第10話【秘密拠点へようこそ】
「大丈夫?いや、別に泊まってもいいんだけど…。」
「うん。ママには電話したから。」
「そ…ま、そっちが良いなら良いんだけどね。」
「アハハ…。ママ喜んでたね…。」
「ホントは関わって欲しくないんだけどね…あ、着いたよタエコ。」
「うわぁ〜!高層マンションだぁ!ここがアンナちゃんのお家かぁ〜!」
「風邪引くから中へどーぞ。秘密拠点へようこそ。」
というわけでセキュリティを解除してタエコを部屋に入れる。
まさかこんなことになるなんて…一番巻き込みたくなかった人を巻き込むことになってしまった。
さて、ライミちゃんになんて説明しようか…なんでタエコが急遽、うちにお泊りすることになったのか、もう一度頭の中で整理すると───。
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《時は少々遡り、アルマジロ:ディストートとの戦闘後…》
「明日学校に行ったらわかると思うけど…。多分誰かだ、クラスメイトの…。」
「ア、アンナちゃん!」
「ッッッ!!!!!」
急に後ろから声をかけられて、慌ててスマホを落としそうになる。
うそ…まさか、見られた?
ディストートと、それを追う私たちSMOoDOの存在は一般人には知られてはならない…ましてや私の名前を呼んだということは、知り合いの誰か!?
いや、エージェントの誰かなら問題はない!
そうだ!エージェントの誰かなら何も心配いらないわけd
「アンナちゃん…今の…。」
「 」
終わった。
「アンナちゃん…わ、私隠れてたよ。」
「……………………。」
「アンナちゃん?お~い」
「……………………。」
「ア、アンナちゃ〜ん。」
「……………………あ〜、あ〜そっか…。」
バレたか…バレたのか…バレたものは仕方ない…というか、冷静に考えたらタエコだったのがまだラッキーだったと言うか、それこそ他のクラスメイトとかだったら言いふらされて大惨事だったかもしれん…いやバレた事自体はコレ問題なんだけど。
…………………………………………………よし。
「…タエコ。」
「え!?あ、はい!」
「…今…21時前だよ。ダメじゃんこんな時間に1人で歩き回っちゃ。」
「あ、ごめんなさい…今日、ママが…お仕事で帰り遅くて。それで、お仕事遅いからご飯作っててあげようかなって思って、お買い物行ったら帰りにパトカーがいっぱい止まってて、それでアンナちゃんがいたから、何かあったのかなって思って、それで…………………」
「…それで後をつけたと…。」
「う、うん…。」
「どこまで見てた?」
「アンナちゃんが、オバケと…お痛してるとこまで。」
「つまり全部ね。」
「そうですね…全部…全部です。」
「……………知りたい?」
「え?」
「知りたい?私のこと、さっきのオバケのこと、その他にも色々。」
「え!?」
これは賭けだ…ここでもし、タエコが知りたくないと言えば、もうそれ以上は私から何も言わない。
タエコは…きっと誰にも言わないでと頼めばそのとおりにしてくれるだろう。
ここ何日かで、この子が周りに比べて大人な考え方の持ち主だと分かったからこその賭け。
ていうか普通の子どもなら知りたくないって言うだろうし、わざわざ危ないことに首突っ込むようなこと、お利口さんなタエコがするわけn
「知りたい!アンナちゃんのこと!」
ですよねー。
「教えて!さっきのオバケのことも!」
…仕方ない。
「…じゃ、今日うちに泊まんなよ。」
「え!お泊り!?いいの!?」
「そんな嬉しい?」
「うん!私、お友達の家にお泊りしたことないもん!」
「え、あんた友達の家に泊まったことないの…?」
…あ、そうか。お友達どころか、イジメられてるもんね…お泊りどころか、家と学校以外に行くところもなかっただろうね…。
「じゃ、じゃあとりあえず、お家にこれ、置いてこなきゃ…あとママに電話して、お泊りしていいか聞かなきゃ。」
「おっけー。じゃあついてくよ。今一人にしたら、さっきのオバケが襲ってくるかもしれないから。」
こう話してると、あれだな…逆に良かったのか?だってそのまま1人で家に帰ってたら、タエコが襲われてた可能性もあるし。
それは絶対に避けたいし…なんか複雑だなぁ。思い通りにいかなくても、結果として悪いことにはなってないというか…。
こうなったと言うことは、きっと神様がこれで良いと思ってそうしたんだな。だったらこれが最善なんだ。
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というわけで、色々ありまして、タエコはうちにお泊りすることになったというわけ。
タエコのママ?うん。2つ返事でOKしてたよ。嬉しそうな声、電話越しに聞こえたもんね。
娘に友達ができたのがよっぽど嬉しかったらしい。途中でなぜか私に変わって欲しくなったらしく、電話の向こうにいるタエコのママに挨拶した。
