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第九話 奈由香さんの友達との出会い

 朝、七時。起床。集合時間は十時五十分なのだが、早めに目が覚めた。今日は楽しみなカラオケだ。ドキドキとワクワクであんまり眠ることができなかった。


 今日は、完全に楽しみだ! と言いたいところだが、少しだけ怖い。今日は奈由香さんの友達もくるのだ。奈由香さんがサポートしてくれるらしいが、女子達の中に俺が加わって嫌にならないのだろうか、邪魔にならないだろうか、嫉妬されないだろうか。そこが心配なのだ。


 そんなことを考えながら、服を着替える。心配で無駄に足をトントントントンと鳴らしてしまう。だが、奈由香さんに会えるのなら、他の人にどれだけ蔑まれても、問題ないだろう。



「まだ誰もいないか……」


 俺は待ち合わせ場所に三十分前に来た。理由はたくさんある。遅刻が怖い、緊張を消したいなどなど、様々なものだ。


 しかし流石に三十分前は早かったのだろうか。まだ誰も来ていない。早く奈由香さん来てくれ! そう心の中で呟く。


 待ち遠しくて、もう走り出したい気分だ。だが、そんな勇気は俺にはない。街中でぐるぐると走り回るなど、ただの頭のおかしい人だ。


 代替案としては叫ぶだとかだろう。いや、ないな。通報される。


「まだ来ないのか」


 俺は再び呟く。だが当たり前のことだ。まだ二十分前なのだから。


 暇でどうしようもない。スマホを触ればいいじゃないかとでも言われそうだが、スマホを触れる元気がない、ともかく待ち合わせ場所まで着いても心配なのは変わらないのだ。


「まだ来ない……」


 もう十分前だ。誰かそろそろ来てくれ。


「あ、有村くんじゃん」


 人が来た。だが、奈由香さんではない、クラスメイトである烏丸麗華(からすまれいか)さんだ。


「おはようございます烏丸さん」

「敬語!?」


 彼女は驚いたようだ。だが、まあそりゃあいきなり敬語だと驚くよな。


「ぷっあははは。なんか奈由香が気に入ったって言ってたけど、なるほど、こういうことか」


 なんか笑われたんだけど。なんで?


「何がおかしいんですか」

「だって、一応クラスメイトよ。まさか初手敬語とは思わないじゃん」


 ああ、そういうことか。


「それは……人と話すのが慣れてないから……」

「いつも話してなかったもんね。そりゃそうだよね!」

「なんか馬鹿にしてませんか?」

「いや、馬鹿にしてないよ」

「そうですか……」

「……」

「……」


 ああ、無言タイムが始まった。奈由香さんと話すようになってから忘れてだというわけでは無いが、そういえば会話をするのが苦手だった。さて、前回は奈由香さんが会話をしてくれたからいいが、今回の烏丸さんとの会話、どうやって切り出すか。


「えーと」

「あの」


 あ、被ってしまった。


「えっと、そっちからどうぞ」


 烏丸さんが譲ってくれた。


「あ、うん、えっと烏丸さんはいつ奈由香さんと出会ったんですか?」

「えっと、てか麗華でいいわよ、友達の友達は友達だし」


 なんて距離が近いんだ。


「あ、じゃあ、麗華はいつ」

「お待たせー」


 そして奈由香さんが来た。


「ちょっと雄太くん、いつからそんなに仲良くなったの?」

「え?」

「麗華って言ってたじゃん」


 ああ、そういうことか。


「それは麗華、麗華さんに頼まれたから」

「あ、麗華さんに戻らないでよ」

「あ、じゃあさ、私も奈由香って呼んでよ。私も雄太って呼ぶから」

「奈由香」


 だめだ、なんでかわからないけどだめな気がする。恥ずかしい。無理だ。


「それで良いの!」


 奈由香さんは笑う。あ、もう奈由香か。


「さてとあと1人ね」


 もう1人か……。麗華さん、麗華と同じで良い人だと良いけど。


「お待たせ。ってげ! 全員もう揃ってる」


 彼女は一番最後に来たという事実に驚いたようだ。


「大丈夫だよ、まだ待ち合わせ二分前だし」


 奈由香さん、奈由香が慰める。


「で、そっちの彼が例の人?」

「うん、私の友達の雄太」


 奈由香はすぐに呼び捨てに慣れてしまっているようだ。俺はまだ全然慣れていないのに。


「ふーん」


 彼女は腕組みをしながらこっちを見る。


「じゃあ奈由香行こう」


 あれ、自己紹介しないのか? 俺名前聞いてないんだけど。


「ちょっと、自己紹介は?」


 奈由香さんが聞いた。俺の意思を代弁してくれたのか?


「え、あ、そうか。私は下村絵里(しもむらえり)です」

「俺は有村雄太です。よろしく」


 お辞儀をしながら言った。


「そう、じゃあ行きましょ!」


 そして下村さんは一目散に行った。


「はあ、行きましょ雄太」


 奈由香は俺の手を引っ張って行った。


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