29.正直な気持ち(レン視点)
頭がすっきりとして目が覚めると、ベッドの上にいた。フェリシアに追い立てられて寝室に来たことを思い出す。
「せっかくフェリシアが来てくれたのに」
勿体無いことした。
そう思ってベッドから降りようとすると、すぐそばに人の姿を見つけて目を見開く。そこには椅子に座ったまま寝ているフェリシアの姿があった。
とても綺麗な姿勢のまま寝ているのがフェリシアらしくてレンは少し笑った。
彼女もまた疲れているはずだった。レンのわがままで立太式にはフェリシアも出てくれる。これはレンの完全なるわがままだ。彼女が婚約者であることを知らしめるための行為だ。
レンはベッドから立ち上がると、優しくゆっくりとフェリシアを抱き抱え、先ほどまで自分が寝ていたベッドに横たえる。
「あ、やばい、なんか悪い妄想しそう」
ベッドに横たわるフェリシアに変な気を起こしそうになる自分を何とか押し留める。
しかし、いつも使っている自分のベッドに好きな女性が眠っているのだ。健全な男子的には、何とも言えない状況である。
紺色のシーツの上にフェリシアの綺麗な金色の髪が広がり、白い肌がとても綺麗に映える。
「……、落ち着けオレ」
そう思っても視線を外せない。
「ん……」
レンの下ろし方が良くなかったのか、フェリシアが寝やすい場所を探して、寝返りをうつ。その際に裾が上がり、ドレスから白い足が見え隠れして、思わず見入ってしまう。
「いやいやダメだろ!」
慌ててレンは靴だけを素早く脱がせると、上掛けをフェリシアの体が隠れるように覆い被せる。
「偉いオレ。ホント偉い!」
フェリシアの穏やかな寝顔を見ると自分まで幸せな気分になる。
「……、オレは仮の婚約者なんて思ってないのに」
いつもフェリシアは「仮の」を強調する。フェリシアはレンと結婚する気などさらさらないのだろうと言うことが暗にわかってしまい辛い。
「……オレは、フェリシアとずっと一緒にいたい」
そのためにも、まず後継者の地位を確立したい。ずっと受け入れてこなかったものを受け入れたのはそのためでもある。
フェリシアを望むならそれなりの地位にいなければならないとレンは考えた。だから、皇太子の地位を望んだ。
「フェリシアのこと、好きなんだ」
このままだとずっと寝顔を見続けてしまいそうで、レンはなんとかフェリシアに背を向けて寝室を出た。
執務机で書類の続きを見ているとしばらくして、寝室の奥からバタバタと音が聞こえて、扉が開く。
「ごめんなさい!私いつの間にか寝ちゃって!」
真っ赤な顔をしたフェリシアが飛び出してきた。
自分の寝室から真っ赤になったフェリシアが出てくるとかどんな状況?ときめくんだけど、オレ大丈夫?
そんなことを考えながらもレンはなんとか真面目な顔を保つ努力をした。
「フェリシアも疲れてたんだろ?オレも休めたからよかったよ」
「ホント?ちゃんと寝れた?」
「うん、スッキリした」
「ならよかった」
ホッとしたように微笑むフェリシアに、レンはどきりとする。
こういう自分のこと思ってくれてる笑顔にオレは弱い……。
「あ、後でクデリにシーツと替えてくれるように頼んでおくわ。私寝ちゃったところなんてイヤよね。ホントごめんなさい」
それは別に全然いいんだが。むしろそのままの方がフェリシアの匂いがして……。
と言ったら絶対引かれる気がしたので、残念に思いつつ流石に頷いておいた。
書いていて楽しかったです




