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第21話 背中を流す

 私も嫌な汗を掻いて、シャワーを浴びて気分を爽快させようと浴室で服を脱ぎ捨てて一人シャワーを浴び始めた。

 蛇口を捻れば、シャワーから心地良い水飛沫と共に温かいお湯が出る。


(ふう……気持ち良いな)


 シャワーを浴びたのは前世で高校生だった頃が最後だ。

 前世の世界での暮らしを体験できるなんて、異世界で暮らしていく内に半ば諦めていた。

 ダークエルフとの紛争状態ではあったが、異世界でエルフの生活も慣れてしまえば、それなりにスローライフが充実した生活を送れてよかった。

 それでも、前世の暮らしと比べたら退屈なものではあったが、無い物強請(ねだ)りをしたところで虚しいだけで現状を受け入れるしか選択肢はなかった。

 それが、今ではダークエルフの幼馴染とひとつ屋根の下で暮らす事になっているのだから人生はどう転ぶか分からないものだ。

 今後の生活についてもそうだが、一番肝心なのはシャールとどう向き合っていけばいいのか。

 悩みの種は尽きる事がない。


「何だ?」


 丁度、シャワーを止めたところで脱衣場の扉の開く音が聞こえた。

 忘れ物でも取りに来たのだろうと、あまり気にしないでいると、すぐにシャワー室の扉も開いて私は驚いてしまった。


「背中でも流してあげるよ」


 そこにはシャールが先程と同じく裸になって、私に背中を流そうと何の躊躇(ためら)いもなく入室してきたのだ。


「い……いいよ! もう出るところだったから間に合っている」


 慌てて目を逸らしながら、私はシャールの横をすり抜けてシャワー室から出ようとすると、腕を掴まれて引き止められてしまった。

 無理にでも振り払おうとすればできたかもしれない。

 しかし、シャールはそれをさせなかった。


「まあまあ、そう言わずに。お互い、腹を割って話す機会を設けたと思って付き合いなよ」


 半ば強制的に引き戻された私はシャワー室の扉が閉められて、シャールと二人っきりだ。


「昔はよく一緒に肌を寄せ合って、無邪気にお風呂に入ったね」


「それは幼稚園の頃の話じゃないか。からかうなら、もう出るよ」


「別にからかっていないさ。君とこうしていられるのが嬉しくてしょうがないんだ。その証拠に私の心臓はバクバクだよ」


 シャールは感慨に(ふけ)りながら背後から私に抱き付くと、肌を密着させて彼女の鼓動が直に伝わって来る。

 それと連動して私も胸の鼓動が抑えられない程、今の状況に冷静さを保っているが興奮が勝りつつある。


「おや? 顔が少々火照っているねぇ」


「これはその……少しシャワーを浴び過ぎて、のぼせたと言うか」


「ふふっ、そういう事にしておきましょう」


 私はたまらず言い訳を述べたが、シャールは意地悪な笑みを浮かべながら私の顔を覗き込む。

 そして、シャールは私の背中を本当に流し始めた。

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