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第12話【ギュルテルティーア・タンツェンシュヴァンツ】

 「はい!はい〜!最近物騒でしょう?はい、なので海外の親戚の所に暫く〜はい。なので事件が解決するまで…はい、学校は休ませて頂きます!」




…ガチャリ


 「こ…これでよろしいでしょうか?これで命だけは…命だけは…!」


 〘あぁ…上出来だぜ武田のおふくろさんよ…!〙




───────────────────────────




《5月27日(月)AM08:30》


キーンコーンカーンコーン…


 「…よし。」


 ランドセルを下ろして席に着く。いつもなら月曜日は憂鬱だが…今日は違う。


 おそらく次の犠牲者…その名前が発覚するはずだ。


 私の行動が遅かったせいで…傍から見たら【たった1人の犠牲者】かもしれないが…人間1人というのは掛け替えのない存在なのだから、損失は途方もなく大きい。


 これ以上被害を大きくしないためにも…早くどうにかしないと。


 「アンナちゃんアンナちゃん…。」


 不安そうにタエコが肩を叩く。今朝一緒に登校してきた時に伝えたが、もう一度伝える。


 「いい?タエコ。今日はライミちゃんが迎えに来るから、それで帰って。道案内してあげてね。」


 「うん。わかった。アンナちゃんも気をつけてね…!」



───────────────────────────




《AM09:05》


 「みんな…よく聞いて欲しい…今日、席が2つ空いている理由について話す…。」


 アゲヨシから通達されたのは、安達の取り巻きの1人だった山木仁仔が行方不明だという知らせと


 「それと…武田のお母様から電話があったんだが…最近何かと物騒だろう?それで事件が解決するまで、武田が海外で暮らすことになった…。」


 武田が海外に行くとのことだった。まあ、こんな状況なら仕方ない。海外に逃亡するのはおそらく、一般人にできる最善の策だろうし…ね。


 教室は静まり返っていた。そりゃそうだろう。次は自分なんじゃないか…誰だってそう思う。


 こんな短期間に同じクラスの人間が2人…馬鹿でも気づくだろう。狙われているのはこのクラスの人間だと。


 そんな教室の中で面構えが違ったのは、もちろん私と…犯人が人間じゃないことを知っているタエコだけだった。



───────────────────────────



《PM12:40》


 「次は私だよ!きっと次は…次は私だよぉ…!』


 泣きながら絶叫しているのは池長美香だ。安達が襲われ、同じく取り巻きだった山木が襲われ…次は自分だろうと泣きじゃくっている。


 その周りに何人かの生徒が集まって慰めているような状態だ。


 仕方ない…あんまり話したくないけど…ちょっと慰めてやるか。


 「ちょっと…池長さん。」


 その場にいた全員がギョッとした様子で私を見る。そりゃそうだろう。数日前まで、タエコと私はクラスのハブられ者だったわけで…そんな奴が急に話しかけてきたら驚くはずだ。


 「…な、なに…!私、今…アンタなんかと話したくないッ!」


 「あー…その、なんというか…まずは謝りたくて…そのこの前のドッヂボールのこと…私もいきなりキツい態度取られてカチンと来たっていうか…その、あんたらもゴメンネ。」


 「…えっ…。」


 私が素直に謝ってきて拍子抜けしたらしい。周りの連中も同じくキョトーンとしている。


 「えーっと…だからその、一旦落ち着こうよ。別にまだ池長さんが狙われるって決まったわけじゃないし…。」


 「なんでそんなことわかるのアンタなんかに…!」


 頑固だなぁ…私とタエコには人権ないのか?まともに話すら聞いてくれない。


 池長のヒステリック気味な泣きじゃくりは止まらない。


 「絶対…絶対私が襲われるんだ…!次は私なんだ!だってだって…みんな私の近くにいた人ばっかりじゃん雛鳴ちゃんも仁仔ちゃんも武田くんもみんなみんな死んじゃったじゃん!私…私死にたくないよぉ〜…!一人になりたくないぃ〜…!」


 あーあこりゃ完全に壊れたぞ…この調子じゃ慰めるどころかまともに話すらできないな…。


 「ごめん、誰か保健室連れてってあげなよ。このままじゃ授業中もずっとこんなんだよ…。」


 まあこれもほんと。普通に授業にならんしな…うるさくて迷惑だし。いや、泣きたいこの子の気持ちもわかるけど…とりあえずはみんな困るだろうし。


 仕方ない、誰も名乗り出ないなら私が連れてくか…言うこと聞いてくれるかわかんないけど。


 泣きじゃくるパニック池長の腕を掴んで立たせようとしたその時だった。


 「あの…僕が連れていきます。」


 急に名乗り出た1人の男。えーっと誰だっけ?確かクラスの端っこでいつもノート開いて予習復習ばっかしてる…


 「急にすみません…僕一応保健委員なんで…あ、有田真次郎(ありたまじろう)と申します。」


 そうそう有田。コイツも孤立してるよな…いつもいつも。よく考えたらこの前のドッヂボールにも不参加だったし…というかこいつに至っては、イジメの加害者ではなかったはずだ。


 「あそ。それじゃよろしく。」


 有田にあとを任せて、私も他の子も席に戻る。時計を見ると昼休み終了10分前だった。


 「あの…晴家さん。」


 池長を保健室に連れて行こうとしていた有田が声をかけてくる。


 「ん?」


 「今日の放課後…少し時間ありますか?2人で話したいことが…。」


 ん?コイツ私とそんな2人で話し合うようなことがあるのか?いや、今の一連の会話の中で何か引っかかるようなことがあったのかも…?


