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第18話 今後について 

「よし、まずはこれからの事を考えましょうか」


 シャールは話題を変えて、今後の事について話し合う。


「そうだね。住む所は確保できたけど、やっぱり仕事を探してお金を稼がないといけないね」


「その通り。家賃も毎月二万円とはいえ、食費や光熱費も含めたらそれなりの出費になるわね。ここで重要なのが、私達はまともな仕事に就けると思う?」


「多分……難しいかもしれない」


 私は少々考えたが、この世界で仕事に就くのは難しいと判断する。

 前世の頃だったら、身元を証明するものもあるし、雇用主に履歴書を提出する事も簡単にできた。

 だが、今の私は置かれている状況が違う。

 この世界で身分を証明する物は持ち合わせていないし、そもそも人間ではなくエルフとダークエルフだ。


(どうしたものか……)


 前世の世界に戻って来た時から、薄々問題になる事は分かっていた。

 前世だった頃の身分は使える筈がないし、私やシャールは傍から見れば訳アリの外国人にしか映らないだろう。

 そういう理由もあって、このような特殊な事故物件に住むしか選択肢はなかった訳だ。

 今回は市川やシャールの手助けもあって、この事故物件に住む事はできているが、私も役に立ちたい気持ちだ。


「私達のような異世界の者は仕事を探すとなると、履歴書のいらない飛び込みの仕事ぐらいしかないわね」


 シャールは結論を述べると、私は反論できずに唸る事しかできなかった。

 仕事の選べる選択肢が極端に少ない中、今後を考えるとあまり贅沢は言ってられない。

 お金とはあまり縁のなかった異世界でのエルフの暮らしは退屈であったが、それでも衣食住に困る事はなかった。

 せめて、何か特技を活かせる仕事を見つけられればいいのだが、そんな都合の良い話がある筈もなく私達は溜息をつくしかなかった。


「シャールはその……ずっとこの世界で暮らしたいの?」


 私は突然そんな事を言うと、シャールは長耳をピンと伸ばして反応する。


「ここは蛇口を捻れば水が出るし、危険な魔物も徘徊していない。君はあのエルフとダークエルフのいがみ合った異世界に戻りたいの?」


「異世界には家族や友人もいるから、戻りたくないって言ったら噓になるかな。私達が異世界に戻ったら、こうやって一緒に話す機会が失われて絶対に後悔もする。私は当初、シャールと……いや、皆川さんにあの事故について一言謝ったら異世界へ戻ってもいいと思っていた。でも、実際は違った。私はエルフで皆川さんはダークエルフに転生し、紛争状態じゃなかったら物理的にお互い行き来できるところにいたんだ」


「何とも皮肉で間抜けな話だね。君とあの森で劇的な出会いを果たした事や謎の閃光については見兼ねた神様が用意したものかなって思う事もあるんだ」


 全ては神様の用意した運命のレールに沿っているのではないか。

 シャールはそんなロマンチックな考えを口にすると、「そうだったら素敵だね」と私は笑って答えた。

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