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第16話【姿なき捕食者】


 「自分から姿現してくれるなんて、願ったり叶ったりだね。」


 〘ウフフ…冥土の土産にしなさいな。〙


 なるほど…カメレオンのディストートか。人気の無い空き地に住み着いて姿を隠し、通行人を後ろから捕食する。


 叫び声も上げさせぬ早業で頭を食らえば人も来ない…そんなところかな。


 「タエコ、とりあえず逃げな…それつけたまんまにしてて。あとライミちゃんに連絡。」


 「う、うん!わかった!」


 とりあえずタエコを逃がす。もちろん負けるとは思ってないけど、万が一のことも考えて。


 さて…女のディストートは久しぶりだな…。


 〘あらあら…逃げろと言われて本当に逃げちゃうなんて…ずいぶん薄情なお友達だこと。〙


 「見捨てられたと思ってるなら見当違いも甚だしいね…タエコは私が戻るのを信じて、この場から離れただけだよ。」


 〘お口の達者な子ね…その生意気な態度もいつまで続くかしら…!〙


 「アンタが死んだあともずっとだね。」


 素早くスマホを取り出して操作する。


ピッ

ピッピッ


 〘あら?こんな時に何をしているのかしら?〙


 「アンタをギャフンと言わせるための準備。」





"SELECT NORMAL"

"DISTORT BRAKE MATERIAL"

"COLOR RED LET'S GO"




 「変身。」




"NORMAL MODE"




ビキャーン!




 〘眩しいっ…肌を刺すような光ね…〙


 「実際に肌にダメージは入ってるだろうしね…さて、これ以上好き勝手させらんないから、さっさと片付ける。」


 〘あらそうなの?泣いても許してあげないんだから。〙


 「こっちのセリフだね…。」






ギュンッ





 カメレオン:ディストートが完全に油断している隙をついて懐に潜り込む…まずは挨拶代わりに一発。




 テンカオ!






ドモッ………………!





 〘!?〙





 「油断しすぎ。」


 〘ムブフ…ッ!〙


 素早く下がって…ローリングソバット!


 「はぁ!」


ドゴッ!


 〘ばぅぐ…!〙


 キレイに顔面に入ったローリングソバット。カメレオン:ディストートが数mぶっ飛んで空き地の塀に激突する。


 〘く…アナタ、普通の人間じゃないわね!?〙


 「当たり前でしょ…じゃなきゃこうしてアンタと闘ってないよ。」


 そう…いくら鍛えた軍人や特殊部隊の隊員でも、ディストートには絶対に勝てない。


 コイツ等、車だって片手で野球ボールみたいにぶん投げちゃうし、遅くても時速100km以上のスピードで走り抜ける…普通のライフルや日本刀で攻撃しても効かないし、ダイナマイトを丸のみして体内で爆発させても、生命活動に何ら影響がないくらいに体も丈夫な怪人だ。


 〘なんて子なの…そういえば、風の噂で聞いたわね。私たちディストートの討伐を生業にする人間たちがいるとかどうとか…アナタもその口ね?〙


 「わかってるなら話が早いね。ここからアンタのこと逃がす気はサラサラ無いから…はい。おしゃべりタイム終了。」





ダッ




ギュンッ!





 〘(目の前で消え)〙


 「コッチだよトカゲさん。」


 〘しまっ〙クルッ


 「おりゃあ!」



どばしぃぃぃぃぃぃいーーーーーん!



 〘うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!〙


ずざざざざざざざぁ───────。


 私のショルダーアタックがクリーンヒットして、何mも相手が吹っ飛ぶ。


 「化勁って言うんだ…冥土の土産に覚えときな。」


 〘こ…このガキ…!こうなったら!〙







す…っ──────────。





  「(消えた!)」


 怪人が消えた…いや、透明になったのか?とにかく、これで視覚から奴を探すのは不可能か…厄介な能力だ。



バキッ!



 「んぐっ…!」


 右の頬に強烈な痛みが走る。あのヤロウ、私の顔を殴りやがったな…!


ボコッ!


 「う…!」


 今度は背中を!クソ…すっかり暗くなった街灯も少ない道で…コイツの能力は少し厄介だな…。


ズゴッ!


 「くっ…!」


 今度は右肩を…!


 〘ウフフフフフフ!姿が見えないからどこから攻撃が来るか分からないでしょう!?このままボロボロにして、頭から食べてやるわ!〙



バゴッ!


どしゅ!


ボゴ!


ドカッ!



 カメレオン:ディストートは攻撃の手を緩めない。さっきの攻撃を食らって、私がD.B.Mを使えることを察知したのか、いつまで経っても捕食に来る様子はない…が、その分、闇に乗じて技と何発も何発も攻撃を仕掛けてくる。


 「うぐ…チッ!姿を現せ!」


 〘そう言われて「はいそうですか。」とみすみす現れるバカはいないわ!このままジワジワ削っていって…動けなくなったところをパクリよ!〙


 「ああそう!それならこっちにも考えがあるんだから!」



 こうなったらなりふり構ってられない!体力の消費が激しいけど、早期決着狙いだ!


 そう決心した私は、靴についているボタンに手を伸ばす。


 〘?〙


 ジャケットと靴から大量のD.B.Mが溢れ出て私の身体の周りを螺旋状に包みこんでいく。赤い光に包まれた私に対して、どうやら敵も警戒したようだ。攻撃の手が止む。


 「行くぞ!」


 その瞬間、私は思いっきりD.B.Mを輝かせる。まるで闇の中に赤い竜巻が現れたかのような光景の中、D.B.Mに体が当たって、ダメージを受けて冷静さを欠いたのか、透明化を解いた奴の姿を捉えた。


 今だ!


