第7話 再会
「待ってくれ。どうして君が……」
突然の出来事で、私は頭の中が混乱してしまっている。
あまりにも非現実的ではあるが、今の私はエルフの少女であり、あの事故で彼女も亡くなっていたら、私のように異世界転生していてもおかしくはない。
「よくわからないけど、異世界転生って感じかしら。まさか、君とこうして再び出会えるなんて夢にも思わなかったよ。あの森で傷付いた君を発見できたのは偶然なのか、運命的なものならロマンチックだね」
「そうだったんだ……ごめん、助けてくれたのに、あんな酷い事を言ったりして」
「いいんだよ。あの世界では普通の反応だよ」
ダークエルフの泰子は私を強く抱き締めながら、お互いに十八年ぶりの再会を喜び合う。
まさか、エルフとダークエルフがこうして肌を合わせて抱き合う日が訪れるとは夢にも思わなかった。
「前世と比べて、君は随分と可愛らしくなったね」
「皆川さんはその……大人っぽくなったね」
可愛らしいエルフと呼ばれるのは同胞のエルフ達や市川から言われたりしていたので慣れてはいたが、私の前世を知っている彼女から改めて言われると気恥ずかしい感じがする。
それに前世の皆川泰子と比べて、見た目から男を手玉に取るダークエルフのような雰囲気が伝わってくる。
「シャールでいいよ。前世の皆川泰子はもうこの世にいないし、その名前で呼ばれるのはちょっと辛いかな」
「ごめん、そうだよね。気が利かなくてごめん」
「ふふっ、君は謝ってばかりだね。そんなところは前世と全然変わってない」
前世の名前で呼ばれることが辛くなるシャールの気持ちはよくわかる。
配慮が足りなかった私はすぐに謝罪すると、シャールは可笑しそうに笑って答えてくれた。
姿形は変わってしまったが、根本的な部分は前世と変わっていない。
それがわかっただけで、何だか凄く嬉しくなってしまった。
「今日はもう遅いし、詳しいことは明日話すよ」
「わかった。シャールは怪我の具合は大丈夫なの?」
「おかげさまでね。君こそ怪我の具合はどうなんだ?」
「シャールから元気をもらって、すっかり元通りだよ」
「そうか……もし、君がよかったら今晩は私と一緒のベッドで寝るかい?」
シャールは患者着を脱ぐような仕草で私をベッドに誘い込もうとする。
私は顔を赤くして何も言えずに放心状態でいると、シャールは「ふふっ、冗談だよ」と意地悪そうな笑みを返して自室へ戻って行った。
せっかくの感動的な再会だったのに、何だか水を差されてしまった私は布団に潜ってモヤモヤした気持ちになってしまった。