第1話【その名はアンナ】
この度は読みに来て頂いて本当にありがとうございます!
ヒーローオタクが全開の作品です!
楽しんでいってください!
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「狐の尻尾がもふもふでよかった…クッションになって助かったみたい。」
手のひらで包みこまれた漫画の中で、狐の耳と尻尾を生やした女の子がつぶやく。
漫画は好きだ。読んでる間だけその世界に没頭できる。
まあ、自分自身が感受性高いってのも関係してるだろうけど。
こうして本に集中してれば車に酔わなくていいし…乗り物酔いしたことないけど。
「何読んでるの?」
前の席で車を運転しているお姉さんが語りかけてくる。
「ぎゃんかわCATちゃんを好これよ。」
聞かれたから答えただけ。
「好きだよねその漫画。」
「うん。だって面白いから。」
「あはは…先生はあんまり読んでほしくないなぁ。」
「なんで?」
「まだアンナちゃんには早いこといっぱい書いてるもん…。」
「意味わかってるもん。」
「ええっと…あはは…。」
お姉さんが力なく笑う。多分なんて言っていいかわかんないんだろうな。なんとなくだけど、私との距離を感じる言い方で、悪気とかないんだろうけど、あんまりこう…お互いになんかさ…親密ってわけでもない。
そんな感じ。
「先生私のこと嫌いでしょ。」
「えぇ!?」
ちょっと慌てた感じで声を裏返して驚いて。運転中だったのに申し訳ない。ちょっと車体揺れた。
落ち着かない感じで…いやちょっと落ち着いて運転しながら、バックミラー越しに私のこと見て言った。
「そんなことないよ!」
これは本心だろうな…いつも私のこと見てるから。気を使わせているようでこっちが悪い感じがする。
「でもママは嫌いって言ったって。」
こっちは私の本心。いや実際そうだから…ママはパパと一緒にどっか行ったんだし。
「…………………………………………。」
黙っちゃった…朝からしんみりさせて悪い。この人今年からだからまだ子どもに慣れてないのかもしれない。
災難だよねって思ってる。だって私と5ヶ月も二人っきりで。
保育園の先生志望だったっけ…そんなにキラキラした場所じゃない職場で、結構頑張ってる方だと思う。
この組織にいると、訳ありのやつばっかり目に付く。
虐待されたやつ
火事で家族がいなくなったやつ
どっかから逃げてきたやつ
そんで私みたいな…捨てられたやつ
「先生はアンナちゃんのこと大好きだよ!大好き!」
「あっそ。」
人の良さ伝わってくるよ…ま、同情も少し入ってんだろーけど。
桜が満開の川沿いを車で走る朝。5月の朝はまだ寒い。ほんとに寒い時は寒い。こんなの冬じゃんって思うけど6月になったら熱いし…春夏秋冬って今は昔のことだと思う。
「なんでそんな好きなの?私のこと。」
なんとなく聞いてみる
「えー?まずすっごくかわいいし〜!」
なんじゃそりゃ。って言おうとしたら間髪入れずに
「今日のそのポニーテールも可愛いよ!」
アンタがセットしたんだよって。毎朝毎朝慣れた手つきでここ5ヶ月…ほんとに私にべったり。
「そのウェーブ掛かった髪の毛もおしゃれでカッコいいよ〜!」
うん。そうなの。私ちょい天然パーマ気味。
「前の学校で馬鹿にされた。◯◯◯〜って。」
「アンナちゃん!女の子がそんな汚い言葉使っちゃいけません!」
「こんなの…私くらいになったらみんな言ってるよ。」
「そうなの!?最近の小5ってすごい…。」
「どんな意味でのすごいだよ…。」
今の会話ちょっと面白かった。男の子ってほんとに悪口が幼稚。
「可愛いウェーブロングなのにね!」
「先生がセットするポニーテール。こめかみのところから触角たらすのなんなん?」
「え!?嫌だった!?」
「別に…なんでかなって思っただけだよ。」
そんな話をしていたら見えてきた。
え?何がかって?いやわかるでしょ。学校だよ学校。
「一人で大丈夫?」
心配そうにお姉さんが声を掛ける
「大丈夫。」
これも本心。てかここまで送ってくれただけでも本当にありがたい。
「何かあったらすぐ連絡してね!あらかじめケータイの許可、部分的になら学校にお願いして許してもらってるからね…。」
「ほーい。」
手際が良いんだか悪いんだか…うちの組織こういう事は本当に早くて助かる。
「じゃいってきまー。」
「うん!頑張ってねアンナちゃん!」
力強く優しい激励だ…きっと私のこと大好きなのも全部本当なんだろうな…そう思いながら私は校門をくぐった。
転校ってどんなとか思う人いるじゃん?別に結構普通だよ。
別れが辛いとか、友達できるかなぁとか。そういうこと考えたりするんだろうけどさ
私前の学校で友達いなかったし。
「やーめーてーよっ!いぎゃっ!いたいたい!」
ん?朝からケンカしてんのか?元気にやってんねぇ。まだ朝早いこんな時間に…
いや違う。引っ張られてるわあれ。ええ…凄いよあれ何人…何十人で囲んでんの?
てか1クラス分位の人数で1人の女の子囲んで…髪の毛引っ張ってる。
他の子…注意しないの?見て見ぬふりか
まあターゲットにされたくないんだろうな…悲しいことに。保身も大事だけどね…ま、こんなキレイ事言ってるけど私だってめんどくさいのはごめん。
可哀想だけど…。事前に聞いてたけど多分、私の転入先はあのクラスだね。
「…さて…。」
気を引き締め直したって感じ。ま、やってやろーじゃん。
今、この国には危機が迫っている。
奴らは既にこの国に潜んでいる。
事態を重く見た我が国は、秘密裏にこの問題を解決する特殊部隊を組織、時に身寄りのない子供たちを引き取り、時に優秀な人材をスカウトし、彼らを分野ごとに強く育て上げ、必要とあらば各々の力の行使を持って、か弱き者を保護する使命を帯びたエージェントを送り込むことにした。
これはそんな組織の中で、幼いながらも奮闘する一人の少女…
晴家安成の活躍を描いた
チャイルドヒーロー活躍激動譚である!
☆次回予告☆
イジメに悩まされる少女、忍耐心。
彼女の暗い日々に、光を射すのは一体誰だ!?
───次回!
第2話
【アンナがパンクでやってくる】!
君は見て見ぬふりをしていないか!?
登場人物たちには各々、モデルになった楽曲があります。
1人につき1〜3曲ですね!