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23.真っ黒な感情(レン視点)

短いです!

 部屋で時間を潰してから城を出てみると、そこにはカイゼント卿と並んで笑っているフェリシアの姿があった。


 ドクンと心臓が強く跳ねた。それとともに、真っ暗でドロドロとした重い感情が溢れたのを感じた。


 フェリシアは馬に触れて、嬉しそうにカイゼント卿と笑い会っている。たったそれだけのことなのに、レンの中に黒い感情が渦巻き始める。


 フェリシアを目覚めさせたのはオレなのに……。


 その考えがよくないことではあるとわかっていながら、そんな風に考えてしまう。目覚めさせたからと言って、フェリシアを自分に縛り付けて置けるわけではないとわかっている。わかっていても、考えてしまう。


 フェリシアは魅力的な女性だった。外見だけでなく、内面もとても惹かれるものがあった。強い部分も弱い部分も持ち合わせたフェリシアに、レンは自分が惹かれているのがわかっていた。どんどんと膨らむ気持ちを持て余している状況だ。


 カイゼント卿に微笑みかけるフェリシアを見ると心が痛い。自分だけに微笑んで欲しい。自分の隣にいて欲しい。


 ダメだ……。フェリシアを苦しめたいわけじゃない。オレの望みとフェリシアの望みが一致するとは限らないんだから……。


 ぐっと握りしめた右手が皮膚に食い込むが、痛みも感じない。今自分がどんな表情をしているかわからない。


「取られるよ」


 まるでレンの心の中を読んだかのように、ウィードが頭上で呟いた。


「……、フェリシアの望みを叶えるのが重要なんだろ」

「自分の望みは?」

 レンが答えられないでいるとウィードが鼻先辺りを飛ぶ。

「遠慮してたら、欲しいものは手に入らないよ」

「……、わかってる」

「わかってないからそこで見てるんだろ〜?」

「お前は誰の味方なんだよ」

「僕は僕の味方だよ。お前こそ誰の味方だ?」

 呆れたように指摘するウィードは、くるりと飛ぶとどこかへ飛んでいってしまった。


「……、わかってる」


 遠慮なんかしてる余裕ない。今フェリシアを繋ぎ止めているものはとても弱い。婚約なんて無くそうと思えばあっという間になくせてしまう。あの時はいい考えだと思ったが、今になってみれば本当にいい考えだったのかわからない。

 こうして迷っている間にもフェリシアは自分の考えを固めていくかもしれない。


 レンは視界に映るフェリシアとカイゼント卿の姿を見て、改めて大きなため息をついた。


「オレって、全然上手くできない」


 それでも二人をそのままにしておく気にはなれず、レンは二人に向かって歩き始めた。



 帰りは同じようにフェリシアを前に抱えて馬に乗ったのだが、彼女の様子が行きとは少し違った。レンの服にしがみついているのは変わらなかったが、少し顔を上げて周りの様子を見ている。


「怖くなくなった?」

「ううん、そう言うわけじゃないけど。カイゼント卿が、空を見てみてって」

 カイゼント卿と言う言葉に、レンは心が何かに刺されたような気がした。珍しそうに空を見上げるフェリシアを作ったのが、カイゼント卿であると言う事実に、苛立ちを感じてしまう。


 心が狭い。

 それでも気にしないなんてことはできなくて。


 馬を走らせたまま、レンは視線は前に向けたまま口を開いた。

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