次はタエコん家に泊まりにおいでって言われた。好感度100だな。
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《PM22:10》
「秘密拠点へようこそ。」
「え?」
「ん?どしたん。」
「アンナちゃん…今どうやってオートロック解除したの?」
「指紋と虹彩。」
「シモントコーサイ?」
「…とにかくセキュリティが凄いってことだよ。」
「う、うん!」
エレベーターに乗る。ただの高層マンションに見えるかもしれないが、ここに住んでるのは全員SMOoDOの関係者だ。
つまり、住居と言うより…さっき言った通り秘密拠点に近い。
各階に4LDKの部屋が3つずつ。全33階建てのマンションに…今どのくらい人がいるのかわかんないけど。
マジックミラーの透明エレベーターがグングン上に昇っていく。都内を一望できる高さ。私の部屋は33階。下の階には誰も住んでいない。
なぜか知らないが私のわがままが基本的に通る都合のいい組織だ。いやホントなんでかわかんないけど。
エレベーターに乗っている間、タエコはずーっと外を見ていた。
「ただいまー。」
「おかえりー!アンナちゃん、先にお風呂…に…。」
「…お、おじゃまします。」
ライミちゃん、フリーズ。
いやそれは仕方ない。だって部外者がいるんだもん。組織の人間じゃない一般人の…しかも子どもがいる。そりゃそんな顔にもなるよ。
「あ、アンナちゃんのお姉様ですか?私、アンナちゃんのクラスメイトの忍耐心です。よろしくお願いします。」
「……………………………………あ、アンナちゃん?この子は?」
「先にお風呂。」
「違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違うちg」
※アンナちゃん説明中
「というわけです。」
「え〜……………何て言うの本部に…。」
「大丈夫なんじゃない?普通にお友達として連れてきました。ただの高級マンションだと言ってます。任務に関しては何も話してませんって『てい』で。」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!」
思っていることが全て口から出るライミちゃんの様子を見て、タエコが申し訳なさそうに言う。
「あの…私、やっぱり帰ります。」
え?ここまで来て帰るの?
「いや、それはそれで困るんだけど。」
「そ、そうだよタエコ…ちゃん?だっけ。夜遅いから危ないから!」
「わ、わかりました。」
「それでさっきのディストートなんだけど。」
「今ですかアンナ姉さん!?」
「いやもう見られたんだから別に話していいじゃん。」
「それにしても説明してあげなきゃでしょ!?」
だからその説明を話すんだってば。
するとタエコが…。
「…やっぱり帰ります。」
「「それはダメ(だってば!)」」
この時間に帰ろうとするタエコを止めんがために注意したら、ライミちゃんと被ってしまった。それに驚いたのか、ビクッとしながらタエコが返事した。
「ひゃい!」
…と、まあこんなことが何十分か続いて、ライミちゃんが落ち着いてから、私は自分のこと、組織のこと、そしてタエコが言うところのオバケ…ディストートについて、伝えられるだけのことは伝えた。
「というわけで、私が転校してきたのは、組織からあのアルマジロ:ディストートの退治を依頼されたから。ディストートもオバケじゃなくて、ちゃんとした生き物。そんでこの人は私の姉じゃなくて、任務を手伝ってもらうためのアシスタント。まあ私はほぼ、お姉さんだと思ってるけど。」
「ほ、ほんとに!?嬉しい………!」
「……………過保護変態のお姉さんだと思ってるけど。」
「過保護変態!?」
「だから安達雛鳴を殺したのもさっきのアルマジロ:ディストートってこと。」
まずは、かるーくライミちゃんとディストートについて説明。
「だけど…その言い方だと、さっきのオバケ…んじゃなかった、ディストート?をやっつけたら、また別の任務に行っちゃうんでしょ?」
「うーん…そうなるね多分。」
「そしたら…アンナちゃんと離ればなれになっちゃうんだ…。」
「…嫌?」
「うん。やっぱり怖い…アンナちゃんがいなくなったら私、また嫌がらせが始まるんじゃないかって…。」
「…タエコちゃん。」
そっか…いや、怖いよな。確かにそう思うのもわかる。今の学校の現状、私への恐怖と、クラスメイトのリーダーだった安達が襲われたという不安で、イジメどころじゃなくなってるけど。
アルマジロ:ディストートの件が解決したら、犯人が逮捕されたという名目で学校には連絡が行くと思うし、私も多分いなくなるし。
「ま、それはもう大丈夫だと思うよ。」
「うんうん。集団心理的にね。私も、もうイジメはないと思う。」
「そ、そうかな…!」