 「はっ!」


ダヒュンッ!


 この機は逃さない!私は思いっきり大地を蹴ってジャンプする。


 溢れ出した光が、私の身体の周りに集まって行く…この一撃で決める!




挿絵(By みてみん)


 〘!?〙



ギュルルルルルルルルルルルルルルルルルルッ!



 「くらえ!」




 激しく回転しながら、カメレオン:ディストートの脳天めがけて左足を落とす。


 コレが"カーマインストライク"…ありったけのD.B.Mを込めた回転蹴りを叩き込む私の必殺技だ。


 勢いをつけた蹴りをぶちかますと同時に大量のD.B.Mを相手の体内に流し込んで爆発させる…大抵のディストートならこれ一発で倒されるとっておき!




ドモッ!




"CARMINE STRIKE"




キュインッ!





ドボォォォォォォォォォォォォォォォォンッッッ!





 激しい赤い閃光を放ちながら、カメレオン:ディストートが爆発する。


 任務完了。


 終わってみれば意外とあっけなかったな…兎にも角にも討伐自体は抜かりなく遂行したので変身を解く。



 「流石アンナちゃん!」


 後ろから元気な声を出しながらコチラにやってきたのはライミちゃんだった。側にはタエコもいる。


 「意外と早かったね。」


 「タエコちゃんから連絡もらった時には結構近くまで来てたからね〜。アンナちゃん、怪我とかしてない?」


 「うん…まあ何発か攻撃食らったけど、大した怪我じゃないかな…タエコ、アンタは大丈夫?思いっきり引っ張られてたけど。」


 そうそう。私は全然大丈夫だけど、今回最初に奴の襲撃を受けたのはタエコだ。


 「う、うん!背中にいっぱいヨダレがついたけど…それ以外は全然大丈夫!」


 「うへぇ…早く帰って洗濯しなきゃね…。」


 そうか、背中にカメレオン:ディストートの舌が貼り付いたのか…そりゃ唾液がベッチャリだろうな…早いとこ綺麗にしたいだろうに。


 「そうだね!じゃあ、私はサッとサンプル回収してくるから待っててね!」


 元気よく宣言してライミちゃんが爆発した場所に駆けていく。


 「サンプルの回収?」


 不思議そうに聞いてきたタエコに答える。


 「そ…ディストートの身体はまだまだ謎が多いからね…あーやってエージェントが倒したディストートの身体の一部を回収して、本部に送るってわけ。アンタも見てきな。」


 「うん!わかった!ライミさーん!』」


 タエコがライミちゃんの方に走っていく。2人が並んで調査しているのを見ながら、ライミちゃんが持ってきてくれた水を飲む。


 それにしても…本当にあっけなかった。何人もエージェントが行方不明になるレベルのディストートと聞いていたから、かなりの激戦を想定していたが…杞憂に終わったらしい。


 それにしてはそこまで強くないディストートだったな…。


 なんて考えながらペットボトルを口に近づけようとしたその時だった─────。






 「アンナちゃーん!これ見て!」






 大きな声を出しながらライミちゃんが駆け寄ってくる。


 「どったの?」


 「うん!これ…これ見て!」


 そう言って険しい表情でライミちゃんが差し出したのは…薄い皮のようなものだった。


 「なにこれ…皮?」


 「ライミさん…これなんですか?」


 私たちの質問にライミちゃんが答える。







 「これ…抜け殻だよ。」





 ─────!?


 抜け殻…!?




 そのままライミちゃんが続ける。


 「うん…普通、爬虫類型のディストートなら、倒したあとに肉片や鱗が落ちてるはずなんだけど…全然見当たらないの…代わりに大量に落ちてたのはこの薄皮…。」


 …なるほど、しまった。


 したやられたというわけか。


 「つまり…奴は私のカーマインストライクが炸裂する寸前に脱皮して、それに自分の身代わりとして技を受けさせて、本体は逃げた…ということか。」


 「多分そう。恐らくもうこの近くにはいない…と思って良いかもね…。」


 私とライミちゃんの会話を聞いていたタエコが不安そうに言う。


 「え?じゃ、じゃあまだ倒せてないってことですか…?」


 不安そうなタエコを抱き寄せながらライミちゃんが答える。


 「みたいだね…流石は総司令官の直依(直接依頼のこと)…一筋縄じゃいかないか。」


 私もそれに頷く。結構厄介な任務を引き受けたもんだと改めて思う。


 伸びる舌、変幻自在の体色、そして脱皮…なるほど、多彩な技を使って自分を討伐に来たエージェント達を返り討ちにして食べてたってわけね。


 きちんとした対策がないと長引くかもしれない…取り敢えずこの場から離れて…できるだけ遠くに…っていうか家に帰って早急に対処法を考えなきゃ。


 空を見上げると星が隠れていた。一雨来そうな6月の蒸し暑い夜…まさしくカメレオンが好みそうな、ジメッとした空気が漂っていた。






















☆次回予告☆


 脱皮による逃亡を許したアンナ達───。

 攻略法を練るアンナの前に現れたのは、組織最強のエージェント!?


───次回!


第17話


【熱帯夜、攻略せよ。】!


 その名はルリ子!

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