
『よりによって大型ディストートかよ!』
☆次回予告☆
虹色の鰭を引く巨大な魚型ディストート!
クルーザー沈没で、ミッション失敗か!?
次回
第33話
【SMOoDOを背負った女】
“最強”の重みを背負う者の責任は何か───。




