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第14話 部屋探し③

 玄関扉を開けて部屋に入ると、広々とした快適な空間が私達を招いてくれた。

 てっきり、どんよりとした重い空気に包まれたものを想像していたが、そんな気配は一切感じられなかった。


「一応、事件後は壁や天井は修繕してリフォーム済み。あんな事件がなければ、駅やスーパーも近いし、需要は高い物件だっただろう」


 社長は罰が悪そうに話すと、たしかにその通りだと納得してしまう。

 玄関の廊下をすぐに入ったところには梵字が描かれた一枚の札が貼られており、浴室、トイレ、洗面所、三部屋の洋室等にもそれぞれ同じ札が貼られていた。

 その札が貼られているおかげで、ここは異様な事故物件なんだなと、ひと目でわかる。


「管理会社から引き継いだ時に聞いた話だが、そこの収納スペースで遺体を隠していたらしい。札もびっしりと貼られているのが分かるだろう?」


 社長が指差した収納スペースがある物置には、各部屋に貼られた札の数とは比べられない程の札がびっしりと貼られていた。


「今はまだ札の効果と日が昇って明るいから何ともないが、夜にもなると女性や子供の泣き声が聞こえたりするらしい。実際、ここへ面白半分で借りた動画配信者も行方不明になったりとしているから、嫌なら断ってくれてもいい」


 部屋の案内を一通り終えると、社長は現場を実際に見せて私達の身を心配しながら考え直してもらいたいと訴える。

 本当なら、希望があれば夕方以降にも案内してあげたいところだが、身の危険も保証できないので勘弁してもらいたいと言うことだ。


「なかなか良いお部屋ですね。早速、準備に掛かりましょう」


 部屋を気に入ったシャールはお祓いの準備を整え始めると、カーテンで日を遮って部屋を薄暗くしていく。


「お……おい!」


「後は任せて、おっさんは外で待機ね」


 その行為に社長は驚いた様子でいると、市川が部屋の外で待っているように促す。

 カーテンで部屋を薄暗くした途端、私は部屋全体の空気が重くなったような錯覚に陥った。


「悪いんだけど、これを適当に振り撒いてくれないかしら?」


「分かった。他に何かできることはない?」


「そうね……私の傍にいてくれたらいいかな」


 シャールは懐から小さな筒のような物を取り出すと、それを私に手渡して見せる。

 彼女の役に立ちたい私は自発的に協力を申し出ると、シャールは少し悩んだ末に頬を赤く染めて答えた。


「うん、任せてくれ」


 私はすぐに行動へ移すと、シャールから受け取った小さな筒に入った液体を振り撒き始める。

 こんなことしかできないが、足手纏いにならないよう一生懸命にサポートする。


「鈍感なんだから……」


 ぼそっと呟くシャールはエルフの少女に不満そうな顔を向ける。

 そんな二人を市川が遠目から観察するように様子を見ていると、思わず笑みを浮かべてしまう。


「ふふっ、仲がよろしいことで羨ましいなぁ」


 緊張感が抜けたような時間が暫し続くと、お祓いの準備が整った。

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