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第29話 散歩

「う……寝ちゃったのか」


 私は頭を抱えながらベッドから起き上がると、外はすっかり明るくなっている。

 シャールと酒を交わしたところまでは覚えているが、その後については記憶が飛んでしまっている。


「おはよう、気分はどうだい?」


 部屋の扉が開くと、シャールが荷物を整えて私服に着替えている。

 状況から考えて、私は酒に酔って眠ってしまったのは明白だ。


「ごめん、思った以上に私は酒が弱かったようだ」


「気にする必要はないさ。おかげで、君の可愛い寝顔をたっぷり拝見させてもらえたからね」


 私は昨日のことについて謝ると、シャールは可笑しそうに笑って気にしてないようだ。


「人の寝顔を観察するなんて、あまり良い趣味じゃないぞ」


「ふふっ、ごめんなさい。お詫びじゃないけど、今日は少し気分転換に散歩しない?」


「それは別にいいけど、それなら着替えて準備するよ」


 シャールの提案に私は頷くと、シャールを部屋から出して一人着替えを始めようとする。

 モヤモヤした気分を発散するために散歩は悪くない。

 今後の生活についてもそうだが、あの奇妙なパンフレットについて正体を見極めたい。

 それに、ここは私が想像している前世の世界ではない可能性があるし、私とシャールをこの世界へ送り届けた閃光について解明する必要があるだろう。


(謎だらけだなぁ……)


 色々と思案しながら着替えていると、こちらを窺う視線に気付く。


「ダークエルフは人の寝顔や着替えを覗く習慣があるのか?」


「あら、気付いていたのね」


「一応、それなりに戦闘の訓練を積んでいたからね。もう少しで着替え終えるから、外で待っていてよ」


「私としては、このまま君が着替え終えるのを待っていてもいいんだけどねぇ」


「……やっぱり、散歩はやめようかな」


「しょうがない、お姫様のお着替えを覗くのはこの辺にしておきますわ。早く来てね」


 シャールは残念そうに軽口を叩くと足音が部屋から遠ざかり、玄関の扉が開閉する。

 人の気配やこちらを覗く視線もなくなり、やれやれと言わんばかりに私も早く着替え終えて彼女の後を追うことにする。

 玄関に向かう前にリビングのソファーに目をやると、寝ていた市川の姿はどこにもない。

 昨日のお礼をしようかと思ったが、おそらくもう帰ってしまったのだろう。


「ん、何だこれ?」


 私はテーブルの上に一枚のメモ用紙が置かれているのに気付いた。 

 何気なくそれを手に取って見ると、市川が私達に残したメッセージのようだ。


『昨日は途中で酔い潰れてごめんね。ミスティアちゃんのところに訪ねて来た例の怪しい人物はこっちで調べてみるから安心して。可愛いエルフとダークエルフの乙女達を脅かす輩は私が必ず捕まえるわ。追伸、今度は私がミスティアちゃんとシャールちゃんを介抱してあげるからね』


 市川の性格がそのまま文面に表れており、私は思わず口許が緩んで笑みを浮かべてしまった。


「よし、行くか」


 私はメモ用紙を元の場所に置くと、外で待たせているシャールの元へ向かった。

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