「だから堂々としてればいいじゃん。アンタ芯が強いから。」
「し…芯が強い?」
「そ。だから自信持ちなよ。」
そこまで行って立ち上がる。そしてライミちゃんの目を見て一言。
「お風呂行く。」
「このタイミングで!?」
「汚れてるからサッパリさせてよ。」
「ですよねぇ〜…。」
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《アンナ、お風呂中》
「あ、あの…!」
「ん〜?」
「あの、私さっきアンナちゃんに言えなかったんですけど。」
「言えなかったこと?なになに?お姉さんが聞いて差し上げよう。」
「はい、あの…一番怖いのは…アンナちゃんが他の学校に行くってなった時に一番怖いのは…アンナちゃんに会えなくなっちゃうことなんです。」
「あら…!」
「アンナちゃん…まだ知り合って何日かしかたってないけど、カッコよくて優しくて…それで、凄く頼りになるし、こんな私のこと、友達だと思ってくれてて…。だから、アンナちゃんと離ればなれになったら私、それが嫌で…。」
「…それ〜多分アンナちゃんもおんなじだと思うよw」
「えっ…な、なんで?」
「まだ半年の付き合いだけどね。アンナちゃん、あんまり人付き合い上手くない所あるから…ホントはタエコちゃんがお泊りしてくれるの嬉しいと思うんだよね〜!もちろん私も嬉しいよ!アンナちゃんが友達つれてくるなんて!」
「そうなんだ…アンナちゃんも苦労してるんだ…。」
「多分、あえて友達作ろうとしないっていうのもあるんだろうけどね…相手が相手だから、周りの人巻き込みたくないと思うし。」
「ですよね…だって、警察でもどうにもできないような、怪物を相手にしてますもんね…。」
「だから私も驚いちゃった!アンナちゃんが友達作ってお泊りさせるなんて!それだけタエコちゃんのこと、ほっとけなかったんじゃないかなぁ?」
「そ…そんな、私アンナちゃんに気を使わせてないですかね…だってその、デメリットしかないじゃないですか。」
「いや〜?多分思ってないと思うよ?」
「そ、そうかな…そうだと嬉しいです…!」
「うん!だから、アンナちゃんと仲良くしてあげてね!それに、アンナちゃん実は組織の中でも結構立場良い方だから、転校したくないって言えば、基本的に近辺での任務だけの担当にしてくれるんじゃないかなぁ〜?なんでか知らないけどうちの組織、アンナちゃんに甘いし。」
「そっか…そうなったら…嬉しいです!」
「フフフ…w」
「上がったば〜い。」
「あ!アンナちゃn…ってうわぁ!髪下ろしてるアンナちゃん、キレイ…!」
「いつもがブスってこと?」
「あ、いやごめん!そういうわけじゃ…」
パシャ
「撮ったろ。」
「撮ってないよ。ご飯作ったから食べよ!あ、タエコちゃんどうするの?明日から土曜日だけど…。」
「あ!月曜日までいます!」
「まあそのくらい時間かけて説明したほうがいいんじゃね?」
今日はずいぶんと賑やかな夜だ。束の間の休息か…明日からアルマジロ:ディストートに関しての情報共有と…タエコに私たちの話しして…それで…うん。まあ明日のことは明日考えよう。
神様、この幸せは貴方の御恵によるものです。かけがえのない時間を私に恵んでくださりありがとうございます。どうかこの幸せを守れるだけの力を私にください…そして、私たちを守ってください。
☆次回予告☆
ついに語られるアンナの秘密!
ディストートとは!?エージェントとは!?
一体なぜ彼らは敵対し合うのか!
───次回!
第11話
【薔薇のように聞いて 桜のように語って】!
運命の歯車は回りだした!
【設定を語ろうのコーナー⑥】
☆寒來美
《プロフィール》
◯出身地…東京都・葛飾区
◯誕生日…4月5日(デビューの日)
◯年齢…21歳
◯身長…161cm
◯体重…45kg
◯好物…スイーツ
◯好きな音楽…フォーク・ロック
◯好きな本…少女漫画
《備考》
SMOoDO所属のアシスタントで、所属歴半年の新人。本人は保育士になるために学校に行き、資格も取ったが何故かSMOoDOにいた。かわいそうに。
晴家安成とは、エージェントと専属アシスタントの仲。彼女に対して過保護気味だが、それと同時に1人の人間として見ており、決して子ども扱いすることはない。
【晴家安成のエージェントは長続きしない】と組織内で噂されるほど、歴代アシスタント達が短期間で辞めていく中、彼女が半年もアンナと一緒にいられる理由は互いにちょうどいい距離感で接することができているため。組織から見れば優秀な新人なので、あの手この手で繋ぎ止めている。
最初は仕事内容に対して不安に思っており、今なお直接ディストートに出くわせば絶叫するレベルだが、アンナちゃんが可愛くて仕方がないので仕事を辞めるつもりは一切無いようです。
戦闘能力は皆無。100mを20秒台にギリギリ届かないくらいで頑張って走るレベル。




