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第23話 過去の思い出

 私はあの日の事を思い出していた。

 校門前で待っている彼女の事を考えながら駆け足で教室の忘れ物を取りに戻っているところだった。


「こら! 廊下は走らない」


 背後から誰かに呼び止められると、それは担任の先生だった。

 学校内でも口煩(くちうるさ)い先生として有名だったので、廊下を走って注意されるだけならまだしも、自身の体験談を元に一度口を開くと延々と説教が始まるのだ。


「先生が若い頃は静かに廊下を歩き、余裕を持って行動に移していたものです。それを君は後先考えずに廊下を走って、誰かとぶつかって怪我をしたらどうするのです。普段からの生活を……」


 案の定、長い説教が始まった。

 そのまま無視して走り去ってもよかったが、次の日になったら今の倍以上の説教を聞かされるのが目に浮かぶ。

 それに最悪の場合、逃げた私を追いかけて校門前で待っている彼女と合流したら、彼女にも迷惑が掛かるし、さらに面倒な事になる。


(参ったなぁ……)


 こうなっては大人しく受け入れて、早く終わるのを祈る事しかできない。

 早く終わってくれと心の中で呟きながら祈る気持ちでいると、私の気持ちが天に通じたのか意外な助け舟が入った。


「ああ、こちらにいらっしゃいましたか。外線にお電話が入っていますよ」


 廊下から英語を担当している外国人の先生が担任に電話があった事を伝えると、担任は罰が悪そうに以後気を付ける事と念押しされて解放された。

 足早に担任はその場を後にすると、私も廊下を走らない程度に急いで校門前に向かおうとした。


「GOOD RUCK」


 私は外国人の先生と擦れ違うと、彼は私に対して笑顔で答えて見せた。


(ああ……こんな事もあったな)


 私の意識は徐々に回復し、ゆっくり目を開いた。

 最初に目に入ったのは真っ白な天井で体を起こすと、どうやらベッドで眠っていたようだ。


「たしか、シャワーを浴びていてシャールに……」


 私は記憶を遡ると、当時の事が徐々に鮮明な映像として蘇る。

 咄嗟に自身の胸や長耳を触って何かを確かめようとする。


「あんな醜態を晒したのか……」


 一番見せたくない姿をシャールに見られて、私は頭を抱えてしまう。

 目覚めて早々、次に彼女と会った時にどんな顔をして出迎えればいいのか、穴があったら入りたい気分だった。

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