 まあ良いや。少しだけなら聞いてやろう。


 「いいよ。時間作る。」


 「ありがとうございます。長い時間は取らせませんので。」


 そう言って抵抗する池長を無理矢理引っ張っていった。


 あとは頼んだぞ〜有田。






 え?アイツ今、抵抗する池長を引っ張っていったぞ?意外と力あるんだな…。



───────────────────────────



《PM16:04》


 「じゃ、タエコのこと頼むね。」


 「オッケー!タエコちゃん、シートベルトした?」


 ライミちゃんの車に乗ったタエコが「はい!」と返事をする。


 とりあえず大丈夫だろう。この車は組織から支給された頑丈なやつだ。ディストートの攻撃にも耐えられるように作られている。


 徒歩で帰るより何十倍も安全だ。


 「アンナちゃんも…気をつけてね。」


 ライミちゃんが心配そうな顔で言う。隣のタエコも「うんうん!」と頷く。


 今日からしばらく単独行動だ…あまり他人を巻き込みたくない…それと1人だと色々とやれることも多いし。


 「じゃ。こまめに連絡するから。」


 そう言って2人を見送る。さて…有田との約束の時間だな。教室に戻るか。


 校門に背を向けて教室の階段を上がる。5年生の教室は3階だ。


 一つ一つ…階段を上がる。有田が私に話か…一体何だ?


 私何かしたか?特に有田と絡みは無かった。さっきのこと?有田的になにか気に入らなかったのか?いやよくわからん。とにかく話せばわかるか。



 ガラッ


 「おーい。有田、来たけど。」


 有田は席に座ってノートを眺めていた。


 「来ましたか。待っていました。どうぞコチラに。」


 そう言って向かいの席の椅子を引いてくれた。コイツのこの態度はサラリーマンみたいだな。真面目な性格なんだろう。遊び盛りの同級生たちからしたら少し遠ざかりたい気持ちも湧くだろう。実際1人だしコイツ。


 とりあえず私もその椅子に座る。


 「何?話って。」


 「はい。お伺いしたいことが一点。よろしいですか?」


 「うん。」


 「今朝の先生の話…覚えてますよね?山木さんが行方不明。武田君も海外へ。」


 「はいはい。ま、最近物騒だからね。」


 「みんな怯えていたり下を向いていたりしていた中、あなたと隣の忍さんだけ、真剣な顔つきで先生の話を聞いていましたよね。」


 「!」


 コイツ…意外と視野が広いのか?それとも観察眼が鋭いのか?とにかく、私とタエコだけが他と違う雰囲気だったことを感じ取ったらしい。なるほど…それで疑問を持ったわけか。


 「それが何?」


 とりあえず冷静に聞き返す。


 「あぁ、いえ、普通11歳の精神年齢ならば、同じクラスの人間が数日の間に2人も行方不明にもなれば怖くてまともに生活なんでできないはずですよ。それを貴方と忍さんは、今日一日を通して特にいつもの変わらない雰囲気で過ごされていました。」


 「私は知らないけどタエコはイジメられてたんだし。何もされなくなって逆に普通になったんじゃない?よくわかんないけど。」


 適当に流しとけ。どうせ本当のことは言えない。言ったところで、こういうタイプはきっと信じないだろう。


 「そんだけならもう行くから。」


 そう言ってさっさと退散しようとした…その時だった。


 「何か知っているんじゃないですか?貴方と忍さんの二人。」


 …コイツ。


 「…だったら何?私達が犯人だとか、そんなバカなこと言いたいなら…流石に頭おかしい認定するけど。」


 「いえ…流石に小学生に出来る犯行ではありませんよ…僕はただ、皆さんと貴方がた2人の態度があまりにも違ったので疑問に思っただけです。」


 「あっそ。アンタの言ったことが全てだよ。確かに安達にも取り巻きの奴らにも言いたいこともやり返したこともいっぱいあったけど。行方不明にしたりだとか、そこまでじゃないよ。小学生にできることじゃない。」


 「そうですよね。失礼しました。」


 「ホントだよ…失礼しちゃう。」


 そこまで言って席を立つ。


 あ、そう言えば。


 「池長美香は?あのあと大丈夫だったの?」


 私の質問に有田が答える。


 「はい、私も保健委員として気になったので帰りの会が終わってから保健室に様子を見に行ったのですが、流石に1日たったら大人しくなったようで。下校時間になったら帰ったと、保健の先生から言われましたよ。」


 なんだ、普通に自分で帰ったのか。


 「あそ。なら良かった。有田、アンタも早く家に帰りな。じゃーね。」


ガラッ


 教室をあとにする。そう。こんな事をしている場合じゃないのだ。


 レインのグループを開く。ライミちゃん、影狼、ドレミ、そしてタエコの4人を誘って昨日作った即席のグループだ。今回の任務についての共有事項があればと、一応作っていたのだが…グループ通話のアイコンを押す。



〜♪〜♪


ピッ


 「…あ、みんな?私、アンナだけど。うん。うん。」




 …まさかこんなに早くボロを出すとは。今日一日、クラス全体を観察していたが…やっぱりあのアルマジロ、頭が相当悪いみたいだ。


 あまりにも…あまりにもわかり易すぎるボロを出してくれた。


 そのおかげで…






 「わかったよ、正体。誰があのアルマジロなのか。」






















☆次回予告☆


 ついに判明するアルマジロ:ディストートの正体!

 アンナの掴んだ証拠とは!?


───次回!


第13話【必殺、カーマインストライク!】


 アンナの必殺技が炸裂するぞ!

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